この写真はトランク側からボンネットに向けて撮影されたものですが、後輪の左右のホイールアーチ( wheel arch )は連結されてただ一つの構造体としてダイキャストされ、また前方構造体も同様に単一の構造体をなしており、その中間に開いた四角い大きな穴が明了に見てとれます。 またこの写真からは、ペイントは車体と同時にドア、ボンネット、トランクリッドが同時に施されることから、色素の付着していないバッテリーパックは最後に組み付けられたと想像することができます。
この後部のダイキャストは約70個のパーツをただ1個に集約したと報告されており、またおよそ1000機の組み付けロボットを300機減少することになったとも言われておりますので相当な成果があったわけですが、70個の部分を組み付けるにあたり、最初に形を切り抜くことから、何回となくプレスして形を整え、貼り付け、溶接し、その行程数は数えきれないほどになりますのでそのコストもさることながら、工程ごとに誤差が蓄積されて製品の精密な検査が必要となりますので、これを1個の構造体とすれば莫大なコストがカットされるばかりか、品質の安定にも貢献します。 いわゆる品質コストを抑えるのに大いに役立つのです。
岩のように堅固なダイキャストの単一構造体と同じく岩のように堅固たるべく樹脂で固められたバッテリーパックは、走行時地面から受ける応力のほぼすべてを受け持つことになりますので、側面、前面、後面、上部の構造体は、乗客の安全に専念することができ、その分安全性の向上も見逃すことはできません。
"TESLA"は最初に発売した"Model S"、"Model X"ではこのような構造をしておらず、トラックの梯子形フレーム(
ladder frame )を主要メンバーとしたようなモノコック構造を採用していましたが、次ぎの"Model 3"では後輪にのみ左右分離した構造のダイキャストを採用し、この"Model
Y"に至ってようやく前後にダイキャストを使用するようになりましたが、それがたった5~6年のことであることを考えると、”発展のスピード”がまさに加速度的であると言わねばなりません。
また"TESLA"は使用するバッテリーを"1865"から"2170"、"4680"と次第に大型化してきましたが、"TESLA"独自の規格である最新の"4680"バッテリーは構造自体が独特で製造工程を大幅に削減するものでありながら、日本のパナソニックはあまり乗り気ではないように見受けられます。 パナソニックは"2170"バッテリーの製造を請け負ってテスラのネバダ工場に莫大な設備投資をし、最近になってやっと赤字を脱出したといわれていますので、はたして「やっと設備投資を回収したばかりで十分な儲けも出していないのに、この上、更なる設備投資などやっていられるか!」とでもいうことではないでしょうか。 もしそうならば、すでに先は見えています。 パナソニックには、是非奮起されるよう願いたいところですね。
|