平成31年元旦


却くを知らぬが性の、いのししは
  初日を追ふて、いざ海底へ
            つばめ


却くを知らぬ定めの、いのししも
  智慧の深きは、楽しみて居り
             つばめ

えー、皆様、どうも明けまして、お目出とうございます。
本年も、旧年に相変わりませず、よろしくお願い申上げます。

旧年中は、大きな台風に襲われたりして、老人も非常なる恐惶を来たしておりましたので、今年は一年中安心していられるよう、神仏に祈っておるような次第でございますが、暮れも押し詰まってから、降って湧いたかのように、この国が国際捕鯨委員会( IWC )を脱退したというようなニュースに接しまして、老人は、まるで不吉極まりない初夢を見たかのように、不安を募らせているのでございます。

「National Geographic」日本版に、次の記事が掲載されていますが、この中には、非常に重要な事柄が示唆されています、皆様、どうか慎重に隠された意味を汲みながら、読み解いてくださいませ、――

IWC脱退 商業捕鯨を再開する日本の今後
国際捕鯨委員会(IWC)から脱退することを宣言。今後何が起きるのだろう
2018.12.28

 2018年12月26日、菅義偉官房長官は、日本が国際捕鯨委員会(IWC)から脱退し、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)で商業捕鯨を2019年7月から再開することを決定したと発表した。89カ国が加盟するIWCは、クジラを保全し、世界の捕鯨を管理することを目的とする国際機関で1946年に設立。1986年には商業捕鯨を禁止している。

 動物の苦痛を軽減するために活動する非営利団体、動物福祉研究所と、国際的な野生生物犯罪を追跡する環境調査エージェンシーの報告書によると、日本は鯨肉の主要な市場だが、消費量は少なく、国全体での年間消費量は4000~5000トン、1人あたりの消費にすると年間30g程度だという。

 クジラとイルカの保護に取り組む英国の非営利団体「ホエール・アンド・ドルフィン・コンサベーション」の捕鯨プログラムマネジャーのアストリッド・フックス氏は、このニュースが正式に確認される前に、日本がIWCを脱退する主な理由は政治的なもので、自国の海は好きなように利用できるというメッセージを送るためだろうと、米ナショナル ジオグラフィックに語っていた(国際社会は、最近も日本によるイワシクジラの調査捕鯨を阻止するために動いていた)。

 フックス氏は、捕鯨国の中で指導的地位にある日本がIWCを脱退したことで、韓国やロシアなどの捕鯨国がそれに続く可能性があると指摘する。 (参考記事:「絶滅危惧種のナガスクジラ漁岐路に、アイスランド」)

 商業捕鯨の禁止後も、国際社会は、生物学者がクジラの繁殖状況、胃の内容物、環境変化の影響などを科学的に調べるための調査捕鯨を例外として認めていた。日本は長年、調査捕鯨として捕獲したクジラの体の一部を研究者に提供し、「残りの部位は食用に販売している」と批判されていたのだ。

 国際的な動物愛護団体ヒューメイン・ソサエティー・インターナショナルのキティ・ブロック会長は、「日本は商業捕鯨の一時禁止の取り決めと、国際的な市民の意思を長年にわたり軽んじてきたのです」と語っている。

 2018年9月に開かれたIWCの総会で、日本は商業捕鯨の再開を提案。しかし、投票で否決された。 (参考記事:「商業捕鯨再開へ首相意欲、海外の反応は」)

「商業捕鯨の再開のために、日本は多額の資金を投入してきました」とフックス氏は言う。「日本政府には、この総会の提案で国内の世論に働きかけられると期待している人もいました」

 総会後、日本の谷合正明農林水産副大臣は、IWCからの脱退の可能性を示唆した。

 日本は過去にも同様の示唆をしている。しかし、フックス氏は今回、これまでとは違うものを感じたという。「商業捕鯨を受け入れられなければ、本当に脱退するつもりなのだなと感じました」

 ブロック氏も同じ見方をしていた。「脱退をほのめかすのは、日本の常とう手段でした。何年も前から繰り返していましたが、今回は本当になりました」

 IWCから脱退することで、日本は今後、IWCが許可してきた公海(どの国にも属さない海域)での調査捕鯨ができなくなる。国連海洋法条約は、日本を含む署名国に、海洋哺乳類保護のための「適切な国際組織」を通じて活動することを要請しているからだ。IWCこそ、その組織であるというのが各国の法律学者の一般的な見解で、IWCに加盟していない国にとってもその点は変わらない。日本がIWCから脱退すれば、自国の領海とEEZでなら、監督なしに捕鯨を再開できることを意味する。

 日本のIWC脱退は、南極海のクジラにとっては良い知らせになった。日本は2016年には南極海で300頭以上捕鯨している。その中には200頭以上の妊娠した雌も含まれていた。 (参考記事:「北海道より大きな海洋保護区を新設、アルゼンチン」)

 もちろん、日本の海域に生息するクジラにとって、日本のIWC脱退は悪い知らせだ。なかでも心配されているのは、日本の海域の「日本海・黄海・東シナ海系群(J ストック)」のミンククジラである。ミンククジラが標的となったのは、他のクジラに比べて個体数が比較的多く、商業捕鯨がさかんだった1970年代にもあまり減少しなかったからである。 (参考記事:「ミンククジラの不思議な捕食行動」)

 クジラに関する法律の専門家であるマイアミ大学の法学教授ナタリー・ベアフット氏は、日本が商業捕鯨を続けたいという意思を明確にしたことで、「話が単純になったと言えるかもしれない」と指摘する。

「私たちはこれまで、日本が科学研究のために調査捕鯨を行っているという建前の下で、話し合いをもっていたのです」と彼女は言う。「日本が立場を変え、『さあどうですか。私たちは商業捕鯨をやっていますよ』と言うなら、前提が変わります。彼らが海で行っていることについて、腹を割って話し合えるようになるからです」

 日本のIWCからの脱退は、今後の日本にどのような影響を及ぼすのだろうか? 正式な取り決めは特にないが、ほかの加盟国が、自国の海での日本漁船の操業を禁止するなどの制裁を独自に科す可能性もある。日本は捕鯨をめぐる国際的な話し合いに参加することもできなくなる。

「グローバル化が進む今日、取り決めに反対であっても全員がテーブルにつき、交渉を続けることが望ましいのです」とベアフット氏は言う。「私たち全員が直面する地球規模の問題は、全員で取り組む必要があります」 (参考記事:「絶滅危惧のセミクジラ、相次ぐ不穏死 3週間で6頭」)

 IWCのケイト・ウィルソン報道官によると、日本が2019年6月末までにIWCから脱退するには、2019年1月1日までに条約の取りまとめ役である米国務省に脱退を通告し、国務省はIWC事務局にその旨を報告する必要がある(編集部注:日本時間の12月26日に通告した)。

 日本の米国大使館の担当者からのコメントは、2018年12月26日時点では出ていない。

 フックス氏は、日本がこのタイミングでIWCからの脱退を通告したのは偶然ではない可能性があると指摘する。日本では、ちょうど年末年始の休暇の時期にあたり、国内での批判の声が弱まる可能性があるからだ。
老人にとっては予想通りですが、外国の方から見た、この国の気質( the national temperament )は、凡そ次のように受け取られているのではないでしょうか、――
  1. 嘘つき:一目瞭然たる商業捕鯨を、検査捕鯨だと言い張る。
  2. 他人の意見を聞かない:自分の意見が通らなければ、脱退する。
  3. 意地っ張り:必要のない商業捕鯨にこだわっている。
  4. 他人と同調しない:全員で取り組むべき問題に、自己を押し通す。
  5. 要するに:躾の悪い子供のように、時々お灸を据えてやる必要がある。
その結果が、どうかと言えば、≪マイアミ大学の法学教授ナタリー・ベアフット氏は、日本が商業捕鯨を続けたいという意思を明確にしたことで、「話が単純になったと言えるかもしれない」と指摘する。≫ということなのですな。要するに、『我々の仲間でない者には、遠慮会釈することなく、機会を捉えては、お灸を据えてやるぞ』、ということなのです。

老人は、ここで嫌でも思い出さずにはいられません、『国際連盟』を脱退したこの国が、その後、どのような仕打ちを受けたかを。

国際連盟脱退を、世界史教材「世界史の窓」を通して、見てみましょう、――
  国際連盟脱退:日本は1931年、現地軍の関東軍が独自行動で満州事変を起こしたのを機に中国への侵略を開始、満州全土を制圧して、1932年3月に傀儡政権満州国を建国した。これに対して、中国政府は国際連盟に満州国建国の無効と日本軍の撤退を求めて提訴した。それを受けて国際連盟はリットンを代表とする調査団を派遣した。リットン調査団は1932年3月から6月まで現地および日本を調査し、リットン報告書をまとめた。報告書は日本の侵略と認定した。ただし満州に対する日本の権益は認め、日本軍に対しては満州からの撤退を勧告したが南満州鉄道沿線については除外された。
 1933年2月、国際連盟総会はリットン調査団報告書を審議、日本の代表松岡洋右は満州国を自主的に独立した国家であると主張したが、審議の結果、反対は日本のみ、賛成が42カ国で可決された。これを受けて日本政府は翌3月、国際連盟脱退を通告した。
清朝滅亡後、日本は国民政府より満州の地を租借して、彼の地の興隆に尽力したのでしたが、魔が差したとでも言えばよいのでしょうか、関東軍の指導の下、旧清朝皇帝の溥儀を立てて独立を宣言し、満州国を竪立してしまったのです。当然の事ながら国民政府も黙ってはいません、国際連盟に提訴することになり、ついに国際連盟はリットン調査団を派遣することになったのですな。そこで事情を調査したところ、リットン氏は次のような結論を導くに至ります、「満州国建国は不法であり、政権は国民政府に帰属すべきであるが、日本の莫大な投資に基づく、南満州鉄道、及びその他の権益は日本に属するものとするのが、適切である」という、まことに酸いも甘いも噛みわけた落し所で、これで満足しなければ、いったい何が目的なのかといった所でした。ところが、この国は、それ以上を望むのは無理であり、無謀であったにもかかわらず、全部を手に入れられなければ、連盟を脱退するまでだと、子供がだだをこねるようにして飛び出してしまったのですな。

それ以後は皆様ご存知の通り、太平洋に於いて艦隊を潰滅させられ、島嶼部、及び沖縄までも取られますと、なんとか本土決戦だけは避けたいと、各国にアメリカとの仲介を模索するも、誰がお前なんかのために苦労したいものか、と一顧だに与えられず、ついには日本全土を焼け焦がす焼夷弾の雨を霰のように受けて、更に広島、長崎に原爆を喰らうにまでに至ったというのが結末なのです。はてさて、いったいこの国は、懲りるということを知らないのでしょうか、‥‥。

この国の人は、人に意見されるのを好みません、「人のする事に、他人がいらぬ口出しをするな」とばかりに、親切な忠告すら受け容れようとしません、この国の病弊ですな。お互いに注意したいものです。過去の悲惨事を繰り返さないために。歴史は、己れを省みるためにあるのです、歴史に学びましょう。



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”剃刀に革砥を当てる老人と、その妻の図”
老人は、髪が薄れ、地肌の見えるのが気になって以来、十数年間、バリカンで丸刈りにしておりましたが、去年の三月以後は、安全剃刀で顔を剃るついでに、頭を剃ることに致しましたので、剃刀の良し悪しには、殊の外敏感になっておりまして、あれやこれやと試している中に、鼠が子を生むが如く、無慮19本の所有を見るに至り、ようやく已むに至ったのでございますが、その中でも革砥で研ぎながら、たった1枚の替刃をもって、少なくとも50回は頭を剃ることのできる”VALET”が、老人のお気に入りで、1本の不良品を除いて、”VALET”の良品を8本まで所有するに相成ったのでございます。



”VALET”の替刃は、小学生の時、鉛筆削りに使用していたような片刃のもので、剃刀のホルダー部分にセットして、2本のローラーの間に革砥を通せば、本体を前後に動かすことにより、図に見えております歯車の働きで、巧妙に扇で扇ぐように刃の向きが替りますので、革砥に傷をつけることなく、10~15ストロークで研ぎあがり、研ぎあげた後は、革砥を抜き取って、レバーを動かせば、ホルダーを本体の使用位置に固定することができ、替刃を取外すことなく、すぐに使用することができますので、研ぎ器と剃刀とをコンパクトに結合した、極めて便利な仕掛けであると言わざるをえません。

昔は、1枚の替刃が随分高価でしたので、世間にも非常に好評を博したそうで、この国でも丸善を通して輸入されたものが出回っており、老人の祖父も、これを使用しておりました。老人には、言わば一種のノスタルジアですが、また剃り心地も極めて優秀で、他の種類と併せて3日に1度の割りで使用しております。



8本の”VALET”中、最も高価で使い心地の良い2本をまとめて、1本の革砥とともに、ボール紙製漆塗りの箱に入れて、交互に使用しております。この2本中の1本は未使用、1本は使用された痕跡をかすかに有するものの、新品同様のものであり、共に立派なニッケルメッキのケースに、革砥と共に入っておりましたが、場所を取りますので、敢てボール紙の箱を作って、このように致しております。

”VALET”は、ほとんどが戦前に作られたもので、機構・工作が良好で機能的に衰えることがありませんので、この製品のように大正から昭和初年にかけて作られたものであっても、海外のオークション等で良品を手に入れるのは、比較的に容易にできます。まあ老人よりも年上の製品が未だに現役だというのも、一種の驚きですな。



この4本は、”Gillette”の製品で、大小があり、大きい方は当りの強さを変えられますが、1~9の中、常に4~5で使用していますので、この Ajustable 機構は老人に取っては余り使い道がございません。3日に1度づつ、4本を順繰りに使用していますが、使い心地が美事にそろっているのは特筆ものでしょう。この中のGilletteのロゴのすぐ下に見えるのが、恐らく1947年製、その他は1959~1961年製です。この種類は機構が複雑で、不良品に当ることが多いということですが、これ等は皆どれも優品で美事な剃り味を呈することができます。

前の”VALET”の替刃は、厚さ0.23mmの片刃であるのに対し、この”Gillette”は、厚さ0.1mmの両刃を使用しますので、切れ味は当然、此方の方が勝っています。

”VALET”の替刃は少なく、日本のフェザー製が有るのみで、凡そ一枚50円しますが、両刃の替刃は種類が多く、イスラエル製の”Personna”は、一枚当り15円で、凡そ10回使用可能ですので、切れ味に劣る”VALET”を、あえて使用する意味はあまり有りませんが、やはりノスタルジアの部分が多いということでしょう。



この2本は、前にご紹介した”Fatip”です。これもまた美事な剃り味で、前の二者に引けを取ることはまったくございませんので、やはり3日に1度の割合で金銀を交互に使用しております。

安全剃刀と言われてはおりますが、髭や髪に水を吸わせて軟らかくしてやらなければ、刃先が食い込んだり、滑ったりして、時には血を見ることがございます。その理由から、石鹸と、それを泡立てるためのブラシはかなり重要な役割を果たすことになりますので、ブラシの方もそれなりに集まってしまいました。もし御迷惑でなければ、その中、お見せすることになるかも知れません。

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羊羹銘:常磐木(大口屋)

では今月はここまで、また来月お会いしましょう、それまでご機嫌よう
  (平成31年 元旦  おわり)

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