Wikipedia によりますと、”オリガミのような( likened to origami )”のは、3mm厚の '30x cold-rolled
stainless steel' が余りに硬すぎて、プレス機械( stamping press )が真直ぐ曲げることはできるが、曲面を打ち出すことはできないからなのだそうです。
最高速度こそ 210km を超えないものの、時速 100km に到達するまで、3秒を切るような6人乗りのトラックをどう思いますか? しかも、そのトラックは長さ
2m の荷物が積載でき、堅固な外殻に護られていて、銃弾すら跳ね返すほどなのです。 また、このトラックはエアサスペンションの力で凸凹を感じさせず、スムーズに道路を走ることができるばかりでなく、自在に車体を上下でき、最低地上高を40cm以上にすることもできるのです。
どうでしょう、少しはかっこよく見えて来ませんか? しかもその価格たるや、まさに価格破壊以外の何物でもありません。 恐らく平面プレスや、無塗装などが、価格を下げるのに一役かっているのでしょうね。
1952年頃から、1965年ぐらいまで、アメリカでは前年売った車を如何にして陳腐化するかを図り、毎年のようにモデルチェンジを繰り返して、そのたびごとにデザインが派手になり、キャデラック(
Cadillac )や、クライスラー( Crysler )などが奇を衒いすぎて、まるで満艦飾のように無意味な装飾で飾りたてていたの思いだしますが、イーロン
マスクは恐らく、その逆をやりたかったのではないでしょうか。 艶消しのステンレススチールは塗装を必要とせず、いつまでたっても古びるということがありません。見たところ、写真上に曲面らしきものは何も見えませんが、車体に包含すべき物体の最も突き出た部分を直線で繋ぎ、そこに平面を張れば、この形になります。 極限まで無駄を省いたデザインは、結局このようにならざるをえないのです。
試しに、フォードのピックアップトラック( Ford F-150 )の画像を検索してみてください。 前後のバンパー、ラジエターグリル、ドアハンドル等クロームメッキのパーツが目白押しです。そのような無駄なオーナメントを付着させて、どうでも他人と差別化せねばならないのでしょうか? どうせ差別化するなら、圧倒的な動力性能で差別化した方が、同じお金を使うにも、より効果的だと思いませんか?
Tesla Cybertruck の場合、デザインの簡素化は外部ばかりではありません。 内部の広いダッシュボードには計器類や、スイッチ、ダイヤルの類が何もなく、その中央から後方に向かって、17インチのタッチスクリーンが突き出ているだけです。 レーダーや、多くのカメラで捉えた前後の車を映したり、ナビの画面を映したりする以外にも、クロームで縁取られたメーターや、エアコンのダイヤルに代って、タッチスクリーンが、その役割を果たすのです。 そしてそのダッシュボードたるや、紙や木製ファイバーで作られ、それにマーブル模様が印刷されているに過ぎません。 高価な木製や、カーボンファイバーのパネルを所有するというような、秘かな喜びを奪ってでも、価格を低下させるのには、意味があります。 イーロン
マスクの考えでは、この世界には車が多すぎる、所有せず必要に応じてレンタルするだけではいけないのか? という疑問を投げかけ、この世界からできるだけ多くの無駄を省き、限りある資源を有効に活用したいと思っているのです。
天才の思考は、時として凡人の常識を覆します。 もはや、車のデザインで購買欲をそそるような時代ではないのかも知れません。 テスラのエクシビションを見ながら、老人はこう考えました、――誰か、圧倒的な性能よりも、無意味なデザインで車を選ぶことができるのだろうか? と。 そして何か、非常なる満足を憶えたのです。
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