小鬼ゆり


庭に埋めておいた百合根から、小さな芽が出てきましたので楽しみにしていたところ、やがて身の丈に余る茎に育ち、とうとうこのように立派な花を咲かせるようになりました。ジャックの豆の木にも似て、なんとも芽出度いことではございますので、早速写真におさめたようなわけですが、もとはといえば、お正月の御節料理の残り物でございますので、老人の驚喜もひとしお、それを言い表すべきことばを知りません、‥‥

ちょっと見には鬼百合のように見えますが、家内に言わせれば、百合根は小鬼百合からしか生じないといいますので、やはりこの花は小鬼百合なんでしょう。 そう言えば、昔、家の畑に咲いていた鬼百合は、もっとガシャガシャしていたような記憶もございますので、それに比べますと、こっちの方は、だいぶん清楚な感じて、ずいぶん美しいように感じられます。食用にもなり、観賞用にもなるとは、文武両立、身心充溢の如しというに似ておりますので、老人も、じっくり観賞して、少しばかりあやかることにいたしましょう。

***************************


鴨川の流れに遊ぶ、二羽の千鳥、なにやら新撰組の歌のようでございますが、荒い波にはしぶきが立っておりますように、鴨川は昔はよほど荒れたものと見えまして、波を静める為めに、竹篭に石を詰めて沈めながらも、橛(くい)を打って、その竹篭の流されるの制せねばならない様からも、この川の荒々しさがうかがえます。鴨川の千鳥(かもめ)は、名物でございますが、その赤い足を伸ばして翔ぶのを見事に写しとったところも、なにやら珍しいような気がします。

この角度から、じっくり鑑賞しますと、その情景が眼前に観るが如く感じられますし、その筆致にも気品が感じられますので、あるいはこの茶碗は上物かもしれません。ひょっとしたら国宝かも、‥‥。



暑い季節ですからな、もう一点、鴨川の流れにちなんで、車輪の川流れを御覧いただき、涼しさを味わっていただきましょう。

牛車(ぎっしゃ)の車輪でございますので、平安時代のことでしょうか、木製の車輪が緩むのを防ぐために、索縄に繋いで鴨川の流れに沈めたというところですが、図中には緑と赤の車輪は右に流れようとし、青は左に流れようとしていますが、川の流れは一方に決まっていますので、繋がれた車輪が川の流れにもて遊ばれて、右往左往している様子を写しとったものと思われます。

この角度から、じっくり鑑賞しますと、気品までは感じられませんが、涼しさが味わえますので、まあ悪くはないと言ったところでしょうか、‥‥ひそひそ陰口も聞こえてきますが、まあ聞かなかったことにいたしましょう。

車輪をデフォルメして、流れの方向を示すのは、他にもよく見かけるところです。



****************************


  岐阜の銘菓、「起き上り最中(起き上り本舗)」です。
  ここの最中は、材料が良いのか、炊き方が違うのか、餡がふっくらして舌にさわらず、甘さに爽やかさを感じるのが特徴です。
では、今月はここまで、また来月お会いしましょう、それまでご機嫌よう。
  (小鬼ゆり  おわり)

<Home>