家から直線距離にして40㎞、車を1時間余り走らせますと、岐阜県多治見市の永保寺に着きます。土岐川が大きく屈曲するところに位置し、山と川とに囲まれた、清明の気溢るる天然の要害、経の文句を仮りれば、神仙の降り立ちて遊ぶところ、夢窓国師は正和2年(1313)諸国遊行の途次、この地の清朗幽玄にして無比なることを感知し、「古渓菴」と名づける一菴を搆えて隠棲しようとされたのでありますが、‥‥豈図らんや、その徳声余りにも高くして、来訪者の絶え間なく、遂にその応接に倦んでこの地を捨てられたのが文保元年(1317)ということですが、その詳細は後程のことと致しましょう。
中間に小さな四阿を載せた橋は、「無際橋」と称し、四阿の中には欄干を兼ねた腰掛けがあります。夏の暑い時期にでも、腰を掛けて池面を渡る風に吹かれて見ようということなのでしょう。
橋の向こう側の建物は、この寺の本尊を祀る観音堂、「水月場」という扁額が懸っています。パンフレットによれば、此の中では結婚式を行うことができるということです。この国では明治以後、葬式は仏教、結婚式は神道が担うというような棲み分けができていたのが、西欧では、生まれた時から死ぬ時まで、多くの儀式をキリスト教の教会で行ってるというようなことを聞いて、じゃあ仏教でもその真似をして見ようということなのでしょう。
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