小説ほど、好き嫌いの分れるものはありませんが、かつて人に勧められて、面白かったためしがございませんので、人様にも、お勧めするというような事は致しませんが、或いはこれぐらいは、お勧めしても宜いのではないでしょうか、‥‥。
江戸川乱歩賞受賞の作品ですから、とうぜん推理小説ですが、プロットもさることながら、「いろは歌」と、猿丸大夫の「奥山の歌」とで、巧みに暗号を作ったところなんぞは、大変見事だったように思います。
今回は、猿丸大夫に関係のある、「古今和歌集真名序」を読んでみましょう。
「古今和歌集(古今集)」の序文には二種あり、仮名文字を主体とする和文で書かれたものを「仮名序」、漢文で書かれたものを「真名序」と称しますが、謂わゆる「仮名」に対して、漢字を「真名(まな)」というんですな。
日本人の書いた漢文は読みにくいものと相場が決まっておりますが、この「真名序」に関していえば、そんなことはありません。 しかも「Wikisource」から引っ張ってきた原文には、珍しくも極めて正確な訓点(返り点)が振られておりますので、どなたにも簡単に読むことができるのではないでしょうか?
内容も、以外と面白いものですからね、‥‥では、御一緒に読んでみましょう、‥‥
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