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  暑さ寒さも彼岸までのことわざどおり、彼岸の中日を過ぎたころからは、これぞ秋という過ごしやすい日々が続いておりましたが、ベッドの中でくしゃみを連発するにおよび、ついに夏布団から冬布団に衣替えしました。
 
  いよいよ紅葉の季節到来。 
  ホームページの表紙をかざる絶好の写真。
 
  このような事が頭をよぎります。 さっそく、車をあちこちぐるぐると走らせてみましたが、どうも今ひとつ秋になりきっていないのか、思うような景色にであえません。 いたずらに燃料だけがかさみます。 そういえばガソリンの価格が近頃えらい勢いで上昇してたなあ。 それに少し変ではないか? 秋に紅葉がどこにも見られないだなんて。 もみじは紅く、いちょうは黄色く。 これが日本ではなかったかしらん。 そう言えば田んぼの稲がまだ青いなあ。 どうやら季節を間違えたような‥‥。
  とまあ、このような具合に、老人は、すっかり季節からも見放されているようで、世間とは没交渉のまま、またしても重い冬布団の中にもぐりこんで、ぬくぬくと夢想にふけることに致しました。
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  この頃は、テレビに見たいと思えるものがないなあ。 しかし、あれは面白いぞ、
  
  『そこであたいわぁ、あんたたちのために紙芝居やったげる。』
    桜塚やっくんだなこれは、人をつかむのが、むちゃくちゃうまい。
  『ちゃんちゃかちゃんちゃん、ちゃちゃんちゃちゃんちゃん。‥‥チックショウー』
    小梅太夫、おどろいたなあ、すごい芸だね、これだけで一生もの。
  『××のぶるぅす、××のぶるぅす、聞いてくれェ〜。 ある日のことやけどぉー。』
    犬井ヒロシ、短いけれど気がきいてる。
  『♪〜、♪〜』
    ヒライケンジ、紙芝居みたく紙をめくって、中に面白いことが書いてある。
    案外、歌がうまいんですよ、これが。
  『ひとつ、あなたにとって、××とはなんですかぁ〜? ハァー、なんだろうねぇー‥‥』
    摩邪だな、雨蛙そっくり。 手に取ってみると、案外かわいいんだよね‥‥
  『パンパパンパン、パパンパパンパン‥‥』
    アクセルホッパー、元気いいよ。
  『そんなのかんけえねぇ、そんなのかんけえねぇ。』
    小島よしお、はだかでねえ、何か恥ずかしそう、しかし自信があるんだね。
  『とおきょおォ、うたかるた‥‥』
    東京ウタカルタか、いい音のするアコーディオン。 何かがいいのだが‥‥。
  『ピーポピポピッポポ、ピッポポポー』
    風の小三郎、イギリス民謡みたい‥‥、いいよォー。
  『♪♪〜♪♪〜〜』
    セクシー松山、淡谷のり子の再来。 歌がうまいよー。
  『にしおかッ、すみこだよォー‥‥』
    にしおかすみこ、これは凄い。 何がって、これは普通の娘さんでしょう?。
  
  そう、エンタの神様、これは見逃せない。
  よくもこんな凄い新人たちを発掘できますね、みんな独創的でいいよ。
  しかし、他の番組はどうだろう。 独創性が無いねー‥‥。
  人の真似ばっかり。 どんどん手軽に苦労せずに作って、力が弱りますよ。
  そう、マンネリと言えば、探偵浅見光彦のシリーズ。
  榎木孝明が良かったんだよね。 容貌、姿勢、言葉遣い、この三拍子がそろって端正というのも珍しい。 しかし、何というか、突拍子もないというか、無理な筋書き、無駄なシーン、ムラのある流れ。 こんな三拍子はそろってほしくないんですけど‥‥。
  同じマンネリでも、外国のものは違いますね。
  例えば、刑事コロンボのシリーズ、脚本にお金がかかっています。 ムラのない流れ、無駄のないシーン、無理を目立たせない筋書き。 練られているんですね。 お金がかかってますよ。 探偵ポワロのシリーズ、シャーロックホームズのシリーズ、みんな凄いものですよ。
  スポンサーも甘いものですね。
  僕が社長なら担当者はすぐクビです。 容赦したりはしませんよ。 お金を出せばよいというものではないのです。 日本の文化を育てるものでなくてはね。
  あと、何か面白いテレビはないのかな‥‥。  
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  淡谷のり子か。 『雨よ降れ降れー』、やっぱり雨のブルースだな。 作曲は服部良一。 一番好きな作曲家です‥‥。 服部良一の一番好きな歌手は、笠置シヅ子‥‥、 買物ブギか‥‥、
きょーおは朝から、わたしのお家は、てんてこ舞いの忙しさ、
ぼーんと正月、一緒に来たよな、‥‥
      ‥‥、‥‥、
それがごっちゃになりまして、‥‥
      ‥‥、わてほんまによいわんわ、
      ‥‥、わてほんまによいわんわ。
  ‥‥ああ、しんどー。
  何か思い出せないが、懐かしいなあ。 声がパーンと張って、凄いビブラートがかかっていた。 耳に残るいい歌ばっかり歌ってたよね。 もうだいぶん前に、死んじゃったって聞いたけど、いつだったかなァー‥‥。 買物ブギ、ジャングルブギー、東京ブギウギ、大阪ブギウギ、アイレ可愛や、銀座カンカン娘、おっと、これは高峯秀子だったな‥‥。 他に何があったんだろう‥‥。 CD買ってみようか‥‥。
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  そんなわけで、
    インターネットで探してみますと‥‥、
    有りました‥‥、
      CD:『笠置シヅ子全曲集』
      DVD:『歌うエノケン捕物帖』
      DVD:『エノケン笠置のお染め久松』
  こんなわけで、
    この三枚のCD|DVDを購入しました。
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  CD、これはもう素晴らしいの一語につきます。 こんなにうまかったんだ‥‥。
  ただ技巧ということで言えば、音感、リズム感ともに極めて勝れていますが、その他には、それほどきわだった細かな技巧を使うふうではないようです。
  ただ、特別うまいというのでもないのに、天性のものが何か他にあって、心に暖かい気持ちがつたわってくるんですね。 自然の、そういう技巧が素晴らしいんです。
  それを、天才作曲家、服部良一が、余すところなく引きだした、これまた見事でした。
  二枚のDVD、これも素晴らしい。 たんに映画としてのできは?と問われれば、やはり、ハテな?ということになりそうですが、エノケン、笠置のファンにとっては、これはもうこたえられません。 若いときの笠置の可愛らしさは、今でいうアイドルの雰囲気。 天下のエノケンと渡り合って、寸毫もおくれを取りません、たいしたものです。
  エノケンはどうか? こちらはやや推され気味でした。 『銭形平次捕物帖』シリーズの『八人の花嫁』の八五郎の演技で見せた、自由闊達さが見られません。 しかし、ファンにとっては見ても損のないものです。 今度は、エノケンのDVDを探してみようかな‥‥。
  
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  テレビにはこんな楽しいこともあるのですが、しかし新聞で見る記事は悲惨です。
  国技の名門時津風部屋の中で、しかも、部屋の親方時津風が指図し、弟子が実行したリンチ事件、これには、正直びっくりしました。 相撲取りが、自分たちの力を知らないはずがないでしょうに。 あの極道小説家の安部譲二さんも言っています。 世界で一番強いのは相撲取りだと。
  しかし、知らないから殺してしまったのでしょう? しかしネー、腹を足で何時間も蹴ってはねェー。 腹には、あばら骨のガードがないのですから、内蔵に直接響きますよ、これは。 人間としても常識ってものがないのです。 しかも、入門して間もない新弟子でしょう? それをリンチして殺してしまった? まだ身体のできていない新弟子をねェー。 これじゃあ、殺されに入門したみたいなもんでしょう? どんな言い訳をすれば通用すると思ってたんでしょうねェー。
  しかし、それを全然見抜けなかっただなんて、警察ってものも何のためにあるんだか、言葉がありません。
  
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  僕も、昔は相撲が好きで、テレビでよく見ました。 しかし何か、貴乃花が引退したとたん、もう見たくなくなっちゃったんですね。 もう、面白くなくなってしまったんです。
  あの歴代横綱の中でも、きわだって立派な大横綱、心技体のバランスがとれた貴乃花、よかったですねェー。 それを相撲をよく知らない人たちが、よってたかって引退させてしまったんです。 これで面白いわけがありません。
  横綱の表芸とは言うまでもなく、”寄り切り”。 相手に何もさせない、横綱の段違いの強さを見せつける、これが寄り切りなんですね。 貴乃花は本当に寄り切りがうまかった。 それを、それでは面白くないだなんて誰かが言ってね。 投げを打てだなんて、知らなければ黙っていればよいのに。 これで寿命を縮めたんですね。 もう後は見るきがしません。
  それがどうだ、このていたらく。 自分で自分の首をしめるって言いますけど、本当にそのとおりになっちゃいました。
  しかしそれにしても、こう何でもかんでもが面白くなくなっちまって、いったい何ういうこってすかね? もう打つ手なしでしょ? つまんない世の中になったもんです。
  
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  面白さを知るということは、一つの芸なんですね。 深く入らないと分らない面白さって有るもんなんです。 相撲なんて、見る面白さっていうのが、やる面白さとは別にあるんだから、それでお金とってんでしょう? その見ることの中にも芸ってもんが有るんです。
  それを、世の中の風潮ですか、何でも手軽になっちゃって、誰にも分ることが良いことだってなっちまえば、もう文化ではありません。 その中に、お猿にも分るようになんて言ってね。 もうこれは文化じゃないです。
  ある程度の経験を積んで初めて分り、更に経験を積めば、もっとよく分る。 だからいつまで見ていても見飽きない、こういうものなんですがね。
  まあ、こんなんなっちゃってから言ったって、もう遅いんですから、何うしようもないんですがね。
  
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  『分りやすい』、これが、どうやら現代を表わすキイワードのようです。
  そう言えば、塩鮭が塩辛くないのも、ケーキが甘くないのも、みィーんな根は同じなんですね。
  塩辛さ、砂糖甘さの奥にある、塩や砂糖のかもしだす深い味わい。 こんな奥深い味わいは、もう感知できないほど味覚がにぶり、そのくせ塩鮭でもケーキでも、一度に大量に食べたいという、何か得体の知れない飢餓感。 それで塩辛くないほうがよい、砂糖甘いのは嫌だと言うんですからね、迷惑なもんですよ。
  しかし、近頃のケーキに大量に使われている生クリームの水くささ、粉っぽさはどうでしょうね。 材料の嫌味は気にならないということでしょうか。 何か脂っぽさは平気なんでしょうかね。 その上、バタークリームは嫌い、これでは理解に苦しみます。 これもやはり大量に食べたいという飢餓感のなせるわざでしょうか。
  最近、チキンラーメンというものを何十年ぶりかで食べました。 スーパーで見かけたら、どうしても食べたくなったんです。 しかし、見た目は昔と同じでしたが、味は、めん自体が、みょうに脂っこくなっていて、一口目はおいしいと思いましたが、家内と半分づつ分けて、その半分を食べきることができません。
  もう四十年ほども前のことでしょうか、マクドナルドというものを初めて食べて、その何ともいえない歯触り、舌触り、何とも形容できない味、これらのうす気味悪さに辟易した覚えがあります。 昔の、ごく普通に売られていたハンバーグパンは、こんな物ではありません。 もっと食物らしく材料が何であるか、何のようにして作られたか、安心できるものでした。 こんな事が、そもそもの始まりだったんですかねェー。
  市販のマヨネーズもおいしいものですが、それにしてもそれをチューブに口を付けて飲む人がいるのには驚きます。 水で薄めても良いほどのものを、いったいどうしたことでしょうね、わたしには見当もつきません。
  
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  今月は、どうもみんなに八つ当たりしているような、こんな具合です。 しかし、面白い話題が無いということでもありません。
  『F1(Formula 1)』といえば、ご存知の方も、ご存知でない方もいらっしゃることと思いますが、世界の自動車レースの最高峰と言われるもので、世界中を転戦し、その競走用自動車を造るにあたっては、何十億、何百億というお金がかかるので有名です。
  かつては、このレース中に事故で死ぬ人が非常に多くいまして、あきらかに危険なスポーツでした。 それだけに見ていてもたいへん面白かったのです。
  しかし最近ではそうもいかなくて、安全がやかましく言われるようになり、世界的にも見て分りやすいということが求められますので、興行主も、レギュレーションを毎年のように変更します。 そのせいで、やや面白さも減じてきたのですが、今年、日本の『富士スピードウェイ』で行われたレースでは、ややおもむきが違っていました。
  雨をおして強行したために、全体の三分の一に当る、二十周分は、ただ先導者の後にしたがって、ぐるぐるぐるぐる回るだけのレースです。 もちろん追い抜き禁止ですので、面白さなどは微塵もなく、テレビで見ていてもたいくつでたいくつで、いつまでこれは続くのか、不満は臨界点に達して、ついにスイッチを切ってしまいました。
  どうも、日本のファンも軽く見られたものです。 こんなレースのチケットが雨ざらしの指定席で六万五千円もしたというのに、誰も怒らないだなんて、日本人は怒るということを、ひょっとしたら忘れてしまったのだろうか?と思い、次の日に早速インターネットで調べてみました。  
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  ブログのことですから、その真偽は不明ながらも、何でも『富士スピードウェイ』への入場は専用バスか観光バスに限られていて、自家用車、モーターバイク、自転車、歩行での入場は全面的に禁止であったそうです。 上記の乗り物で来た人は、周辺にある借り上げ駐車場に駐車して、専用バスで乗り込まなくてはならなかったのですね。
  当然、多くのバスが『スピードウェイ』への専用道路を使用することになります。 そのどこかにボトルネックがあったのです。 専用道路が数珠繋ぎに混雑して、少しも進まず開始時間に遅れた人が大勢でたということでした。 バスを下りて何時間も歩いた人もいたそうです。
  しかし、問題はこれだけではすみません。 専用バスにはトイレの設備がなかったので、みんな道端でしたということなんですね。
  帰りは、さらに悲惨でした。 観覧席からバス乗り場までの小道は、何キロメートルもあり、つづら折りの坂道もあり、舗装はされていないので、ぬかるんでいます。 この悪条件のかさなる中で、みな雨にうたれて立ちつくしていました。 バスがちっとも来ないのです。 中には三時間半も立ちつくしたということです。 靴の中に冷たい水がしみこんで、身体は冷えています。 
  屈強な男性ばかりではありません。 女性もいます、男女の二人連れもいます、中には子供連れも相当数いたそうです。 まさかこんな事を想像して来なかった人も多くいて、薄い街着の人もいました。 傘のみが雨具の人もいたようです。 ここでもトイレの問題がありました。
  バスに乗ってほっとしたのもつかのま、あるバスの中では、子供が粗そうして酷い臭いが立ち籠め、それにつられて大人までが胃の中のものを吐いて、足の踏み場もなくなり、まるで地獄の様相を呈したということでした。
  外人も、英語のブログでひどく怒っていました。 さんざんな観戦だったのです。 わざわざ飛行機に乗って、六万五千円もするチケットを買ってね!!これはもう立派な国際問題です。
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  事が起こってからあわてるのでさえ恥なのに、
事が起こっても誰もあわてない。
  
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日本人の自覚すべき欠点の一つとして
//危機管理能力の欠如//
これをどうしても挙げる必要がありますね
//おのれ自身を知る//
島国根性を抜出す一番の近道です
  
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  やはり面白い話題ではありませんでしたね。 寝てばかりいてはダメですかねェー。 その中にきっと、何か面白い話題を探し出しますからね。 どうぞ見捨てないでくださいよ。
  
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  あっ、そうそう、こんな話があります。 今、思いだしました。
  
  ――、ある日のことです。 仕事がやたらに忙しくて、机に向って必死に書いたり考えたりしていた時のことです。 電話が鳴り出しました。 リーン、リーンと‥‥。
  僕は、こんなに忙しくしてるんだから、当然だれかが取ってくれるもんだとばっかり思っていて、何もしません。 しかし、どういうわけか誰も取ってくれないんです。 
  僕は、おい、おいっ誰かいないのか?って呼んだんですが、誰も返事をしません。 もう放って置こうかなって思ったんですがね、リーン、リーンってやかましいでしょう? 仕事にならないから仕方なく自分で取りましたよ。 
  もしもしッ、もしもしッ。 受話器に向って叫びますが、返事がありません。
  何だこりゃッ、さんざんリンリン鳴らしゃあがって。 
  
  悪態をついてるうちに、ひょっとしたらこれは夢か?と気がついたのですねェー。
  そう、これは夢だったのです。 受話器のつもりの、握り拳を耳の所に当てがったまま、はっと気がついたのでした。
  
  ベッドの下では、まだ目覚ましのベルが鳴っていましたっけ‥‥、――
  
  アッ、アッ、そんなッ、あぶない、物を投げないでください。
  そんなに怒らないで‥‥。 この次は、きっともっと面白い話を考えて来ますから。 えっ、もうお前に次はないって、そんなことをおっしゃらずに。 どうか‥‥、どうか‥‥。
  
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  (秋 おわり)