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< 序に代えて >
1.維摩経(ゆいまきょう)について 仏法は五種の人によって説かれるとは大智度論巻三の説く所であるが、それによれば、一、仏自口の所説。二、仏弟子の所説。三、仙人の所説。四、諸天の所説。五、化人の所説とある。 ここで維摩経はその中の五、化人の所説に相当する。即ち、この経は仏が維摩詰(ゆいまきつ)という俗人に化して法を説いたのである。
維摩経は、『一名不可思議解脱経』という副題が有るように、この中の登場者は、皆、現実には、とても在りそうもない、不可思議なる環境に、身を投じられる。恐らく、それは維摩詰が神通力によって、皆に幻影を見させたと、解釈するのが妥当であろう。 我々は誰でも、自らの目を通して脳裏に映った世界を、現実として認識しているのであるから、これはごく妥当な解釈であり、誰にも起こり得て、しかも誰でもが、その能力を持っている。 しかし、また別の解釈もある。それは、ただ単に何幕かの劇として見るのである。世に宗教劇などと並んで、教育劇という一つのジャンルがある。そのように見るのであれば、話は実に簡単になり、中で、いかなる奇跡が起ころうと、全ては、ごく自然に受け取ることができる。 訳者は敢えて、これを一つの教育劇として捉え、不可思議なる体験を、読者の想像力の上に構築したいと考えている。ご協力願えれば幸いである。
2.訳本について この経は六種の翻訳があり、その中の三種が現存する。今それを列挙してみると、
となり、この中の支道謙、鳩摩羅什、玄奘の訳が現存している。 今現在、最も博く世に行われている所は鳩摩羅什(くまらじゅう)の訳したものであり、また今国訳せんとする所もそれである。
3.注釈書について この経はかなり整理が行き届いているので、大品般若などと比較すれば随分と全体を捉え易いためであろうか、昔から多くの研究がなされていて、注釈書の類も枚挙に暇がない。 わが国に於いては、聖徳太子の『維摩経義疏三巻』が有名であるが、ここでは漢訳者の鳩摩羅什と、その門下の僧肇(そうじょう)、竺道生(じくどうしょう)等が注釈した『注維摩詰経十巻』があるので、そちらを参考にした。それ以外を参照することは能力的な限界を越えるものであり、且つ時間的制約もあって許されない。 ただし東京の玄黄社により明治四十四年に発行された『和訳維摩経 著者田岡佐代治』は、謂ゆる専門の人の注釈書ではないが、文中に割注することによって、専門用語などが理解しやすく、注が巻末に纏めてあったり、或いは脚注、頭注のものに比べて、読書を中断される惑わしさが無く便利であり、且つ訳が適切である為に、あらゆる場合に参考にした。 田岡佐代治(明治3年~大正元年)は、また嶺雲と号して、玄黄社の『和訳漢文叢書』に《老子》、《荘子》、《韓非子》、《戦国策》、等多数を和訳している。また編集、評論でも活躍した。土佐の人である。 以上 |
< 総 目 次 >
◎維摩詰所説経巻上 (その一) «仏国品第一» 菩薩を明かす 長者子宝積、偈を以って仏を讃嘆す 諸の菩薩の浄土の行を明かす この土の清浄なることを明かす «方便品第二» 維摩詰(ゆいまきつ) 維摩詰病む
◎維摩詰所説経巻上 (その二) «弟子品第三» 舎利弗(しゃりほつ) 大目揵連(だいもっけんれん) 大迦葉(だいかしょう) 須菩提(すぼだい) 富楼那弥多羅尼子(ふるなみたらにし) 摩訶迦旃延(まかかせんねん) 阿那律(あなりつ) 羅[目*侯]羅(らごら) 阿難(あなん)
◎維摩詰所説経巻上 (その三) «菩薩品第四» 弥勒菩薩(みろくぼさつ) 光厳童子(こうごんどうじ) 持世菩薩(じせぼさつ) 長者子善徳(ちょうじゃしぜんとく)
◎維摩詰所説経巻中 (その一) «文殊師利問疾品第五» 文殊師利(もんじゅしり)、維摩詰の疾を問う 菩薩の病 有疾の菩薩を慰喩する 有疾の菩薩、その心を調伏する 方便の縛と解 菩薩の行 «不思議品第六» 法を求める 不可思議解脱
◎維摩詰所説経巻中 (その二) «観衆生品第七» 文殊師利、衆生を問う 文殊師利、慈を問う 文殊師利、悲喜捨所依等を問う 天女、舎利弗に教える
◎維摩詰所説経巻中 (その三) «仏道品第八» 菩薩、非道を行う 如来の種 菩薩の父母と妻子 «入不二法門品第九» 不二法問に入る 文殊師利、不二法門を説く
◎維摩詰所説経巻下 (その一) «香積仏品第十» 香積仏に食を請う 釈迦牟尼仏の法 «菩薩行品第十一» 仏事 仏土の不同 菩薩、有為を尽くさず 菩薩、無為に住せず
◎維摩詰所説経巻下 (その二) «見阿閦仏品第十二» 維摩詰、如来を語る 舎利弗、菩薩を問う 維摩詰、阿閦仏の浄土を現す «法供養品第十三» 天帝、持法者の守護を誓う 法の供養 «嘱累品第十四» 弥勒菩薩と阿難に咐嘱する ご挨拶
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