シェーファー万年筆( Sheaffer Pen Co. )は、”レバー吸入方式( Lever-filling System )”に関する特許を保有しており、それはゴムサック(
gum-sac )を使用する吸入方式なのですが、また同社はゴムサックを使用しない方式をも採用しておりまして、定期的メンテナンスという面倒な義務を大幅に軽減させています。 ただ面白いのは両方式が同時にカタログに載せられており、どちらも価格が同じだということです。 補修部品の売り上げに配慮した結果なのでしょうか?
この方式は通常、”プランジャー吸入方式( Plunger-filling System )”と呼ばれていますが、シェーファー社では、これを”Vac-Fil”と称しています。 その作用原理は、エンジンのピストンや、自転車の空気入れ等と同じであり、ペンの胴軸の底(
barrel's bottom )を貫通する棒( rod )の先端にはバルブが取り付けられており、棒を引き抜く時には空気や液体を通過させますが、棒を軸の中に押し込む時にはバルブと軸底との間が真空になるように貫通部分にはシールが施されています。
使用する時は、先ず尾軸( knob )のネジを緩めて棒を引き抜きますが、この時軸内にインクが残っているとそれがペン先から吹き出してきますのでインク甁の中で行わなければなりません。 棒を止まるところまで引き抜いて、ペン先をインクに充分浸し、いっきに棒を押し込みますと、シリンダーが首軸近くで少し広がっており、ピストンとの間に少しだけスキマができますので、ピストンバルブがその部分に差掛かると軸内の負圧が解消されて、インクが軸内に流入してくるという極めて簡単な仕掛けです。
これは明らかにレバー式より優れているように思えますが、 シェーファーは後にゴムサックの寿命が延びたことが理由かどうか分かりませんが、この優れた方式を捨てて、またタッチダウン方式(
Touchdown-filling System )や、スノーケル方式( Snorkel-filling System )のようなインクサック方式に戻ってゆくのですが、それ等もまた真に有用であり、また才気あふれる発明品でもあったのです。
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