老人は、かなり大きな夢をもって、あえて自転車乗りの道を択んだわけですが、数日もしないうちに、それが大いなる幻影であったと覚ることになります。 まあ中学生の頃、いくら毎日乗っていたからといって、60年余りも過ぎてしまえば、初心者も同じということで、まっ直ぐ前へ進めない、こぎ出しでふらつく、踏切が渡れない、坂道が登れない、向かい風で力が足りない等々と、はっきり言ってしまえば、老人の選択はまったくの失敗であったということになります。
”お酒を携えて自転車に乗り、近くの公園でお花見しよう”というのが、老人の企んでいたことなのですが、近くの公園というのも自動車でこそ10分かそこらで行けますが、自転車ならば懸命に漕いでも40分以上、とても老人の体力のよく致す所ではございません。 儚くも老人の夢は草の葉の露のように消え去ったのでございます。
思えば老人の計画はことごとくが、これとほぼ同様の道をたどってきたような気がしますが、まあこれも運命、生まれつきがそうだから仕方がないとでも諦めるよりありません。
ということで、ここ一月ほどは、ほぼ一歩も家を出ず、ただただパソコンの前に坐っているか、ベッドの上で寝ているかの生活を営んでいるのでございますが、仏教の方では「活きるとは、体温と精神活動に過ぎない」と言っておりますので、案外人生というものも、本質的にそんなものなのかも知れません。
ということで、インターネットの時代には何事も書き留めて置けば、人の役に立つことがないとも言えませんので、出典ぐらいは書き留めて置きましょう、――
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