染付茶入


老人は、人様より常に指摘を受けるところでございますが、極めて物神崇拜の念が強うございまして、コレクションというような系統だったものではございませんが、ひとたび物欲が湧いてきますと、次から次へと欲しい物が眼前に現れて、懐の許すかぎり手当たり次第に買いあさるのでございますが、その熱の冷めた後には物神の暴威の跡が歴然たる様相を示しており、すなわち家中に不必要な物が溢れかえっているのでございますな、‥‥。

物神が取憑くことを英語でフェチシズム( fetishism )と申すそうでございますが、世の老人が骨董を買いあさったりするのも、すなわちこれなのでございますな、‥‥。しかし、不思議なことに物神はもっぱら男性のみに取憑き、女性には取憑かないようで、骨董好きの横町の隠居と言えば、その隠居は爺に決まっておりまして、婆の隠居などということは決してないのでございます。

ある時、老人の買い集めた万年筆を、家内に試し書きさせて、一一観想を聞いてみますと、これはぬるぬるするとか、これはがりがりするとか、これは安定感があるとか、これは滑って持ちにくいとか、いたって尤もな観想を述べながら、どれが欲しいのかと問いただしますと、万年筆は高校の時に買ったものがあるから、それ以上もらっても使い道がないと言って平然としておりますので、如実に男女の違いということを知らしめられるのでございますが、‥‥また、時として老人に物欲が生じるのも、男であれば当然のことで、むしろ男らしさと言っても宜しいのではないかと、窃かに思っているのでございますよ、‥‥。



そういった訳で老人は、先年中は茶道具の収集に余念がなかったのでございますが、茶道に身を入れるのは、男性に珍しく、女性には珍しくないという事が関係しているのでしょうか、オークションで買い手の集まるのは、もっぱら箱書/極書の如何に依るようでございますな、‥‥。道具屋にしてみれば、いかにも、その方が客に売るにも都合が宜しいようで、なにしろ相手が女性では五感に訴えるわけにはいきませんので、理解しやすい箱書が、オークションで値を付ける際の要件ということになるのでございますな。

でまあ、この棗のように「古代屋?(古代庵?)」とか、「誠堂?」とか、訳の分らない箱書がありますと、誰も見向きもしないという訳で、貧乏な老人にも手に入れることができるのでございますが、‥‥。

どうでございます?染付の発色、色相、鮮度、明度、透度、筆先、文様、意匠、形態、手触り、どれを取っても完璧な逸品が、捨て値同然で手に入るのですから、なかなか止められることではございませんな、‥‥。

どうか、藍染め布と、葡萄の葉の色との発色を見比べてみてください、触れなば手が染まるようでございましょう?老人もガラクタを山ほど掴まされましたが、この一品で、立派に元とを取り返したようにも思えるのでございますな、‥‥。



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≪葛饅頭の作り方≫
≪材料:10個分≫
  1. 本クズ:50g
  2. 砂糖:90g
  3. 水:190cc
  4. 小豆こし餡:250g
≪作り方≫
  1. こし餡を10等分して丸める
  2. 分量の本クズ、砂糖、水を鍋に入れて混ぜあわせ、中火に掛けて煮立つまで、たえずかき混ぜながら、底に沈殿しないようにする
  3. 泡が出て煮立ち、糊状になったら弱火にして練り、透明になってから更に1~2分練って火を止める
  4. 濡れた手に、練ったクズをピンポン玉ぐらい取り、押し込むようにして餡を包む
  5. 濡れ布巾を敷いた蒸し器に並べ、強火で5~6分蒸し、クズが透明になって餡が透けて見えるようになったら、火を止める。
  6. 蒸し器ごと冷水を掛けて冷ます



では今月はここまで、また来月お会いしましょう、それまで御機嫌よう
  (染付茶入  おわり)

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