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紅葉 永源寺
  近所で工事でも始めたらしく、早朝から轟くエンヂンの咆吼と、震度2~3ぐらいの揺れとともに、我が苫屋には、柱や梁のきしむ音が絶え間なく、とても意識を集中できるような環境ではなくなりました。はてさてこれはいったいいつまで続くのだろうと心配になって来ましたので、夕方家内に見に行かせたところ、まだ明日一日ぐらいはかかりそうだということで、それじゃあ仕方が無い、今日は早く寝て、明朝早いうちにどこかへ出かけて難を避けるとしよう、紅葉の美しいところは、どこか無いものかと、インターネットで検索していますと、どうやら滋賀県の永源寺が見頃を迎えたようだということで、やってまいりましたのが、ここ滋賀三重両県の県境にある臨済宗は永源寺派の大本山、永源寺です。

  「朝一番、観光バスの来ないうち」、年齢を重ねるごとに、朝早いのは別に苦とはならなくなって来ましたので、近頃では、もっぱらこのカメラマンの金言に従うことにしていますが、現地に着いたのは、やっと8時の開門の30分前、それでもどうやら観光バスは一台も来ておりません。

  早朝の澄んだ空気の中、まずはその立地環境をとらえることにいたしましょう。写真左手のちょうど朝日の当った辺が、どうやらその目的地のように見受けられます。

  前の写真左側手前に、狭い谷川にかかった橋を見ていただいたと思いますが、それを渡って狭い石段の小径を10分か15分ほど行きますと初めに見えて来るのが、この小ぶりの総門です。

  そこまでの間が何百メートルだったのか、写真を撮りながら歩いて来ましたので、さっぱり分りませんが、思いの外、紅葉がきれいで、嘆声を上げながら、あれもこれもとカメラに収めてまいりましたが、総門をくぐりますと、朝日がちょうどうまい具合にさしてくれましたので、まるで巨大な色ガラスのドームに入ったかのようになっております。夢中になってシャッターを切っている老人の姿は、はたから見れば、あたかも初めて雪を見た子犬か、氷塊を得た動物園のシロクマ、ドングリを見つけたリスなどの如くはしゃいでいる老人そのままであり、驚きと顰蹙と、恐らくは憐れみとをもって見られていたものに相違ありません。まわりに余り人がいなかったのがもっけの幸いでした。

  山行         唐 杜牧
 遠上寒山石徑斜  白雲生處有人家
 停車坐愛楓林晩  霜葉紅於二月花

  山行         唐・杜牧
 遠く寒山に上れば、石径斜めなり
 白雲生ずる処、人家有り
 車を停めて坐(そぞろ)に愛す、楓林の晩(くれ)
 霜葉は、二月の花よりも紅(くれない)なり


    山あるき    唐の杜牧(とぼく)

  はるばる、
    寒山まで、上って来ると、
    山道が、急になってきた。
  遙かかなた、
    白雲の、生じたあたりに、
    人家が、有るのだな。
  おい!
    車を、停めてくれ!
    少し、歩いてみるから。
  そうなのだ!
    楓の林は、
    夕暮れになると、
  霜枯れの葉が、
    二月の花よりも、
    真赤になるのだ。

山行(さんこう):山あるき。
寒山(かんざん):寒い山。又人跡まれなる山。寒村の如し。
石径(せきけい):山道。上を覆う土がなく岩が露出した道。
坐愛(ざあい):そぞろに愛す。ぶらぶらと景色をめでる。
楓林晩(ふうりんのくれ):楓(かえで)林の夕暮れ。
霜葉(そうよう):紅葉。霜に当って紅葉する。
二月花(にがつのはな):春の花。桃の花。

  総門をしばらく行くと、やがて巨大な三門が見えてきます。
  ではクイズ、なぜ三門というのですか?
  答え、
    仏に至る道には三種の門があります、
    一には、
      空解脱門、
      我とは、
        肉体に意識が合わさっただけで、
        実体が無い。
    二には、
      無相解脱門、
      我に、
        実体が無いので、
      我の拠り所たる、
        肉体にも意識にも、
        実体は無い。
    三には、
      無作解脱門、
      我の拠り所の、
        肉体と意識とに、
        実体が無いので、
      我の作す所の、
        行為にも、
        実体が無い。
  ではクイズその2、
    いや野暮でしたナ、やっぱり止めておきましょう、‥‥。
    写真を撮るのに忙しくて、実際それどころじゃありませんしネ、‥‥。

  三門を通り、庫裡の前をぬけると、葦葺(よしぶ)きの本堂の前にでますが、どの行いが悪かったせいか、とつぜん空一面に巨大な雲がでて日光を遮り、当分晴れそうにはありません。がしかし、老人にとってそんな事は問題にもなりません、そこに物が有る限り、指が折れるまで、シャッターを押し続けなくてはならないのです。

  まあ構図も何もあったものじゃあございませんが、無我夢中の中にも何か考えていたものと見えまして、坂になった渡り廊下の窓ごしに色鮮やかな部分を斜めに切り取っております。皆様方のお笑いぐさにでもなりますかどうか、‥‥。

  最近どうも天候に恵まれず、写真の方は今ひとつ鮮やかさが不足しておりますが、実際にこの目で見てみますと、とてもこんな物じゃあございませんで、わたくしの脳裏にはしっかりと刻みこまれておりますし、24吋の画面一杯で見てみましても、やはり相当のものがございますのですが、この極度に縮尺された画像をもって、皆様方にどれほどのものをお伝えできますものやら、ただただ皆様方の想像力に頼るより以外何んの手も打てないのは、心残りですが、まあやむを得ないところでございましょう。

  この寺のもみじは、毎年こんなに美しいのでしょうか?近くにいながらよくも今まで知らずにいたものだと、わが事ながら、世事に疎いのを呆れているような次第です、‥‥。

  少し大きめにすると、やや縮尺が楽になりますので、ほんの少しですが、よく御覧いただけるものと存じます。
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  九日齊山登高    唐 杜牧
 江涵秋影雁初飛  與客攜壺上翠微
 塵世難逢開口笑  菊花須插滿頭歸
 但將酩酊酬佳節  不用登臨恨落暉
 古往今來只如此  牛山何必獨霑衣

  九日斉山に登高す   唐・杜牧
 江は秋影を涵(うるお)し、雁(かり)初めて飛ぶ
 客と壷を携えて、翠微に上(のぼ)る
 塵世には、開口の笑に逢い難し
 菊花を須らく挿して、満頭にして帰るべし
 但だ酩酊するを将(も)って、佳節に酬(むく)ゆるも
 登臨を用(も)って、落暉を恨まず
 古往今来、只(た)だ此(かく)の如し
 牛山のみ何んぞ必ずしも、独り衣を霑(うるお)さんや


    九月九日、斉山に登る    唐の杜牧

  長江が、
    秋の、
      景色を、
      川いっぱいに映し、
    初めての、
      雁が飛んでいる中、
    客といっしょに、
      酒壷を携えて、
      中腹まで来た。
  塵埃にまみれた、
    俗世間には、
      口を開いて、
      笑う者もない。
    菊の花を、
      簪がわりに、頭に挿し、
      花だらけにして、帰ってやろう。
  ただ、
    酩酊して、
      重陽の、
      節句を、祝えばいいじゃないか、
    別に、
    高い所に登って、
      世間を、見下ろすように、
      夕景を、愛でることもないだろう。
  世間の、
    有様っていうのは、
      古今変わらず、
      続いているし、
    美しさに、
      袖を濡らすのは、何も、
      牛山に、限ったものでもあるまい。
  
九日(きゅうじつ):陰暦九月九日、重陽の節句。
登高(とうこう):高くのぼること。
斉山(せいざん):山名。安徽省貴池県の南。
翠微(すいび):山の中腹。未だ頂上に及ばざるをいう。
塵世(じんせい):世間の俗事を塵芥に喩える。
開口笑(かいこうのしょう):大口を開けて笑うこと。
菊花(きくか):晩秋の花にして、邪気を払うという。
佳節(かせつ):目出たい日。陰暦九月九日を重陽の節句という。
登臨(とうりん):高い所にのぼって低い方を見渡すこと。
落暉(らくき):ゆうひかげ。落照。晩照。[王績、野望詩]に「樹樹皆秋色、山山惟落暉」というが如し。
(こん):うらむ。残念におもう。
古往今来(こおうこんらい):古今の往来。古今不易の人の生死。
牛山(ぎゅうさん):山名。山東省臨湽県の南。
牛山歎(ぎゅうさんのたん):斉の景公が牛山に遊び、其の国の美を見て、己の早晩死するを悲しみ涕泣した故事。



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  沢山の写真をいっぱい撮って心に余裕もできてきましたし、カメラの電池も殘り少なくなってきましたので、御本尊様にお参りしましようということで、本堂に上がって見ますと、本来方丈として建てられたものらしく、普通の本堂とは、やや異なり、中には仙人の襖絵などがあります。

  その仙人の写真を、これまたいっぱい撮ったのですが、その中の、特にわたくしの気に入った二人の写真を御覧いただきましょう、‥‥。

  大人にして美丈夫の容姿、様態ともに優れたるに加え、胸を反らして笹に乗り、浪を截るイキな姿なんてものは、世の淑女諸孃の憧れて止まぬ所と決っておりますが、われわれ男族にとりましても、夢中に夢見る己が理想の姿なのであります、‥‥ウームッ羨ましい、‥‥。お金に不自由しているようにも見えませんしネ、‥‥。

  男は見掛けじゃあ無いんだよ、心に優しさが無いんじゃあ、何んのために生きているんだい?、‥‥と、蝦蟇にも懐かれる好い男、‥‥。これまた心引かれるものがありますネ、‥‥。蝦蟇の甘えた樣子が、これまた好いんじゃあございませんか?。

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≪クリスマス用デコレーションケーキ≫
ケーキ作りも、今年はいよいよクリスマスケーキに挑戦です。

《作り方》
  今年の一月分に、スポンジと、バタークリームの作り方が載っていますので、それを見ながら作ってください。
《その他注意すること》
  1.円いケーキですから、回転台があると便利でしょう。
  2.飾り物で、うんと引き立ちます。
  3.飾り物の中でも、銀玉(アラザン)は必須です。
  4.絞り用の口金は、実際に使って適当なのを見つける。
Merry Christmas
&
Happy NewYear
それでは今月はここまで、皆様どうぞよいお年を、また来年お会いしましょう。
(紅葉 永源寺  おわり)