三月ともなりますと、やはり気分が浮き立つともうしますか、‥‥
女の子のお祭りなのに、老人は昔から雛人形が好きでしてね、
有職雛とまではいかなくても、手の平に載るぐらいのでしたら、許されるのでは‥‥
ということで、今年もやっぱりお雛さまを飾ってみました。
アラン( Alain )の幸福論( Propos sur le bonheur )によれば、人間の不幸とは、どうやら「手足を動かさないことに起因する」、のだそうですが、この頃の世界中に満ちている、不寛容や不安の引き起こす怒りの原因も、その本をたどれば、案外そんな所にあるのかも知れませんね、‥‥。
少しアラン張りに推考してみましょう、――世の中が便利になればなるほど、あらゆる事が自分の手を離れて遠くで行われることになりますが、それは見えない所で行われているが故に信頼が失われやすく、人の心に不安を引き起こさざるをえません、‥‥そしてその不安ゆえに被害意識が増強されて不寛容が引き起こされますと、それは「怒り」として心中に蓄積されることになりますが、‥‥それが、やがて不幸を招くことになる、‥‥と。
極めて幼稚にして粗雑な推論に過ぎませんが、自然というものは本来卑近であるはずです、案外正解に近づいたのではないでしょうか、‥‥。
そんな訳で、今月は少しでも幸福になるために、パンを作ってみることにしました。
スーパーなどで、市販の食パンを手にし、至細に成分表を眺めてみますと、薬品の名ばかりで、それこそ不安に駆られそうになりますが、自分の手で作れば、そのような不安からは解放され、少しだけ幸福になるのは間違いありません。
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