白川公園


新聞の写真につられてやって参りましたのは、名古屋市の白川公園、勿論今年の事ではなく、去年の事でもなく、一昨年でも、その前でもなく、2009年の事でございますので、もはや8年近くが過去っているのでございますが、この辺は今ごろ、どのように変っておりますのでございましょうねえ、‥‥

このような古い写真をひっぱり出してきたのには、当然それ相当の理由というものがある訳でございまして、要するにタイヤがパンクしたのでございますな、‥‥今月は少しばかり日程に余裕ができましたので、京都の古寺にでも詣でることにしようということで、交通の少ない4時に家を出たのでございますが、夜明には未だ少しばかり早い、午前5時丁度ごろでございましょうか、車全体が微細な震動に襲われたのでございますな、‥‥あいにくそれがアスファルトに砂利の浮いているような悪路でございましたものですから、まさかタイヤがパンクしているとは少しも気がつかなかったのでございます、‥‥てっきり道路が悪いからだとばかり思っておりましたところ、新しくアスファルトを敷き直して道が滑らかになっても、いっこうに治まる気配がございませんので、これは車のどこかが故障した所為だろうと思いましたので、路肩に車を止めて手順通りに先づタイヤからと思って、星明りを頼りに見るというよりは、感じながら車を一周いたしますと、どうも左前輪のタイヤの空気が抜けたようになっておりましたので、手で触れてみますと、驚いたことにタイヤのサイドウォールが一周分ぐるりと裂けているとしか考えられない異様な感覚を手の平に感じたのでございます。

闇夜の上に、ことさら人通りの少ない裏道を走ってきましたので、自分でタイヤを交換する事もできず、またJAFに救援を頼むこともできず、かといってこんな暗がりに車を止めて待つのも嫌だというわけで、なにはともあれ街灯のある処までということで、更に2~3km車を走らせて人家の近くに車を止めると、通り掛かりの新聞配達の人に、スマホでJAFを呼んで貰い、無事緊急用タイヤに交換して、ようやく家にまでたどり着いたような次第でございますが、それが日産のディーラーに出しますと、鉄のホイールが相当ダメージを受けており、ブレーキ、足回りに異状は見られないが、グニャグニャのホイールは取寄せなくてはならないので、点検その他を兼ねて、翌日の午後7時頃までは代車に乗っていてくれと言うので、台風の合間の久しぶりの晴天だというのに、二日ともに無駄になってしまいましたので、誠にやむを得ず、上のような事と相成ったのでございます。



それにしても何でございますな、‥‥タイヤがパンクして鉄のホイールが地に着いているというのに、車全体の震動を感じるだけで、別にハンドルを取られるわけでもなく、特にそれ以外の異状を感じられなかったとは、‥‥何事も経験して見ないことには、分らないということでございますな、‥‥

JAFの作業員が、殘りの3本中の2本にまで、サイドウォールに大きな亀裂が入っておりますので、恐らく原因はそれでしょうと、パンクの原因を調べてくれたのは何よりでございましたが、何とも腑に落ちないのは、この車は半年ごとの点検に出してから、まだ1週間を経ていないのですから、はたしてちゃんと点検したのだろうか、内側から盛り上がるほど大きな亀裂をメカニックが見逃すとは、どういうことだろうか?‥‥作業員の質が堕ちたのか?‥‥作業員の数が減って、作業が疎かになっているのだろうか?‥‥ということなのですな、‥‥



という事でございますので、臨時の出費が6万円、これはもう収入微細の老人にとっては、ほとんど死活に係わるほどの問題でございますので、とても京都までは行く余裕がございません、‥‥お金というものは有る処には、有り余るほど有るのに、貧乏な老人にまでは回って来ないというのは、その流通が悪いということになりますので、やがては腸閉塞を起したようになり国が滅びてしまいます‥‥やはり政治が宜しくございませんな、‥‥行き着く先は、亡国の二字でございますかな、‥‥‥‥



「東坡文鈔」という書物の、【朝辭赴定州論事狀】 の章には、こうあります、――
天下治亂,出於下情之通塞。至治之極,至於小民,皆能自通。大亂之極,至於近臣,不能自達。《易》曰:「天地交,泰。」其詞曰:「上下交而其志同。」又曰:「天地不交,否。」其詞曰:「上下不交,而天下無邦。」夫無邦者,亡國之謂也。上下不交,則雖有朝廷君臣,而亡國之形已具矣,可不畏哉!

天下が治まるか、乱れるかは、庶民の心が通じるか、塞がるかに依る。天下が極めて治まっていれば、卑小の庶民に至るまで、皆自らの意志を通じさせることができるが、大乱が極まれば、大臣に至るまで、自らの意志を達することができない。
≪易経≫には、「天と地とが交われば、安泰である」、と言い、「上下が交わって、其の志を同じくするからである」、と説いているが、
又、「上下が交わらなければ、否定的である」、とも言い、「上下が交わらなければ、天下に邦は無い」、と説いている。
「邦が無い」とは、亡国という意味である。上下が交わらなければ、朝廷や君、臣が有っても、亡国の形は、已に具現している、畏れなくてもよいものか!
ということでございますのでね、老人のような小民と雖も、是非とも通じるようにしていただきたいものでございます、‥‥国が亡くなっては、やはり困りますからな、‥‥。



そういえば、衆議院選挙では案の定と言いますか、猛烈なキャンペーンの嵐の前に野党はひとたまりもなく、自民の一人勝ちのようなものでしたが、「憲法なんてものは、ワイマール憲法をなし崩しにしたヒットラーのようにすれば宜いのだ」、というような卑劣の語を吐いて恥じぬ輩の所属の党でございますから、その本質などは、推して知るべしでございますが、何しろ国民の選良でございますのでね、‥‥責任はすべて国民の一人一人に懸かるわけで、国民自身が賢くならないうちは、やりたい放題、消費税増税、所得税、資産税、自動車税等々増税、貧富の差は懸絶し、国力は衰弱し、国家破産、金持ち逃避、貧乏首吊り、行き着く先は亡国、‥‥

まるで眼前に彷彿するようでございますが、電車の中なんかで、謂わゆるスマホを眺めるか、操作している人の割合が、5割に達しようかというところにまで来ますと、もはや如何ともし難いような気がしてなりません、‥‥



それにしても、最近の政治家の直情径行振りを見ていますと、その小粒さ加減に呆れて物も言えないような気分に襲われます、‥‥だいたい直情だの、径行だのって言うものは、女子や小人の専売特許みたいなものだと思っておりましたが、‥‥


「禮記」という書物の、《檀弓下》という章に、こんな事が出ております、――
有子與子游立,見孺子慕者,有子謂子游曰:「予壹不知夫喪之踴也,予欲去之久矣。情在於斯,其是也夫!」子游曰:「禮:有微情者,有以故興物者;有直情而徑行者,戎狄之道也。禮道則不然,人喜則斯陶,陶斯詠,詠斯猶,猶斯舞,舞斯慍,慍斯戚,戚斯嘆,嘆斯辟,辟斯踴矣。品節斯,斯之謂禮。人死,斯惡之矣,無能也,斯倍之矣。是故制絞衾、設蔞翣,為使人勿惡也。始死,脯醢之奠;將行,遣而行之;既葬而食之,未有見其饗之者也。自上世以來,未之有舍也,為使人勿倍也。故子之所刺於禮者,亦非禮之訾也。」

   孔子の高弟の有子(ゆうし)と子游(しゆう)は、立って葬列の参列者が故人を慕って、子供のように感情を顕わにするのを見ていた。
   有子は子游に、こう言った、「私は今まで、葬式で跳びはねて踊ることが理解できなかったし、そんな風習は無くなればよいと思っていたのだが、ここに在るような感情が、まさしくそれなのだ!」と。
   子游は、こう言った、「礼には、感情の表出を少な目にする者も有れば、時代遅れの慣例を用いてに感情を興そうとする者も有る。ただ感情を直接顕わして、近道を行くような者は野蛮人だけなのだ。礼の道はそうではない。人という者は喜べば、陶然となり、陶然となれば歌いだし、歌いだせば、身体が揺れ動き、揺れ動けば、踊りだし、踊りだせば、気持が昂ぶり、昂ぶれば哀しみ、哀しめば嘆き、嘆けば胸を打ち、そして胸を打ちながら跳びはねるものなのだ。人が死ねば、その屍を嫌悪するのは、それが役に立たないからであり、それは反感を懐かせることになるので、是の故に経帷子を着せて、棺には覆いを掛け、人に嫌悪させないようにするのである。死ぬと直ぐに、供物を献げ、牽いたり押したりして、棺を送り出し、埋葬してからも、之を食べさせようとするのであるが、死者が受けて、之を食うのを見た者は誰もいないのに、上古以来廃止されたことがないのは、人に、死者を見捨てさせない為である。故にお前は礼を非難したが、礼に欠点が有るわけではないのだ!」、と。
まあ、大人と言う者は、こうでなくてはなりませんわな、‥‥



家内です、老人が大智度論を訳しますと、それを校正してくれます。
写真に撮られるのが嫌いなんだそうで、如何にも撮られたくなさそうな表情をしていますな、‥‥女子ですからな、‥‥直情径行の気質ですので、感情がそのまま顕われるのも、まさに宜なるべし‥‥、まあ直情の美点というものが無いわけのものでもございませんので、‥‥大智度論の完成を見るまでは、なんとか頑張って欲しいと思いますな、‥‥



老人の方は、反って写真に撮ってもらいたい方でございますが、その表情も謂わゆる「どや顔」で、何か得意そうに見えますのが、面白うございますな、‥‥

老人の容貌は、数学者の藤原正彦さんとか、兄弟に殺されなすった何とかさんに似ていますが、両者が盛んに新聞、テレビ等にもて囃されているのを、常々羨ましく感じておりますものでございますからな、‥‥機会有るごとに、という事でございます。

それにしても8年の歳月の力というものには、目を見張らされますな、‥‥「男子三日会わざれば刮目して見よ」の類でしょうかな、‥‥



噴水だとか、餌を啄む鳩だとか、何とかここだけが公園らしいと言えば言えますが、市議会議員などがしょっちゅう外国へ視察旅行などしている割りには、何も学んではいないように思われますなあ、‥‥何か選良ということばが空しく響きます、‥‥しかし、市民の意識に係わる事でもあり、これは待つより仕方がございません。仏教の方じゃあ、どれだけ待てばよいのかを、宇宙の消滅のサイクルを意味する劫(こう)という言葉を用いて何劫待たねばならぬというような言い方をしますが、たかが市民の意識が変るぐらいに、そんなには掛らないと思いますが、如何なものでございましょうね、‥‥



ちょっとばかし、「パリっぽい」と言えば言えるのかな?‥‥秋ですからね、‥‥


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≪ミニ・ラーメン≫
「無印良品のミニ・ラーメン」を、コンビニで見掛けました。昔のチキン・ラーメンの1/2サイズ判のようです。味が濃いので、湯を入れて3分間待ってからスープを1/3捨て、新しい湯を足して食べます。香菜(シャンツァイ)を沢山載せて食べると、何か妙に癖になる味で、即席ラーメンを見直すことになりました。
では、今月はここまで、また来月お会いしましょう、それまでご機嫌よう。
  (白川公園  おわり)

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