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仏画シリーズ 唯我独尊図
  
  
爾時菩薩降母腹中。天帝釋主令四天子。各持器仗守護其母。勿令人及非人輒為損害。菩薩處胎不為胎中血垢所污。譬如眾寶聚在一處不相霑污。菩薩在腹亦復如是。又如清淨妙琉璃寶置五彩上。明目之人分明見別。母觀腹內分明亦爾。母雖持胎身無勞倦。自然奉持五種學處。謂盡形壽不殺生不偷盜不邪婬不妄語不飲酒。於諸丈夫絕婬染意。十月滿足往藍毘尼林攀無憂樹枝。暫時佇立便於右脅誕生菩薩。
 
  いよいよ春がやってまいりました。花の季節ですねぇー。お釈迦さまは、この満開の花の中でお生まれになったのですが、上の経文の一節は、この辺りの事情を説いています。
  
  
  その時、菩薩は母の腹の中に降(くだ)り、天帝釈主は四天子をして各々器仗を持たしめてその母を守護せしめ、人及び非人をしてたやすく損害を為さしむることを無からしむ。
  菩薩は、胎に処するも胎中の血垢に汚されず、譬えば衆の宝聚の一処に在りても相い霑汚せざるが如く、菩薩の腹に在るも、またまたかくの如し。
  また清淨の妙なる琉璃宝を五彩の上に置いて、明目の人の分明に別を見るが如く、母が腹内を観るに、分明なることもまた爾り。
  母は胎を持つといえども身に労倦すること無く、自然に五種の学処を奉持す、謂わゆる形寿を尽くして殺生せず、偸盗せず、邪婬せず、妄語せず、飲酒せず。諸の丈夫に於いて婬染の意を絶つこと十月を満足し、藍毘尼林(らんびにりん)に住(とど)まりて無憂樹の枝に攀(すが)り、暫時佇立するに便ち右脇に於いて菩薩を誕生す。
  
  
  :天帝釈主(てんたいしゃくしゅ):帝釈天王。
  :四天子(してんし):四天王。
  :器仗(きじょう):武器。
  :非人(ひにん):悪鬼の類。
  :血垢(けつく):血と脂の汚れ。
  :宝聚(ほうじゅ):一群の宝石。
  :霑汚(てんお):濡れて汚れること。
  :清淨(しょうじょう):清く汚れがないこと。
  :琉璃(るり):透き通った宝石。
  :五彩(ごさい):五色の彩布。
  :明目(みょうもく):目が見えること。目明き。
  :労倦(ろうけん):疲労倦怠。
  :奉持(ぶじ):恭しく保持する。
  :学処(がくしょ):学ぶべきこと。
  :形寿(ぎょうじゅ):肉体と生命。
  :殺生(せっしょう):生き物を殺す。
  :偸盗(ちゅうとう):人の物を取る。
  :邪婬(じゃいん):正当な相手以外との交媾。
  :妄語(もうご):嘘と無目的なことば。
  :飲酒(おんじゅ):酒を飲む。
  :丈夫(じょうぶ):立派な男。
  :婬染(いんせん):婬欲の煩悩。
  :藍毘尼林(らんびにりん):園林の名。
  :無憂樹(むうじゅ):花樹の名。
  
 
爾時大地六種震動。放大光明與入胎無異。菩薩生時帝釋親自手承置蓮花上不假扶侍足蹈七花行七步已。遍觀四方手指上下作如是語。此即是我最後生身。天上天下唯我獨尊。梵王捧傘天帝執拂。於虛空中龍王注水。一溫一冷灌浴菩薩。初誕生時於其母前。自然井現香泉上涌隨意受用。又於空中諸天下散嗢缽羅花缽頭摩花。拘勿頭花奔陀利花。并餘種種奇妙香末。天妙音樂自然發響。天妙衣纓從空亂墜。更有眾多奇妙靈瑞。如餘處說
  
  
  その時、大地は六種に震動して大光明を放ち、胎に入るときに異なり無し。
  菩薩の生まるる時、帝釈は親しく自らの手にて承(う)け、蓮花の上に置くに、扶侍を仮りずして足にて七花を踏み、七歩行きおわりて遍く四方を観、手指を上下してかくの如き語を作(な)さく、『これは即ちこれわが最後の生身なり。天上天下、ただわれ独り尊し』、と。
  梵王は傘を捧げ、天帝は払子を執り、虚空の中に於いて龍王は水を注ぎぬ。一は温、一は冷なるを潅いで菩薩に浴せしむ。
  初めて誕生する時、その母の前に於いては自然の井(いど)が現れ、香泉が上に涌けば、意のままに受けて用う。
  また空中に於いては、諸天が嗢鉢羅花(うはつらけ)、鉢頭摩花(はづまけ)、拘勿頭花(くもつづけ)、芬陀利花(ふんだりけ)、並びに余の種種の奇妙なる香末を下に散(ま)き、天の妙なる音楽が自然に響を発し、天の妙なる衣と纓(ひも)とが空より乱れ堕ち、更に衆多の奇妙なる霊瑞の有ることは、余の処に説けるが如し。
  
  
  :扶侍(ふじ):手をもって助ける。扶持。
  :生身(しょうじん):肉身。
  :梵王(ぼんのう):梵天王。
  :天帝(てんたい):帝釈天主。
  :菩薩(ぼさつ):仏になる前のお釈迦さま。
  :香泉(こうせん):香水の泉。
  :嗢鉢羅花(うはつらけ):青い蓮花。
  :鉢頭摩花(はづまけ):赤い蓮花。
  :拘勿頭花(くもつづけ):黄色の蓮花。
  :芬陀利花(ふんだりけ):白い蓮花。
  :香末(こうまつ):香木の粉末。
  :妙衣(みょうえ):美しく奥深い衣。
  :衆多(しゅた):あまた、多くの。
  :霊瑞(りょうずい):不思議でめでたいしるし。
  
 
  
  
天 上 天 下 唯 我 独 尊
  
  
 
  
  『天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)』、‥‥。このことばを口の中でかみしめて味わってみましょう。こんな味がしませんか?
  
  即ち、『平和に至る道はただ一つしかない、誰も彼もが平等であり、誰も誰かを妬ましく思わない世界、それこそが唯一の進むべき道である』、このことばの真意はここにあります。『わたしは偉大だから、わたしだけを尊べ!』とか、或いは『人は誰でも同じように尊いのである』、というような事ではありませんよ、‥‥。
  
  自然は必ずしも平等ではありませんが、しかしそれを以って現在を肯定するのであれば、平和はいつまで待っても来ないでしょう。人のみが物を蓄えることを知っています。そしてそれが不幸の始まりだと言えば、多くの人は笑うかも知れませんね、‥‥。しかし、仏教でいう少欲知足とは、まさにこの事を言っているのです。お釈迦さまは小国とはいえ、豊かな国の王位を継ぐべき者として生まれられましたが、その太子の位を捨てて出家し、この少欲知足の暮しに入られました。それは人に食物を乞うて、ただ一日分だけの命を長らえるという暮しで、まったく動物と異なるところのないものです。しかしなぜそこまでなさったのでしょうか?われわれには考える必要がありそうです。
  
  現在この国では、いくつかの事に目をつむれば、まあ平和が続いていると言ってよいでしょう。しかしそれがいつまで続くでしょうか?
  
  『天上天下唯我独尊』、皆様もぜひこのことばを味わってみてください。
  
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  先日、近くのスーパーで『真いわしの煮干し』を売っていました。これを見なくなってから、もう随分たつのでもう諦めていたのですが、これを見て最初に思ったのが、『ああ、これでやっとラーメンが食える』、ということなのです。
  
  近頃では何でも味が濃くなっていますし、ラーメンのようなものは特にダシの味を濃くしていますので、もう外で食べようとは思わなくなっていましたが、家庭で作るにはこの煮干しがネックになっていたのです。
  
  煮干しは二人前二尾を半日水に漬けておきます、他には、チキンコンソメの顆粒小サジ1/4、コンブ4センチ、鰹節一握り、干し椎茸1枚、後はみりん少々と醤油、これだけです。スーパーで買った半生のラーメンを茹で、上に載せる具としてキャベツと冷凍保存してある土筆を炒め、カマボコ二枚を切って、それでできあがりです。
  
  
  それで気になるできあがりはというと、これが思った以上、かなり上品な味にできました。メデタシメデタシ、‥‥‥‥。
  
  それでは今月はここまで、また来月お会いしましょう、それまでご機嫌よう。
  
  
  
  
  
  
  (仏画シリーズ 唯我独尊図 おわり)