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はじめに

 今までに何回も禁煙に失敗してきた人のために、わたくしの体験にもとづいて、その方法を解析し、誰でもたやすく禁煙できるよう、解りやすくまとめました。

 禁煙は決して難しいことではありませんが、しかしその理屈を知っているのと知っていないのとでは、その結果に大きな違いがあります。

 たとえば禁煙は意志の力でできると思い、一生懸命頑張っても、なかなか意志の力を保持するのは大変なエネルギーを要し、持続させるのは苦痛の連続となります。意志の力に頼るのは愚かにして無駄の多い方法です。ここでは苦痛なしの禁煙をめざすことに致します。

 しかし禁煙をなめて掛かってはいけません。禁煙にはコツがあるのです。それを十分に理解して、じっくりと取り掛かりましょう。たとえば、禁煙は川を飛び越えることに似ています。幅2メートルの川を飛び越えるのに助走もせずに、しかもぎりぎりの力で飛び越えようとするのは誰にとっても無謀です。やはり十分な助走と幅3メートルの川を飛び越えるための力とを以って、飛び越えるべきです。

 以下は、その禁煙のコツとは何か、どのような準備をすればよいかについて、お知らせいたします。皆さんもぜひ、そのコツをつかんで禁煙に成功してください。

  

  

まず知ってください

  ここでは禁煙に必要な知識について取り上げます。この知識を十分に理解できたかどうかが、成功の行くへを支配します。

ここで十分に理解しないままで、先へ進んでは絶対にいけません。必ずよく理解してから先に進んでください。

  

知識その1

タバコには中毒とか禁断症状というものはありません。

 わたくしは以前、1日あたり50本のタバコを吸っていましたが、新聞でこの知識をえて、初めて禁煙に成功しました。タバコには中毒も禁断症状もない。このことを信じることが成功の鍵です。

 どういうことかと言いますと、タバコをやめても苦しくないということを言いたいのです。しかし現実に苦しいのだから、そんなことは信じられないと思っていませんか。

 そのことを説明したいのです。苦しみには、それを引き起こす正当な理由があり、その原因があるから苦しみを感じるのです。ところがタバコには、その原因がないのです。麻薬等には禁断症状を引き起こす原因物質があり、タバコにはない。このことを信じなくては、タバコをやめることは出来ません。

 タバコの中に習慣性物質がはいっていることは、決してありません。しかし習慣性はあります。

 では、どうして苦しくなるのか、それを解明することが禁煙の成功の鍵ですが、簡単に言うと、そこに苦痛の原因があると、心がカン違いを起こして、その結果苦しくなるのです。なぜカン違いをするのか、それを以下に説明しましょう。

 

知識その2

なぜタバコをすうか。それはただ旨いからである。

 当たり前のようなことですが、それでもよく理解してください。

 タバコは普通の嗜好品と同じように、ただ美味しいから吸うのです。どこそこのカレーを毎日食べたいというのと、基本的には何も変わりません。

 そしてカレーを嫌いになるということがないのと、同じようにタバコを嫌いになることもありません。それで良いのです、この禁煙法は一切の無理をせずに、自然にタバコを吸わないことを習慣付けるという方法なのです。

 

知識その3

禁煙に苦痛は伴わない。

 風邪をひいたときなど、タバコを吸いたくなくなるときがあります。よく思い出してください。苦しくなったりしましたか。 また夜、寝ているときにタバコを吸いたくなって起きることがありますか。起きたから吸いたくなるのではないですか。

 もしこのようなことに思い当たることがあれば、あなたにも禁煙のチャンスがあります。

 

知識その4

それならば苦痛を感じるのは、なぜか。

 タバコが切れたとき苦痛を感じるのは、そのタバコを吸うはずであった時間がポッカリと空いてしまい、その穴を他のもので埋めることが出来ないからです。その結果、心に不安が生じ、それを苦痛とかんじるのです。

 タバコを吸おうとするときは、心と身体がすっかりタバコモードになっていて、他のモードに切り替えることを、思い浮かべることさえ出来なくなるのです。

 たとえば、どこそこの美味しいウナギを食べたい、美味しいソバを食べたいと思って、わざわざその店まで来てみたら、店が休んでいたというとき、心と身体がウナギモード、ソバモードに、すでになっているために途方にくれるようなもので、切り替えが出来ないのです。

 ウナギやソバはせいぜい1日に1回のことですが、タバコは1日に何回も、ひどい時には、ほとんど10分おきにのことですから、習慣になってしまい頭脳が思考停止状態に陥ってしまうのです。 このことが心を不安にし苦痛を感じさせるのです。

 これらのことは禁煙法の根幹をなす知識ですので、ぜひタバコを吸おうとするとき、火をつけるのをちょっと待って、心の中に何が起きるか、よく観察し、理解してください。

 これを理解せずに前に進んではいけません。何回も繰り返し、納得がいくようにしてください。

 

 

  これだけが禁煙に必要な知識です。よく理解し納得できたならば、いよいよ次は実践です。さきへ進みましょう。

 

 

 

 

 

 

イメージトレーニング

 実践はイメージトレーニングから始めます。禁煙するということは、どういうことかをイメージして、実践に備えるのです。

  

トレーニングその1

禁煙の極意

 多分ほとんどの方は剣道についてよくご存知か、あるいはテレビや映画で水戸黄門とか銭形平次とかの撃剣の場面をご覧になったことが御ありのことと思いますが、それを思い出してください。打ち掛かってくる鋭い太刀すじを峰ではじいて打ち外します。これが禁煙の極意です。タバコを吸いたいと思う気持ちをフイと外すのです。剣道では大変むつかしい技が必要ですが、禁煙の場合はまったく、やさしいことなので、ご安心ください。 もちろんテニスでもサッカーでも、ここぞという所で打ち返す、あるいは蹴りつける、それでもよいのです。

 この剣道、テニス、サッカーなどの、その瞬間の場面をよくイメージトレーニングしてください。いつでも瞬時にイメージ出来るようにするのです。そしてタバコを吸いたいという気持ちが、起こる寸前をとらえて、この場面をイメージし、それと同時に打ち払います。なんども繰り返してイメージトレーニングをしてください。

 

トレーニングその2

いざ実践、この時どうするか

 では実際にはどのようにすれば良いかといいますと、ただタバコが吸いたくなったとき、その気分をはぐらかすために、外(ほか)ごとを考えるのです。

 エーッという非難の声が聞こえてくるような気がします。そんなことはとっくに知っているし、やったことも数え切れないほどあるし、第一そんなことなら誰だって真っ先に考えることじゃないかと言うのですね。そうです、誰だって真っ先に考えることです。

 しかしこう考えてください、それは真実に近いからこそ、誰でも真っ先に考えるのです。恐らく問題はそこにあります。真っ先に考えたとはいうものの、実際には考えるのではなく、ただ思い付いただけではないでしょうか。必要な知識もなく、やみくもに外ごとを考えるといっても、なかなかタバコのことが、頭から離れるものではありません。離そうとすればするほど、ますます頭にこびりついて、決して頭から離れようとはしないものなのです。

 

トレーニングその3

タイミングをはかる

 わたしたちは、どのような時にタバコを吸いたくなるのでしょうか。食事の後、コーヒーを飲むとき、仕事が一段落したとき、あるいはわたくしの場合だけかも知れませんが、本を読んでいたり、考え事をしていたりするとき、もうじきクライマックスというときになると、ふしぎとタバコが吸いたくなります。

 これらをよく観察してみますと、次のようになります。

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タバコを吸いたいという気持ちが起こる。

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タバコを吸っている自分自身をイメージする。

たとえば、タバコを吸っているときの気持ちのよさに関する、さまざまなイメージが湧き起こってくる。

 

 

 

 

 

 このタバコを吸いたいという気持ちが、起こるか起こらないかというタイミングで、別のことをかんがえるのです。このタイミングを捕まえることが大切で、2.までくると、もう遅いのですが、そこにはかなりの余裕(10秒以上)がありますから、難しいことは何もありません。要するにタバコに対するイメージが膨らむ前に、心を外(ほか)に向けることが出来れば、それでよいのです。

 

トレーニングその4

変わりやすい心

 よく言われることですが、心は移り変わりが激しくて、コロコロと玉のように、よく転がるところから、ココロと呼ばれます。またその一方で、何かに執(と)りつかれると、なかなか離れないものであることも、よく知られています。その境目に当るのが、先ほどのタイミングなのです。その何かは、まず軽く心に接近して、次に心に執りついてしまいます。このタイミングさえ逃さなければ、実に単純な他愛のないことでも、心を外に向けることが出来るのです。何かの動作と思考のくみあわせが有効です。

 またいつも同じことでも、かまいません。たとえば椅子から立ち上がるだけでもよいのです。もちろんタバコ以外のことを考えていなければならないのですが、それこそ何を考えていてもよいのです。

 

トレーニングその5

心をだます

 たとえば、これはわたくしの例ですが、何か用のある振りをして、「アッそうそう」と言いながら立ち上がりましたが、その実、何も考えていないのです。しかし、これが良く効きました、これには自分自身、ほんとうに驚いたほどです。

 また立ち上がったら、「ミズデモ飲ムカ」と言って水を飲みに行くのも、良いようです。また近くの本を手にとって、「コノ本ハナンダ」と言って読もうとすることも有効でした。ほんとうは本など読む気が全然なくても、一連の動作と言葉による、瞬間的な心の動揺がタバコから、心を解放するのです。ほとんど子供だましのようですが、これが心の本当の性質なのです。

 

 

  以上がイメージトレーニングのすべてです。しかし実行に入るのは、もう少し待ってください。まだ若干の注意事項が残っています。

 

 

 

 

 

 

準備から実践へ

  ここまでは陸の上で、川を飛び越えるための練習をしてきたようなものです。どうでしょうか、自信はつきましたか。しかしまだ問題があります。

  

実践その1

助走路周辺の点検

 知識その2.で見ましたように、タバコには美味しさという無視できない価値があります。それを捨てようというのですから、それに相当するだけの理由がいります。これがないと、心がなかなか定まりません。

 健康はよほど差し迫ったことでもない限り、まず十分な理由にはなりません。川を飛び越えるための、よい踏み切り台をみつけましょう。

 たとえば女性の場合は美容上の理由はどうでしょうか。茶色く染まった歯などを、想像してみるのもよいと思います。

 たとえば男女とも、怒りはとても強い理由になります。税金の払いすぎに対する不満はありませんか。ちょっと計算してみましょう。タバコ税はいま63%強で、1箱270円のタバコの税金は170円です。わたくしのように1日に50本も吸っていますと、毎日425円よけいに税金を払っていることになります。1ヶ月では12,750円、1年では155,231円になります。実に毎年16万円人よりも余計に税金を払っていたのです。10年で160万円、タバコは年々吸う本数が増えますから、恐らくもっと多くの税金を人よりもたくさん払うことになるでしょう。しかしいったい政府はその見返りに、何か良いことをしてくれるでしょうか。それどころか年々タバコのみにとって、肩身が狭くなるなるばかりではありませんか。

 みなさんも是非、計算してみてください。そしてその税金分のお金で、何が買えるかシミュレーションして見てはどうでしょうか。毎年家族旅行でもしては、どうですか。あるいはご夫婦で、何ヶ月かに一回ホテルで過ごされる、または温泉に行くというのは、どうでしょうか。服を買うことも、家の修理も、また貯めればもっと大きなことも出来るのではないでしょうか。

 タバコを吸っていれば、時には理不尽なめにもあいます。いろいろ禁煙の理由を考えてください。現実的であればあるほど、禁煙の実践は容易になります。

 

実践その2

再確認

 本当に禁煙しなくてはならないのか、もう一度よく確認してください。そのため禁煙と喫煙の損得対照表をつくり、理性的に堅固な土台を築いてください。

 

金銭の得

火事に対する不安から解放される得

部屋と家具が汚れない得

健康の得

美容の得

後ろめたさのない得

人に嫌われない得

蔑視からの解放の得

締め付けからの解放の得

 

食べ物がおいしく食べられる得

 

禁煙しなくてはという強迫観念から解放される得     等々

 

 

 

美味しいもの(タバコ)を味わえない損

一服したときの心の開放感を感じることが出来ない損

間が持てなくなる損

格好よくタバコを吸うことができなくなる損

喫煙の小道具に凝ることができなくなる損

喫煙具が無駄になる損                      等々

 

 

 

 

 

 このような表を作り、ほんとうに禁煙したいかどうか、確認してください。

 もし、気持ちが定まらないときは、時期尚早です。無理をしても失敗したときには、大きなショックがあると思いますので、今しばらく待ちましょう。禁煙法とは気持ちのコントロールができるかどうかなのです。

 

実践その3

助走

 1週間か10日ほど先の休日を禁煙開始日と取りあえず決めましょう。禁煙に悲壮感を懐くことは禁物です、そのために取りあえずとするのです。快く軽やかに始めたいので、その日に雨が降ったら取りやめと決めておいても良いでしょう。吉日を選ぶことも必要ならばしましょう。

 もし決めた日よりも、早くチャンスがあれば、すかさず禁煙に踏み切ってください。遠慮は無用です。

 もし決めた当日になっても、まだ禁煙に踏み切っていなければ、気持ちの良い朝のうちにタバコを買いに行きましょう。なにしろタバコのみにとって、タバコが切れることほど嫌なことはありませんから、タップリとたくさん買いましょう。禁煙中にタバコを意識しないためですから、結局は無駄になるものでも、大切な投資です。20箱ぐらいあれば、まァ安心出来るのではないでしょうか。

 くれぐれも悲壮感をいだかないでください。その日になったら、1本も吸ってはいけないということではないのですよ。その日になっても、吸いたければ、ドシドシ吸ってもかまいませんよ。

 

実践その4

踏み切り

 さァ禁煙を始めるぞと決意するのは禁物ですよ。何も考えずに、フッと入るのです。気が付いたら禁煙をしていたというのが良いのです。そのチャンスは必ず来ますから、あわてずに待つことです。

 タバコを吸おうとして、1本手に取ろうとした瞬間、「アッそうそう、アレをしなくっちゃ」と言って席を立つのですよ。あくまでも、かるーく、軽く入ってください。これがあなたの禁煙の始まりです。

 あとはこの調子で続けるだけです。まず最初の1週間、次は5週間、次は3ヶ月、1年、これでもう安心です。タバコを吸おうとした瞬間だけに5秒間、毎回その5秒だけで、もう禁煙は成功したのです。

 

 

  もうあなたは禁煙モードになりましたね。それでも安心は禁物です。次は禁煙中の心得です。

 

 

 

禁煙中の心得

禁煙中の心得その1

代用品に頼らない

 タバコを吸いたくなったとき、飴をなめて気分転換をしようとする人がいますが、それは例えば悪い道を避けようとして、もっと悪い道に踏み込むようなものです。そのうえに口直しに一服したくなり、意識がどうしてもタバコから離れなくなって、いづれ何ヶ月かの後には、禁煙は失敗します。

 禁煙法というものは、タバコを吸いたいという気持ちを、無理になくそうとせずに、最小限の努力で以って、その気持ちとつきあってゆくうちに、自然とタバコのことを忘れるということなのです。

 たった5秒のその瞬間を積み重ねることによって、自然にタバコから離れるということを、決してお忘れなく。

 

禁煙中の心得その2

普段通りに生活する

 もしコーヒーを飲む習慣があれば、それを続けてください。禁煙中であることを常に意識することは、心の重荷になります。重い荷物を背負っていては、とても機敏に動くことは出来ません。心を軽くして、タバコを吸いたい気分になったとき、始めてヒラリと身をかわすのです。

 そのときだけ意識するということを学んでください。

 

禁煙中の心得その3

たった1本で禁煙がふいに

 禁煙は何年続けてこようとも、たった1本吸うだけで崩れます。会食あるいは酒席では注意してください。これこそは、避けられれば避けることがよろしいのですが、なかなかそうも言っていられないのが実情でしょう。そのときはこのようにしてください。

 もし酒席でタバコが吸いたくなったときには、お箸で手近のものをつまんでください。たとえば刺身のつまの大根でも少しつまんだら、目の前まで持ってきて、「コレハナンダ」と言ってみましょう。声に出す必要は、必ずしもありませんが、小声で言ってみるのが確実です。ほとんど「コレハ」と言ったあたりで、タバコから意識が離れます。おそらく一連の動作と言葉の力によって、意識の流れが断ち切られるのでしょう。

 大切なことは常にこの要領で意識をコントロールすることです。タバコが吸いたくなった、その時のみというのが、この禁煙法のミソなのですから、ふだん禁煙を意識することは極力避けてください。1本も吸わない決意などは論外です。心を軽くしてフッと身をかわす、ここに禁煙のコツがあるのです。

 

 

おわりに

  以上で禁煙法は終わりです。これを読んですぐに禁煙に踏み切るというのは、なかなか大変です。しかし禁煙したくなったときには、きっとお役に立ちます、憶えておいてください。

  心より禁煙に成功されることを、祈っています。

 

 

 

 

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