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仏画シリーズ 地獄変相第三
 
  
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  つい先日のことですが、極めて大型の台風が来て、この地方を直撃するということですので、3時間毎の進路情報を欠かさず眺めておりましたところ、台風は何か意図するものでもあるかのごとく、日日進路を変更いたしまして、常に予想よりも少しだけ西にずれております。案ずるところ、お目当ては、どうも当地方のど真ん中、当家の真上を通過することにあるようにも見えます。何しろ消そうにも消せない伊勢湾台風の記憶が、脳裏をかすめたりするものですから、これはもうたまりません。大いに心を痛めながら布団に入っても、眠れそうにありませんので、書斎に戻りまして、少しでもノミの心臓を落ち着かせるべく、明け方までお経を読んでおりました。実に笑うべしというところですが、それより他に打つ手を知りませんので、要するに『苦しいときの神だのみ』というわけです。
  
  おかげさまで危うく台風は、この地方をそれて行きましたが、その朝の臨時ニュースによれば、台風はどうやら、当地方に至る少し手前の所で、小さく外側に曲がりまして、当地方の辺を迴るようにし、今はスピードを上げて、日本海目指して進んでおるとのことでした。まあほんとうに何事もなくて善かったと、ほっと胸をなで下ろしていたような次第です。それが何と、今晩のテレビニュースによれば、十月も下旬に入ったというのに、またしても台風が発生して、今現在はフィリッピンの辺にいるが、それがどうかすれば、或いは日本を直撃しないでもないというようなことを言っているではありませんか、ほんとにいつになったら安心できるのでしょう?
  
  その他にも、われわれの周囲を騒がしたりなんぞしておりますのが、今冬流行るらしいあの新型のインフルエンザ。大変な猛威を振いそうだとかで、日本でもすでに何十人とかが亡くなった、というようなことも言われています。まあ心配の種の尽きることを期待する方が無理ということでしょうか。
  
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  さて前置きはこのくらいにして、地獄変相の説明に入りましょう。
  地獄変相の第三宋帝(そうてい)王です。題字には酒水(しゃすい)忌、本地文殊菩薩と書かれています。
  「地蔵菩薩発心因縁十王経」によれば、「第三宋帝王宮(文殊菩薩)。二江岸上の官庁の前に於いて悪猫群集し、大蛇並びに出で来たり、時に亡人の乳房を割破り、身体を繋縛す。時に閻魔卒あり、亡人を呵して言わく、われ等は慈なくして逼るに非ず、汝が邪淫の業はこの苦もなお軽し、と。」ということですが、例のごとく、描かれている内容とは全然くい違っております。やはり絵に従ってご説明いたしましょう。
  
  大きな赤鬼が、岩を転がして大勢の男女を圧しつぶしていますね、亡者たちは皆口から血を流してこの苦しみに耐えなくてはなりません。どうやらこれは合会(ごうえ)地獄というもののように見受けられます。
  
  「大智度論巻16」を見てみましょう。
  ――「合会大地獄の中を見るに、悪鬼の獄卒は、種種の形、牛、馬、猪、羊、鹿、狐、犬、虎、狼、獅子、大鳥、鷲、雉と作り、この種種諸の鳥獣の頭を作し、来たりては呑んで喰らい、咬(か)んでは囓(かじ)って罪人を引く。両の山は相い合し、大熱の鉄輪は諸の罪人を轢(ひ)いて、身をして破砕せしめ、熱鉄の臼の中に、これを搗(つ)いて砕かしめ、葡萄をしぼるが如く、また油を圧すが如し。譬えば、洗濯場に肉を集めて山積し、頭を積んで山の如く、血は流れて池を成し、鷲、鷹、虎、狼は各来たりて、諍って引く。この人の宿業の因縁とは、多く牛、馬、猪、羊、鹿、狐、兔、虎、狼、獅子、大鳥、衆鳥を殺す。 かくの如き等、種種の鳥獣を多く残殺するが故に、またこの衆の鳥獣の頭、来たりて罪人を害すと為す。また、力勢を以って、相い犯し、曲げて衰弱せるものを圧せば、両の山の相い合する罪を受く。慳貪、瞋恚、愚癡、怖畏の故に、事の軽重を断ずるに正理を以ってせず。 或は、正道を破りて、転た正法に軽んずれば、熱の鉄輪の轢き、熱の鉄臼の搗くを受く。」ということです。
  
  どうもこれは謂わゆる、お金持ちの末路ということではないでしょうか?お金持ちというものは、ある人がかつて所有していたお金が、その人に集まったということで、他人を貧乏にしたその見返りに自分が金持ちになるということなのです。ただでさえ罪を免れがたいところに、更に権力までもが、お金持ちには集まりますので、知らず知らずのうちに多くの罪を作ります。これでは、とても罪を脱れられそうにありません。
  
  この事については、キリスト教でも言っていることはまったく同じです。
  「マタイ伝」にこんな記事があります、――  
  金持ちの青年
  
  さて、一人の男がイエスに近寄って来て言った。「先生、永遠の命を得るには、どんな善いことをすればよいのでしょうか。」  イエスは言われた。「なぜ、善いことについて、わたしに尋ねるのか。善い方はひとりである。もし命を得たいのなら、掟を守りなさい。」  男が「どの掟ですか」と尋ねると、イエスは言われた。「『殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証するな、父母を敬え、また、隣人を自分のように愛しなさい。』」  そこで、この青年は言った。「そういうことはみな護ってきました。まだ何か欠けているでしょうか。」  イエスは言われた。「もし完全になりたいのなら、行って持ち物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に富を積むことになる。それから、わたしに従いなさい。」  青年はこの言葉を聞き、悲しみながら立ち去った。 たくさんの財産を持っていたからである。
  イエスは弟子たちに言われた。「はっきり言っておく。 金持ちが天の国に入るのは難しい。重ねて言うが、金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい。」
  
  らくだが針の穴を通るとは、不可能のたとえ、イエスもこのようにはっきりと、お金持ちは決して天国に生まれられない、と言っていられます。
  
  さてその次は、青く流れる三途の河のほとり、一本の樹の下に、一人の金色の目をした老婆が立て膝をついて坐っております、脱衣婆(だつえば)ですね。その側には青鬼の姿をした懸衣翁(けんねおう)が亡者の衣を剥いでいます。どうやら役割が名前と入れ替わっているようですね。脱衣婆が、それを受け取って頭上の衣領樹(えりょうじゅ)の枝に引っかけると、枝のしなり具合で罪の高低が分かるという仕組みです。
  
  亡者の中には、上等の反物を差し出して罪の許しを乞うものもいるようですが、はたして地獄でも賄賂が効くものでしょうか、‥‥。皆衣を剥がされており、脱れられたものは誰もいないように見えます、‥‥。
  
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  政権が変りましたので、マニフェストどおり、すぐにでも高速道路が無料になるかと思いきや、どうも雲行きが怪しくなってきたように見えます。例の日本人お得意の総論賛成、各論反対というやつですか、結局何もしなかった、できなかった、ということにならなければよいが、とひそかに案じておるような次第ですが、‥‥。
  
  高速道路が無料になれば、連日渋滞が起ってとても使い物にならないとか、或いは皆が用もないのに車に乗って出かけるのでCOの削減に逆行するとか、何でもいろいろ言う人もいるようですが、はたしてほんとうでしょうか?
  
  高速道路で万が一にも渋滞が起こったたとしても、一般道をトラックがひっきりなしに走って、民家の辺りに煙とCO2とをまき散らすのと、どちらがよろしいのでしょう?
  無数にある信号に引っかかって、遠い国からはるばる輸入した貴重な燃料を無駄に使い、燃料以上に大切な時間をも無駄に使い、その上、発進ごとにローギヤで煙とCO2と燃料とを、盛大にまき散らすなんてことが、たとえゆっくりとしか走れなくても、信号のない高速道路を止まらずに走ることよりもほんとうに善いのでしょうか?
  
  高速道路が渋滞すれば一般道を通ればよく、一般道が渋滞すれば高速道路を走ればよい、ここのところの自由が、案外盲点になっているのではありませんか?
  インフラの自由、これこそがわが国の産業の起死回生をはかる特効薬だと思うのです。
  
  道路、通信等のインフラは、産業には欠かせませんね?しかし、これはまた新たな産業を発展させる基盤でもあるのです。だから当然、貧富、賢愚、貴賤を問わず誰にでも使用させるべきであり、少しでもチャンスを広げるべきなのです。
  織田信長が関所を廃して通行税を免除した時、楽市楽座が発展したことを思い出しましょう。発展の芽が何処にあるかは、誰にも知れません。チャンスは広くなくてはならないのです。
  
  鉱、工業に基づく産業は日本には向いていませんが、それに代るものといえば観光等の地勢に適した産業と、それにまつわるものしかないように思います。観光を盛んにするには、先ず何よりも日本人自身が国外よりも国内を択ばなくてはなりません。しかしどうでしょう、休日には、日本人がこぞって韓国、台湾、香港、ハワイ、シンガポールなどに出かけて行くのが現状ではありませんか?しかし国内観光しようにも、外国航路の航空運賃よりも高い高速料金では、余りにも説得力がなさすぎです。高速道路が無料になれば、彼等を国内に引き戻す一助にはなります。国内産業を発展させたければ躊躇している余裕はないはずです。
  
  ドイツ、アメリカ、イギリス等、日本以外の先進国はほとんどが無料ですし、また有料であっても、必要な期間が過ぎれば、皆無料になります。この違いは、はたして何に由来するものでしょうか?一刻も早く無料にすべきです。ETCなどというものは、この国では無理と非道とが、どうどうとまかり通っています、と世界に宣伝しているようなもので、国辱以外の何物でもありません。いかがでしょう、はやく無料にすべきだとは思いませんか?
  
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  この頃、お酒の方を制限され、アルコール抜きの低空飛行を余儀なくされれています。老人が、自ら記憶力の衰えに気付いて、すでに人生の衰退期に入ったと覚ったのは、もうずいぶん昔のことですので、一つ年を重ねるごとに、なにがしかのものを失うことについては、それほどの驚きはありません。が、しかし、まさかお酒を失おうとは、‥‥。アルコールのたすけをかりて、それ等をやり過ごそうとしていたもくろみが、もろくもはずれてしまったというお粗末、これはもう笑うよりしかたありませんな、‥‥。
  
  そんなところで、お待ちかね、今月の料理ですが、尾頭付きの祝い膳ですかね、‥‥。そう家内の誕生日なんです。鯛というものは昔は大変な高級魚だったものですが、養殖が盛んになったせいか、天然物まで値を下げて、大変手に入りやすくなっております。このようなわけで天然か養殖か分かりませんが、真空パックの一塩物ならば、わが家でも気軽にお膳にのせることができるのです。
  
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1.肴:鯛の塩焼き、ただし一塩物、パセリのつま
2.汁:長芋のみそ汁、ただし京の白みそ、柚子の吸い口
3.飯:栗の炊き込みご飯、ただし昆布だしに塩少々
  
  それでは今月はここまで、また来月お会いしましょう、それまでご機嫌よう。
  
  
  
  
  
  
  (仏画シリーズ 地獄変相第三 おわり)