インドの万年筆:"Click-Century"
ロシアが事故汚染予測
  ザボロジエ原発「核燃貯蔵庫に着弾」

  欧州最大規模のウクライナ南部ザボロジエ原発の占拠を続けるロシアが放射線の「被害予測図」を発表するなど、ウクライナへの軍事支援や対ロ制裁を続ける欧米への牽掣を強めている。ロシアは原発で相次ぐ砲撃の被害を「ウクライナの攻撃によるもの」と主張、災害が起きた場合の責任をウクライナに転嫁する情報戦の一環とみられる。
  ロシア国防省は二十七日、「ウクライナ軍がザボロジエ原発に砲撃し、四発が核燃料貯蔵庫の屋根に命中した」と発表したが、真偽は不明だ。 「ウクライナはポーランドや米国製の兵器で原発を攻撃している」とも主張している。
  同国防省は十八日、東側から風が吹いた状態で原子力災害が起きた場合、原発以西のウクライナのほぼ全域が放射線に汚染されるとの被害予想図を公表した。 ロシアの占領が進む東部ドンバス地域や併合したクリミア半島は「無傷」となる一方、ロシアに強硬姿勢のポーランドやルーマニア、モルドバも被害を受ける。
  原子力事故担当のキリロフ中将は「ウクライナ政府の行動により、福島第一原発事故やチェルノブイリ原発事故と同じことが起こりうる。欧州に壊滅的な結果をもたらす」と警告した。
  ウクライナ政府は「原発への攻撃はロシアによる自作自演」と反論。二十八日には国営原子力企業エネルゴアトムがザボロジエで事故が起きれば、放射性物質は逆にクリミアやドンバス、ロシア南部に拡散するとの予測図を発表した。
  西側の外交筋は「原発を巡るロシアの情報発信は手が込んでいる。 ロシアが(偽旗作戦など)良からぬことを画策している疑いも捨てきれない」と指摘する
(中日新聞 2022年8月29日)

原発への攻撃はロシアによる自作自演」だって、いったい誰が、「自国の兵士が護っている原発を攻撃する」ってのか? この頃の新聞はなんでも言えばよいと思っているので、どんな事でも言って涼しい顔をしていますが、とうてい有りそうもないことを言うっていうのは、よほど読者を馬鹿にしているに相違ありません。しかし同時に馬脚が現れて己れの素性を明かしていることにまでは気が回らないのか、それともそんなことはどうでも良いのか?いづれにしろ碌な物じゃあございませんな。

YouTube の『マタタビの羅針盤3』からアップロードされた、『砲撃が続くザポリージャ原発の状況 ロシア国防省 Zaporozhye nuclear power plant MoD Russia 2022/08/18』をご覧ください。その真偽を保障することはできませんが、真偽を自ら判断する材料にはなりましょう。また同じチャンネルの中から同じテーマの動画を併せてご覧になれば、今現在の状況についておよそのところが理解できますし、同意できなくとも、ただ一方からの情報しか与えられていないことに気付いて、疑いを懐くことぐらいはできると思います。

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今月は、「無量寿経」の改訳を一篇お届けしますので、ご案内もうしあげます。 

鳩摩羅什の訳した「阿弥陀経」や、「大智度論」などが名訳と言われていますのは、その訳が簡明であって、同一の文句が複数あれば、皆同じ意味を有しているので、誰が読んでも同じ意味をくみ取ることができるからなのですが、この「無量寿経」は、同じ意味を別の文句で言い換えて表わすような美文調であり、その音調も流麗であって声に出して読みますと非常に調子が良く、読む事が楽しいような経典なのですが、その分だけ意味の紛れが多くなりますので、訳すのには前後を比較したりするような苦労が常につきまといます。 相当苦労して訳しましたので、是非ご一読されるようお勧めします。

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今月の万年筆は、珍しいインドの万年筆ですが、インドは中国と並ぶ万年筆大国であり、欧州の名だたるブランドのOEM先でもあります。

そのようなインドの万年筆メーカーの中の最も古いメーカーが、この「Click Pens」という会社だそうですが、Home_Page が見つからないので、詳細はまったく不明です。
”Click Century”という、この万年筆の特筆すべきところは総エボナイト製だというところです。即ちキャップ、フィードセクション、バレルが緑と黄色の波模様のエボナイト製であり、またフィードも黒のエボナイト製ですので、金属部を除けばあとはオールエボナイトということになります。

所有する3本の”Swan"と、金無垢キャップの”Eversharp Skyline"は金属部分を除いて総エボナイトですので、通常のプラスチックに対するエボナイトの優位性を比較・検討して知ることができたわけですが、エボナイトの利点には、およそ次ぎの三点があります。
  1. 磁器のように硬質な光沢が美しい
  2. 指が汗ばんできても滑らない
  3. 材質が強靭で薄くできるので軽い

インドらしく非常に安価でしたので、次々と都合3本ほど買い求めましたが、あまり万年筆に詳しくない方には多少なりと敷居が高いように思えます。何故かと申しますと、熟練の手業は非常に見事で、キャップをねじ込みますとキャップとバレルの模様がちゃんと合っているところなど、まったく文句のつけようがないのですが、仕上げが雑であり、光沢が出るまで磨いてあったのは3本中の1本だけ、残りの2本はユーザーが自ら手をかけて1500番、3000番、5000番、7000番、10000番のペーパーを順次かけ、最後にピカールで磨いて仕上げなくてはなりません。 わたくしの場合は、最初の1本が艶が出るまで仕上がっていたものですから、すっかり気に入ってしまい、後の2本も購入したようなわけですが、もしこの最初の1本の仕上げが雑だったならば、はたして購入したものかどうか、いまだに判然といたしません。

通常のプラスチック製品などは型押し(mold)で造形されるものと思いますが、これはネジ山の部分まで、みな旋盤で挽いて造られており、非常に手間の掛かった造りになっているところに価値があるように思います。

なおペン先(nib)はスチール製であり、金製に比べて魅力に欠けますが、機能が劣るようなことは少しもなく、書き心地はすこぶる良好です。

またデザイン的にも、100年前の”Swan”と同じ樽型(Barrel-shaped)であり、非の打ちどころがございません。 古今に渡って永久に色褪せることのない、スタンダードなデザインといっても良いでしょう。

万年筆:Click "Century" nib=fine
インク:Diamine "Sherwood Green"
原稿用紙:
テーマ:航海
色:若紫
モットー:茫洋乎不知遠近(How vast! I don't know it's near or far.)
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今月の百人一首は、「在原業平朝臣」と、「藤原敏行朝臣」です。
在原業平朝臣:
  千早振る神代もきかず 竜田川
  からくれなゐに 水くゝるとは  
在原業平朝臣:天長2年(825年)―元慶4年(880年)
従四位上・蔵人頭、右近衛権中将。桓武天皇の曾孫。天長3年(826年)に父・阿保親王の上表によって臣籍降下し兄・行平と共に在原朝臣姓を名乗る。

「千早振る」は、「神」、あるいは地名の「宇治」に係る枕詞。
「千早」は「逸、最(いと・いち)速(はや)」の約転とし、「千早振る」は、「最も勢いよく(薙刀等を)振る」の意、即ち「権勢のいと高きさま」を言う。
私見ながら、「逸速」を「千早」と記すは、「千年を早くも過ぎたり」の意に読み取りたるが故か?
「からくれなゐ」を「韓紅」と記すのは当字。
「から」は、「赤(あか)ら」の略にして「赤みを帯びて美しいさま」を表わす。
「くれなゐ」は、「呉藍」であり、「鮮やかな赤色/紅」をいう。即ち「からくれなゐ」とは、「色の濃い紅色」をさす。
「水くゝる」とは、「水括る」
「括る」は、「束ねて縛る」、「束ねて色を染める」の意。即ち「水くゝる」は、「水を色に染める」の意。

故に、この歌の意味はこうである、――
神代には、さぞ不思議な事が満ち満ちていただろうが、
竜田川が、からくれなゐに染まってしまったなどと、聞いたことがあるだろうか。

この歌には、
「天地清明」に通じる気分があり、からりと抜けた明るさがある。
一度聞けば生涯忘れられない名歌ではないだろうか。

藤原敏行朝臣:
  住ノ江の岸に寄るなみ 夜さへや
  夢の通ひ路 人目よくらむ
藤原敏行朝臣:~昌泰4年(901年)または延喜7年(907年)
従四位上・右兵衛督。三十六歌仙の一人。平安三筆の一。

「住ノ江の岸によるなみ」までは、「夜」を導きだすための句。
「夜さへや」は、「昼ならぬ、夜までもなぜ?」。
「夢の通ひ路」は、「夢中に女のもとへ通う」、その路。
「人目よくらむ」は、「人目を避ける」原因を推量する。

この故に、この歌の意味はこうである、――
昼ならば、人目をはばかって来られないということもあろうが、
夜の夢の中まで、あの人は人目を避けて来られないのだろうか。
又は、こうである、――
昼の間、人目を避けて女のもとへ通っていたのが習い性となり、
夜の夢の中までも、人目を避けて通うようになってしまったのか。

この歌は、
「古今集恋歌二」に載り、詞書は、「寛平の御時きさいの宮の歌合のうた」とある。
「女の気持ちで詠んだ」ように、佐伯梅友校注の「古今和歌集(岩波文庫)」は取っているが、やや違和感を感じるので、後の意味に取る方が良いだろう。
「夜となく、昼となく女のもとへ通う」幸福が、
「波が沖へ引き、岸に寄せる」リズムに乗って詠みだされており、やや浮ついた調子ながらも、舟歌を聞くような心地よさを導きだしている。
その意味で、大変な名歌ではないだろうか?


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≪ビール・パン≫
発酵剤にビールを使用するパンであり、サンドイッチに好適。
≪材料≫
  1. ビール:175g
  2. ドライイースト:3g
  3. ライ麦粉:65g
  4. 強力粉:100g+85g
  5. 塩:5g
  6. ジン:5g
≪作り方≫
  1. ビール、ドライイースト、ライ麦粉、強力粉(100g)をボールに入れてよく雑ぜた後、120分寝かせる。
  2. ボールに強力粉(85g)、塩、ジンを加え、手に着かなくなるまでこねた後丸めて、45分寝かせる。
  3. パンチして丸めなおし、45分寝かせる。
  4. 板の上で直径25cmぐらいまで延ばし、三つ折りの後二つ折りにしてラグビーボール状にし、約2倍になるまで寝かせる。
  5. 粉を振り鋭いカミソリの刃で1本切れ目を入れ、250℃に予熱したオーブンに霧を吹き、220℃で25分焼く。
では、今月はここまで、また来月お会いしましょう、それまでご機嫌よう。
  (インドの万年筆:"Click-Century"  おわり)

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