やはり、四月は桜でなきゃね、‥‥ということで古い写真を引っぱり出し、思いを奈良の辺に馳せておりますと、やがて鹿に鹿せんべいをやって、お辞儀されたり、感謝されたりするのが、日頃そんな事にはとんと縁のない老人にとって非常に嬉しかったことなどが、とりとめもなく思いだされ、やがて思考は形を取り、とどのつまりは「花見弁当」に凝り固まったということでございますな、‥‥
最近のことだったと思いますが、新聞だったか何だったか、はっきり覚えておりませんが、なんでも食って美味いか、不味いかは、子供の頃の記憶に係るのであって、食物自体の特性に依るのではないというような記事を読んだ記憶がございますが、ファーストフードばやりの昨今、外で何を食っても美味くないのは、案外そんな事に起因しているのではないかと思い至りますと、懐手をして安閑とかまえている訳にもまいりません、迷惑するのは自分自身ですからな、‥‥蟷螂の斧だと嘲られようと、ドンキホーテだと罵られようと、ここは是非ともスローフードを擁護して、昔の勢いを取り戻させなくてはなりません。
まずは手本にすべく、京都名代の「辻留」や、「瓢亭」では、花見弁当はどんな風に作っていられるのだろうということで、インターネットで検索してみますと、味の方はともかく、見た目ぐらいは何となく知ることできました。まあ「弁当」ですからな、そんな難しいものが入っている訳でもありませんので、できそうなものだけでも何とかなりそうです。
ということで、以下一品一品の作り方を録して、後世に留めることにしましたのですが、手間のかかる奈良漬け、柴漬け、蒲鉾に関しては、信用の置ける店からの取寄せということになったのも、仕方のない所ではありましょうし、材料はすべて近所のスーパーでまかなわなくてはならないのも、またやむを得ないことなのであります。
では「花見弁当」の作り方を、一品々々順不同でお届けいたしましょう、‥‥
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