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薄墨桜


  根尾谷の薄墨桜(うすずみざくら)は樹齢1、500余年、樹高16、3m、幹の周囲9、9mの巨大桜で、福島県三春の「滝桜」、山梨県山高の「神代桜」と共に、大正11年10月12日を以って国の天然記念物に指定され、以後めでたくも、「日本三大桜」の称を受けることとなりましたので、開花時期にもなりますと、全国から延延観光バスを列ねて、1日あたり8000人が訪れるということで、老人も、一度ぐらいは見ておきたいものだと、日頃より思っておりましたところ、今回といっても去年のことですが、ようやく、写真に撮ることができました。これを今回は、皆様方に、御覧に入れることに致しましょう。

  実は、30年ぐらい以前に、一度途中まで来たのですが、途中、道の狭くなった辺りで、往きと還りのバスがすれ違えず、しかも両車の後には、またそれぞれ数台づつの観光バスが連なっているという具合で、にっちもさっちもいかなくなりまして、小一時間待っても、少しも動く気配がありません。まあ退却するも止む無しということで、陣を転じて以後、恐れをなしてご対面を遠慮しておりましたが、なにしろわが家からは、直線距離にして40kmたらず、そろそろ年貢を納めてはどうだろう、もう来年(といっても実は今年)はないかも知れないぞと、時にせかされるがままに、やっと心を定めてやって参った次第です。

  一度懲りればもう十分ということで、今回は前の轍を踏まないよう、用心には用心を重ねまして、早朝4時に家を出ますと、途中ナビの案内に連れられるがまま、狭い一車線の旧道の方をひた走り、目的地に到着したのが5時20分、まだ夜も明けぬうちとは相成りました。

  上の写真を撮ったのは、そんな訳で5時40分ということですが、まだ空もやっと白み始めたばかりで、露出もノーマルよりも少しばかりゲインを上げて、明るめにしてあるのですが、もう早くも数人の先客カメラマンが三脚を立てて、それぞれの「決定的瞬間」を写し撮ろうということでしょうか、ひたすらその一瞬の来るのを待ち構えております。


  しかし、何分にもたった一本か、その子か孫の木を入れても二本だけの桜ですので、いろいろな方向から、数枚写真に撮れば、もう他には何もありません。

  それでも、「Google Chrome」のプラグインに、「Pixlr」という無料アプリがありますので、それを使って、いろいろ遊んでみましたところ、その中の「Lucas」とか、「Antonio」というeffectsが、いたく気に入りました。

  黒白写真は、定着液の水洗が悪いと、数年でこのような色に変化してしまいますが、昔はこの暖かい感じが好きだということで、わざわざセピア調色という一手間をかける方もおられました。ちょっとそれを真似たわけですナ、‥‥。


  モノクロームの写真は、画面を単純化しますので、見せたいものだけを見せ、その他の雑多なものや、目障りなものを見せたくない時のテクニックとしては、今でも通用しております。

  どうですかな?‥‥なんとなく芸術写真的な風情が出てはいませんか、‥‥上の写真はコントラストを上げて、白い花びらを強調し、下の写真は、コントラストを下げて、やわらかい雰囲気が出ていますネ。

  自高だとか、自慢だとか言われるといけませんのでネ、先に自ら言っておきましょう、もちろん具眼の士から見れば、ただの下手な写真であり、それ以外では決してない!ということは、じゅうぶんに解っておりますとネ、‥‥。


  ということで、どれだけ待っても、これ以上の写真は撮れそうにもありません。観光バスが来ないうちに、帰ることにしましょう。

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  それにしても、あれは大丈夫ですかナ、‥‥。なんでも数年後にはオリンピックが来るということで、その時には、国を挙げて「オモテナシ」をするそうですがネ、‥‥。「鯛の活け作り」でオモテナシなんて、なんか悪い冗談を聞いたような事にならなければ、宜しいんですがネ、‥‥。

  酷いものですよ、あれはネ、‥‥。生き物が苦しんでいるのを見て楽しもうっていうんですから、‥‥。われわれの血の中には、そんな残酷な部分が残っているということの証明ですナ、これは‥‥。是非やめてもらいたいものです、‥‥。また外国の人に、どれほど揶揄されるものか知れたものではありません、今から心配な事です、‥‥。この無教養的、土(ど)ん百姓の無神経さ、まったく我慢なりませんナ、‥‥。こんなものまで、我が国の文化ですとでも言うつもりでしょうかネ、‥‥。

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  仕方ありません、少しづつ勉強しながら、教養を高めてゆくことにしましょう。



春夜宴桃李園序
        唐・李白

天地者萬物之逆旅
光陰者百代之過客。
浮生若夢爲歡幾何
古人秉燭夜遊良有以也。
陽春召我以煙景
大塊假我以文章
會桃李之芳園
序天倫之樂事
群季俊秀皆爲惠連
吾人詠歌獨慚康樂
幽賞未已高談轉清
開瓊筵以坐華
飛羽觴而醉月
不有佳作何伸雅懷
詩不成罰
依金谷酒數
春夜、桃李園に宴して序す   唐・李白

夫(そ)れ、
天地は、万物の逆旅にして、
光陰は、百代の過客なり。
而(しか)して、
浮生は、夢の若(ごと)し、
歓を為すこと、幾何(いくばく)ぞ?
古人、燭を秉(と)りて夜に遊ぶ、
良(まこと)に、以(ゆえ)有るなり。
況(いわ)んや、
陽春、我れを召(まね)くに煙景を以ってし、
大塊、我れに仮(ゆる)すに文章を以ってし、
桃李の芳園に会し、天倫の楽事を序するをや。
群季の俊秀、皆恵連たりて、
吾人の詠歌、独り康楽に慚(は)づ。
幽賞、未だ已(や)まざるに、
高談、転(うた)た清し。
瓊筵を開きて、以って華に坐し、
羽觴を飛ばして、月に酔わん。
佳作有らずんば、何んが雅懐を伸べん、
如(も)し、
詩、成らずんば、
罰は、金谷の酒数に依らん。

桃李園(とうりえん):モモとスモモの花園。
(えん):うたげ。宴会。
(じょ):のべる。陳述。
(ふ):それ。発語の詞。そもそも。
万物(ばんぶつ):宇宙間に存在する有らゆるもの。
逆旅(げきりょ):旅人を迎える所。宿屋。
光陰(こういん):日月、歳月。
百代(はくたい):非常に長い年代。永遠。
過客(かかく):通り過ぎて行く人。旅人。
(じ):しかして。下を転ずる詞。しかも。しかるに。しかし。
浮生(ふせい):はかない人生。
(じゃく):ごとし。~のようだ。
(い):なす。おこなう。つくる。作為。行為。
幾何(きか):いくばく。数量、程度が不明なことを表わす。どれほど。
古人(こじん):昔の人。
秉燭(へいそく):灯明を手に執りもつ。
良有(りょうゆう):ほんとうにある。
(い):ゆえ。因。
(きょう):いわんや。まして。
陽春(ようしゅん):陽気の満ちた春。
煙景(えんけい):霞(かすみ)のかかった春景色。
大塊(たいかい):大きな土塊。地球。造物主。
(か):かす。ゆるす。かしあたえる。
芳園(ほうえん):香しく美しい園。
(かい):時と所とを決めて集まること。
天倫之楽事(てんりんのらくじ):天理に順じた楽事。父子兄弟が揃って開く楽しい宴会。
(じょ):のべる。陳述。敍。
群季(ぐんき):季は末弟の意。兄弟長幼の次を「伯仲叔季」という。
俊秀(しゅんしゅう):能力才智のすぐれた人。
恵連(けいれん):南朝宋(劉宋)の謝恵連をいう。謝恵連は、幼くして俊秀、能く文を作り、其の族兄、霊運が常に之を嘉賞し、文を作る毎に恵連によって佳語を得た故事から、転じて、秀でた弟の意に用いる。
吾人(ごじん):われら。わたしの如き人。
詠歌(えいか):詩歌をよむ。よんだ詩歌。
康楽(こうらく):南朝宋の謝霊運の封号。康楽公。
独慚(とくさん):ひとりだけ恥ずかしく思う。
幽賞(ゆうしょう):深くほめ味わう。静かに風景を楽しむ。
未已(びい):まだ、止めない。
高談(こうだん):声高にはなすこと。思う存分話をすること。
転清(てんせい):ますます清くなる。
瓊筵(けいえん):珠玉で飾られた敷物。盛大な宴席。
坐華(ざか):桃李の花の間に坐す。
羽觴(うしょう):酒杯。雀の形を作り、頭尾に翼のあるもの。酒杯を飛ばす義に取ったものという。
酔月(すいげつ):月下に酔う。
佳作(かさく):よくできた作品。微妙の詩草。
(しん):のべる。陳述。
雅懐(がかい):高雅な感情。
(じょ):もし。若。
金谷酒数(きんこくしゅすう):金谷園の先例に依り、罰酒三杯をいう。晋の石崇が金谷園に賓客を会して、大いに飲み、詩を賦せしめて成らぬものには罰として酒三斗を飲ましめた故事。
春の夜、
桃李の園に宴するにあたり、
一言申し述べよう。          唐・李白

そもそも、
天地は、万物の逆旅(旅籠)であり、
光陰は、百代の過客(旅人)である。
しかし、
浮世の事など、夢のようだ、
どれほどの、歓楽を期待できよう。
それだから、
古人は、燭台を手にして、
夜が更けるまで、遊んだのであり、
まことに、その訳はあったのである。
まして、
陽春の、煙景はわたしを招き、
造物主は、わたしに文才を与えた。
この、
桃李の園に、集まるに際し、
天も許す、兄弟の歓楽を、
言祝がずに、いられようか。
群がる、
弟たちは、皆優秀であり、
彼の恵連、そこのけであるのに、
歌を詠めば、わたしだけが、
彼の康楽に、恥じ入らねばならぬ。
このように、
言葉をつくして、誉めているさなかにも、
弟たちの清談は、盛り上がってきたようだ。
金の筵を敷いて、花の間に坐ろう、
羽觴(さかづき)を飛ばして、月下に酔おう。
もし、
佳作が出なければ、何を以って、
胸の思いを、述べればよいのか?
詩ができない時には、罰杯を受けよう、
金谷のように、三斗の酒を飲んでみせよう。
春日醉起言志
       李白

處世若大夢
胡爲勞其生
所以終日醉
頽然臥前楹 
春日、酔(よ)いより起ちて志を言う      李白

世に処(お)るは、大夢の若し、
胡(なに)の為にか、其の生を労する。
所以(ゆえ)に、終日酔い、
頽然として、前楹に臥す。

胡為(こい):なんすれぞ。なんのためにか。胡は何と同じ。
(ろう):甚だしく力をつくす。
所以(しょい):ゆえ。わけ。理由。
終日(しゅうじつ):一日中。
頽然(たいぜん):酔いつぶれたさま。
前楹(ぜんえい):家の前方の柱。
春の日に、
酔いより起きて、
志を述べる。        李白

世に、
移り住んで、
生活しているが、
長い、
夢を、
見ているようだ。
苦労して、
生きながらえても、それが、
何に、為るというのか?
そういう訳で、
一日中、
酒に酔い、
酔いつぶれては、
家の前の、
柱の根方に、
臥せっている。
覺來盼庭前
一鳥花間鳴
借問此何時
春風語流鶯
覚め来たりて、庭前を盼(なが)むれば、
一鳥、花間に鳴く。
借問す、此れ何(いづ)れの時ぞ、
春風、流鴬と語る。

花間(かかん):花のあいだ。
借問(しゃくもん):仮りに問う。試みに問う。敢て問う。
何時(かじ):いつのとき。時は一年の区分、春夏秋冬。
春風(しゅんぷう):春の風。
流鴬(りゅうおう):木から木へ飛び移って鳴く鶯。
酔いから、
覚め、庭の前を、
眺めると、鳥が一羽、
花の間に、鳴いていた。
ちょっと、
問うてみよう、いったい、
今は、どの季節だい?
春風が、
枝を、飛び交う、
鶯に、ささやいた。
感之欲歎息
對酒還自傾
浩歌待明月
曲盡已忘情
之に感じて、歎息せんと欲するも、
酒に対すれば、還(ま)た自ら傾(かたぶ)く。
浩歌して、明月を待ち、
曲尽きて、已(すで)に情を忘る。

(かん):かんじる。感動する。
歎息(たんそく):なげいてため息をつく。いたく感心する。歎美。
自傾(じけい):自ら傾ける。觴?、壷?、意?。
浩歌(こうか):大きい声でうたう。
明月(めいげつ):澄みわたった月。
曲尽(きょくしん):歌が終る。
(い):もうすでに。とっくに。
忘情(ぼうせい):感動した心をわすれる。
これに、
感じて、歎息し、
詩を、作ろうと思ったが、
酒に、
向かえば、またしても、
盃を、傾けるばかり、
大声に、
歌をうたって、明月を、
待とうとしたが、曲が、
終った時には、その事を、
すっかり、忘れてしまった。
自遣
       李白

対酒不覚冥
落花盈我衣
酔起歩渓月
鳥還人亦稀
自ら遣(や)る        李白

酒に対して、冥(く)るるを覚えざるに、
落花、我が衣に盈(み)つ。
酔いより起き、渓月を歩めば、
鳥還りて、人亦(ま)た稀(まれ)なり。

自遣(じけん):鬱情を押しやる。
(めい):暗いこと。夜。瞑に同じ。
渓月(けいげつ):谷間の月。
自ら、
遣る瀬ない、思いを、
敢て、押し遣る。      李白

覚めてみれば、
わたしの、衣の上は、
落花で、いっぱいだ。
酔いより、
起きて、谷間の月を、
眺めながら、歩いたが、
鳥は、ねぐらに還り、
人もまた、稀である。



  《クリーム・パン》を作ってみました。小麦粉と牛乳、卵、砂糖、塩、ドライ・イーストに、サラダ・オイルのみで作ったパン生地の中に、小麦粉、卵黄、牛乳、砂糖、バニラ・エッセンスのみで作ったカスタード・クリームをたっぷり封じ込めて、中に火が入って、クリームが濃厚になるよう、端のところをカットしたら、後はオーブン・トースターで10分ほど焼くだけ、とてもおいしいクリーム・パンが簡単にできてしまいました。

  《作り方》は、パン生地のコネ方とか、いろいろ言葉では伝えにくいところがありますので、参考書などを御覧になってください。
では今月はここまで、また来月お会いしましょう、それまでご機嫌よう。
(薄墨桜  おわり)