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かつお節

 これはわが家族にあらざるはらから一族どもに、若干の憤りと幾許の憐憫をもって、わが家の伝統を教え伝えようとするものある。したがって多くの関係ない読者にとってはまったく関係なく、等閑にしていただければ、それを幸いと致すものです。世間に関係ないことに公共の媒体を使うことは、いささか心苦しくは思いますが、やむを得ぬ事情をどうかくみおかれまして、平にご容赦たまわりますよう、お願いいたします。

 では一体ご大層に何を伝えようとするのかというと、これが誠に馬鹿らしくもあり、情けなくもありで、ただ昔からわが家では、このように旨いものを食っていたのだぞと、ただそれだけを兄弟姉妹に伝えたいのであります。そもそもの発端は一族がこぞって集まるところの法事の場にて話していたことなのでありますが、今時の金にも人手にもほんの少しばかりも不自由していないものどもが、何の手間を惜しんでのことか、昔わが家で食べていたようなものを、とんと食っていない。コンビニの弁当を夕食に毎度食っていて、あろうことかそのことに満足までしている。正月のお節はただの飾りもので、スーパーで買う安物で十分だ。正月にはすき焼きがご馳走だなどと、信じられないことを言うものばかりが集まって、忙しい忙しいの妄言をほざいての手抜き自慢に終始していましたが、何しろ多勢に無勢では我等には勝ち目がなく、実に悔しい思いをしたことなのであります。

 

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 と、このような出だしの部分を書いたのは正月の10日のことでした。

 このところ少し前からパソコンに向かうと目が痛んで、長時間にわたって画面を見つめることが出来なくなってきて困っております、画面に天井の蛍光灯が映って目を射るからなのですが、そこでやむなく目に優しいという画面に映りこみの少ないデスクトップ型のディスプレイを買おうという気になりましたのも必然というものでしょう。これは現在のノートブック型のパソコンからデスクトップ型に切り替えることを意味しますので、当然いろいろと選択に迷うことになる筈でしたが、何しろ目の痛みには耐えられず、ほとんど何も考えずに目に付いたものをオンラインショップで買ってしまいました。もちろんそれから数日ならずして、運送やが届けてくれた訳ですが、この後がもう大変で、セットアップサービスのわずかの出費を惜しんだがために、ぶつぶつ言う家内に手伝わせながら自らも力仕事をして梱包を解き、いらいらとあせりながらマニュアル類を読み解き、電気量販店を何度も車を往復させて不足している電源コード、ランケーブル、ルーター等々の、我々にはほとんどその場にならないと思いつかないこまごました品物を何度も買い足しながら、何とか単体で動くようになったのが、その日も夜遅くになってからでした。このような一日を過ごしてみると、もうルーター設定とウイルス対策のソフトをインストールする気力が出て来ませんので、ある程度の費用は覚悟でお助けサービスの人を頼んでしてもらったのですが、その人が帰ってしまってから、また問題がでまして電源を切るときにエラーメッセージが出るようになってしまったのです。悶々として眠れない一夜を明かし次の日にメーカーのテレフォンサービスとの長いやり取りがありまして、やっと現在このようにして入力できるようになりました。まことに教えられることが多いパソコン導入でした。

 初めて見た19インチ画面のデータは文字が何だかボケたようで、色味も変で、これは失敗したもっと選んでいれば良かったのにと思わせるようなものでしたが、明るさと色味とコントラストを調整すると何とか我慢出来ようというぐらいにはなりました。最初おどろいた文字の余りの大きさにも慣れてみればこれでなくてはという気持ちになりかけていますし、今ではかなり満足しています。何しろ画面が広いために文書をいくつも開いたときの処理のしやすさが段違いですし、全画面表示の必要がないためにデスクトップのアイコンをいつでもクリック出来るという利点は作業がスムースに運んでまことに結構とほめてやりたい気がします。

 しかしこのディスプレイの初期設定はまったく理解できません。ノートブックパソコンで指定したクリーム色をレモンイエローに塗り替えてしまうのには参りました。メニューというボタンがあったのでそれを押して色温度を調べてみますと7700度Kという大変青味の強い設定になっていたのです。まあ私のパソコンに関してはこれを修正すれば良いとしても、世の中には私のページをあのような奇怪な色で見ている人もいるのだろうなと思いますと、少しむなしい気持ちもしてきます。今お読みいただいている枠の外の色はごく薄いクリーム色なので、読者の皆様にはぜひディスプレイのメニューボタンを押されまして、適当にご調節くださいますよう切にお願い申し上げます。緑を少なく、青をわずかに少なくしてください。

 

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 と、まあここまで書いたのが昨日のことで、それから実はまた問題が出てしまいました。やはり電源切断の時のことで、画面がブラックアウトするところで恐ろしげな音とともにエラーメッセージが出ましてアドレス0x076‥‥04readになりませんと言うのです。そしてOKボタンで切断出来ますとありましたが、それを押すまでもなく切断してしまいました。ただし今回は何度か電源の入切を繰り返しましても再現しないためにメーカーには連絡を取らずにいま作業をしているところです。どなたかこのあたりの事情に詳しい方で当方にお知らせくださる方はいらっしゃいませんでしょうか。

 

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とこのような訳で、本題に関してはごくごく主要なことのみを書き出すにとどめざるを得なくなり、まことに申し訳ございません。

 

第一章 ごはん

 世の中にうまいものは無数にあります。しかし白米を上手に炊いたごはんこそが第一にうまいものです。別に銘柄米である必要はありません。日本で取れたお米ならば必要にして充分です。上手に炊くほうも電気釜を使えば十分以上とさえいうことが出来ます。世の中には『こだわり』の何とかと言って、いろいろごはんの炊き方までもこだわる方がいることは承知していますが、わたくしの行き方とは方向が違います。

 しかし、ごはんの問題点はそのうま過ぎるところにあります。どうしても食べ過ぎて必要以上のカロリーを取ってしまい勝ちです。特にカロリー制限を受けているものにとっては欲求不満の原因ともなりかねません。またいくらうまくても毎日食べていれば飽きも来るでしょう。これはごはんに対して誠に申し訳ありません。その二つの問題点に関して、我が家では普段は麦ごはんを食べることによってしのいでいます。漏れうけたまわるところによりますと、畏れ多くもかしこきあたりでは普段麦ごはんを召されているということであります。やはりわれわれが白米のごはんを飽食していてはなりますまい。このような訳で皆様方にも普段は麦ごはんの麦四米六をお勧めします。

 上記の理由からここで挙げるごはん三種は普段は食べられないご馳走と心得てください。

 

  1.おむすび

 白米のみのごはんには若干の甘味があります。これは塩味でバランスを取るのがもっとも理にかなっています。ごはんは炊きたてのあつあつを用意してください、おひつに移してはいけません、もし移すとごはんが冷えてしまいます、電気釜から直接しゃもじで掬ってください。他にはあら塩、銘柄にはこだわりません。梅干少々、塩と紫蘇だけで漬けたものを選んでください。減塩ばやりですが、減塩はいけません。梅干独特の旨味はあら塩が作りだすものです。デパートでもスーパーでも梅干の入れ物の裏あたりに書かれている成分表示をよく見てください。減塩のものは旨味が足らないためにいろいろなもので味付けされています。鰹節、こぶ、酒、化学調味料等々さまざまなもので味が追加されていて、梅干本来の味をそこなっています。塩辛くて一粒が食べ切れなければ、次の日にでも食べればよいのです。塩は滅菌作用が強いために決して傷むことはありません。

 減塩ばやりが塩鮭の世界にまでも広がってしまったのは、実に困ったものです。塩鮭独特の味は塩によってかもし出されたものです。塩鮭は鮭の漬物なのです、単なる塩漬けではありません。そこに独特の旨味が生じなければならないものなのです。決して単に塩辛いことではないのです。あるこだわり派のスーパーでのことですが、客の注文が余りに多いのでしょう、高濃度の塩水を鮭肉に圧力をかけて浸み込ませることにより、塩分濃度がどれだけになりましたと謳っています。ためしにと私もいく切れかを求めて焼いてみましたが、塩水が本当にジャブジャブという感じに皿の上にあふれ出してきまして、非常に生臭く、しかも鮭の肉はパサついて味が無く、鮭には申し訳ないと思いながらもとても食べきることが出来ませんでした。決して塩辛いことが良いのではないのです。

 むすびを作るには熱さを我慢する必要があります、炊き立てのごはんのもつ熱によってあら塩を溶融してごはん粒の中に浸透させるためにはどうしても熱さを我慢する必要があるのです。しかし少し工夫して熱さを緩和するぐらいはやむをえないところでしょう、このようにしてください。適当なサイズの茶碗を用意してください。そして一つむすぶごとに冷たい水道水で手を冷やし、ついでに手についたネバリを洗い流してください。

 でははじめましょう。梅干を必要なだけ小皿に取って近くにおきます。電気釜、しゃもじ、茶碗、あら塩の容器、冷水をはったボウル、出来上がったむすびを置くための皿、これらを手がってのよいように並べます。

   (1)冷たい水で手を冷やします。

   (2)あら塩をたっぷり左の手のひらに取ります、よく左右の手をこすり合わせます。これで左右の手に塩が充分に付着したことと思います、多少塩辛いかなというぐらいがちょうど良い加減です。

   (3)手のひらに付着したあら塩を、流しの上で振り落とします。かるく手を振れば余分な塩が落ちて具合がよくなります。

   (4)塩のついた手のままで、茶碗にむすび一つ分のごはんをよそいます。そしてその中心のあたりに少しばかりの梅干をちぎってのせます。手早くしてください、ゆっくりではごはんが冷めてあら塩を溶かすことが出来なくなってしまいます。

   (5)左の手のひらに茶碗のごはんをひっくり返してのせます。そして手早くお好きな形にむすんでください。このとき注意すべきポイントは手に付着した塩がザラザラと感じられるかどうかです、水に溶けてしまう前に手のひらにごはんがのる、これがポイントです。

   (6)左右の手のひらを力をこめてむすびますが強すぎてごはんが指の間から逃げるようではいけません。力の伝わりが表面は強く中は弱く伝わるように気持ちをこめてむすんでください。ぽんぽんとちょっと空中に放り投げるような感じですか、工夫してみてください。

   (7)最後にグジャッとつぶすようなつもりで一回だけ力をこめるとうまく行くようです。もちろん本当に握りつぶしたりしないように気持ちだけそのつもりでやってみてください。

   (8)腹の部分を持って形がくずれなければ出来上がりです。皿に置いてまた(1)から繰り返してください。

 以上がおむすびの作り方ですが、これに海苔を巻くときは、焼いてない海苔をこの上に巻きます。コンビニなどでは焼き海苔を別に添え食べるときに巻くような工夫がなされています、これにも一理あることではありますが私にはどうもこれではおむすびと海苔との味のなじみが悪いように見えます、いかがでしょうか。

 

 2.かつおまぶしごはん

 鰹節はそれ自体に薄い塩味がありますから、ごはんにまぶして食べると実にうまいものです。わたくしもカロリーの問題さえなければ、毎日でも食べたいほどです。

 これはご用意のないご家庭には少々手間かもしれません。しかし準備するものはたった二点のみですから、この機会にぜひご用意してください。まず鰹節削り、それから鰹節、あとはどこのご家庭にもあるしょう油少々のみ。鰹節削りは三千円くらいの安いものでも十分です。ただし高い道具にはそれなりの利点もあることですから無駄にはならないと思いますので、わたくしのお勧めする京都堺町通り四条上るの八木包丁店の一万二千円ほどのものはいかがでしょう。

 鰹節はどこのデパートにもあるにんべんの鰹節が間違いがなくて良いでしょう、二千円ぐらいです。なるべく大きくて、不自然な曲がりがないものを選んでください。不自然にまっすぐだったり曲がったりしたものは割れている恐れがあります。

 パックしたけずり節は別物です。これはだしを取るものでそのまま食べるものではありません。味も香りも違いますから、わずかの手間を惜しまないようにしてください。

 では作り方に入りましょう。

   (1)鰹節をけずる。鰹節はカンナで削りますが、この刃の研ぎようが余り鋭いと削ったものが粉になって飛び散ってしまいます。もしそのようでしたら、カンナの刃を研ぎなおしてください。現在の刃の角度をわずかに立てるようにして、砥石の上を軽く数回すべらせてみてください。台に嵌めたカンナの刃が台と平行になっていれば、それ以上研いではいけません、刃が滑って削れなくなってしまいます。電動砥石を使うと刃の角度が大きく変わって元に戻らなくなってしまいますから、注意してください。一度研げば数年はそのままで使えますから余り気にする必要はありません。八木包丁店のものはこの刃に工夫がされていて切れなくなればネジで取替えることができますから、それもお勧めの理由の一つです。削り置きは出来ません、香りは数時間も持たないものですから、出来るだけ必要分づつ削るようにします。

 鰹節から取った出しは他の何から取った出しよりも香りがよく味も上品で臭みがなく、何にでも使えて重宝するものですが、これも作り置きの出来るものではありません、香りが寝ぐさく変わってしまいます、その都度取るようにしましょう。

 我が家では出しは鰹節、日高昆布、国産しいたけ、および味の素に決めております。最後の味の素は不思議かもしれませんが、胡麻和え、おしたし、たまご焼き等のだし汁を控えたい時などには、わずかに一振りで絶大な効果があります。しかししつこい後味を残すものですから、過ぎたるは及ばざるがごとしと肝に銘じてください。味の素は普通名詞ではなく固有名です。溶けが早くいやな味も比較的に少ないために特にこれに決めています。

   (2)茶碗によそったごはんに今削ったかつおぶしを振りかけ、箸で上下をひっくり返しながら、よく全体に行き渡るようにします。かつおぶしは味も香りも濃いものですから、多量である必要はありません。

   (3)ごく少量のしょう油をしょう油さしから回しかけます。かつおぶしにかなりの塩味がありますから、しょう油の香りをわずかに付け加えるものと考えて量はごくわずかが良いのです。

   (4)すこしかき回して食べてください。

 なお、タマゴかけごはんにも少量のかつおぶしを加えると味に一層の深みがましますので、これもお勧めします。

 

 3.お茶漬け

 お茶漬けはごはんを味わうものではありません。しかし熱いお茶をかけたごはんは、口中に残る他の食物の後味を消しさってくれるばかりか、食事を終えるに当たっての満足感をももたらしてくれるものなのです。このお茶漬けを食べることによって、もっと何かを食べたいという物足りなさを完全に補ってくれるという訳です。

西洋あるいはアラブ世界では、食事は甘いデザート、特にアラブでは飴または砂糖のかたまりのようなもので、食事の満足感を得るようですが、日本人にはなかなか耐えられるものではありません。わずかのカロリーで食事を満足させるのですから、お茶漬けにもやはりわれわれは感謝すべきでありましょう。

 ここではお茶漬けを三つに分類します。

 

   (1)熱いお茶で食べるお茶漬け

 最後に茶碗に残った半分ほどのごはんで作るお茶漬けです。初めは熱かったごはんも食事が終ろうとするころには冷めかかっています。そこで熱い煎茶を急須に入れてごはんにかけてください。炊きたて熱々のごはんに熱いお茶をかけるのは、食べるまえにごはんがほとびてしまいます。舌をやけどしたりして決して良いものではありませんから、くれぐれも熱いごはんに熱いお茶などをかけてめしあがることが良いなどと勘違いなさいませんように。

 漬物でも佃煮でも何でもいっしょに食べて良いのですが、ご家庭に定番の漬物を常に用意されていますと、そのための準備が省略でき、その分をほかのおかずに回すことができます。飽きが来ずいつ食べてもうまいと感じられるものが良いでしょう。

 わが家では、夏は奈良漬、冬は沢庵を重宝いたしております。なお沢庵は弁当に入れるにはにおいの点からも不向きです。ご家庭内でご使用になってください。

 お茶は非常に高価な百グラム何千円のものから安価なものまで際限がないようなものですが、価格に左右されず、お茶漬けにこれがよく合うというものをご自分で選んでください。お茶漬けのために多摩川の上流まで水を汲みに走り大枚を要求した八百膳の故事は物事の位を知らない田舎者のそしりをまぬがれません。お茶漬けは刺身のつまよりちょっと上ぐらいに考えるのが妥当です。煎茶ではなく番茶でもウーロン茶でも、お好みでどうぞお召し上がりください。

 

   (2)冷たいお茶をかけて食べるお茶漬け

 夏の暑い日などには、温かいよりちょっと冷めた程度のごはんに冷たいお茶をかけて食べたいものです。熱いお茶をかけて食べるお茶漬けはごはんの最後に食べるものですが、冷たいお茶の場合はお昼ごはんなどをそれだけで済まそうというときのものでしょう。ご家庭で漬けたナスの糠漬けがよく合います。

 お茶は冷蔵庫で冷やした程度が好く、冷やしすぎは旨くありません。なにごとも程々にということです。

 

   (3)冷たい水をかけるお茶漬け

 お茶の代わりに冷たい水をなま温かいご飯にかけて食べます。これには京都の柴漬けなど好く合います。夏場には柴漬けを定番となさると良いと思うのですが、なかには歯が浮くなどとおっしゃるかたもいらっしゃいます。わが家では京都の大安の柴漬けをかかしません。しかしご存知の方も多いと思いますが、この柴漬けは水と相性がよくお茶に出会いますと少し金気を感じますので、おさけになったほうが無難かと思います。

 

 以上、三種のごはんをご紹介いたしましたが、みな麦ごはんでも結構なものばかりでごさいますから、白米に限らずお試しになってください。梅干の項でも申しましたが、なかには塩辛さの奥に本当のうまさが隠れていることもあります。塩鮭なども一切れの塩鮭を一度に食べてしまうのでなく、昔は当然のように皆がしていたように、たとえば二日に分けて食べるようにすれば、何も薄塩の塩鮭を食べて物足りない思いをすることなどありません。最近は甘いケーキなども敬遠して、甘くなくておいしいなどと言われる方も大勢いらっしゃいますが、皆甘さの奥にしか存在しないうまさを知らないのです。小さなケーキを一切れ食べることで十分な満足が得られることに、どうか皆様も価値を見出してください。『塩と砂糖は単なる辛さ甘さ以上の味をかもし出す』です。

 

第二章 うどん

 うどんに限らずめん類はみな旨く飽きのこないものばかりで、ときにはごはんに変わりまして大変重宝をいたします。なかでもうどんは味わいが深くて、噛んでよく飲み込んでよいというところがよいのでございますが、ソバなどは挽きたての打ちたてなどと申しまして、なかなかに喧しいものでして、しかしまたそれが真実であるところに、ご家庭でゆでるソバがどうもいま一つ気が向かないということなのではないかと思うのであります。

 そこできしめんなどと通ぶらないで、たんにうどんなのでございますが、これは日持ちがよくごく気楽に使うことのできる乾麺がまた一段と味のよいところも、どうも誠にうれしいところでございます。ただ乾麺は日光またはそれに類するものが味わいを引き出しているものですから、かなり選びに選ぶ必要があります。時間をかけずに即席で乾燥させたものは、味わいに欠けるところがあって当然なのでして、わたくしなどは長年この選びに選んで、もうダメかななどとも思ったものですが、ごく普通のスーパーで見つけた讃岐うどんがなかなか良いもので、いまはそれ一本に絞って使っております。乾麺は味が凝縮されているだけに生めんに比べて格段に味の濃いものですから、それを目安に皆様にも選んでいただければまず間違いはございませんでしょう。ここ十数年のあいだ変わらずに、わが家では香川の石丸製麺の製品を取り寄せて、その一向に変わらぬ味に満足していますことを念のために申し添えましょう。

 それではうどん三種をご紹介します。

 

 1.ざるうどん

 温かいざるうどんと冷たいざるうどんがありますが、これはただ単に茹で上げたうどんをざるに取り水道の水をかけて荒熱を取りぬめりを少しばかり取る作業をいたしますが、その時に長く水をかけて冷たくするか少しだけ水をかけて温かいままで食べるかという違いに過ぎません。

 ただお茶漬けの項でも申しましたように、冷たすぎるのも熱すぎるのも両方ともが味を損ないます。特に夏場になりますと、うどん屋などでともすると回りに氷などを回らせていやが上にも冷感を盛り立てようというような見え透いたことをいたしますが、冷房の効きすぎた喫茶店で食べるかき氷と同じことで、まあとても結構とは言いかねるものです。人間の舌には味わうにふさわしい温度というものがありますから、その則を越えないぐらいにしていれば常に旨いものが食べられるということです。

 うどんの出しは鰹節、日高昆布、しいたけを使って取ります。ソバの場合は鰹節を少し多く使い煮出す時間も若干多めに濃い出しを取ります。うどんはソバに比べて香りを楽しむ要素が少ないと思われますので、しょう油の香り、薬味のネギ、ゴマ、おろし生姜の香りを楽しむのが良いようです。若干ソバに比べて薄めの味付けをします。

   (1)うどんの場合、だし汁の味付けはしょう油と砂糖で薄めにします。煮立ててしょう油の風味を飛ばしてしまってはいけません。うどんソバともにざるのときは漬け汁に力を持たせるために、砂糖を使ってみりんは使いません。かけうどん、かけソバのときにはみりんを使い、吸い物として飲んで嫌味が出ないようにします。うどんの薬味は白ネギの小口切り、炒りたてのゴマを半すりにしたものをかなり大量に、そしておろし生姜の三種です。

   (2)ソバの場合、だし汁は鰹節だけを多めに使います。味付けはしょう油、たまり醤油、砂糖を使います。ただし味はうどんよりは二倍から三倍ほど濃い味にしますので、砂糖は嫌味が出やすく、水で煮溶かして三日ほど寝かせあくを抜いたものを使用します。時間がないときはグラニュウ糖を使ってみてください。また、気にならなければ普通の砂糖をそのまま使ってもかまいません、その場合は甘みを少なくして、塩辛目の味にします。ソバは香りが命といいますから、箸で一口分を取ったならば三分の一から半分がほどを汁に着けるようにしますので、濃い味付けは必然です。その分、鰹節を削る手間もかかりますから本当はなかなか大変ですが、そのあたりは適当に手抜きなどなされば良いでしょう。ソバの薬味は粉ワサビを少量の水でよく時間をかけて練ったものと白ネギの小口切りを用います。

   (3)茹で加減はうどんなりソバなりの袋に書かれていることを目安として後は好みで固めだったり軟らかめだったり適当に加減します。わたくしの場合は、竹の菜箸で一すじ取ってみて、菜箸に纏わり付くようになれば茹で上がり、ちょっと水道の水をくぐらせて食べてみて確認します。

   (4)茹で上がったならば、大き目のざるにザッーと揚げて、一気に水道の水の下に置きまして、お好みの温度に仕上げます。先ほども申したようにうどんは熱いと冷たいとがございますが、ソバは出来るだけ冷たくして、ただし氷で冷やすほどではありません、お出しください。

    (5)お好みで海苔をよく手で揉んで細かくしたものを振りかけてください。

 

 以上がざるうどんの作りかたです。冬の寒い日にも温かいざるうどんはおいしいものです。ぜひ皆様にもご賞味なさってください。

 

 2.酢味噌うどん

 上記ざるうどんを酢味噌で食べる夏向きのものです。味噌は八丁味噌、酢は出来るだけ上質の米酢を使いますが、スーパーで購入できる程度のもので十分です。八丁味噌は少しの渋みを特徴としまして、酢とよく合います、酢味噌による和え物などにも適したものですので、この機会にぜひお試しください。岡崎の角久の八丁味噌がお勧めです。

 薬味は白ネギの小口切り、炒りたてのゴマをよくすって大量に、そしておろし生姜です。

 味噌はすり鉢に入れ、同量の砂糖と適量の酢をよく混ぜ合わせて好みの味に調え、鰹節と日高昆布から取った出しでとき薄めます。濃さはどろりとした甘酒よりもう少し濃い目に調節してください。冷たくしたざるうどんにはもみ海苔を振りかけてお召し上がりください。お好みによって砂糖の量を調節します。

 

 3.酒うどん

 このうどんの名は大量の酒を使用することに由来します。作り方は至極簡単です。用意するものはざく切りにしたほうれん草、削りたての鰹節を少量、四人分に一合ほどの清酒、しょう油の少量、これでうどん以外の全部です。ただしうどんは茹で上がりをそのまま使いますので、タイミングを考慮なさって以下の手順にしたがってください。

 うどんを茹でている間に上記のものを用意します。茹で上がりの時間に合わせて、純良な菜種油でほうれん草をいためます。少しのしょう油をなべ肌に回しかけ香りを立てます。そして清酒を全量入れて煮立てることによりアルコール分を飛ばします。ここに茹で上がったうどんに水道水をかけて、荒熱とぬめりを取り、よく水を切ってなべに入れます。このとき、ほうれん草が青々しているのがよろしいようですので、いためる時間にはそれを見こす必要があります。出来上がりに鰹節を振りかけてください。

 しょう油はごく少量で、味付けは清酒にまかせるような気持ちが大切です。精進料理などでは、出しは昆布と炒り酒といいます、清酒からにじみ出るうま味を堪能するための料理としてこれ以上簡単なものはありません。

 

 以上うどん三種をご紹介しました。ここではしょう油、たまり醤油、みりん、砂糖、八丁味噌、菜種油、海苔、清酒、鰹節などを取り上げていますが、出来る限り純良なものを使ったほうが良いことは当然のことです、しかしそれでも、どこそこから取り寄せるといったほどのものでもございませんので、スーパーで購入できるうちでの最もよいものをといった程度に考えてください。我が家では、にんべんの鰹節、石丸製麺のうどん、角久の八丁味噌、ここには出てまいりませんが京都の本田味噌の西京味噌以外の品はその場で手に入るものばかりを使用しています。あとは梅干は自家製を使い、ゴマは炒ってない洗いゴマをその都度炒って使いますし、海苔も焼いてない干し海苔をその場で焼いて使用するぐらいのことです。

 

第三章 たまご

 たまごは昭和の三十年ころはたしか一個が十円ほどしたと思います、当時としては高価でしたから、おそらく今の百円ほどに当たるのではないでしょうか。たまごというものは料理の幅が広く、味もそのまま食べて結構というほどに良いものです。ただし、旨いたまご料理というものは大変な技術を要するもので、必ず上手になりたいという気持ちが料理人の腕を上達させるものですから、これからご紹介する三種のたまご料理も何十回と失敗しながら腕を上げるという過程を無視できません。しかしご苦労なさる価値は十分にあると思います。

 ご紹介するものは二種の出し巻きたまごとスクランブルエッグです。たまご焼きにはたまご焼きなべとそれ用の木蓋とたまごを返すフライ返しが必要です。フライ返しの幅が広いと仕事が容易になりますので出来るだけ幅広のものをお求めください。ただしたまご焼きなべを傷つけないように、樹脂のものか木製あるいは竹製のものをご使用になるべきでしょう。たまご焼きなべは銅でできた四角のものが良いのですが六千円ほどもいたします。普通のフライパンと同じような鉄のものがあればそれでも結構です。テフロン加工のものは使用したことがないために分かりかねます。もしあったとしてもステンレスのものは熱の伝わりかたが良くないために不可です。チタンも同じ理由で不可です。厚手のアルミはもしかしたら良いかも知れません。あとはガスの火を直接なべに伝えないような工夫として鉄板の付いたもち焼きアミが必要です。オール電化はおそらく不可です。七輪に炭火を熾したものが理想的だそうですが、高望みはやめましょう。

 

 1.出し巻きたまご

 くるっと丸く巻いて切ると切り口に汁が滲みでるたまご焼きです。

 このたまご焼きの汁が滲みでるということは、適当な保水力を持つアメの力です。ただしこの場合のアメは味の点から水飴ではなく砂糖をおよそ半量の水で煮溶かしたものを使用します。できたアメは普通の白砂糖の場合は三日間寝かせます。グラニュウー糖ならばすぐに使用しても良いでしょう。

   (1)だし汁を取ります。鰹節と日高昆布で濃い出しを取ってください。必要量は百ccです。

   (2)たまご六個をよくとき、コシを抜きます。

   (3)だし汁に塩を小さじ一杯、白醤油大さじ二杯を入れ、よくかき混ぜてたまご汁に加えます。

   (4)よく混ぜ裏ごしします。

   (5)砂糖四十グラム分のアメをたまご汁に加えよくかき混ぜます。アメは多く入れれば出来上がりが固く、甘くなり、少なく入れれば柔らかく、甘みが薄くなります。好みに合わせていろいろ調整してください。

 ここまでが出し巻きたまご一本分のたまご汁の用意です。

 次はタマゴ焼きなべの用意です。

   (1)焼くときの焦げ付きを防ぐための少量の菜種油またはゴマ油を小皿に取ります。これをなべに塗るためのキッチンペーパーを小さくたたんで油を吸わせておきます。

   (2)もち焼きアミ、蓋、フライ返し、菜箸を手近に置きます。たまご汁の入ったボウルには玉じゃくしを入れておきます。

   (3)もち焼きアミを火に掛け、たまご焼きなべにたっぷりの油を入れて、油をなべになじませます。

   (4)十分になじんでなべが熱くなったならば、いったん油を入れ物に返してください。

   (5)あらためて少量の油をなべに注ぎ、熱くなったならばたまご汁を三分の一なべに入れます。このとき、入れ方によっては油がなべから離れてしまいます。なべすれすれの位置から静かに注ぎ込んでください。

   (6)すぐに火を弱火に切り替え蓋をして、ときどき様子を見ながら表面が乾ききる寸前の半熟状態を待ちます。およそ二分ほどでしょうか。

   (7)火から少しなべを離して、なべの向こう側から菜箸あるいはフライ返しを使って手前の方に巻きます。うまく巻けなければ三枚か四枚ほどに畳むようにしてください。見かけよりも味が大切です。

   (8)なべの空いた部分にクッキングペーパーで油をたっぷり塗ります。たまごを今油を塗った上に滑らせて、また空いた部分に油を塗ります。

   (9)なべを火に掛けて、残りのたまご汁の半量を注ぎこみます。

   (10)上の手順をたまご汁の全量分繰り返してください。

   (11)全量を巻きおえたら、最後に少し中火に掛けて、四面すべてを焼きます。

   (12)巻き簾に取り、くるっと巻いて半日ほど置き味が落ち着くのを待ちます。

 

 2.京風出し巻きたまご

 たっぷりの出しで作るやわらかいたまご焼きです。三つ葉などを刻んで入れてもおいしいものです、作り方も上に比べていくぶんやさしいと思いますので試してみてください。このたまご焼きは大量の出しを入れて強火で手早く焼き上げることが特徴です。たまごを解くときもコシをなくさないように白身と黄身が完全に混ざり合わない程度にします。このためにたまごの本来の味が強く出ますから、それをなくさないように甘味も塩味もごく控えめにしてください。

   (1)出しを取ります。鰹節と昆布を使います。130ccです。

   (2)みりん大さじ一杯と清酒大さじ一杯を別のなべで煮切ります。煮切るとは沸騰させてアルコール分を飛ばすことです。

   (3)煮切ったみりんと清酒、塩小さじ一杯、薄口しょう油少々を、だし汁に加えます。

   (4)本くず粉を親指分ほど、20ccほどの水によく溶かし、だし汁に加えます。

   (5)たまご四個に調味料を合わせただし汁を加え、ほど良く解きます。

 以上が京風出し巻きたまご一本の分量です。

 では焼いてみましょう。

   (1)なべに大量の油をなじませ、油を戻してから、少々の油を引いて強火にします。

   (2)熱くなったなべに、たまご汁の全量を静かに注ぎいれ、菜箸でなべの全面をゆるくかき回します。白身と黄身が全面に均等になるようにするためと、温度を均等に回すためです。

 底をかき回してなべ底の油を切ってしまわないように注意しましょう。

   (3)強火ですから、かき回している間にじきにたまごは半熟状に固まってきます。火にかけたまま手早く巻き上げます。

   (4)フライ返しで二ないし三に切り分けます。このとき濁った汁が出なければ丁度良いか、焼きすぎです。一切れづつ皿に取りましょう。熱いうちに食べてください。

 

 この京風出し巻きたまごは薄味であるだけに、素材のよしあしが出来上がりによく表れます。たまごと油の品質には十分こだわってください。もしご家庭で使いなれていれば、純良な菜種油が最適ですが、ゴマ油でもかまいません。

 

 3.スクランブルエッグ

 スクランブルエッグは簡単で洋食にも和食にも合う便利な料理です。ただ調味料とたまごをなべの中でかき混ぜるだけのものですが、粗くかき混ぜる方法と細かくかき混ぜる方法があり、ともに捨てがたいものですが、ここでは細かくかき混ぜる方法をご紹介しましょう。

 スクランブルエッグの味付けは砂糖、塩、そして油です。この油が出しの代わりをしますので、何油でも良いというものではありません。洋風を強く出したいときはバター、和風にアレンジしたいときはオリーブ油を使います。

   (1)たまご二個をボウルに割りいれ、砂糖大さじ一杯、塩小さじ二分の一強をよくかき混ぜます。

   (2)アルミの小なべにバターまたはオリーブ油を大さじ一杯入れて弱火に掛けます。

   (3)油が熱くなるのを待って、ボウルの調味済みのたまごを全量入れ、間を置かずに菜箸二本で勢いよくかき回します。

   (4)なべ肌からたまごが固まってきますから、それをはがすようにして全体のどの一部も半熟以上に火が通らないよう忙しくかき回し続けてください。スクランブルエッグは半熟が命です。

   (5)全体がゴマ粒ほどになり、濁りが取れつやが出てきたときが出来上がりです。余熱を考慮して火から上げてください。

 もし、ゴマ粒状にならず、糊のようになったならば、かき回し過ぎです。次からは加減してください。

   (6)余熱が通らない内に、すばやく皿に取ってください。

 

 スクランブルエッグはそのまま食べてもよく、またソース、マヨネーズとも相性のよいものです、いろいろ試して見てください。冷たくなるとバターは臭みが出ますから、弁当などにはオリーブ油を使ったほうが無難です。

 粗いスクランブルエッグは大量のバターを中火で熱してたまごを割りいれ少しの塩、少しの胡椒で味付けして、二本の菜箸でゆるくかき混ぜます。白身と黄身が分かれ目玉焼きをかき混ぜたようになれば出来上がりです。バターとたまご自体の風味を味わいましょう。

 

第四章 巻き寿司

 巻き寿司は手間が大変です。しかし、一つ一つの作業に難しいところはありません。順次一つ一つをこなしていけば、町のすし屋とは、また一味異なる味わいを得ることになり、料理の楽しみに目覚めることになりましょう。

 材料から先にあげましょう。焼いてない海苔、かんぴょう、国産干ししいたけ、高野豆腐、薄焼きたまご、三つ葉、これだけです。

   (1)干ししいたけは前日から水で戻します。干ししいたけの戻し汁は煮汁として使いますから捨てないでください。

 水で戻した干ししいたけは、戻し汁に一切れの昆布を入れたもので煮ます。砂糖は半量を初めから入れ、残り半量は10分ほど遅れてしょう油、たまり醤油、水飴と共に入れます。途中で何度も煮え具合を見ながら、さらに20分ほど煮ます。少し煮汁が残るほどに最初の出しの量を調整してください。どろりとした煮汁に漬けたまま冷まします。甘辛い味付けにしてください。

   (2)かんぴょうは塩もみをして水で洗い流し、しいたけの戻し汁と鰹節の出し汁に入れて煮ます、半透明になったころを見計らって、砂糖、水飴、薄口醤油で薄味に味付けます。煮上がったら汁にしたしたまま冷ましてください。

   (3)高野豆腐は大鍋に湯を沸かし、火を止めて水をコップ一杯ぐらい入れたところに入れて、蓋をして10分ほど静かに戻します。戻った高野豆腐は柔らかく壊れやすいので扱いには細心の注意が必要です。中なべに出し汁、砂糖、水飴、薄口しょう油を入れ、少し甘めの味付けで、高野豆腐をゆるく手のひらで挟んで水を切り、静かに煮汁に漬けます。落し蓋をしたら中火から弱火で30分ほど煮込んでください。煮汁に漬けたまま冷まします。

   (4)三つ葉はサッと塩茹でします。絞ってざるに揚げて置いてください。

   (5)薄焼きたまごは砂糖と塩で甘めに味付けます。出し代わりに味の素を一振りしてください。焼き方はたまご汁をたまご焼きなべに5mmほど入れて、中火で焼きます。上が乾く直前に菜箸二本を使って上下に返し、もう片面を焼きます。これは適当で結構ですから気軽に挑戦してください。

 

 ごはんの用意をします。

   (1)白米を手早く研ぎ、研ぎ終わったならばたまごの白身をよくまぶします。

   (2)一度サッと余分な白身を洗い流して、水加減をし電気がまにしかけます。

   (3)この間にすし酢の用意をします。すし酢の割合はごはん三合に対して米酢50cc、砂糖大さじ二杯、塩小さじ一杯です。よく溶かしておきましょう。

   (3)炊き上がったならば、よくむらし、飯切りに取ります。飯切りの真ん中にごはんが山なりになるよう盛り上げます。

   (4)ごはんが熱い内に、ごはんの上からすし酢をかけますが、ごはんの中ですし酢が少しむらされるような感じにしてください。

   (5)一分ほどこのままにし、それからしゃもじでごはんを薄くそぐように切りながら、うちわで満遍なく風を当て、ごはんの表面を乾かします。

   (6)ごはんが冷めたらすぐに巻き始めます。

 

 巻きます。

   (1)巻き簾の上に焼いてない海苔を横に置きます。

   (2)ごはんを茶碗に軽く二杯分、大きなおむすびぐらいを手のひらにとり、かるくまとめてから海苔の真ん中に置きます。

   (3)ごはんを海苔の上に広げますが、向こう側には少し余地を残しておきます。

   (4)真ん中あたりを横一線に指先で押さえて、そこに巻き寿司の具をのせます。

   (5)切ったときの見た目を考慮して具をのせてください。

   (6)巻き簾の手前側を両手の親指と人差し指でつまみ、残りの指で具を押さえながら一気に向こう側のごはんの端に合わせます。

   (7)両端からはみ出した分を指で押さえ、新聞に入ってくる広告数枚の上に置き、くるっと巻いて折れないように保護します。巻き簾で巻いたままが一番良いので竿菓子などを巻いてある巻き簾は取って置きましょう。

   (8)一時間おいたころが食べごろです。巻きたてよりも切りやすくもあります。

   (9)食べる直前に切ります。両端を少しづつ落とし、残りを八等分してください。半分に切って、半分に切って、半分に切るのです。

   (10)皿に盛って食べます。梅酢に漬けたはじかみ、茗荷などを付け合せてください。

 

 

(かつお節の項 おわり)