そういった訳で老人は、先年中は茶道具の収集に余念がなかったのでございますが、茶道に身を入れるのは、男性に珍しく、女性には珍しくないという事が関係しているのでしょうか、オークションで買い手の集まるのは、もっぱら箱書/極書の如何に依るようでございますな、‥‥。道具屋にしてみれば、いかにも、その方が客に売るにも都合が宜しいようで、なにしろ相手が女性では五感に訴えるわけにはいきませんので、理解しやすい箱書が、オークションで値を付ける際の要件ということになるのでございますな。
でまあ、この棗のように「古代屋?(古代庵?)」とか、「誠堂?」とか、訳の分らない箱書がありますと、誰も見向きもしないという訳で、貧乏な老人にも手に入れることができるのでございますが、‥‥。
どうでございます?染付の発色、色相、鮮度、明度、透度、筆先、文様、意匠、形態、手触り、どれを取っても完璧な逸品が、捨て値同然で手に入るのですから、なかなか止められることではございませんな、‥‥。
どうか、藍染め布と、葡萄の葉の色との発色を見比べてみてください、触れなば手が染まるようでございましょう?老人もガラクタを山ほど掴まされましたが、この一品で、立派に元とを取り返したようにも思えるのでございますな、‥‥。
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