大 |
般 |
若 |
経 |
第 |
十 |
会 |
般 |
若 |
理 |
趣 |
分 |
入 |
門 |
(下)
目 次
|
|
|
<home> |
|
|
第八入広大輪の章
<目次>
爾時世尊復依一切如來輪攝如來之相。為諸菩薩宣說般若波羅蜜多入廣大輪甚深理趣平等性門 |
爾の時、世尊、復た一切如来輪摂如来の相に依りて、諸の菩薩の為に般若波羅蜜多、広大輪に入る甚深の理趣、平等性の門を宣説したもう。 |
一切如来輪摂如来:一切如来の輪(グループ)に摂取しようとする如来。 |
|
謂入金剛平等性能入一切如來性輪故 |
謂(のたま)わく、金剛なる平等性に入れ、能(よ)く一切の如来の性輪に入るが故に。 |
その内容は、 「金剛のように堅固な平等を悟れば、一切の如来の性輪に入ることが出来よう。」
平等:我他彼此等の一切の差別を捨てること。 一切の如来の性輪:一切の如来のグループ。 |
|
入義平等性能入一切菩薩性輪故 |
義の平等性に入れ、能く一切の菩薩の性輪に入るが故に。 |
「正義は平等性の中に悟れば、一切の菩薩の性輪に入ることが出来よう。」 |
|
入法平等性能入一切法性輪故 |
法の平等性に入れ、能く一切の法の性輪に入るが故に。 |
「仏法は平等性の中に悟れば、一切の仏法の性輪に入ることが出来よう。」 |
|
入蘊平等性能入一切蘊性輪故。入處平等性能入一切處性輪故。入界平等性能入一切界性輪故 |
蘊の平等性に入れ、能く一切の蘊の性輪に入るが故に。 処の平等性に入れ、能く一切の処の性輪に入るが故に。 界の平等性に入れ、能く一切の界の性輪に入るが故に。 |
「五蘊、十二処、十八界は平等性の中に悟れば、一切の五蘊、十二処、十八界の性輪に入ることが出来よう。」
一切の五蘊、十二処、十八界の性輪に入る:自他のかかわりの全てを悟ることができる。 |
|
入緣起平等性能入一切緣起性輪故 |
縁起の平等性に入れ、能く一切の縁起の性輪に入るが故に。 |
「縁起は平等性の中に悟れば、一切の縁起の性輪に入ることが出来よう。」
一切の縁起の性輪に入る:過去現在未来の全ての因果を悟ることができる。 |
|
入寶平等性能入一切寶性輪故。入食平等性能入一切食性輪故 |
宝の平等性に入れ、能く一切の宝の性輪に入るが故に。 食の平等性に入れ、能く一切の食の性輪に入るが故に。 |
「財物、食物は平等性の中に悟れば、一切の財物、食物の性輪に入ることが出来よう。」
一切の財物、食物に貴賎上下のないことを悟らなければならない。 |
|
入善法平等性能入一切善法性輪故。入非善法平等性能入一切非善法性輪故 |
善法の平等性に入れ、能く一切の善法の性輪に入るが故に。 非善法の平等性に入れ、能く一切の非善法の性輪に入るが故に。 |
入有記法平等性能入一切有記法性輪故。入無記法平等性能入一切無記法性輪故 |
有記法の平等性に入れ、能く一切の有記法の性輪に入るが故に。 無記法の平等性に入れ、能く一切の無記法の性輪に入るが故に。 |
入有漏法平等性能入一切有漏法性輪故。入無漏法平等性能入一切無漏法性輪故 |
有漏法の平等性に入れ、能く一切の有漏法の性輪に入るが故に。 無漏法の平等性に入れ、能く一切の無漏法の性輪に入るが故に。 |
入有為法平等性能入一切有為法性輪故。入無為法平等性能入一切無為法性輪故 |
有為法の平等性に入れ、能く一切の有為法の性輪に入るが故に。 無為法の平等性に入れ、能く一切の無為法の性輪に入るが故に。 |
入世間法平等性能入一切世間法性輪故。入出世間法平等性能入一切出世間法性輪故 |
世間法の平等性に入れ、能く一切の世間法の性輪に入るが故に。 出世間法の平等性に入れ、能く一切の出世間法の性輪に入るが故に。 |
「善法非善法、有記法無記法、有漏法無漏法、有為法無為法、世間法出世間法等は平等性の中に悟れば、実相も自ずから現れよう。」 |
|
入異生法平等性能入一切異生法性輪故 |
異生法の平等性に入れ、能く一切の異生法の性輪に入るが故に。 |
「六道といえども平等性の中に悟れば、何道にあろうと全ての生き物を幸福に出来るだろう。」 |
|
入聲聞法平等性能入一切聲聞法性輪故。入獨覺法平等性能入一切獨覺法性輪故。入菩薩法平等性能入一切菩薩法性輪故。入如來法平等性能入一切如來法性輪故 |
声聞法の平等性に入れ、能く一切の声聞法の性輪に入るが故に。 独覚法の平等性に入れ、能く一切の独覚法の性輪に入るが故に。 菩薩法の平等性に入れ、能く一切の菩薩法の性輪に入るが故に。 如来法の平等性に入れ、能く一切の如来法の性輪に入るが故に。 |
「覚りの世界も平等性の中に悟らなければならない。」 |
|
入有情平等性能入一切有情性輪故 |
有情の平等性に入れ、能く一切の有情の性輪に入るが故に。 |
「全ての生き物の平等性を悟れば、全ての生き物を幸福に出来るだろう。」 |
|
入一切平等性能入一切性輪故 |
一切の平等性に入れ、能く一切の性輪に入るが故に。 |
「あらゆることの平等性を悟れば、いかなる場合にも全ての生き物を幸福に出来るだろう。」 |
|
佛說如是入廣大輪般若理趣平等性已。告金剛手菩薩等言。若有得聞如是輪性甚深理趣平等性門。信解受持讀誦修習。能善悟入諸平等性。疾證無上正等菩提 |
仏、是の如く広大輪に入る、般若の理趣、平等の性を説きおわりて、金剛手菩薩等に告げて言わく、「若し是の如きの輪性甚深の理趣、平等性の門を聞くことを得て、信解受持し、読誦修習するもの有らば、能く諸の平等性に悟入して、疾やかに無上正等菩提を証せん。」 |
広大輪に入る、般若の理趣、平等の性:般若波羅蜜多の平等性をいう。 輪に内と外とあり、内に入らんと欲すれば先ず一切の平等性を悟るべしと般若波羅蜜多を説く。 |
第九供養真浄器田の章
<目次>
爾時世尊復依一切廣受供養真淨器田如來之相。為諸菩薩宣說般若波羅蜜多一切供養甚深理趣無上法門 |
爾の時、世尊、復た一切広受供養真浄器田如来の相に依りて、諸の菩薩の為に般若波羅蜜多一切供養甚深の理趣、無上の法門を宣説したもう。 |
広受供養真浄器田如来:器は供養を受ける器として相応しい、田は善根を植えるための田をいう。 |
|
謂發無上正等覺心於諸如來廣設供養。攝護正法於諸如來廣設供養 |
謂わく、無上正等覚の心を発すは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。正法を摂護するは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。 |
無上正等覚の心を発す:仏になろうという心をおこす。 摂護正法:仏法を正しく持(たも)ち、広く流布すること。 |
|
修行一切波羅蜜多於諸如來廣設供養。修行一切菩提分法於諸如來廣設供養。修行一切總持等持於諸如來廣設供養。修行一切五眼六通於諸如來廣設供養。修行一切靜慮解脫於諸如來廣設供養。修行一切慈悲喜捨於諸如來廣設供養。修行一切佛不共法於諸如來廣設供養 |
一切の波羅蜜多を修行するは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切の菩提分法を修行するは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切の総持、等持を修行するは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切の五眼、六通を修行するは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切の静慮解脱を修行するは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切の慈悲喜捨を修行するは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切の仏の不共法を修行するは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。 |
一切波羅蜜多等:みな菩薩の修行すべきもの。 |
|
觀一切法若常若無常皆不可得。於諸如來廣設供養。觀一切法若樂若苦皆不可得。於諸如來廣設供養。觀一切法若我若無我皆不可得。於諸如來廣設供養。觀一切法若淨若不淨皆不可得。於諸如來廣設供養。觀一切法若空若不空皆不可得。於諸如來廣設供養。觀一切法若有相若無相皆不可得。於諸如來廣設供養。觀一切法若有願若無願皆不可得。於諸如來廣設供養。觀一切法若遠離若不遠離皆不可得。於諸如來廣設供養。觀一切法若寂靜若不寂靜皆不可得。於諸如來廣設供養 |
一切法の若(も)しは常、若しは無常なるは皆不可得と観ずるは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切法の若しは楽、若しは苦なるは皆不可得と観ずるは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切法の若しは我、若しは無我なるは皆不可得と観ずるは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切法の若しは浄、若しは不浄なるは皆不可得と観ずるは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切法の若しは空、若しは不空なるは皆不可得と観ずるは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切法の若しは有相、若しは無相なるは皆不可得と観ずるは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切法の若しは有願、若しは無願なるは皆不可得と観ずるは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切法の若しは遠離、若しは不遠離なるは皆不可得と観ずるは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。一切法の若しは寂静、若しは不寂静なるは皆不可得と観ずるは、諸の如来に於いて広く供養を設くるなり。 |
皆不可得と観ずる:一切法を観察して平等をさとること。不可得は平等、無差別、無分別等の異名。 |
|
於深般若波羅蜜多。書寫聽聞受持讀誦思惟修習。廣為有情宣說流布。或自供養或轉施他於諸如來廣設供養 |
深般若波羅蜜多に於いて、書写、聴聞、受持、読誦して、思惟修習し、広く有情の為に宣説、流布し、或いは自ら供養し、或いは転じて他に施すは、諸の如来に於いて、広く供養を設くるなり。 |
或いは自ら供養し、或いは転じて他に施す:自ら般若波羅蜜多、流布せしめんがために法会を開き、仏法僧を供養し、併せて広く一切の有情に施すこと。 |
|
佛說如是真淨供養甚深理趣無上法已。告金剛手菩薩等言。若有得聞如是供養般若理趣無上法門。信解受持讀誦修習。速能圓滿諸菩薩行。疾證無上正等菩提 |
仏、是の如く真浄供養、甚深の理趣、無上の法を説きおわりて、金剛手菩薩等に告げて言わく、「若し是の如き供養、般若の理趣、無上の法を聞くことを得て、信解、受持、読誦、修習するもの有らば、速やかに能く諸の菩薩の行を円満して、疾やかに無上正等菩提を証せん。」 |
真浄供養:真浄なる供養は飲食衣服の供養のみにあらざることをいう。 広く菩提心を発し、一切法の平等を観ずること無上の供養なりと般若波羅蜜多を説く。 |
第十能善調伏の章
<目次>
爾時世尊復依一切能善調伏如來之相。為諸菩薩宣說般若波羅蜜多攝受智密調伏有情甚深理趣智藏法門 |
爾の時、世尊、復た一切能善調伏如来の相に依りて、諸の菩薩の為に般若波羅蜜多、智密を摂受し、有情を調伏する甚深の理趣、智蔵の法門を宣説したもう。 |
智密を摂受し:仏の秘密の智慧を悟りの意味。 有情を調伏する:六道の衆生(この場合は特に人間をいう)を調え仏法に帰依させる。 |
|
謂一切有情平等性即忿平等性 |
謂わく、一切の有情の平等の性、即ち忿(ふん)の平等の性なり。 |
その内容は、一切の有情は平等の性である、それは即ち菩薩の忿は平等の性である。
平等の性:自他彼此の差別のないこと。空というに同じ。 菩薩の忿:菩薩が有情にして平等の性ならば、その忿もまた平等の性である。 忿:憤怒に同じ。カッとする怒りのこと。 |
|
一切有情調伏性即忿調伏性 |
一切の有情の調伏の性、即ち忿の調伏の性なり。 |
一切の有情は調伏の性である。それは即ち菩薩の忿は調伏の性である。
調伏の性:一切の有情を調え仏法に帰依せしめんとする性質をいう。 |
|
一切有情真法性即忿真法性 |
一切の有情の真法の性、即ち忿の真法の性なり。 |
真法の性:法性、真如。一切のものの持つ実際の性、すなわち空のこと。 |
|
一切有情真如性即忿真如性 |
一切の有情の真如の性、即ち忿の真如の性なり。 |
真如の性:上と同じ。 |
|
一切有情法界性即忿法界性 |
一切の有情の法界の性、即ち忿の法界の性なり。 |
法界の性:上と同じ。仏法界をいう。 |
|
一切有情離生性即忿離生性 |
一切の有情の離生の性、即ち忿の離生の性なり。 |
離生の性:上に同じ。生死を離れたるをいう。 |
|
一切有情實際性即忿實際性 |
一切の有情の実際の性、即ち忿の実際の性なり。 |
実際の性:真如というに同じ。 |
|
一切有情本空性即忿本空性 |
一切の有情の本空の性、即ち忿の本空の性なり。 |
本空の性:上に同じ。 |
|
一切有情無相性即忿無相性 |
一切の有情の無相の性、即ち忿の無相の性なり。 |
無相の性:上に同じ。特定の相(すがた、五感の対象)をもたないこと。 |
|
一切有情無願性即忿無願性 |
一切の有情の無願の性、即ち忿の無願の性なり。 |
無願の性:上に同じ。特定の願いのないことをいう。 |
|
一切有情遠離性即忿遠離性 |
一切の有情の遠離の性、即ち忿の遠離の性なり。 |
遠離の性:上に同じ。あらゆる概念を遠離することをいう。 |
|
一切有情寂靜性即忿寂靜性 |
一切の有情の寂静の性、即ち忿の寂静の性なり。 |
寂静の性:上に同じ。心が静かなることをいう。 |
|
一切有情不可得性即忿不可得性 |
一切の有情の不可得の性、即ち忿の不可得の性なり。 |
不可得の性:上に同じ。これと特定できないことをいう。 |
|
一切有情無所有性即忿無所有性 |
一切の有情の無所有の性、即ち忿の無所有の性なり。 |
無所有の性:上に同じ。所有するもの(身心、財産、地位等)のないことをいう。 |
|
一切有情難思議性即忿難思議性 |
一切の有情の難思議の性、即ち忿の平等の性なり。 |
難思議の性:上に同じ。想像しがたしをいう。 |
|
一切有情無戲論性即忿無戲論性 |
一切の有情の無戯論の性、即ち忿の無戯論の性なり。 |
無戯論の性:上に同じ。論じて得ることなしをいう。 |
|
一切有情如金剛性即忿如金剛性 |
一切の有情の金剛の性、即ち忿の金剛の性なり。 |
金剛の性:上に同じ。不変をいう。 真法、真如、法界、離生、実際、本空、無相、無願、遠離、寂静、不可得、無所有、難思議、無戯論、金剛は全てこれ平等の異名であり、平等の現れに応じて名前を変えるのである。 |
|
所以者何。一切有情真調伏性即是無上正等菩提。亦是般若波羅蜜多。亦是諸佛一切智智 |
所以は何に、一切の有情の真調伏の性は、即ち是れ無上正等菩提なり。亦た是れ般若波羅蜜多なり、亦た是れ諸仏の一切智智なり。 |
一切の有情の真調伏の性:菩薩の調伏の性というに同じ、菩薩は姿を変えて六道に遊行教化するため、このようにいう。 一切智智:仏の智慧というに同じ。 |
|
佛說如是能善調伏甚深理趣智藏法已。告金剛手菩薩等言。若有得聞如是調伏般若理趣智藏法門。信解受持讀誦修習。能自調伏忿恚等過。亦能調伏一切有情。常生善趣受諸妙樂。現世怨敵皆起慈心。能善修行諸菩薩行。疾證無上正等菩提 |
仏、是の如く能善く調伏する甚深の理趣、智蔵の法門を説き已りて、金剛手菩薩等に告げて言わく、「若し是の如き調伏般若の理趣、智蔵の法門を聞くことを得て、信解し、受持し、読誦し、修習するもの有らば、能く自ら忿恚等の過を調伏し、亦た能く一切の有情を調伏して、常に善趣に生じて、現世の怨敵も皆慈心を起こして能善く菩薩の行を修行して、疾やかに無上正等菩提を証せん。」 |
智蔵の法門:忿による調伏は大乗以前には示されなかった秘蔵の法門である。 忿による調伏を示して般若波羅蜜多を説く。 |
第十一建立性平等の章
<目次>
爾時世尊復依一切能善建立性平等法如來之相。為諸菩薩宣說般若波羅蜜多一切法性甚深理趣最勝法門 |
爾の時、世尊、復た一切能善建立性平等法如来の相に依りて、諸の菩薩の為に般若波羅蜜多、一切の法性、甚深の理趣、最勝の法門を宣説したもう。 |
建立性平等:一切の有情、一切の仏法、甚深の般若波羅蜜多の平等をよく説くことをいう。 |
|
謂一切有情性平等故甚深般若波羅蜜多亦性平等。一切法性平等故甚深般若波羅蜜多亦性平等 |
謂わく、一切の有情の性、平等なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た性平等なり。一切の法の性、平等なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た性平等なり。 |
その内容は、一切の有情の本性は平等である。その故に、甚深の般若波羅蜜多の性もまた平等である。一切の仏の法は、その本性は平等である。その故に、甚深の般若波羅蜜多の性もまた平等である。
性平等:本性は平等である、すなわち自他彼此の区別がないことをいう。 一切の有情:六道に住する生き物のこと。また併せて菩薩のこともいう。 一切の法:一切の仏の法のこと。 |
|
一切有情性調伏故甚深般若波羅蜜多亦性調伏。一切法性調伏故甚深般若波羅蜜多亦性調伏 |
一切の有情の性、調伏なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た性調伏なり。一切の法の性、調伏なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た性調伏なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情有實義故甚深般若波羅蜜多亦有實義。一切法有實義故甚深般若波羅蜜多亦有實義 |
一切の有情、実義有るが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た実義有り。一切の法、実技あるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た実義有り。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情即真如故甚深般若波羅蜜多亦即真如。一切法即真如故甚深般若波羅蜜多亦即真如 |
一切の有情、即ち真如なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち真如なり。一切の法、即ち真如なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち真如なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情即法界故甚深般若波羅蜜多亦即法界。一切法即法界故甚深般若波羅蜜多亦即法界 |
一切の有情、即ち法界なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち法界なり。一切の法、即ち法界なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち法界なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情即法性故甚深般若波羅蜜多亦即法性。一切法即法性故甚深般若波羅蜜多亦即法性 |
一切の有情、即ち法性なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち法性なり。一切の法、即ち法性なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち法性なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情即實際故甚深般若波羅蜜多亦即實際。一切法即實際故甚深般若波羅蜜多亦即實際 |
一切の有情、即ち実際なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち実際なり。一切の法、即ち実際なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち実際なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情即本空故甚深般若波羅蜜多亦即本空。一切法即本空故甚深般若波羅蜜多亦即本空 |
一切の有情、即ち本空なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち本空なり。一切の法、即ち本空なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち本空なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情即無相故甚深般若波羅蜜多亦即無相。一切法即無相故甚深般若波羅蜜多亦即無相 |
一切の有情、即ち無相なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち無相なり。一切の法、即ち無相なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち無相なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情即無願故甚深般若波羅蜜多亦即無願。一切法即無願故甚深般若波羅蜜多亦即無願 |
一切の有情、即ち無願なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち無願なり。一切の法、即ち無願なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち無願なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情即遠離故甚深般若波羅蜜多亦即遠離。一切法即遠離故甚深般若波羅蜜多亦即遠離 |
一切の有情、即ち遠離なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち遠離なり。一切の法、即ち遠離なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち遠離なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情即寂靜故甚深般若波羅蜜多亦即寂靜。一切法即寂靜故甚深般若波羅蜜多亦即寂靜 |
一切の有情、即ち寂静なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち寂静なり。一切の法、即ち寂静なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た即ち寂静なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情不可得故甚深般若波羅蜜多亦不可得。一切法不可得故甚深般若波羅蜜多亦不可得 |
一切の有情、不可得なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た不可得なり。一切の法、不可得なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た不可得なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情無所有故甚深般若波羅蜜多亦無所有。一切法無所有故甚深般若波羅蜜多亦無所有 |
一切の有情、無所有なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た無所有なり。一切の法、無所有なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た無所有なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情不思議故甚深般若波羅蜜多亦不思議。一切法不思議故甚深般若波羅蜜多亦不思議 |
一切の有情、不思議なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た不思議なり。一切の法、不思議なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た不思議なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情無戲論故甚深般若波羅蜜多亦無戲論。一切法無戲論故甚深般若波羅蜜多亦無戲論 |
一切の有情、無戯論なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た無戯論なり。一切の法、無戯論なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た無戯論なり。 |
前章を参照のこと。 |
|
一切有情無邊際故甚深般若波羅蜜多亦無邊際。一切法無邊際故甚深般若波羅蜜多亦無邊際 |
一切の有情、無辺際なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た無辺際なり。一切の法、無辺際なるが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た無辺際なり。 |
無辺際:空間的な広がりの限りないことをいう。六道のいづれに有りてもの意。 |
|
一切有情有業用故當知般若波羅蜜多亦有業用。一切法有業用故當知般若波羅蜜多亦有業用 |
一切の有情、業用(ごうゆう)有るが故に、甚深の般若波羅蜜多、亦た業用有り。一切の法、業用有るが故に、当に知るべし、甚深の般若波羅蜜多、亦た業用有り。 |
業用:はたらきをいう。 |
|
佛說如是性平等性甚深理趣最勝法已。告金剛手菩薩等言。若有得聞如是平等般若理趣最勝法門。信解受持讀誦修習。則能通達平等法性甚深般若波羅蜜多。於法有情心無罣礙。疾證無上正等菩提 |
仏、是の如く性の平等性、甚深の理趣、最勝の法を説き已りて、金剛手菩薩等に告げて言わく、「若し是の如き平等、般若の理趣、最勝の法門を聞くことを得て、信解し、受持し、読誦し、修習するもの有らば、則ち能く平等の法性、甚深の般若波羅蜜多に通達して、法と有情とに於いて、心に罣礙無く、疾やかに無上正等菩提を証せん。」 |
一切の有情、一切の仏法、甚深の般若波羅蜜多、この三者の平等の性を示して、般若波羅蜜多を説く。 |
第十二如来蔵の章
<目次>
爾時世尊復依一切住持藏法如來之相。為諸菩薩宣說般若波羅蜜多一切有情住持遍滿甚深理趣勝藏法門 |
爾の時、世尊、復た一切住持蔵法如来の相に依りて、諸の菩薩の為に、般若波羅蜜多、一切の有情に住持し遍満せる甚深の理趣、勝蔵法門を宣説したもう。 |
一切の有情に住持し遍満せる:誰にでも本来備わっていることをいう。 |
|
謂一切有情皆如來藏普賢菩薩自體遍故 |
謂わく、一切の有情は皆如来蔵なり、普賢菩薩の自体、遍きが故に。 |
その内容は、一切の有情は皆如来を蔵(かく)し持っている。なぜ解るかというと、普賢菩薩の本体である大慈悲は世界に遍満しているからである。
如来蔵:一切の有情(生き物)は本来、仏の性質を蔵し持っているということ。大般涅槃經卷第六に智者了知一切眾生悉有佛性。(智者は了知すらく、一切の衆生、悉く仏性を有すと。)という仏性は如来蔵と同じものをいう。 |
|
一切有情皆金剛藏以金剛藏所灌灑故 |
一切の有情は皆金剛蔵なり、金剛蔵を以って、潅灑(かんしゃ)せらるる所なるが故に。 |
一切の有情は皆金剛心を藏し持っている。なぜ解るかというと、金剛心を蔵しているから、如来蔵という如来の位に就いているからである。
金剛:金剛心、菩薩の大心が金剛のように堅固で、何物にも破壊されないことをいう。 金剛蔵:金剛心が人間の心の中に、もともと備わっていることをいう。 金剛蔵を以って、潅灑(かんしゃ)せらるる所:金剛心を備えていることから、もともと如来の位にあることをいう。 潅灑:潅頂、如来の位にのぼるときの儀式をいう。 |
|
一切有情皆正法藏一切皆隨正語轉故 |
一切の有情は皆正法蔵なり、一切は皆、正語に随って転ずるが故に。 |
一切の有情は皆正法を蔵し持っている、なぜ解るかというと、仏の法を聞けば皆転じて仏に帰依するからである。
正法蔵:仏の正法は釈尊出世以前より、世界に遍満していて、もちろん有情の中にも蔵されていることをいう。 |
|
一切有情皆妙業藏一切事業加行依故 |
一切の有情は皆妙業蔵なり、一切の事業、加行の依(え)なるが故に。 |
一切の有情は皆妙業を蔵している、なぜ解かるかというと、なすことは皆修行の依りどころであるのだから。
妙業:仏の働きのことをいう。妙業蔵とは仏の働きをなす能力を蔵し持っていることをいう。 依:根拠、依って立つ所。 |
|
佛說如是有情住持甚深理趣勝藏法已。告金剛手菩薩等言。若有得聞如是遍滿般若理趣勝藏法門。信解受持讀誦修習。則能通達勝藏法性。疾證無上正等菩提 |
仏、是の如く有情住持の甚深の理趣、勝蔵の法を説き已りて、金剛手菩薩等に告げて言わく、「若し是の如き遍満般若の理趣、勝蔵の法門を聞くことを得て、信解し、受持し、読誦し、修習するもの有らば、則ち能く勝蔵の法性に通達して、疾やかに無上正等菩提を証せん。」 |
勝蔵:勝れた蔵(くら)をいう。 一切の有情の如来蔵を示して、般若波羅蜜多を説く。 |
第十三無辺無際の章
<目次>
爾時世尊復依究竟無邊際法如來之相。為諸菩薩宣說般若波羅蜜多究竟住持法義平等金剛法門 |
爾の時、世尊、復た究竟無辺際法如来の相に依りて、諸の菩薩の為に般若波羅蜜多、究境住持法義平等、金剛の法門を宣説したもう。 |
究境住持法義平等金剛:いつでもどこでも、仏法の真理たる平等は存在することをいう。 |
|
謂甚深般若波羅蜜多無邊故一切如來亦無邊 |
謂わく、甚深の般若波羅蜜多、無辺なるが故に、一切の如来も亦た無辺なり。 |
甚深の般若波羅蜜多と一切の如来はどこにでも存在する。 |
|
甚深般若波羅蜜多無際故一切如來亦無際 |
甚深の般若波羅蜜多、無際なるが故に、一切の如来も亦た無際なり。 |
甚深の般若波羅蜜多と一切の如来はいつでも存在する。 |
|
甚深般若波羅蜜多一味故一切法亦一味 |
甚深の般若波羅蜜多、一味なるが故に、一切の法も亦た一味なり。 |
いつでもどこでも、甚深の般若波羅蜜多と一切の仏法は変わらない。 |
|
甚深般若波羅蜜多究竟故一切法亦究竟 |
甚深の般若波羅蜜多、究境なるが故に、一切の法も亦た究竟なり。 |
このように甚深の般若波羅蜜多と一切の仏法は究極のものである。 |
|
佛說如是無邊無際究竟理趣金剛法已。告金剛手菩薩等言。若有得聞如是究竟般若理趣金剛法門。信解受持讀誦修習。一切障法皆悉消除。定得如來執金剛性。疾證無上正等菩提 |
仏、是の如く無辺無際究竟の理趣、金剛の法を説き已りて、金剛手菩薩等に告げて言わく、「若し是の如き究竟の般若の理趣、金剛の法門を聞くことを得て、信解し、受持し、読誦し、修習するもの有らば、一切の障法、皆悉く消除して、定めて如来の執金剛の性を得て、疾やかに無上正等菩提を証せん。」 |
如来の執金剛の性:如来の一切の障害物をよく消除することをいう。
法義平等の無辺無際なることを示して、般若波羅蜜多を説く。 |
第十四如来秘密法性の章
<目次>
爾時世尊復依遍照如來之相。為諸菩薩宣說般若波羅蜜多得諸如來祕密法性及一切法無戲論性大樂金剛不空神咒金剛法性。初中後位最勝第一甚深理趣無上法門 |
爾の時、世尊、復た遍照如来の相に依りて、諸の菩薩の為に、般若波羅蜜多、諸の如来の秘密の法性及び一切法の無戯論の性、大楽金剛不空の神呪、金剛なる法性、初中後位の最勝第一なることを得る甚深の理趣、無上の法門を宣説したもう。 |
金剛なる法性:法身の如来をいう。 初中後位の最勝第一:如来というに同じ。 |
|
謂大貪等最勝成就。令大菩薩大樂最勝成就 |
謂わく、大貪等、最勝成就すれば、大菩薩をして大楽の最勝成就せしむ。 |
その内容は、菩薩が大貪等を最勝成就すれば、そのことが菩薩の大楽を最勝成就するだろう。
大貪等:菩薩は大貪等をもって、全ての生き物を幸福にする、故に大という。 大楽:菩薩は大いに楽しんで、全ての生き物を幸福にする、故に大という。 大菩薩:大貪等、大楽ともに最勝成就する、故に大という。 |
|
大樂最勝成就。令大菩薩一切如來大覺最勝成就。。。 |
大楽、最勝成就すれば、大菩薩をして一切の如来の大覚の最勝成就せしむ。 |
大いに楽しんで、全ての生き物を幸福にすれば、一切の如来の心と、少しも違う所はない。 |
|
一切如來大覺最勝成就。令大菩薩降伏一切大魔最勝成就 |
一切の如来の大覚、最勝成就すれば、大菩薩をして一切の大魔を降伏すること最勝成就せしむ。 |
一切の如来の心と同じならば、一切の大魔を降伏することができる。
大魔:全ての生き物を幸福にするとき、障害となるものをいう。 |
|
降伏一切大魔最勝成就。令大菩薩普大三界自在最勝成就 |
一切の大魔を降伏すること最勝成就すれば、大菩薩をして普く大三界に自在なること最勝成就せしむ。 |
一切の大魔を降伏することができれば、三界において自在となるであろう。 |
|
普大三界自在最勝成就。令大菩薩能無遺餘。拔有情界利益安樂一切有情。畢竟大樂最勝成就 |
普く大三界に自在なること最勝成就すれば、大菩薩をして能く遺余無く、有情界を抜きて、一切の有情を利益し安楽ならしめ、畢竟、大楽の最勝成就せしむ。 |
三界において自在となることができれば、全ての生き物を幸福にして、ついには仏と同じ楽しみを得よう。 |
|
所以者何。乃至生死流轉住處有勝智者齊此常能以無等法。饒益有情不入寂滅 |
所以は何に。乃至、生死流転の住処にまでも、勝智有る者は此(ここ)に斉(そろ)いて、常に能く無等の法を以って有情を饒益して、寂滅に入らず。 |
なぜかというと、たとえ生死流転の処であろうと、勝れた智慧の有る者は皆ここに集まって、全ての生き物のために、寂滅に入るということをしないからである。 |
|
又以般若波羅蜜多方便善巧成立勝智。善辦一切清淨事業。能令諸有皆得清淨 |
又、般若波羅蜜多、方便して善巧(たくみ)に成立せしむる勝智を以って、善く一切の清浄の事業を弁じて、能く諸有をして皆清浄を得しむ。 |
また、般若波羅蜜多、すなわち方便を巧みに成立させる勝れた智慧を以って、よく一切の清浄なる手段を尽くして、全ての生き物を皆幸福にするからである。
清浄の事業:全ての生き物を幸福にする手段。 清浄を得しむ:平等を理解させ争いごとを無くして、幸福にすること。 |
|
又以貪等調伏世間。普遍恒時乃至諸有。皆令清淨自然調伏 |
又、貪等を以って世間を調伏すること普遍(あまね)く恒時なり。乃至諸有までも、皆清浄ならしめ自然に調伏す。 |
また、いかなる場所でも、いかなる時にも、貪欲に世間を調伏することは、三界中のいかなる生き物にまでも及び、皆平等を理解させ争いごとを無くして、自然に調伏するからである。 |
|
又如蓮華形色光淨。不為一切穢物所染。如是貪等饒益世間。住過有過常不能染 |
又、蓮華の形色光の浄なるが如く、一切の穢物の為に染せられず。是の如き貪等は世間を饒益し、過に住し、過有るも常に染すること能ず。 |
また、泥中に咲く蓮の花が形色光の全てが浄らかで、一切の汚物にも汚されないのと同じく、菩薩の貪瞋癡等は世間の為になり、常に過失を作ろうとも、菩薩を全ての生き物を幸福にするという行為から退かせることは出来ないのである。
過に住し、過有る:つねに過失を作ること。 染すること能ず:菩薩の菩提心を無くさせることが出来ない。 |
|
又大貪等能得清淨大樂大財三界自在。常能堅固饒益有情 |
又、大貪等能く清浄、大楽大財、三界の自在を得て、常に能く堅固に有情を饒益す。 |
また、大貪等の平等に根ざす欲望は、よく清浄と大楽と大財と三界の自在を得ることができ、常によく堅固に全ての生き物を幸福にすることが出来るのである。
大貪等:自己の為ならざる、平等に根ざした欲望のことをいう。 大貪等の能く有情を饒益することを示して、般若波羅蜜多を説く。 |
<目次>
爾時如來即說神咒 |
爾の時、如来、即ち神呪を説きたまわく、 |
その時、如来は、このような神咒を説かれた、 |
|
納慕薄伽筏帝(一)缽刺壤波囉弭多曳(二)薄底(丁履反)筏攃(七葛反)羅曳(三)罨跛履弭多窶拏曳(四)薩縛呾他揭多跛履布視多曳(五)薩縛呾他揭多奴壤多奴壤多邲壤多曳(六)呾姪他(七)缽刺[口*兮](一弟反)缽刺[口*兮](八)莫訶缽喇[口*兮](九)缽刺壤婆娑羯[口*麗](十)缽刺壤路迦羯[口*麗](十一)案馱迦囉毘談末[泥/土](十二)悉遞(十三)蘇悉遞(十四)悉殿都漫薄伽筏底(十五)薩防伽孫達[口*麗](十六)薄底筏攃[口*麗](十七)缽刺娑履多喝悉帝(十八)參磨濕[口*縛]婆羯[口*麗](十九)勃[口*陀]勃[口*陀](二十)悉[口*陀]悉[口*陀](二十一)劍波劍波(二十二)浙羅浙羅(二十三)曷邏[口*縛]曷邏[口*縛](二十四)阿揭車阿揭車(二十五)薄伽筏底(二十六)麼毘濫婆(二十七)莎訶(二十八) |
「なうぼばぎゃばーてい、はらじゃはらみたえい、ばちばざらえい、あふはりみたぐなえい、さるばたたぎゃたはりふじたえい、さるばたたぎゃたどじゃたどじゃたびじゃたえい、たにやた、はらえい、はらえい、まかはらえい、はらじゃばさきゃれい、はらじゃろきゃきゃれい、あんだきゃら、びだんまに、しっでい、そしっでい、しっでんとまんばぎゃばち、さるぼうぎゃそんだれい、ばちばされい、はらさりたかしってい、さんまじんばさきゃれい、ぼだぼだ、しっだしっだ、けんばけんば、しゃらしゃら、きゃらばきゃらば、あぎゃしゃあぎゃしゃ、ばぎゃばち、まびらんば、そはか |
「なうぼばぎゃばーてい、はらじゃはらみたえい、ばちばざらえい、あふはりみたぐなえい、さるばたたぎゃたはりふじたえい、さるばたたぎゃたどじゃたどじゃたびじゃたえい、たにやた、はらえい、はらえい、まかはらえい、はらじゃばさきゃれい、はらじゃろきゃきゃれい、あんだきゃら、びだんまに、しっでい、そしっでい、しっでんとまんばぎゃばち、さるぼうぎゃそんだれい、ばちばされい、はらさりたかしってい、さんまじんばさきゃれい、ぼだぼだ、しっだしっだ、けんばけんば、しゃらしゃら、きゃらばきゃらば、あぎゃしゃあぎゃしゃ、ばぎゃばち、まびらんば、そはか。(神咒の意味不明) |
|
如是神咒三世諸佛皆共宣說同所護念。能受持者一切障滅。隨心所欲無不成辦。疾證無上正等菩提。 |
是の如き神呪は三世の諸仏皆宣説し、同じく護念したもう所なり。能く受持せば一切の障り滅し、心に随いて欲する所、成弁せざる無く、疾やかに無上正等菩提を証せん。」 |
このような神咒は三世の諸仏が皆、説かれたものであり、同じく護念されたものである。 もし受けて持(たも)つことができれば、一切の罪障が消えて、心の欲するがままに、成就しないことはなく、疾かに無上正等菩提を証することになろう。」と。 |
|
爾時如來復說神咒 |
爾の時、如来、復た神呪を説きたまわく、 |
その時、如来はまたしても、このような神咒を説かれた、 |
|
納慕薄伽筏帝(一)缽刺壤波囉弭多臾(二)呾姪他(三)牟尼達[繼-糸+言](四)僧揭洛訶達[繼-糸+言](五)遏奴揭洛訶達[繼-糸+言](六)毘目底達[繼-糸+言](七)薩馱奴揭洛訶達[繼-糸+言](八)吠室洛末拏達[繼-糸+言](九)參漫多奴跛履筏刺呾那達[繼-糸+言](十)窶拏僧揭洛訶達[繼-糸+言](十一)薩縛迦羅跛履波刺那達[繼-糸+言](十二)莎訶(十三) |
「なうもばぎゃばてい、はらじゃはらみたえい、たにやた、むにだるめい、そうぎゃらかだるめい、あどぎゃらかだるめい、びもくちだるめい、さだどぎゃらかだるめい、べいしらまなだるめい、さんまんだどはりばらたなだるめい、ぐなそうぎゃらかだるめい、さらばきゃらはりはらなだるめい、そはか。 |
「なうもばぎゃばてい、はらじゃはらみたえい、たにやた、むにだるめい、そうぎゃらかだるめい、あどぎゃらかだるめい、びもくちだるめい、さだどぎゃらかだるめい、べいしらまなだるめい、さんまんだどはりばらたなだるめい、ぐなそうぎゃらかだるめい、さらばきゃらはりはらなだるめい、そはか。(神咒の意味不明) |
|
如是神咒是諸佛母。能誦持者一切罪滅。常見諸佛得宿住智。疾證無上正等菩提 |
是の如き神呪は是れ諸仏の母なり、能く誦持せば一切の罪滅し、常に諸仏に見(まみ)えて、宿住智を得て、疾やかに無上正等菩提を証せん。」 |
このような神咒は、諸仏の母である。 もし誦して持(たも)つことができれば、一切の罪障が消えて、常に諸仏を見ることができ、世世に宿住する智慧を得て、疾かに無上正等菩提を証するだろう。」と。 |
|
爾時如來復說神咒 |
爾の時、如来、復た神呪を説きたまわく、 |
その時、如来はまたしても、このような神咒を説かれた、 |
|
納慕薄伽筏帝(一)缽刺壤波囉弭多臾(二)呾姪他(三)室[口*麗]曳(四)室[口*麗]曳(五)室[口*麗]曳(六)室[口*麗]曳細(七)莎訶(八) |
「なうぼばぎゃばてい、はらじゃはらみたえい、たにやた、しつれいえい、しつれいえい、しつれいえい、しつれいえいさい、そはか。 |
「なうぼばぎゃばてい、はらじゃはらみたえい、たにやた、しつれいえい、しつれいえい、しつれいえい、しつれいえいさい、そはか。(神咒の意味不明) |
|
如是神咒具大威力。能受持者業障消除。所聞正法總持不忘。疾證無上正等菩提 |
是の如き神呪は大威力を具えて、能く受持せば業障消除し、聞く所の正法、総て持して忘れず、疾やかに無上正等菩提を証せん。」 |
このような神咒は、大威力を備えている。 もし受けて持つことができれば、罪障が消えて、聞いた正法を総べて持って忘れず、疾かに無上正等菩提を証することだろう。」と。 |
流通得益分
<目次>
爾時世尊說是咒已。告金剛手菩薩等言。若諸有情於每日旦。至心聽誦如是般若波羅蜜多甚深理趣最勝法門無間斷者。諸惡業障皆得消滅。諸勝喜樂常現在前。大樂金剛不空神咒現身必得。究竟成滿一切如來金剛祕密最勝成就。不久當得大執金剛及如來性 |
爾の時、世尊、是の呪を説き已りて、金剛手菩薩等に告げて言わく、「若し、諸の有情、毎日の旦(あした)に於いて至心に是の如き般若波羅蜜多、甚深の理趣、最勝の法門(本経)を聴誦すること間断無くば、諸の悪業障皆消滅することを得、諸の勝喜楽、常に前に現在し、大楽金剛不空の神呪、現身に必ず得、究竟して一切の如来の金剛秘密の最勝成就を成満し、久しからずして、当に大執金剛及び如来の性を得ん。 |
もし此の般若波羅蜜多、甚深の理趣、最勝の法門(本経のこと)を聴聞して、読誦することを、毎日継続すれば、やがて如来となって理想の世界を得るであろう。
一切の如来の金剛秘密の最勝成就:如来のみがよく知ることの出来る理想の世界をいう。 |
|
若有情類未多佛所植眾善根久發大願。於此般若波羅蜜多甚深理趣最勝法門。不能聽聞書寫讀誦供養恭敬思惟修習。要多佛所植眾善根久發大願。乃能於此甚深理趣最勝法門。下至聽聞一句一字。況能具足讀誦受持 |
若し有情の類、未だ多くの仏所に衆(あまた)の善根を植えて大願を発すこと久しからざれば、此の般若波羅蜜多、甚深の理趣、最勝の法門に於いて、聴聞書写読誦供養恭敬思惟修習すること能ず。要(かなら)ずや、多くの仏所に衆の善根を植えて大願を発すこと久しからん、乃ち能く此の甚深の理趣、最勝の法門に於いて、下は一句一字を聴聞するに至るまでなり、況や能く読誦受持を具足せんをや。 |
今此処に此の般若波羅蜜多、甚深の理趣、最勝の法門(本経のこと)を聞くことが出来るのは、必ず過去世に於いて善根を多く植えたのであろう。 |
|
若諸有情供養恭敬尊重讚歎八十殑伽沙等俱胝那庾多佛。乃能具足聞此般若波羅蜜多甚深理趣 |
若し諸の有情、八十恒河沙等の倶胝(くてい)那庾多(なゆた)の仏を供養恭敬讃嘆すれば、乃ち能く此の般若波羅蜜多、甚深の理趣を聞くことを具足せん。 |
もし無数の仏を供養恭敬讃嘆すれば、此の般若波羅蜜多、甚深の理趣(本経)を完全に聞くことができるであろう。
八十恒河沙、倶胝、那庾多:ともにほぼ無限というに等しい大きな数をいう。 |
|
若地方所流行此經。一切天人阿素洛等。皆應供養如佛制多。有置此經在身或手。諸天人等皆應禮敬 |
若し地方に此の経の流行することあらば、一切の天人、阿素洛(あそら)等、皆応に供養すること仏の制多の如くすべし。有るもの此の経を置いて身或いは手に在らば、諸の天人等皆応に礼敬すべし。 |
もし地方に此の経が流行したならば、一切の、天人、阿修羅等は皆、仏塔の如くに供養しなければならない。また、ある人が此の経を身体に着けているか、手に持っているならば、諸の天人等は皆礼敬しなければならない。
阿素洛:阿修羅、天人のうち争いの絶えない種族のこと。 制多:仏塔、仏の遺骨を収め、仏教の存在を示すための標識とする。 |
|
若有情類受持此經。多俱胝劫。得宿住智常勤精進修諸善法。惡魔外道不能稽留。四大天王及餘天眾。常隨擁衛未曾暫捨。終不死[打-丁+王]遭衰患。諸佛菩薩常共護持。令一切時善撩ヲ滅。於諸佛土隨願往生。乃至菩提不墮惡趣 |
若し有情の類、此の経を受持すること多倶胝劫ならば、宿住智を得て、常に勤めて精進して諸の善法を修め、悪魔外道も稽留(とど)むること能ず、四大天王及び余の天衆、常に随い擁衛(かばいまも)りて、未だ曽て暫くも捨てず、終(つい)には横死し、枉(ま)げ、衰患(すいげん)せず、諸仏菩薩、常に共に護持したまいて、一切の時をして善を増やし、悪を滅ぼして、諸仏の土に願に随いて往生し、乃ち菩提に至るまで悪趣に堕ちざらん。 |
もし此の経を無限の長時間にわたって受持するならば、無限の過去世を記憶できるようになり、常に他の為になって、それを悪魔も外道も止めることが出来ない、また諸の天衆が常に護り随っているため、横死をしたり、讒言によって罪に落されたり、病気に罹ったりすることもない、また諸仏菩薩が常に一緒にいるために、常に善いことをして、悪いことはしない、また諸仏の浄土には願いのままに往生することができ、仏となるまで地獄等の悪趣に堕ちることはないであろう。
諸の善法を修め:全ての生き物の為になることをしての意。 此の経の得益を示して、般若波羅蜜多を説く。 |
|
諸有情類受持此經。定獲無邊勝利功コ。我今略說如是少分。時薄伽梵說是經已。金剛手等諸大菩薩及餘天眾。聞佛所說皆大歡喜信受奉行 |
諸の有情の類、此の経を受持せば、定めて無辺の勝利の功徳を獲ん。 我今、略して是の如きの少分を説けり。」 時に、薄伽梵の是の経を説き已りたもうに、金剛手等の諸の大菩薩及び余の天衆、仏の説きたまえる所を聞きて、皆大いに歓喜し、信受して奉行せり。 |
大般若波羅蜜多經卷第五百七十八 |
大般若波羅蜜多経巻第五百七十八 |
<目次>
おわりに
これで大般若波羅蜜多経の般若理趣分について一通り勉強いたしました。これを纏めると、以下のようになりますが、さらに般若波羅蜜多を一言で言うと、平等心からでた行為は清浄、即ち罪が無いということです。平等心とは他の人、他の生き物に共感するということです。この共感するということによって世界は平和になり、人の心は安らぐのです。般若波羅蜜多のことを仏母、仏の母といいますが、その訳はここから来ています。仏教で般若波羅蜜多が、このように重要視されている理由がこれです。よく心に刻んで忘れないようにして下さい。
1. |
数多くの菩薩の言葉を以って般若波羅蜜多を説く。
|
2. |
一切のものの平等性を悟ることが如来の門に入ることであると般若波羅蜜多を説く。
|
3. |
一切の平等性を悟れば、そこに戯論なしと般若波羅蜜多を説く。
|
4. |
一切は平等であり、その本性は清浄であると般若波羅蜜多を説く。
|
5. |
いわゆる世俗の布施、持戒、忍辱、精進、静慮、智慧を修行せよと般若波羅蜜多を説く。
|
6. |
いわゆる釈迦牟尼世尊の身語心業を手本にせよと般若波羅蜜多を説く。
|
7. |
一切法は空であると観じて本性清浄を知れと般若波羅蜜多を説く。
|
8. |
輪に内と外とあり、内に入らんと欲すれば先ず一切の平等性を悟るべしと般若波羅蜜多を説く。
|
9. |
広く菩提心を発し、一切法の平等を観ずること無上の供養なりと般若波羅蜜多を説く。
|
10. |
忿による調伏を示して般若波羅蜜多を説く。
|
11. |
一切の有情、一切の仏法、甚深の般若波羅蜜多、この三者の平等の性を示して、般若波羅蜜多を説く。
|
12. |
一切の有情の如来蔵を示して、般若波羅蜜多を説く。
|
13. |
法義平等の無辺無際なることを示して、般若波羅蜜多を説く。
|
14. |
大貪等の能く有情を饒益することを示して、般若波羅蜜多を説く。
|
15. |
神呪を示して、般若波羅蜜多を説く。
|
16. |
此の経の得益を示して、般若波羅蜜多を説く。
|
<追記 蛇足>
近頃のわが国の状況を考えてみますと、般若波羅蜜多(優しさ)からいかに遠ざかってしまったか、実に嘆かわしいことです。どうして世界でも最も恥ずべき国になってしまったのでしょう。どれほどの人々が自分と自分の家族以外について、その幸せを願っているでしょうか。子供や若者に、どのようにすれば自分と関係ない者にたいする優しさとか、礼儀作法とかを教えられるのでしょう。この日本という国のどこにそれを教えるシステムが在るのでしょうか。世界にはお金がなくても豊に生活できる国がいくらでも在ります。野良犬が人を恐れない、また害をしない国など腐るほど在ります。そのような国を作るためには何をすればよいのでしょうか。
わたくしがもし自分のことのみ大切にすれば、他の人も、他の生き物もどうして、わたくしのことを気に掛けてくれるでしょう。この道理がなぜこの国では見失われたのでしょう。
優しさを教えるということは、そのようなシステムを作るということなのです。家庭でも学校でも、自分は我慢をして他人のために、他の生き物のために、少しでも役立とう、それが楽しいということを教えなければならないのです。これが無い限り、現在そうであるように誰も我慢することを美徳だと認めようとしない限り、日本は世界の中で最も暮らし難い国のままであるのです。
もしあなたがカラスのすることに腹を立てているようならば、必ず犬のすることにも、人のすることにも腹を立てる筈です。これが物の道理です。あなたがそうならば、かならず人もそうです、そして人の数は物凄く多いのです。その人たちから、必ず仕返しがあるのは、これも物の道理というものです。
優しさの価値が解かって頂ければ幸いです。 玄鳥書屋にて、つばめ堂 主人記す。
著者に無断で複製を禁ず。
Copyright(c)2005 AllRightsReserved
<home>