「菜根譚」を読めば、「功名富貴の心を下に放ち得れば、便(すなわ)ち凡を脱す。」とか、「奢(おご)る者は富みて足らず。何ぞ倹(つづまやか)なる者の貧にして余り有るに如(し)かんや。」とか、まことにもっともな事が書かれていますが、生憎この老人は、未だに俗気が抜けず、「功名富貴の心を放ち得ずして凡を脱せず」とか、「倹にして貧なるも、余り有らず」といった状態のまま、日日うつうつとして暮らしておりますと、いかなる天啓あってか、カメラを新しくすれば、さぞ気も晴れようと、まことに小人の小人たるゆえん、物質をもって事を一気に解決しようという大それた考えを懐くに至り、物欲の権化となりはててしまったのであります。それより後、日日、今のカメラの至らざる所、及ばざる所をぐちぐちとつぶやいておりましたところ、ねばりづよい作戦が功を奏することになり、レンズは今のまま、ボディーだけをsony α200から、同じくsonyのα77にするという条件で、ようやくうつうつの日日を抜け出すことができました。まことにご同慶の至りであります。
待つこと数日、満足のさまを記念すべく、家人に撮らせたのがこの一枚ですが、驚いたことに1/4秒という極めて遅いシャッター速度で撮られていたにもかかわらず、あまり顕著な手ぶれが見られません。手ぶれに悩む老人にとっては以って非常なる朗報となすべきでしょう。
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