【經】九相脹相壞相血塗相膿爛相青相噉相散相骨相燒相 |
九相とは、脹相、壊相、血塗相、膿爛相、青相、噉相、散相、骨相、焼相なり。 |
『九相』とは、
『脹相』、
『壊相』、
『血塗相』、
『膿爛相』、
『青相』、
『噉相』、
『散相』、
『骨相』、
『焼相である!』。
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九相(くそう):梵語 navaakaara の訳、九種の相( nine marks )の義。死体上に観想する九種の相の意。『大智度論巻21上注:九想』参照。
九想(くそう):梵語 navasaMjJaa の訳、九種の想( nine perceptions )の義。婬欲( kaama- raaga )或は六欲を抑制する為に行う死体上に於ける九種の観想(
Meditation on a corpse in order to curb the passion or the sex body-oriented
desires. )の意。不浄観の一種( one of the varieties of meditations on the unclean
)。即ち、
- 脹想 (脹相) vyaadhmaatakasaMjJaa :其の膨脹( its tumefaction )、
- 靑瘀想 (靑瘀相, 靑相, 靑想) viniilakasaMjJaa :其の青く斑の色( its blue, mottled color )、
- 壞想 (壞相) vipadumakasaMjJaa :其の腐敗( its decay )、
- 血塗想 (血塗相) vilohitakasaMjJaa :其の血の汚れ等( its mess of blood, etc. )、
- 膿爛想 (膿爛相) vipuuyakasaMjJaa :其の膿を出して悪臭を放つ肉( its discharges and rotten flesh )、
- 噉想 (噉相) vidagdhakasaMjJaa :其の鳥獣に貪り食われたさま its being devoured by birds and
beasts )、
- 散想 (散相) vikSiptakasaMjJaa :其の手足の散らばるさま( its dismembering )、
- 骨想 (骨相) asthisaMjJaa :其の諸の骨( its bones )、
- 燒想 (燒相) vidagdhakasaMjJaa :其れ等の焼かれて塵に帰すさま( their being burnt and returning
to dust. )。
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【論】問曰。應當先習九相離欲然後得諸禪。何以故諸禪定後方說九相。 |
問うて曰く、応当に先に九相を習いて、欲を離れ、然る後に諸禅を得べし。何を以っての故にか、諸の禅定の後に、方(まさ)に九相を説くべき。 |
問い、
当然、
何故、
諸の、
『禅定の後』に、
『九相』を、
『説かねばならぬのですか?』。
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方(ほう):[本義]双胴船、並行( parallel boats, parallel )。<動詞>匹敵/相当する( match, be equal to )、比較/比擬する( compare )、辨別/区別する( differentiate )、占有する( occupy )、依拠する( rely on )、摸倣/模擬する( mimic, simulate, copy )、過失を責める/中傷する( vilify, defame, slander )。<名詞>筏( raft )、方形( cube, square )、方向/方位( orientation, direction )、地区/地方( locality, place, region )、方面( aspect, side )、規律/道理( law, rule, reason )、儒家の倫理道徳と学問( moral principle and knowledge, learning )、薬物の配合方( recipe )、品類/類別( sort )、大地( the earth )、方法( method )。<形容詞>方正/正直( upright )。<副詞>丁度/丁度其の時( just, at the time when )、[時間を表示する]まさに・将に相当、[範囲・程度を表示する]只、僅かに( only )。<介詞・前置詞>[時間を表示する]在、当に相当( at )。 |
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答曰。先說果報。令行者心樂。九相雖是不淨。人貪其果報故必習行。 |
答えて曰く、先に果報を説いて、行者の心をして、楽しましむればなり。九相は、是れ不浄なりと雖も、人は、其の果報を貪るが故に、必ず習行すべし。 |
答え、
先に、
『果報を説いて!』、
『行者の心』を、
『楽しませるからである!』。
『九相』は、
『不浄である!』が、
『人』は、
其の、
『果報』を、
『貪るものである!』が故に、
必ず、
『九相』を、
『習行せねばならぬ!』。
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問曰。行者云何觀是脹相等九事。 |
問うて曰く、行者は、云何が是の脹相等の九事を観る。 |
問い、
『行者』は、
何のように、
是の、
『脹相等の九事』を、
『観るのですか?』。
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答曰。行者先持戒清淨令心不悔故。易受觀法。能破婬欲諸煩惱賊。觀人初死之日。辭訣言語息出不反奄忽已死。室家驚慟號哭呼天言說方爾。奄便那去氣滅身冷無所覺識。此為大畏無可免處。譬如劫盡火燒無有遺脫。 |
答えて曰く、行者は、先に持戒清浄なれば、心をして悔いざらしむるが故に、易(たやす)く観法を受け、能く婬欲、諸の煩悩の賊を破る。人の初めて死する日を観るに、辞訣の言語に息出でて反らず、奄忽として、已に死す。室家驚慟し、号哭し、天を呼びて言説すらく、『方に爾(なんじ)奄として便ち那(いづく)にか去らんとする』、と。気滅して、身冷たく、覚識する所無し。此れを大畏と為すも、免るべき処無し。譬えば、劫尽の火焼きて、遺脱すること有ること無きが如し。 |
答え、
『行者』は、
先に、
『持戒して!』
『清浄ならば!』、
『心』を、
『悔いさせない!』が故に、
『観法』を、
『容易に!』、
『受けることができ!』、
『婬欲のような!』、
諸の、
『煩悩の賊』を、
『破ることができる!』。
『人の死ぬ!』、
『初日』を観てみると、――
『訣別の言葉とともに!』、
『出た!』、
『息』が、
『反らなくなり!』、
『奄忽( 忽然)として!』、
已に、
『死んでいる!』。
『室家( 家族)』は、
『驚いて!』、
『泣いたり!』、
『叫んだりし!』、
『天』に、、
『呼びかけて!』、こう言う、――
お前は、
『息』が、
『弱ってきた!』が、
いったい、
何処へ、
『去ろうとしているのか?』、と。
『気息』が、
『滅する!』と、
『身』が、
『冷えてきて!』、
『覚識( 覚知)する!』所は、
何も、
『無い!』。
此れは、
『大いに!』、
『畏れられている!』が、
『免れられる!』、
『処』は、
『何処にも無い!』。
譬えば、
『劫尽』の、
『火に焼かれる!』と、
『遺脱( 遺漏逸脱)する!』所の、
『物』は、
『何も無いようなものである!』。
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辞訣(じけつ):いとまごい。わかれの言葉をのべる。辞決。
奄忽(えんこつ):<副詞>突然/急に/不意に (suddenly, quickly, all of a sudden)。<動詞>死去する (die)。
奄(えん):<副詞>突然に( suddenly )。<形容詞>気息の微弱な様子( the breath is dying out )。例:気息奄奄。
便(べん):すなわち。躊躇無く。拘りの無いさま。
室家(しっけ):室は婦、家は家人の意。
驚慟(きょうどう):驚いて大声でなく。
号哭(ごうこく):大声をあげてなく。
言説(ごんぜつ):いう。のべる。はなす。
爾(に):お前/なんじ/汝。
那(な):なに。どこ。何に同じ。
劫尽火(こうじんか):劫の尽きんとするとき自然に出づる火。
遺脱(いだつ):もれる。又漏れ落ちる。遺漏と脱落。 |
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如說
死至無貧富 無懃修善惡
無貴亦無賤 老少無免者
無祈請可救 亦無欺誑離
無捍挌得脫 一切無免處 |
説の如し、
死の至るに貧富無く、懃修する善悪も無く、
貴無く亦た賎無く、老少の免るる者無し。
祈請して救うべき無く、亦た欺誑して離るる無く、
捍挌して脱を得る無く、一切に免るる処無し。
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譬えば、
こう説く通りである、――
『死』の、
『至る!』のには、
『差別』が、
『無い!』、
『貧、富』や、
『懃修する善、悪』や、
『貴、賎』の、
『差別も無く!』、
『死は至る!』。
『老いたる!』者も、
『少( わか)い!』者も、
『死を免れる!』者は、
『無い!』。
『死』は、
『祈請して!』、
『救われた!』者も、
『無く!』、
『欺誑して!』、
『離れられた!』者も、
『無く!』、
『捍挌( 格闘)して!』、
『脱れられた!』者も、
『無い!』、
『一切に!』、
『免れる処』は、
『無いのだから!』。
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如(にょ):そこで。
懃修(ごんしゅ):ねんごろにおさめる。
祈請(きしょう):神仏にいのり請う。
欺誑(ごこう):だます。だまくらかす。
捍挌(かんかく):ふせぎはばむ。 |
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死法名為永離恩愛之處。一切有生之所惡者。雖甚惡之無得脫者。我身不久必當如是同於木石無所別知。 |
死法を名づけて、永く恩愛の処を離ると為すも、一切の有生の悪(にく)む所の者にして、甚だ之を悪むと雖も、脱れ得る者無し。我が身は、久しからずして、必ず当に是の如く、木石に同じく、別知する所無かるべし。 |
『死』という、
『法』は、
『恩愛の処』を、
『永く!』、
『離れることであり!』、
一切の、
『有生の者(衆生)』に、
『悪(にく)まれる者である!』。
『死』を、
『甚だ悪んでいても!』、
『脱れられた!』者は、
『無い!』。
わたしの、
『身』は、
『久しからずして!』、
『必ず!』、
是のように、
『木石と同じになり!』、
『別け知られる!』ことも、
『無くなるはずだ!』。
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恩愛(おんあい):互いに恩を施し愛著するの意。親子夫妻等の恋恋たる愛情を云う。「無量寿経巻下」に、「室家父子兄弟夫婦、一は死し一は生じ、更更相哀愍して恩愛思慕し、憂念結縛す」と云い、「円覚経」に、「一切衆生は無始際より種種の恩愛貪欲あるが故に輪迴あり」と云い、又「摩訶止観第四下」に、「色使に使われ、恩愛の奴となりて自在を得ず」と云える其の例なり。是れ恩愛が流転輪迴の原因をなすことを説けるものなり。<(望)
有生(うしょう):生を有するものの義。有情、衆生の意。生は生起の意。『大智度論巻21上注:生』参照。
生(しょう):梵語jaataの訳。又はjaati、巴梨語同じ。生起の意。十二因縁の一、具に生支と名づく。即ち過去の業力に由りて正しく当来の果を結するを云う。「大毘婆沙論巻23」に、「云何が生なる、謂わく即ち現在の識の位の未来時に在るを生の位と名づく」と云い、「倶舎論巻9」に、「是の業力に由り、此より捨命して正しく当有を結する、此の位を生と名づく」と云える是れなり。是れ説一切有部の分位縁起の説を挙げたるものにして、即ち託胎結生の一刹那の五蘊を生と名づけたるなり。又大乗唯識家に於いては、愛取有を能生支となすに対し、生を老死と共に所生支に摂し、且つ単に結生の一刹那に約せず広義に之を解せり。「成唯識論巻6」に、「中有より本有の中に至り、未だ衰変せざるより来た皆生支に摂す」と云えり。是れ生有の初より未だ衰老に至らざる間を通じて生支となすの意なり。又生は住相等と共に四相の一、本有等と共に四有の一、滅及び断常等と共に八計の一に数えらる。又「法蘊足論巻10」、「大毘婆沙論巻9」、「雑阿毘曇心論巻8」、「順正理論巻25」、「大乗阿毘達磨雑集論巻4」、「倶舎論光記巻9」、「成唯識論述記巻8本」等に出づ。<(望) |
参考:『出曜経巻8』:『人在世間遇諸苦惱。亦由恩愛不能捨離。是故説曰世苦無數端也。斯由念恩愛者。生死久長苦本難尋。愚者處中不自覺知。人相戀慕非徒一類。或念父母兄弟宗親知識。死者生者於中興念。追號啼哭。是故説曰。斯由念恩愛也。』
参考:『増壹阿含經卷第十一(一三)』:『聞如是。一時佛在舍衞國祇樹給孤獨園。爾時世尊告諸比丘。有此二法。不可敬待亦不足愛著。世人所捐棄。云何爲二法。怨憎共會。此不可敬待亦不足愛著。世人所捐棄。恩愛別離。不可敬待亦不足愛著。世人所捐棄。是謂比丘有此二法。世人所不喜不可敬待。比丘復有二法。世人所不棄。云何爲二法。怨憎別離世人之所。恩愛集一處甚可愛敬。世人之所喜。是謂比丘有此二法世人所喜。我今説此怨憎共會恩愛別離。復説怨憎別離恩愛共會。有何義有何縁。比丘報曰。世尊諸法之王。唯願世尊。與我等説。諸比丘聞已當共奉行。世尊告曰。諦聽善思念之。吾當爲汝分別説之。諸比丘。此二法由愛興由愛生。由愛成由愛起。當學除其愛不令使生。如是諸比丘當作是學。爾時諸比丘聞佛所説。歡喜奉行』 |
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我今不應貪著五欲不覺死至同於牛羊。牛羊禽獸雖見死者。跳騰哮吼不自覺悟。我既得人身識別好醜。當求甘露不死之法 |
我れは今、応に五欲に貪著して、死の至るを覚らざること、牛羊と同じかるべからず。牛羊、禽獣は、死者を見て、跳騰し、哮吼すと雖も、自ら覚悟せず。我れは既に人身を得て、好醜を識別せり、当に甘露の不死の法を求むべし。 |
わたしは、
今、
『五欲に貪著して!』、
『死』の、
『至る!』のを、
『覚らないような!』、
『牛羊』と、
『同じであってはならない!』。
『牛羊』や、
『禽獣』は、
『死者を見ても!』、
『跳騰し!』、
『哮吼するばかりで!』、
自らの、
『死』を、
『覚悟しない!』が、
わたしは、
既に、
『人身を得て!』、
『好、醜』を、
『識別することができる!』。
当然、
『不死の法』という、
『甘露』を、
『求めねばならない!』。
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跳騰(ちょうとう):おどりあがる。
哮吼(こうく):たけりほえる。 |
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如說
六情身完具 智鑒亦明利
而不求道法 唐受身智慧
禽獸亦皆知 欲樂以自恣
而不知方便 為道修善事
既已得人身 而但自放恣
不知修善行 與彼亦何異
三惡道眾生 不得修道業
已得此人身 當勉自益利 |
説の如し、
六情を身に完具し、智鑒も亦た明利なるも、
道法を求めざれば、唐しく身と智慧を受くるのみ。
禽獣も亦た皆知る、欲楽を以って自ら恣にするを、
而も方便して、道の為めに善事を修するを知らず。
既已に人身を得たるに、而も但だ自ら放恣して、
善行を修するを知らざれば、彼と亦た何んが異らん。
三悪道の衆生は、道業を修するを得ず、
已に此の人身を得たれば、当に勉めて自ら益利すべし。
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例えば、こう説く通りである、――
『六情( 眼耳鼻舌身意)』を、
完全に、
『身に具( そな)え!』、
『智鑑(智慧)』も、
『明利なのに!』、
而も、
『道法を求めなければ!』、
『智慧や身を受けた!』ことが、
『無駄になる!』。
『禽獣』も、
皆、
自ら、
『欲の楽』を、
『恣(ほしいまま)にする!』ことなら、
『知っている!』が、
而し、
『方便して!』、
『道の為めに!』、
『善事を修める!』ことは、
『知らない!』。
『人身』を、
既に、
『得たというのに!』、
自らを、
『放任して!』、
『恣にする!』だけで、
『善行』を、
『修める!』ことを、
『知らなければ!』、
彼の、
『三悪道』の、
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完具(かんぐ):完全にそなわる。欠けた所がない。
智鑒(ちかん):さとくてよく物事をみわける力のあること。智鑑。
明利(みょうり):聡明で鋭利なこと。
唐(とう):むなしい。いたずらに。
恣(し):ほしいまま。
放恣(ほうし):ほしいまま。きまま。
益利(やくり):利得をふやす。利益。 |
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行者到死屍邊。見死屍膖脹。如韋囊盛風。異於本相心生厭畏。我身亦當如是未脫此法。身中主識役御此身。視聽言語作罪作福。以此自貴為何所趣。而今但見空舍在此。是身好相細腰姝媚長眼直鼻平額高眉。如是等好令人心惑。今但見膖脹好在何處。男女之相亦不可識。作此觀已呵著欲心。此臭屎囊膖脹可惡何足貪著。 |
行者は、死屍の辺に到りて、死屍の膖脹せるを見るに、韋嚢の風を盛るが如く、本相に異なれば、心に厭畏を生ずらく、『我が身も亦た当に是の如くなるべきも、未だ此の法を脱れず。身中の主たる識は、此の身を役御して、視聴し、言語して罪を作り、福を作り、此を以って自らを貴ぶも、何をか趣く所と為さんや。而も今は、但だ空舎の此に在るを見る。是の身の好相は細き腰、姝媚、長眼、直鼻、平額、高眉なり。是れ等の如き好もて、人心をして惑わしむれど、今は但だ膖脹を見るのみ。好は何処にか在らん。男女の相も亦た識るべからず』、と。此の観を作し已りて、著欲の心を呵すらく、『此の臭き屎嚢の膖脹せる、悪むべし、何ぞ貪著するに足らん』、と。 |
『行者』は、
『死屍の辺に到り!』、
『死屍』を、
『見る!』と、
『膖脹して!』、
『韋嚢( 皮袋)』に、
『風』を、
『盛ったようであり!』、
『本』の、
『相』と、
『異なっている!』。
『心』に、
『厭畏を生じて!』、こう言う、――
わたしの、
『身』も、
『是の通りだ!』が、
未だに、
此の、
『法(死法)』を、
『脱れていない!』。
『身』中の、
『主である!』、
『識』は、
此の、
『身』を、
『使役し!』、
『制御して!』、
『視聴し!』、
『言語して!』、
『罪、福』を、
『作りながら!』、
此の、
『身』を以って、
『自らを!』、
『貴んでいる!』が、
いったい、
『何処へ!』、
『趣こうとしているのか?』。
而も、
今は、
但だ、
『空舎』が、
此( ここ)に、
『在る!』のを、
『見るだけだ!』。
是の、
『身』の、
『好相』は、
『細い腰や!』、
『美貌や!』、
『切れ長の眼や!』、
『まっすぐな鼻や!』、
『広い額や!』、
『高い眉であった!』が、
是れ等の、
『好相』を以って、
今は、
彼の、
『好相』は、
いったい、
『何処に!』、
『在るのか?』。
『男か?』、
『女か?』の、
『相すら!』、
『見分けられないのに!』、と。
此れを、
『観てしまう!』と、
『著欲の心』を、こう呵りつける、――
此の、
『臭い!』、
『膖脹した!』、
『屎嚢(糞袋)』は、
『憎悪すべきだ!』。
何うして、
『貪著する!』に、
『足ろうか?』、と。
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死屍(しし):しかばね。死体。
膖脹(ほうちょう):むくんでふくれる。はらがふくれる。
韋嚢(いのう):なめしがわのふくろ。
厭畏(えんい):いといおそれる。
役御(やくご):めしつかう。
空舎(くうしゃ):あきいえ。
好相(こうそう):好ましい容貌。
細腰(さいよう):ほそいこし。
姝媚(しゅみ):みめよく、なまめかしいさま。媚態。
姝(しゅ):<形容詞>[本義]好美な/美しい( beautiful )。<名詞>美女( beauty )。
媚(み):<動詞>[本義]愛/喜愛する( love )、褒めそやす/おもねる/ごまをする/偏愛する( fawn on, flatter, toady,
favor with )。<形容詞>愛らしい/魅惑的な( charming, enchanting, fascinating )。
長眼(ちょうげん):切れ長の眼。
直鼻(じきび):まっすぐな鼻。
平額(ひょうがく):たいらなひたい。
高眉(こうみ):ゆみなりのたかいまゆ。
好(こう):好もしいところ。
屎嚢(しのう):くそぶくろ。 |
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死屍風熱轉大裂壞在地。五藏屎尿膿血流出 |
死屍は、風に熱せられて、転た大となり、裂壊して地に在り、五蔵より屎尿、膿血流出す。 |
『死屍』は、
『風に熱せられて!』、
『次第に!』、
『大きくなり!』、
『破裂して!』、
『地』に、
『横たわり!』、
『五蔵より!』、
『屎尿、膿血』が、
『流れ!』、
『出て!』、
やがて、
『悪露』が、
『現われる!』。
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裂壊(れつえ):破裂してこわれる。 |
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惡露已現。行者取是壞相以況己身。我亦如是皆有是物與此何異。我為甚惑為此屎囊薄皮所誑。如燈蛾投火。但貪明色不知燒身。已見裂壞男女相滅。我所著者亦皆如是。 |
悪露の已に現るるに、行者は是の壊相を取りて、以って己が身に況(くら)ぶらく、『我れも亦た是の如く、皆是の物有り。此れと何ぞ異ならんや。我れは甚だ惑わされて、此の屎嚢、薄皮に誑されたり。灯蛾の火に投ずるが如く、但だ明色を貪りて、身を焼くことを知らず』、と。裂壊せるを見已るに、男女の相滅すらく、『我が著する所の者も、亦た皆是の如し』、と。 |
『悪露が現われる!』と、
『行者』は、
是の、
『壊相を取り!』、
『己の身』に、
『見較べて!』、こう言う、――
わたしも、
亦た、
『是の通りだ!』。
わたしにも、
是の、
『物』は、
『皆、有るのだ!』。
此れと、
何が、
『異なるのか?』。
わたしは、
『甚だ!』、
『惑わされていた!』。
此の、
『屎嚢や!』、
『薄皮』の為に、
『誑(たぶらか)されていたのだ!』。
譬えば、
但だ、
『明るい!』、
『色を貪るばかりで!』、
『身を焼いている!』のを、
『知らなかったのだ!』、と。
是のように、
『裂壊の相』を、
『見てしまう!』と、
『男、女の相』も、
『滅してしまい!』、
こう言う、――
わたしが、
『著する!』所とは、
皆、
『是の通りだ!』、と。
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悪露(あくろ):身体の不浄の津液。即ち膿、血、屎、尿の類。悪は憎厭、露は津液の意。
灯蛾(とうが):ともしびに集まる蛾の意。
明色(みょうしき):明るい色。 |
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死屍已壞肉血塗漫。或見杖楚死者青瘀黃赤。或日曝瘀黑。具取是相觀。所著者若赤白之色淨潔端正與此何異。既見青瘀黃赤鳥獸不食。不埋不藏不久膿爛種種虫生。 |
死屍は已に壊れ、肉は血に塗漫す。或は杖楚に死する者を見れば、青瘀、黄、赤なり。或は日に曝されて瘀、黒なり。具(つぶさ)に是の相を取りて、所著の者を観れば、若しは赤、白の色にして、浄潔、端正も、此れと何ぞ異ならん。既に青瘀、黄、赤の鳥獣に食われず、埋められず、蔵せられざるを見れば、久しからずして膿爛し、種種の虫を生ぜん。 |
『死屍』が、
『破裂する!』と、
或は、
『杖楚( 鞭打ちの刑罰)に死んだ!』者ならば、
『青( 青痣)』や
『瘀( 黒ずみ)』や、
『黄( 脂肪)』や、
『赤( 裂肉)』が、
『見えるだろう!』。
或は、
是の、
『相』を、
『具( つぶさ)に!』、
『取って!』、
『観察すれば!』、
『貪著していた!』所は、
此れは、
『浄潔』や、
『端正』と、
『何が!』、
『異なっているのか?』。
既に、
『青、瘀、黄、赤』が、
『鳥獣に食われず!』、
『地中に埋蔵されない!』のを、
『見てしまった!』が、
『久しからず!』、
『膿爛して!』、
『種種の虫』を、
『生じることだろう!』。
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塗漫(づまん):ぬりこめる。まみれる。
見(けん):る。らる。受け身を表す。
杖楚(じょうそ):むちうつ。
瘀(お):血がとどこおること。古い血。
青瘀(しょうお):鬱血して青い。
膿爛(のうらん):うみただれる。 |
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行者見已念此死屍本有好色。好香塗身衣以上服飾以華綵。今但臭壞膿爛塗染。此是其實分。先所飾綵皆是假借。 |
行者は、見已りて、念ずらく、『此の死屍は、本好色有り、好香を身に塗り、衣は上服を以ってし、飾は華綵を以ってしたるも、今は但だ臭く壊れて、膿爛塗染するのみ。此れは是れ其の実分なり。先に飾せる所の綵は、皆是れ仮借なり』、と。 |
『行者』は、
『見てしまう!』と、こう念じる、――
此の、
『死屍』は、
本、
『好色が有り!』、
『好香』を、
『身』に、
『塗って!』、
『衣』には、
『上服』を、
『用い!』、
『装飾』には、
『華綵』を、
『用いていた!』が、
今は、
此れが、
是の、
先に、
『身』を、
『飾っていた!』、
『綵(彩絹)』は、
皆、
『仮借(借り物)だったのだ!』、と。
|
好色(こうしき):このもしい肉体。
上服(じょうふく):上等の衣服。
華綵(けさい):花の模様のあやぎぬ。
綵(さい):模様のあるあやぎぬ。
臭壊(しゅうえ):臭くなって壊れる。腐敗。
塗染(づせん):ぬりそめる。
仮借(けしゃく):人の物をかりる。借り物。 |
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若不燒不埋棄之曠野。為鳥獸所食。烏挑其眼狗分手腳。虎狼刳腹分掣爴裂。殘藉在地 |
若し焼かず、埋めずして、之を曠野に棄つれば、鳥獣の食う所と為りて、烏、其の眼を挑り、狗、手脚を分け、虎狼、腹を剔り、分け掣いて爴裂すれば、残藉地に在り。 |
若し、
『焼くこともなく!』、
『埋めることもなく!』、
『鳥獣に食われて!』、
『烏』が、
『眼』を、
『挑(えぐ)り!』、
『狗』が、
『手、脚』を、
『分け!』、
『虎狼』が、
『腹を刳って!』、
『分けて!』、
『引っ張り!』、
『爪』で、
『掴(つか)んで!』、
『引き裂き!』、
『狼藉』の、
|
挑(ちょう):うがつ。えぐる。
刳(く):さく。
掣(せい):ひく。
爴(かく):つめでつかむ。
残藉(ざんしゃく):残は毀壊、破壊の義、藉は践蹈、陵辱の義。壊してまき散らす。 |
|
|
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有盡不盡。行者見已心生厭想。思惟此屍未壞之時人所著處。而今壞敗無復本相但見殘藉。鳥獸食處甚可惡畏。 |
尽くると、尽きざると有るに、行者は見已りて、心に厭想を生じて、思惟すらく、『此の屍は、未だ壊れざる時には、人の所著の処なるも、今は壊敗して、本相に復する無し、但だ残藉を見るのみ。鳥獣の食う処は、甚だ悪畏すべし』、と。 |
『尽きた!』者も、
『尽きない!』者も、
『有る!』が、
『行者』は、
『見てしまう!』と、
『心』に、
『厭想』を、
『生じて!』、
こう思惟する、――
此の、
『屍体』は、
未だ、
今は、
『壊敗して!』、
但だ、
『鳥獣』に、
『食われる!』、
『処』は、
甚だ、
『憎悪すべきであり!』、
『畏怖すべきである!』、と。
|
壊敗(えはい):こわれる。くさる。 |
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|
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鳥獸已去風日飄曝。筋斷骨離各各異處。 |
鳥獣已に去りて、風日飄曝すれば、筋断じて骨離れ、各各処を異にす。 |
『鳥獣』が、
『去ってしまい!』、
『風、日』に、
『飄曝される!』と、
『筋が断ちきれ!』て、
『骨』が、
『離れ!』、
各各が、
『処』を、
『異にすることになる!』。
|
飄曝(ひょうばく):風がさらすと、日がさらすと。 |
|
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行者思惟本見身法和合而有身相。男女皆可分別。今已離散各在異處。和合法滅身相亦無皆異於本。所可愛著今在何處。 |
行者の思惟すらく、『本は身法の和合を見るに、身相有り、男女は皆分別すべし。今は已に離散して、各異処に在れば、和合の法滅して、身相も亦た無く、皆本と異なる。愛著すべき所は、今何処にか在る』、と。 |
『行者』は、こう思惟する、――
本、
『身』という、
『法』の、
『和合』が、
『見えて!』、
『身』という、
『相』が、
『有った!』ので、
『男でも!』、
『女でも!』、
皆、
『分別できた!』が、
今は、
已に、
『離散してしまい!』、
各は、
『異なる処』に、
『在る!』。
『和合した!』、
『法が滅すれば!』、
『身相』も、
『無くなり!』、
皆、
『本』と、
『異なってしまった!』。
本、
|
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身既離散處處白骨。鳥獸食已唯有骨在。觀是骨人是為骨相。骨相有二種。一者骨人筋骨相連。二者骨節分離。筋骨相連破男女長短好色細滑之相。骨節分離破眾生根本實相。 |
身は既に離散して、処処の白骨あり。鳥獣食い已りて、但だ骨の在る有り。是の骨人を観る、是れを骨相と為す。骨相には二種有り、一には骨人の筋骨相連なる。二には骨節分離す。筋骨相連なれば、男女、長短、好色、細滑の相を破る。骨節分離すれば、衆生の根本の実相を破る。 |
『身』は、
既に、
『離散した!』が、
『処処』に、
『白骨がある!』。
『鳥獣』が、
『食ってしまえば!』、
唯だ、
『骨だけ!』が、
『残ることになる!』。
是の、
『骨人』を、
『観る!』こと、
是れが、
『骨相である!』。
『骨相』には、
『二種有り!』、
一には、
『筋、骨』の、
『連なった!』、
『骨人であり!』、
二には、
『骨、節』が、
『分離して!』、
『骨人ではない!』。
『筋、骨』が、
『連なっていても!』、
『男女、長短、好色、細滑の相』は、
『破れており!』、
『骨、節』が、
『分離していれば!』、
『衆生』という、
『根本の実相』が、
『破れている!』。
|
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復有二種。一者淨二者不淨。淨者久骨白淨無血無膩色如白雪。不淨者餘血塗染膩膏未盡。 |
復た二種有り、一には浄、二には不浄なり。浄の者は久骨の白浄、無血、無膩にして、色は白雪の如し。不浄の者は、余の血に塗染され、膩膏未だ尽きず。 |
復た、
『二種有り!』、
一には、
『浄であり!』、
二には、
『不浄である!』。
『浄の者』は、
『久骨( 古骨)である!』が故に、
『白浄であり!』、
『血、膩(脂肪)が無く!』、
『白雪のような色である!』。
『不浄の者』は、
『余の者であり!』、
『血に塗染され!』、
『膩膏(脂肪)も尽きていない!』。
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久骨(くこつ):時を経た骨。古い骨。
膩(に):あぶら。にじみ出たあぶら。脂垢。
膏(こう):あぶら。あぶらみ。 |
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行者到屍林中。或見積多草木焚燒死屍。腹破眼出皮色燋黑甚可惡畏。須臾之間變為灰燼。行者取是燒相思惟。此身未死之前。沐浴香華五欲自恣。今為火燒甚於兵刃。此屍初死形猶似人。火燒須臾本相都失。一切有身皆歸無常我亦如是。 |
行者は屍林中に到りて、或は多くの草木を積みて、死屍を焚焼するを見るに、腹破れて眼出で、皮色燋げて黒ずみ、甚だ悪畏すべし。須臾の間に変じて灰燼と為る。行者は是の焼相を取りて思惟すらく、『此の身は、未だ死せざる前は、沐浴、華香もて五欲を自ら恣にせるも、今は火に焼かるれば、兵刃よりも甚だし。此の屍、初めて死するに、形は猶お人に似たり。火に焼かるれば、須臾にして本相を都(みな)失う。一切の有身は、皆無常に帰す。我れも亦た是の如し』、と。 |
『行者』は、
『屍林中に到り!』、
或は、
『草木』を、
『多く!』、
『積んで!』、
『死屍』を、
『焚焼する!』のを、
『見る!』が、
『腹は破れ!』、
『眼は出て!』、
『皮膚の色』は、
『燋げて!』、
『黒ずみ!』、
甚だ、
『憎悪すべく!』、
『畏怖すべきである!』が、
『須臾の間』に、
『灰燼』に、
『為ってしまう!』。
『行者』は、
是の、
『焼相』を、
『取って!』、
こう思惟する、――
此の、
『身』は、
『死ぬ前には!』、
『沐浴』や、
『華香』で、
今、
『火に焼かれて!』、
『兵刃よりも!』、
『損壊』が、
『甚だしい!』。
此の、
『屍』も、
『死んだばかり!』には、
『火に焼かれれば!』、
『須臾の間』に、
『本の相』を、
『都(みな)失ってしまった!』。
一切の、
『身の有る!』者は、
皆、
『無常』に、
『帰するのだ!』。
わたしも、
亦た、
『是の通りなのだ!』、と。
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屍林(しりん):又、屍陀林、尸陀林と称す。王舎城附近の森林の名にして、古くより死屍を棄てし処の称。『大智度論巻21上:尸陀林』参照。
屍陀林(しだりん):又、尸陀林と称す。古、死屍を棄てし林の名。『大智度論巻21上注:尸陀林』参照。
尸陀林(しだりん):尸陀ziitaは梵名。林は梵語vanaの訳。巴梨名siita- vana、又尸多婆那、尸陀伐那、尸摩賒那、或いは屍陀林に作り、又寒林とも云う。王舎城附近の森林の名。幽邃にして寒く、且つ死尸を棄つる処なるが故に此の称あり。「雑阿含経巻22」に、「仏は王舎城寒林中の丘塚の間に住す」と云い、「大般涅槃経巻33」に、「死し已りて食吐鬼の中に生ずれば、其の同学の輩は当に其の尸を舁きて寒林中に置く」と云い、又「大智度論巻3」に、「復た次ぎに王舎城の南屍陀林中に諸の死人多し。諸の鷲常に来たりて之を噉う」と云える是れなり。又「大唐西域記巻9」に、「大王は徳化邕穆にして、政教明察なるも、今茲に細民謹まずして此の火災を致す。宜しく厳科を制して以って後犯を清くすべし。若し火起ることあらば先づ発する処を窮究し、其の首悪を罰して之を寒林に遷せ。寒林は屍を棄つる所にして、俗に不祥の地と謂い、人の遊往の迹を絶つ。彼に遷さしめば夫れ屍を棄つるに同じ。既に陋居を恥じて当に自ら謹護すべし」と云い、又「玄応音義巻18」に、「尸陀林は正しく尸多婆那と言う、此に寒林と云う。其の林幽邃にして且つ寒く、因って以って名づくるなり。王舎城の側に在り、死人多く其の中に送らる。今摠じて棄屍の処を指して尸陀林と名づくるは彼の名を取れるなり」と云えり。又「雑阿含経巻39」、「別訳雑阿含経巻2」、「入楞伽経巻8」、「大寒林聖難拏陀羅尼経」、「五分律巻21」、「摩訶僧祇律巻23」、「四分律巻38」、「十誦律巻34」、「立世阿毘曇論巻1六大国品」、「高僧法顕伝」、「玄応音義巻7」、「翻訳名義集巻7」等に出づ。<(望)
焚焼(ぼんしょう):勢いよくやく。
灰燼(かいじん):灰と燃えさし。
兵刃(ひょうじん):戦にもちいるはもの。刀剣。
有身(うしん):身を有するものの意。 |
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是九相斷諸煩惱。於滅婬欲最勝。為滅婬欲故說是九相。 |
是の九相は、諸の煩悩を断つも、婬欲を滅するに於いて最勝なれば、婬欲を滅せんが為の故に、是の九相を説けり。 |
是の、
『九相』は、
諸の、
『煩悩』を、
『断つ!』が、
『婬欲』を、
『滅する!』ことに於いて、
『最勝であり!』、
『婬欲』を、
|
|
|
|
|
問曰。無常等十想為滅何事故說。 |
問うて曰く、無常等の十想は、何事を滅せんが為の故に説く。 |
問い、
『無常等の十想』は、
何のような、
『事』を、
『滅する!』為の故に、
『説かれたのですか?』。
|
十想(じゅうそう):十種の熟考( ten kinds of contemplations )、梵語 daSa- saMjJaa の訳。
- 無常想:無常に関する熟考( The contemplation of impermanence )、
- 苦想:苦に関する熟考( The contemplation of suffering )、
- 無我想:無我( anaatman )に関する熟考( The contemplation of the lack of a self )、
- 食不浄想:食物の不浄に関する熟考( The contemplation of the impurity of what we eat )、
- 世間不可楽想:此の世間に於ける真の幸福は見出だしがたいことに関する熟考( The contemplation that it is impossible
to find true happiness in this world )、
- 死想:死に関する熟考( The contemplation of death )、
- 不浄想:我々の肉体の不浄に関する熟考( The contemplation of the impurity of our physical bodies )、
- 断想:婬欲及び妄想を断つことに関する熟考( The contemplation of severing passions and delusions )、
- 離想:欲望から自由になることに関する熟考( The contemplation of becoming free of desires )、
- 尽想:業縁を滅尽することに関する熟考( The contemplation of exhausting our karmic bonds )。
|
|
十想(じっそう):次のものを心の中に観察して思うこと。
(1)無常想:一切の物は因縁によって造られ、無常である。
(2)苦想:一切の物は無常であるが故に苦である。
(3)無我想:一切の物には不変の我はなく、無我である。
(4)食不淨想:食は不淨の因縁から生じる。殺生、偸盗によらない食はない。
(5)一切世間不可楽想:一切の世間に楽しむべきものは何物もない。
(6)死想:死とは何であるか。
(7)不淨想:肉体とは不淨である。
(8)断想:煩悩を断つとは何事であるか。
(9)離欲想:この世に思いを残さず。
(10)尽想:生死を尽くして涅槃に入る。 |
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答曰。亦為滅婬欲等三毒。 |
答えて曰く、亦た婬欲等の三毒を滅せんが為なり。 |
答え、
亦た、
『婬欲等の三毒』を、
『滅する!』為に、
『説かれた!』。
|
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問曰。若爾者二相有何等異。 |
問うて曰く、若し爾らば、二相には、何等の異か有る。 |
問い、
若し、そうならば、
『二相』には、
何のような、
『異(ちがい)』が、
『有るのですか?』。
|
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答曰。九相為遮未得禪定為婬欲所覆故。十想能除滅婬欲等三毒。九相如縛賊十想如斬殺。九相為初學。十想為成就。 |
答えて曰く、九相は未得の禅定の、婬欲の為に覆わるるを遮せんが為の故にして、十想は能く婬欲等の三毒を除滅す。九相は賊を縛するが如く、十想は斬殺するが如し。九相は初学の為にして、十想は成就せんが為なり。 |
答え、
『九相』は、
『未得の禅定』が、
『婬欲』に、
『覆われる!』のを、
『遮る為である!』が、
『十想』は、
『婬欲』等の、
『三毒』を、
『除いて!』、
『滅することができる!』。
『九相』は、
譬えば、
『賊』を、
『縛るようなものであり!』、
『十想』は、
譬えば、
『賊』を、
『斬殺するようなものである!』。
『九相』は、
『初学の為であり!』、
『十想』は、
『成就する為である!』。
|
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復次是十想中。不淨想攝九相。有人言。十想中不淨想食不淨想世間不可樂想。攝九相。 |
復た次ぎに、是の十想中の不浄想は、九相を摂す。有る人の言わく、『十想中の不浄想、食不浄想、世間不可楽想は九相を摂す』、と。 |
復た次ぎに、
是の、
『十想』中の、
『不浄想』には、
『九相』が、
『摂(おさ)められている!』。
有る人は、こう言っている、――
『十想』中の、
『不浄想』、
『食不浄想』、
『世間不可楽想』に、
『九相』を、
『摂める!』、と。
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復有人言。十想九相同為離欲俱為涅槃。 |
復た有る人の言わく、『十想と九相とは、同じく離欲の為にして、倶に涅槃の為なり』、と。 |
復た、
有る人は、こう言っている、――
『十想』と、
『九相』とは、
『同じく!』、
『離欲の為であり!』、
亦た、
『倶(とも)に!』、
『涅槃の為である!』、と。
|
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所以者何。初死相動轉言語須臾之間忽然已死。身體膖脹爛壞分散各各變異是則無常。若著此法無常壞時是即為苦。若無常苦無得自在者。是則無我。不淨無常苦無我則不可樂。觀身如是。食雖在口腦涎流下與唾和合成味。而咽與吐無異下入腹中即是食不淨想。以此九相觀身無常變異。念念皆滅即是死想。以是九相厭世間樂。知煩惱斷則安隱寂滅即是斷想。以是九相遮諸煩惱即是離想。以是九相厭世間故。知此五眾滅。更不復生是處安隱。即是盡想。 |
所以は何んとなれば、初めて死せんとする相は、動転し、言語して須臾の間に忽然として已に死し、身体膖脹し、爛壊し、分散して各各変異すれば、是れ則ち無常なり。若し此の法に著すれば、無常に壊する時、是れ即ち苦と為り、若し無常、苦なれば、自在を得る者無し、是れ則ち無我なり。不浄、無常、苦、無我なれば、則ち不可楽なりと、身の是の如きを観る。食は、口に在りて、脳より涎流下し、唾と和合して味を成ずと雖も、而も咽(の)むと吐くと異無く、下りて腹中に入れば、即ち是れ食不浄想なり。此の九相を以って、身の無常を観ずれば、変異して念念に皆滅す、即ち是れ死想なり。是の九相を以って、世間の楽を厭い、煩悩断じて、則ち安隠、寂滅なるを知れば、即ち是れ断想なり。是の九相を以って諸の煩悩を遮すれば、即ち是れ離想なり。是の九相を以って、世間を厭うが故に、此の五衆滅すれば、更に復た生ぜずと知れば、是の処は安隠にして、即ち是れ尽想なり。 |
何故ならば、
初めて、
『死のうとする!』、
『相』は、――
『動転し!』、
『言語しながら!』、
『須臾の間』に、
『忽然として!』、
『死んでしまう!』が、
『身』が、
『膖脹し!』、
『爛壊し!』、
『分散して!』、
各各が、
『変異する!』ので、
則ち、
是れが、
『無常想である!』。
若し、
此の、
『法( 身)』に、
『著していた!』としても、
『無常』に、
『壊られれば!』、
是の時は、
『苦』と、
『為ることになる!』。
若し、
『無常、苦ならば!』、
『自在』を、
『得る!』者は、
『無い!』ので、
即ち、
是れは、
『無我である!』。
『不浄、無常、苦、無我ならば!』、
是のように、
『身を観たならば!』、
『口』中に、
『脳より!』、
『流下した!』、
『唾、涎』が、
『和合して!』、
『味』と、
『成るのである!』が、
而し、
『咽( の)みこむ!』者と、
『吐く!』者とには、
『異』が、
『無く!』、
『腹』中に、
『下って!』、
『入ることになる!』。
即ち、
是れが、
『食不浄想である!』。
此の、
『九相』を以って、
『身』の、
『無常』を、
『観れば!』、
是の、
『身』は、
『変異して!』、
『念念に皆滅する!』ので、
即ち、
是れが、
『死想である!』。
是の、
『九相』を以って、
『世間』の、
『楽』を、
『厭い!』、
『煩悩』が、
『断たれて!』、
則ち、
『安隠、寂滅である!』と、
『知れば!』、
即ち、
是れが、
『断想である!』。
是の、
『九相』を以って、
諸の、
『煩悩』を、
『遮れば!』、
即ち、
是れが、
『離想である!』。
是の、
『九相』を以って、
『世間を厭い!』、
此の、
『五衆』が、
『滅してしまい!』、
更に、
『復た、生じることはない!』と、
『知れば!』、
是の、
『処』は、
『安隠であり!』、
即ち、
是れが、
『尽想である!』。
|
動転(どうてん):みだれさわぐこと。
食(じき):くいもの。
脳涎(のうぜん):脳より流れ下るねばい汁の意。
流下(るげ):流れくだる。
咽(いん):のみこむ。嚥に同じ。
吐(と):はきだす。 |
|
|
|
復次九相為因。十想為果。是故先九相後十想。 |
復た次ぎに、九相を因と為し、十想を果と為せば、是の故に先に九相、後に十想なり。 |
復た次ぎに、
『九相』は、
『因であり!』、
『十想』は、
『果である!』ので、
是の故に、
『九相』が、
『先で!』、
『十想』は、
『後である!』。
|
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|
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復次九相為外門。十想為內門。是故經言。二為甘露門。一者不淨門。二者安那般那門。 |
復た次ぎに、九相を外門と為し、十想を内門と為す。是の故に経に言わく、『二は甘露門なり。一には不浄門、二には安那般那門なり』、と。 |
復た次ぎに、
『九相』は、
『外の門であり!』、
『十想』は、
『内の門であり!』、
是の故に、
『経』には、こう言われている、――
『二』は、
『甘露門である!』。
即ち、
一には、
『不浄の門であり!』、
二には、
『安那般那(数息観)の門である!』、と。
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安那般那(あんなはんな):梵語aana- apaana、数息と訳す。息の出入を数えて心を摂し、散乱せしめざる法。『大智度論巻17下注:数息観、巻11上注:十六特勝』参照。 |
参考:『出曜経巻17』:『出息入息念者。安者謂息入。般者謂息出。彼修行人當善觀察二甘露門。一者安般二者不淨觀。或有行人但修安般或修不淨觀。彼修安般者。思惟分別出息入息。息長亦知息短亦知息熅亦知息冷亦知。意若錯亂復從一始。從頭至足分別了知。設復錯者復從一始。如是經歷返覆數過自知意至。吾今捉息皆得自在。欲使氣息從左耳出如意不難從左耳入。亦復如是從右耳出入。或從鼻出入皆能隨意。最後迴息從頂上出隨意者成數息法。設不成者腦蓋發壞即取命終。如是學人經十二年。或有成有不成者。復次行人分別思惟不淨觀。往至城外丘曠[土*(蒙-
卄)]間。觀死人屍骸諦熟分別。此屍我形有何差別。復還至精舍或坐床或敷坐具。或復露坐內自思惟。經憶[土*(蒙- 卄)]間死屍暴露。我身與彼等無差別。如是經歷過十二年。有得定者不得定者。是故說出息入息念也。』 |
|
|
是九相除人七種染著。或有人染著色。若赤若白若赤白若黃若黑。或有人不著色但染著形容。細膚纖指修目高眉。或有人不著容色但染著威儀。進止坐起行住禮拜俯仰揚眉頓睫親近按摩。或有人不著容色威儀。但染著言語。軟聲美辭隨時而說。應意承旨能動人心。或有人不著容色威儀軟聲。但染著細滑柔膚軟肌。熱時身涼寒時體溫。或有人皆著五事。或有人都不著五事但染著人相。若男若女雖得上六種欲。不得所著之人猶無所解。捨世所重五種欲樂而隨其死。 |
是の九相は、人の七種の染著を除く。或は有る人は色の若しは赤、若しは白、若しは赤白、若しは黄、若しは黒に染著す。或は有る人は色に著せず、但だ形容の細膚、繊指、修目、高眉に染著す。或は有る人は容色に著せず、但だ威儀の進止、坐起、行住、礼拜、俯仰、揚眉、頓睫、親近、按摩に染著す。或は有る人は容色、威儀に著せず、但だ言語の軟声、美辞、随時に説いて、意に応じて旨を承け、能く人心を動かすに染著す。或は有る人は容色、意義、軟声に著せず、但だ細滑、柔膚、軟肌、熱時に身涼しく、寒時に体の温かきに染著す。或は有る人は五事に皆著す。或は有る人は五事に都著せず、但だ人相の若しは男、若しは女に染著して、上の六種の欲を得と雖も、所著の人を得ざれば、猶お解くる所無く、世に重んずる所の五種の欲楽を捨てて、其の死に随う。 |
是の、
『九相』は、
『人』の、
『七種の染著』を、
『除く!』。
或は、
有る人は、
『色』の、
『赤、白、赤白、黄、黒』に、
『染著する!』。
或は、
有る人は、
『色』には、
『著さない!』が、
但だ、
『細かい膚』や、
『繊細な指』や、
『長い目』や、
『高い眉』のような、
『形容』に、
『染著する!』。
或は、
有る人は、
『色、形容』には、
『著さない!』が、
但だ、
『進止、坐起、行住とか!』、
『礼拜、俯仰とか!』、
『眉を掲げたり!』、
『睫( まつげ)を瞬いたり!』、
『親しく近づいたり!』、
『按摩する!』ような、
『威儀』に、
『染著する!』。
或は、
有る人は、
『色、形容、威儀』には、
『著さない!』が、
但だ、
『軟らかい声とか!』、
『美しい言葉とか!』、
『時に随って説くこととか!』、
『意に応じて命令を承けることとか!』、
『人の心を動かすことができる!』というような、
『言語』に、
『染著する!』。
或は、
有る人は、
『色、形容、威儀、言語』には、
『著さない!』が、
但だ、
『柔らかい膚とか!』、
『軟らかい肌とか!』、
『暑い時に身が涼しいとか!』、
『寒い時に体が温かいとか!』というような、
『細滑である!』ことに、
『染著する!』。
或は、
或は、
有る人は、
『五事』には、
都(すべ)て、
『著さない!』が、
但だ、
『男とか!』、
『女とか!』の、
『人の相』に、
『染著し!』、
上の、
『六種』の、
『欲』を、
『得たとしても!』、
『著している!』所の、
『人』を、
『得られなければ!』、
猶お、
『心の解ける!』ことが、
『無く!』、
世に、
『重んじられる!』、
『五種の欲楽』を、
『捨てて!』、
其の、
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細膚(さいふ):きめの細かい皮膚。
繊指(せんし):ほそながい指。
修目(しゅもく):ながい眼。
高眉(こうみ):高く眉。
進止(しんし):進むと止まると。
坐起(ざき):坐ると起つと。
行住(ぎょうじゅう):行くと住まると。
礼拜(らいはい):神仏を拜すること。礼は敬意を表すること。拜は敬意を表する容。
俯仰(ふぎょう):下を見ると上を見る。身のこなし。
揚眉(ようみ):眉をあげる。眼をみはる。
頓睫(とんしょう):まつげをまたたかせる。
親近(しんごん):親しみ近づく。
按摩(あんま):手で身体をなでる。
軟声(なんしょう):やわらかい声。
美辞(みじ):美しいことば。
随意(ずいい):思い通りにすること。
承旨(じょうし):おおせをうけたまわる。
旨(し):<形容詞>[本義]美味な( delicious )、美事な( fine )。<名詞>美味な食品( delicious food )、意思/意義/目的( meaning, aim, purpose )、意図( intention )、命令( decree )。
細滑(さいかつ)きめこまかくなめらか。
柔膚(にゅうふ):やわらかな皮膚。膚は身体の表を被う皮。
軟肌(なんき):やわらかな肉。肌は皮膚に蔽われた肉。
解(げ):とける。結ぼった心がとける。医家では汗が出て病が治ることを解という。 |
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死相多除威儀語言愛。膖脹相壞相噉相散相多除形容愛。血塗相青瘀相膿爛相。多除色愛。骨相燒相多除細滑愛。九相除雜愛及所著人愛。噉相散相骨相偏除人愛。噉殘離散白骨中不見有人可著。 |
死相は、多く威儀、語言の愛を除き、膖脹相、壊相、噉相、散相は、多く形容の愛を除き、血塗相、青瘀相、膿爛相は、多く色の愛を除き、骨相、焼相は、多く細滑の愛を除き、九相は、雑愛、及び所著の人の愛を除き、噉相、散相、骨相は偏に人の愛を除き、噉残、離散、白骨中には、人の著すべき有るを見ず。 |
『死相』は、
『膖脹相、壊相、噉相、散相』は、
『血塗相、青瘀相、膿爛相』は、
『骨相、焼相』は、
『九相』は、
皆、
『雑愛』と、
『著する人の愛』とを、
『除き!』、
『噉相、散相、骨相』は、
『噉残( 噉)相、離散( 散)相、白骨( 骨)相』中には、
『著すことのできる!』ような、
『人が有る!』と、
『見ることがない!』。
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愛(あい):欲望、貪欲、婬欲の義。十二縁起の一。即ち「大毘婆沙論巻23」に、「已に食愛、婬愛、及び資具愛を起すと雖も、而も未だ此れが為に四方に追求して労倦を辞せざることあらず、是れ愛の位なり」と云えるものにして、欲するも未だ著するには至らざるの意なり。『大智度論巻17下注:愛、取』参照。
残(ざん):毀壊、破壊の義。 |
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以是九相觀離愛心。瞋癡亦微薄。不淨中淨顛倒。癡故著是身。 |
是の九相観を以って、愛心を離るれば、瞋、癡も亦た微薄なり。不浄中の浄顛倒は、癡故に是の身に著すればなり。 |
是の、
『九相の観』を以って、
『愛( 貪)』の、
『心』を、
『離れれば!』、
『瞋』と、
『癡』とも、
復た、
『微薄になる!』。
『不浄』中於いて、
『浄』に、
『顛倒する!』のは、
『癡』故に、
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今以是九相披析身內。見是身相癡心薄。癡心薄則貪欲薄。貪欲薄則瞋亦薄。 |
今、是の九相を以って身内を披析し、是の身相を見れば、癡心薄れ、癡心薄るれば、則ち貪欲薄れ、貪欲薄るれば、則ち瞋も亦た薄る。 |
今、
是の、
『九相』を以って、
是の、
『身相を見れば!』、
『癡心が薄れれば!』、
『貪欲が薄れれば!』、
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披析(ひしゃく):わけてさく。分析。 |
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所以者何。人以貪身故生瞋。今觀身不淨心厭故不復貪身。不貪身故不復生瞋。三毒薄故一切九十八使山皆動。漸漸增進其道。以金剛三昧摧碎結山。九相雖是不淨觀。依是能成大事。譬如大海中臭屍溺人依以得渡。 |
所以は何んとなれば、人は身を貪るを以っての故に瞋を生じ、今、身の不浄を観て、心に厭うが故に、復た身を貪らず。身を貪らざるが故に復た瞋を生ぜず。三毒薄るるが故に、一切の九十八使の山、皆動いて、漸漸に其の道を増進すれば、金剛三昧を以って、結の山を摧砕す。九相は、是れ不浄観と雖も、是れに依りて、能く大事を成ず。譬えば大海中の臭屍の、溺人依るを以って、度を得るが如し。 |
何故ならば、
『人』は、
『身を貪る!』が故に、
『瞋』を、
『生じる!』が、
今、
『身』の、
『不浄を観て!』、
『心』に、
『厭う!』が故に、
復た、
『身』を、
『貪ることはない!』。
『身を貪らない!』が故に、
『三毒の薄れる!』が故に、
一切の、
『九十八使』の、
『山』が、
『皆、動いて!』、
其の、
『道』を、
『次第に、増進することができ!』、
『金剛三昧』を以って、
『結使の山』を、
『摧砕する(打ち砕く)のである!』。
『九相』は、
『不浄の観ではあるが!』、
是の、
『不浄に依って!』、
『大事』を、
『成すことができる!』。
譬えば、
『大海』中の、
『臭い!』、
『屍であっても!』、
『溺れた人』は、
是の、
『屍に依る!』ことで、
『大海』を、
『渡ることができるようなものである!』。
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九十八使(くじゅうはっし):見惑八十八使、修惑十使の総称。『大智度論巻7上注:九十八随眠、巻14下注:九十八使』参照。
摧砕(ぜさい):くじきくだく。うちこわす。
金剛三昧(こんごうさんまい):行人が最後に一切の煩悩を打ち砕く三昧。金剛は帝釈、及び密迹力士所持の武器にして、能く山を摧くと云う。『大智度論巻4上注:金剛三昧、巻11上注:金剛』参照。 |
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問曰。是九相有何性何所緣何處攝。 |
問うて曰く、是の九相は、何の性有りて、何の所縁、何の処に摂するや。 |
問い、
是の、
『九相』は、
何のような、
『性』が、
『有り!』、
何を、
『縁じて!』、
何の、
『処』に、
『摂めるのですか?』。
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答曰。取相性緣。欲界身色想陰攝。亦身念處少分。或欲界攝。或初禪二禪四禪攝。未離欲散心人得欲界繫。離欲人心得色界繫。膖脹等八相。欲界初禪二禪中攝。淨骨相欲界初禪二禪四禪中攝。三禪中多樂故無是相。 |
答えて曰く、取相の性にして、欲界の身を縁じ、色、想陰に摂し、亦た身念処の少分なり。或は欲界に摂し、或は初禅、二禅、四禅に摂し、未だ離欲せざる散心の人は欲界繋を得、離欲の人は心に色界繋を得、膖脹等の八相は、欲界、初禅、二禅中に摂し、浄骨相は欲界、初禅、二禅、四禅中に摂し、三禅中には楽多きが故に、是の相無し。 |
答え、
『取相の性であり!』、
『欲界』の、
『身』を、
『縁じて!』、
『色、想』の、
『陰(蘊)』に、
『摂める!』。
亦た、
『身念処の少分であり!』、
或は、
『欲界』に、
『摂め!』、
或は、
『初禅、二禅、四禅』に、
『摂める!』。
未だ、
『離欲でない!』、
『散心の人』は、
『心』中に、
『欲界の繋(繋縛)』を、
『得て!』、
『離欲』の、
『人』は、
『心』に、
『色界の繋』を、
『得る!』。
『膖脹等の八相』は、
『欲界、初禅、二禅』中に、
『摂め!』、
『浄骨相』は、
『欲界、初禅、二禅、四禅』中に、
『摂める!』が、
『三禅』中は、
『楽が多い!』が故に、
是の、
『相』が、
『無い!』。
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参考:『衆事分阿毘曇論巻11』:『根者。謂二十二根。問此二十二根。幾色。幾非色。答七是色。十五非色。一切不可見。七有對。十五無對。十有漏。三無漏。九分別。意根。或有漏。或無漏。云何有漏。謂有漏意思惟相應意根。云何無漏。謂無漏意思惟相應意根。如意根。樂根喜根捨根信精進念定慧根亦如是。一切是有為。一有報。十一無報。十分別。意根。或有報。或無報。云何有報。謂不善善有漏意根。云何無報。謂無記無漏意根。如意根。樂根喜根捨根亦如是。苦根。或有報。或無報。云何有報。謂善不善苦根。云何無報。謂無記苦根。信精進念定慧根。若有漏。彼有報。若無漏。彼無報。一切從因緣生世所攝。七是色所攝。十五是名所攝。八是內入所攝。十一是外入所攝。三分別。未知當知根已知根無知根所攝心意識。是內入所攝。餘是外入所攝。一切是智知。十是斷智知。及斷三非斷智知。及不斷。九分別。九若有漏。彼斷智知。及斷。若無漏。非斷智知。及不斷。八應修八不應修。六分別。意根。或應修。或不應修。云何應修。謂善意根。云何不應修。謂不善無記意根。如意根樂根苦根喜根捨根亦如是。憂根或應修。或不應修。云何應修。謂善憂根。云何不應修。謂不善憂根。十六不穢污。六分別。意根。或穢污。或不穢污。云何穢污。謂隱沒。云何不穢污。謂不隱沒。如意根。樂根苦根喜根憂根捨根亦如是。一切是果。及有果。十五不受。七分別。眼根。或受。或不受。云何受。若自性受。云何不受。若非自性受。如眼根。耳根鼻根舌根身根男根女根亦如是。七四大造。十五非四大造。一切是有上。十是有。三非有。九分別。九若有漏。彼是有。若無漏。彼非有。八因不相應。十四因相應。或善處攝非根。作四句。善處攝非根者。謂善色陰想陰。根所不攝善行陰。及數滅。根攝非善處者。謂八根六根少分。善處攝亦根者。謂八根六根少分。非善處攝亦非根者。謂不善色陰想陰。根所不攝不善行陰。根所不攝無記色陰想陰。根所不攝無記行陰。及虛空非數滅。或不善處攝非根。作四句。不善處攝非根者。謂不善色陰想陰。根所不攝不善行陰。根攝非不善處者。謂十六根六根少分。不善處攝亦根攝者。謂六根少分。非不善處攝亦非根者。謂善色陰想陰。根所不攝善行陰。及數滅根所不攝無記色陰想陰。根所不攝無記行陰。及虛空非數滅。或無記處攝非根。作四句。無記處攝非根者。謂根所不攝無記色陰想陰。根所不攝無記行陰。虛空及非數滅。根攝非無記處者。謂九根及五根少分。無記處攝亦根者。謂八根及五根少分。非無記處攝亦非根者。謂善色陰想陰。根所不攝善行陰。及數滅。及不善色陰想陰。根所不攝不善行陰。漏處所不攝。或有漏處攝非根。作四句。有漏處攝非根者。謂根所不攝有漏色陰想陰。根所不攝有漏行陰。根攝非有漏處者。謂三根及九根少分。有漏處攝亦根者。謂十根及九根少分。非有漏處攝亦非根者。謂無漏色陰想陰。根所不攝無漏行陰。及無為。或無漏處攝非根。作四句。無漏處攝非根者。謂無漏色陰想陰根所不攝無漏行陰。及無為。根攝非無漏處者。謂十根及九根少分。無漏處攝亦根攝者。謂三根及九根少分。非無漏處攝亦非根者。謂根所不攝有漏色陰想陰。根所不攝有漏行陰』 |
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是九相是開身念處門。身念處開三念處門。是四念處開三十七品門三十七品開涅槃城門。入涅槃離一切憂惱諸苦。滅五陰因緣生故。受涅槃常樂。 |
是の九相は、是れ身念処の門を開き、身念処は三念処の門を開き、是の四念処は、三十七品の門を開き、三十七品は涅槃城の門を開き、涅槃に入りて、一切の憂悩と諸苦を離れ、五陰を滅する因縁の生ずるが故に、涅槃の常楽を受く。 |
是の、
是の、
『四念処』は、
『三十七品』は、
『涅槃に入って!』、
『五陰を滅する!』、
『因縁が生じる!』が故に、
『涅槃の常楽』を、
『受ける!』。
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四念処(しねんじょ):四種の念処の意。三十七菩提分法の一科。『大智度論巻15下注:四念処、巻17下注:三十七菩提分法』参照。
三十七品(さんじゅうしちほん):菩提に帰趣する三十七種の法を云う。『大智度論巻17下注:三十七菩提分法』参照。 |
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問曰。聲聞人如是觀心厭離。欲疾入涅槃。菩薩憐愍一切眾生。集一切佛法度一切眾生。不求疾入涅槃故觀是九相。云何不墮二乘證。 |
問うて曰く、声聞人は、是の如く観て、心に厭離し、疾かに涅槃に入らんと欲す。菩薩は一切の衆生を憐愍して、一切の仏法を集め、一切の衆生を度して、疾かに涅槃に入るを求めず。故に是の九相を観て、云何が二乗の証に堕ちざるや。 |
問い、
『声聞人』が、
『菩薩』は、
一切の、
『衆生』を、
『憐愍して!』、
一切の、
『仏法』を、
『集め!』、
一切の、
『衆生』を、
『度して!』、
疾かに、
『涅槃』に、
『入る!』ことを、
『求めない!』。
故に、
是の、
『菩薩』が、
『九相』を、
『観ても!』、
何故、
『二乗の証(涅槃)』に、
『堕ちないのですか?』。
|
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答曰。菩薩於眾生心生憐愍。知眾生以三毒因緣故。受今世後世身生苦痛。是三毒終不自滅。亦不可以餘理得滅。但觀所著內外身相。然後可除。以是故菩薩欲滅是婬欲毒故。觀是九相。 |
答えて曰く、菩薩は、衆生に於いて、心に憐愍を生じ、衆生の三毒の因縁を以っての故に、今世、後世の身、心に苦痛を受くるを知る。是の三毒は終に自ら滅せず、亦た余の理を以って、滅を得るべからず。但だ所著の内外の身相を観て、然る後に除くべし。是を以っての故に、菩薩は、是の婬欲の毒を滅せんと欲するが故に、是の九相を観る。 |
答え、
『菩薩』が、
『衆生』に於いて、
『衆生』が、
『三毒の因縁』の故に、
『今世、後世』の、
『身心に受ける!』、
『苦痛を知るからである!』。
是の、
『三毒』は、
自ら、
『滅することはなく!』、
亦た、
『他の道理』で、
『滅せられるものでもない!』。
但だ、
『著する!』所の、
『内、外の身相』を、
『観察して!』、
その後に、
『除くことができる!』ので、
是の故に、
『菩薩』は、
是の、
『婬欲の毒』を、
『滅しよう!』と、
『思い!』、
故に、
|
注:受今世後世身生苦痛を他本に従いて、受今世後世身心苦痛に改む。 |
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如人憐愍病者。合和諸藥以療之。菩薩亦如是。為著色眾生。說是青瘀相等。隨其所著分別諸相如先說。是為菩薩行九相觀 |
人の病者を憐愍して、諸薬を和合し、以って之を療するが如く、菩薩も亦た是の如く、色に著する衆生の為には、是の青瘀相等を説き、其の著する所に隨って、諸相を分別して、先の如く説く。是れを菩薩の行ずる九相観と為す。 |
譬えば、
『人』が、
『病者を憐愍して!』、
諸の、
『薬』を、
『和合し!』、
是の、
『薬』を以って、
『治療するように!』、
『菩薩』も、
是のように、
是の、
『青瘀相』等を、
『説いて!』、
其の、
『著する!』所に、
『随い!』、
諸の、
『相を分別して!』、
『先のように!』、
『説く!』。
是れが、
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復次菩薩。以大慈悲心行是九相作如是念。我未具足一切佛法不入涅槃。是為一法門。我不應住此一門。我當學一切法門。以是故菩薩行九相無所妨。 |
復た次ぎに、菩薩は、大慈悲の心を以って、是の九相を行じ、是の如き念を作さく、『我れは未だ一切の仏法を具足せざれば、涅槃に入らずして、是れを一法門と為すも、我れは応に此の一門に住すべからず。我れは当に一切の法門を学すべし』、と。是を以っての故に、菩薩は、九相を行ずるも、妨ぐる所無し。 |
復た次ぎに、
『菩薩』は、
『大慈悲の心』を以って、
是の、
『九相』を、
『行いながら!』、
是のような、
『念』を、
『作す!』、――
わたしは、
未だ、
一切の、
『仏法』を、
『具足していない!』。
わたしは、
『涅槃に入らずに!』、
是の、
『九相』を、
『一法門とする!』が、
此の、
『一門のみ!』に、
『住まるわけではない!』。
わたしは、
一切の、
『法門』を、
『学ばねばならぬのだ!』、と。
是の故に、
『菩薩』が、
『九相を行っても!』、
『妨げられる!』ことは、
『無い!』。
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菩薩行是九相。或時厭患心起。如是不淨身可惡可患。欲疾取涅槃。爾時菩薩作是念。十方諸佛說一切法相空。空中無無常。何況有不淨。但為破淨顛倒故習此不淨。是不淨皆從因緣和合生。無有自性皆歸空相。我今不應取是因緣和合生。無自性不淨法。欲疾入涅槃。 |
菩薩は、是の九相を行ずるに、或は時に、厭患の心起こり、『是の如き不浄の身は、悪むべし、患うべし』と、疾かに涅槃を取らんと欲す。爾の時、菩薩は是の念を作さく、『十方の諸仏の説きたまわく、一切の法相は空なり、と。空中には無常無く、何に況んや不浄有るをや。但だ浄顛倒を破せんが為の故に、此の不浄を習う。是の不浄は、皆因縁和合より生ずれば、自性有ること無く、皆空相に帰す。我れは今、応に此の因縁和合の生にして無自性なる、不浄の法を取りて、疾かに涅槃に入るを欲すべからず』、と。 |
『菩薩』は、
是の、
『九相を行いながら!』、
或は、
時に、
『厭患の心が起きる!』、――
是のような、
『不浄の身』は、
『悪らしく!』、
『患わしい!』、
疾かに、
『涅槃を取ろう!』と、
『思う!』、と。
爾の時、
『菩薩』は、
是の念を作す、――
『十方の諸仏』は、こう説かれた、――
『空』中には、
『無常すら!』、
『無い!』、
況( ま)して、
『不浄など!』が、
『有るはずがない!』。
但だ、
『浄という!』、
『顛倒』を、
『破る!』為の故に、
此の、
『不浄』を、
『習うだけだ!』。
此の、
『不浄』は、
皆、
『因縁の和合』より、
『生じており!』、
『自性』が、
『無い!』。
皆、
『空相』に、
『帰着するのだ!』。
わたしは、
今、
是の、
『因縁』の、
『和合して!』、
『生じた!』、
『自性の無い!』、
『不浄の法』を、
『取って(執著して)!』、
疾かに、
『涅槃に入ろう!』と、
『思ってはならない!』、と。
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經中亦有是說。若色中無味相。眾生不應著色。以色中有味故眾生起著。若色無過罪。眾生亦無厭色者。以色實有過惡故觀色則厭。若色中無出相。眾生亦不能於色得脫。以色有出相故。眾生於色得解脫。味是淨相因緣故。以是故菩薩不於不淨中沒早取涅槃。九相義分別竟 |
経中にも、亦た是の説有り、『若し色中に、味相無くんば、衆生は応に色に著すべからず。色中に味有るを以っての故に、衆生は著を起す。若し色に過罪無くんば、衆生も亦た色を厭う者無けん。色には実に過悪有るを以っての故に、色を観れば、則ち厭うなり。若し色中に、出相無くんば、衆生も亦た色に於いて、脱を得る能わざらん。色に出相有るを以っての故に、衆生は色に於いて解脱を得。味は是れ浄相の因縁なるが故なり。是を以っての故に、菩薩は不浄中に於いて、没して早く涅槃を取らず。九相の義を分別し竟る。 |
『経』中にも、
是の説が有る、――
若し、
『色』中に、
『味相(美点)』が、
『無ければ!』、
『衆生』が、
『色』に、
『著するはずがない!』。
即ち、
『色』中に、
『味』が、
『有る!』が故に、
『衆生』は、
『著』を、
『起すのである!』。
若し、
『色』中に、
『過罪』が、
『無ければ!』、
『色を厭う!』、
『衆生』も、
『無いだろう!』。
即ち、
『色』中には、
『実に!』、
『過悪が有る!』が故に、
『色を観て!』、
『厭心』を、
『生じるのである!』。
若し、
『色』中に、
『出離の相』が、
『無ければ!』、
『解脱を得る!』、
『衆生』も、
『無いだろう!』。
即ち、
『色』中に、
『出離の相』が、
『有る!』が故に、
『衆生』は、
『色』を、
『解脱できる!』、
『色』中の、
『味』が、
『浄相の因縁だからである!』。
是の故に、
『菩薩』は、
『不浄』中に、
『没しながら!』、
『早く!』、
『涅槃』を、
『取らないのである!』。
以上、――
『九相の義』を、
『分別し竟った!』。
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味(み):◯梵語 rasa の訳、味/味境/五境の一( Taste; one of the five sensory objects )。◯梵語 aasvaada の訳、[時として隠喩的に]美味そうに食うこと/味わうこと/楽しむこと( eating with a relish, tasting, enjoying (also metaphorically) )、味/滋味/風味/美味( flavor, taste )。◯梵語 vyaJjana の訳、明示/明白なしるし( manifestation )、「成実論巻6」に、「又説きたまわく、何等か色中の味と為す。謂わゆる色に因りて能く喜楽を生ず」と云うが如し。 |
参考:『雑阿含巻3第66経』:『如是我聞。一時。佛住舍衛國祇樹給孤獨園。爾時。世尊告諸比丘。常當修習方便禪思。內寂其心。所以者何。修習方便禪思。內寂其心已。如實觀察。云何如實觀察。如實觀察此色.此色集.此色滅。此受.想.行.識。此識集.此識滅。云何色集。云何受.想.行.識集。比丘。愚癡無聞凡夫不如實觀察色集.色味.色患.色離故。樂彼色。讚歎愛著。於未來世色復生。受.想.行.識亦如是廣說。彼色生。受.想.行.識生已。不解脫於色。不解脫於受.想.行.識。我說彼不解脫生.老.病.死.憂.悲.惱苦。純大苦聚。是名色集。受.想.行.識集。云何色滅。受.想.行.識滅。多聞聖弟子如實觀察色集.色滅.色味.色患.色離。如實知。如實知故。不樂於色。不讚歎色。不樂著色。亦不生未來色。受.想.行.識亦如是廣說。色不生。受.想.行.識不生故。於色得解脫。於受.想.行.識得解脫。我說彼解脫生.老.病.死.憂.悲.惱苦聚。是名色滅。受.想.行.識滅。是故。比丘。常當修習方便禪思。內寂其心。精勤方便。如實觀察。佛說此經已。諸比丘聞佛所說。歡喜奉行』
参考:『成実論巻6』:『苦諦聚受論中受相品第七十八 問曰云何為受。答曰。苦樂不苦不樂。問曰。何謂為苦。何謂為樂。云何名為不苦不樂。答曰。若增益身心是名為樂損減身心是名為苦。與二相違名不苦不樂。問曰。此三受無決定相。所以者何。如即一事。或增身心。或為損減。或俱相違。答曰。是緣不定非受不定。所以者何。如即一火。或時生樂或時生苦。或時能生不苦不樂。從緣生受是則決定。即此一事以隨時故。或為樂因或為苦因。或為不苦不樂因。問曰。以何時故此緣能為苦樂等因。答曰。隨能遮苦。於是時中則生樂相。如人為寒所惱。爾時熱觸能生樂相。問曰。是熱觸過增還能為苦。非復是樂。故知樂受亦無。答曰。世俗名相故有樂受。非真實義。隨是人喜熱觸時亦為增益。又遮先苦。爾時是中則生樂相。若離先苦。是熱觸則不能為樂。故非實有。問曰。汝言但以名相故有樂者。是事不然。所以者何。經中佛自說三受。若實無樂。云何說三。又說色若定苦眾生於中不生貪著。又說何等為色中味。所謂因色能生喜樂。又說樂受生時樂。住時樂。壞時苦。苦受生時苦。住時苦。壞時樂。不苦不樂受不知苦不知樂。又樂受是福報。苦受是罪報。若實無樂受。罪福但有苦果。而實不然。又欲界中亦有樂受。若實無樂受。色無色界不應有受。而實不然。又說樂受中貪使。若無樂受貪何處使。不可說苦受中貪使。故知實有樂受。答曰。若實有樂受應說其相何者為樂。而實不可說。當知但以苦差別中名為樂相。一切世界從大地獄上至有頂。皆是苦相。為多苦所惱。於小苦中生此樂相。如人為熱苦所惱。則以冷觸為樂。是故諸經。作如是說無所妨也。問曰。亦可說世間一切皆樂。於微樂中而生苦相。若不爾者。亦不得言於微苦中生樂想也。答曰。苦受相麁故不可以微樂為苦。又樂雖微亦非惱相。所以者何。不見有人受微樂故。舉手大呼。又受轉微故名寂滅相。猶如上地轉轉寂滅。是故說微樂中生苦相者。但有是語。凡夫愚人於微苦中。妄生樂相。則有道理。』 |
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