Eversharp "Ventura"
今年も慌ただしく過ぎようとしておりますが、皆様お変わりございませんか。

今月は事情がございまして、お見苦しき老人の持ち物自慢から始めることになり、誠に恐縮ではございますが、乏しきストックもいよいよ篋底を顕わすにいたりまして、とうとう上の広告にもございますとおり、貧弱な「新学期のペン( the back-to-school pen )」を御披露することに相いなりました。 まさに汗顔の至りでございますが、しかし、さりとはいうものの、安物にはまた安物の良さというものがございまして、気軽に外に持ち出したりしてポッキリと折ってしまおうが、駅でついうっかり落としてしまおうが、要するに学生にはこれぐらいの物がちょうど宜しいのではないかと愚考しているような次第なのでございます。 そのような訳で学生用のペンを手にして昔を想い出し感慨に耽るのもまた一興ということでしょうか、‥‥

エバーシャープ社は主に高級万年筆を比較的少量生産することで業界に一定の地位を築いてきましたが、第二次大戦の後、万年筆が大衆にも普及し始めると次第に路線を外れることになって安価な製品を大量生産せざるをえなくなり、1957年にはパーカー社に買収されることになるのですが、エバーシャープ社独自の企画としては1952年発売の、この"Ventura"という製品が最後ということになります。

ではエバーシャープ社の普及品とはどのようなものかといいますと、およそ二点を挙げれば充分ではないかと思っておりますが、第一の点と致しましては高価な金張り( rolled gold/gold filled )ではなく、金が安価な電気メッキだということであり、写真でも容易に判別することができるのであります。その第二の点はといいますと、ボディーがエボナイト/セルロイドの挽き物ではなく、安価な樹脂のモールド製品だということで、これもネジの部分などよく見れば容易に判別することができます。 いづれにしても、これ等の欠点は本質的なものではなく、書き味に影響を与えることもありませんので、かえって値段の割りに良い製品を手に入れられたことを喜びたいぐらいだと思います。

普及品には普及品なりの良さというものもありますが、それよりも普及品にはその会社が最後まで大切にしてきたものが現れてきますので、いわば会社の良心を如実に知ることができる点を評価すれば、これもまた充分にコレクションに値するものだとすることもできましょう。

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万年筆:Eversharp "Ventura" 14knib="fine"
インク:Jacques Herbin "Vert de Gris"
原稿用紙:
色:苔色
テーマ:山水
モットー:白居易 放言詩 『
松樹千年終是朽,槿花一日自為榮。
何須戀世常憂死,亦莫嫌身漫厭生。
生去死來都是幻,幻人哀樂系何情。
A pine tree will die for a thousand years.
A hibiscus flower will be proud of its one-day prosperity.
Why do you need to love the world and worry about death.
But don't hate your body to be tired of life.
Both life and death are illusions.
How does that iluusion's joy or sorrow relate to its heart. 』

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今月の百人一首は、”大江千里”と ”菅家”です。

大江千里:
  月見れば千々にものこそ悲しけれ
  我が身ひとつの秋にはあらねど
大江千里:生没年不詳。平安時代の歌人。
正五位下、式部権大輔。三十六歌仙の一。
宇多天皇の勅命により家集『句題和歌』を献上。

句釈:「千々に」は、「様々に」。
「悲しけれ」は、「こそ」に呼応して生じる/受ける感情の強いことを表わす、「非常に悲しい」。

意釈:秋の名月は、次ぎ次ぎと悲しいことを追憶させる。
「秋の月を見ると千々に心が乱れ、悲しさがいやつのる」、
「秋が悲しいのは、わたしだけではないはずだが」。

評釈:秋がもの悲しい季節なのは古今不易である。
式部権大輔は、大学寮・散位寮の2寮を管掌していた。 
大学寮は、中央官庁の官吏養成に関する教育と事務を管掌した機関であり、明経・文章・明法の3本科と算道・書道の2付随学科があった。
この歌は一説に、『白氏文集』中の、
「燕子樓中霜月夜,秋來只為一人長』に依ると言われている。

この歌は、
前句で、秋の悲しさが、心を千々に乱して耐えられぬと説き、
後句で、秋は悲しいものだと理解しながら、なお悲しみがつのると説く。
この歌は、
平凡のように見えながら、心に迫る力を内に含み言い知れぬ強さがある。
名歌中の名歌であろう。



菅家:
  此の度はぬさも取りあへず手向山
  紅葉のにしき神のまにまに

菅家:菅原 道真 845(承和12)年- 延喜3(903)年。
平安時代初期の学者。従二位・右大臣。贈正一位・太政大臣。
宇多天皇に重用され、醍醐朝には右大臣にまで上り詰めるが、
昌泰の変に連座して大宰府員外帥として左遷され現地で没する。
死後怨霊と化して天満天神となり、深く怖れられる。

句釈:「幣(ぬさ)」とは神に供える紙・麻布・綿布等 。幣帛。
「あえず」とは「十分にしおえることができないままに/するひまもなく」。
「手向山」とは東大寺の"手向山八幡宮"。
「錦(にしき)」とは金糸で模様を織りなした絹の織物。
「神のまにまに」とは「意のままに/隨意に」の意。

意釈:紅葉が余りに美しいので、
「この度は幣を取るひまもなく、手向山の神の御前にはせ参じました」、
「この美しい紅葉の錦を、神の御心にまかせてお楽しみくださいませ」。

評釈:「幣も取りあえず」とは、
単に忘れ物をしたり、意のままにならなかったが故ではなく、
紅葉の美しさを、一刻も早く神の御前に報じようとしたが故である。
道真公は忠臣として知られているが、単なる忠臣ではなく誠心の人である。
この誠心を写す歌の域を超えた歌は、遠く批評家の及ばないところである。


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≪クリストシュトレン( ChristoStollen )「暮らしの手帖」より≫
≪材料2個分:生地≫
  1. 強力粉: 500g
  2. 塩:小さじ1.5(元レシピでは大さじ1.5)
  3. グラニュー糖:100g
  4. ドライイースト:17g(元レシピは生イースト50g)
  5. 牛乳:80ml
  6. 玉子:2個
  7. 無塩バター:230g(生地用)
  8. 無塩バター:340g(当日~翌々日にかけて塗る)
  9. 粉糖:適宜(仕上げ用)
≪材料:フィリング≫
  1. カレンズ/レーズン:250g
  2. オレンジピール/レモンピール:150g
  3. レモンの皮のすりおろし:1個分
  4. アーモンド(ロースト):100g
  5. シナモンパウダー:大さじ0.5
  6. カルダモンパウダー:大さじ0.5
  7. ナツメグパウダー:大さじ0.5
  8. ローマジパン(アーモンドペースト):150g
≪作り方≫
  1. マジパン以外のフィリングをボールに入れ、分量の強力粉のうち大さじ2杯分を加え、大きく手で混ぜて全体に粉をまぶす。
  2. 強力粉、塩、グラニュー糖、ドライイーストをボールに入れ、中央にくぼみを作って、溶き卵と温めた牛乳を混ぜて流し入れ、周囲の粉を引き込むようにしながら、全体をさっくりと混ぜ合わせる。
  3. バターの1/3量をボールに入れ、しっかりと生地に練り込む。
  4. 生地を台に取り出し、残りのバターの半量を加え、手早く練り込み、残りのバターも加えて、なめらかな状態になるまで力を入れてこねる。
  5. 手や台についた生地がきれいに離れるようになったら、フィリングを3回に分けて拡げた生地の中央にのせ、包み込むように混ぜる。
  6. 生地を丸くまとめて、内側に植物油(分量外)を塗ったボールに入れ、ボールごとポリ袋で覆い、暖かい場所で2倍に膨らむまで、50~90分ぐらい寝かせる。
  7. 生地を2等分して麺棒で厚さ5mm程度に延したら、マジパンも2等分して棒状に伸して生地の中心に置き、2つに折って端をおさえる。
  8. 生地の外側に出たカレンズは焦げやすいので生地の内側に入れ込む。
  9. 天板に並べてポリ袋で覆い、1.3倍にふくらむまで暖かいところに50~90分置く。
  10. 180℃に予熱したオーブンに入れ、焼き色が付くまで30~40分焼く。途中で焦げそうになったらアルミホイルをかぶせる。
  11. 竹串を刺して、抜いた竹串に生地が付いていなければ焼き上がり。塗り用のバターの1/3量を火に掛けて溶かし、シュトレンが温かいうちに表面にハケで塗る。
  12. 完全に冷ましてからクッキングシートで包み、さらにアルミホイルできっちり包んで室温で1日置く。
  13. 翌日シュトレンを包みから出し、180℃のオーブンで5~10分温め、仕上げ用バターの半量を溶かして塗り、冷めてから包んで室温で1日置く。
  14. 翌日も前日と同じようにオーブンで温めて残りのバターを塗り、完全に冷めてから粉糖をアミでふるいながらたっぷりとかける。乾燥しないようにクッキングシートとアルミホイルで包み、1週間涼しいところで寝かせる。
  15. 1週間ぐらいたつと、食べ頃になるが更に1週間寝かせるともっと美味しくなる。
≪注意≫
塩は元レシピでは大さじ1.5であり美味であるが日本人には塩辛すぎるような気がするので小さじ1.5に改めた。


<クリスマスに贈る美しい友情の物語>
≪第一章≫
共和党のトランプは大統領選挙の結果に満足せず、選挙の不正と民主党の虚偽を暴き立てる。
≪第二章≫
左派のメディアはトランプの抗議は虚偽であり、正当な結果を容認しないのは民主主義を破壊するものであると宣伝して、トランプをメディアから締め出し、トランプの大声を封じようとする。
≪第三章≫
イーロン・マスクは民主党の欺瞞にうんざりして共和党に鞍替えし、トランプの為めにTwitter社を買収する。

≪第四章≫
シャルリ・エブド紙はマスクの犠牲的精神を高く評価する、――
「Twitterのマスクは、言論の自由の”お通じ”をよくする」

≪第五章≫
マスクはトランプにTwitterに戻って来いと呼びかける。
≪第六章≫
トランプは年下のマスクに助けられたことを恥じて、呼びかけに応じない。

≪第七章≫
マスクは、恥じらうトランプをからかいながら誘惑する、――
トランプ:”神よ、吾らを試みに遭わし給うなかれ!”
≪第八章≫
老人サンタは男同士の美しい友情に感じて快哉を叫んだ、――
「ばんざい、ばんざい!」
Merry Christmas
&
Happy NewYear
では今月はここまで、また来月お会いしましょう、それまでご機嫌よう。
  (Eversharp "Ventura"  おわり)

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