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 佛說阿彌陀經
  姚秦龜茲三藏 鳩摩羅什譯



如是我聞。一時佛在舍衛國祇樹給孤獨園。與大比丘僧千二百五十人俱。皆是大阿羅漢。眾所知識。長老舍利弗。摩訶目乾連。摩訶迦葉。摩訶迦栴延。摩訶拘絺羅。離婆多。周梨槃陀迦。難陀。阿難陀。羅睺羅。憍梵波提。賓頭盧頗羅墮。迦留陀夷。摩訶劫賓那。薄俱羅。阿㝹樓馱。如是等諸大弟子。并諸菩薩摩訶薩。文殊師利法王子。阿逸多菩薩。乾陀訶提菩薩。常精進菩薩。與如是等諸大菩薩。及釋提桓因等。無量諸天大眾俱 是の如く我れ聞けり。一時、仏は舎衛国の祇樹給孤獨園に、大比丘僧千二百五十人と倶(とも)に在(ましま)せるに、皆是れ大阿羅漢にして、衆の知識する所なり。長老舎利弗、摩訶目乾連、摩訶迦葉、摩訶迦旃延、摩訶拘絺羅、離婆多、周梨槃陀迦、難陀、阿難陀、羅睺羅、憍梵波提、賓頭廬頗羅堕、迦留陀夷、摩訶劫賓那、薄倶羅、阿㝹楼駄、是れ等の如き諸の大弟子、并びに諸の菩薩摩訶薩の文殊師利法王子、阿逸多菩薩、乾陀訶提菩薩、常精進菩薩、是れ等の如き諸の大菩薩、及び釈提桓因等の無量の諸天の大衆と倶なり。
是のように、
わたしは、聞いている、――
一時(ある時)、
仏は、
舎衛国の祇樹給孤獨園に於いて、
大比丘僧の千二百五十人と倶に、
在しました( was staying )が、
彼等は皆、
大阿羅漢であり、
衆に知識せられていた( well-known )。
長老の舎利弗や、
摩訶目乾連、摩訶迦葉、摩訶迦旃延、摩訶拘絺羅、離婆多、周梨槃陀迦、
難陀、阿難陀、羅睺羅、憍梵波提、賓頭廬頗羅堕、迦留陀夷、摩訶劫賓那、
薄倶羅、阿㝹楼駄のような、
諸の大弟子と、
諸の菩薩摩訶薩の、
文殊師利法王子、阿逸多菩薩、乾陀訶提菩薩、常精進菩薩のような、
諸の大菩薩と、
釈提桓因等の、
無量の諸天の大衆が、
倶にしていたのである( was also accompanied )。
  舎衛国(しゃえいこく):舍衛城(しゃえいじょう)、舎婆提(しゃばだい)ともいう、憍薩羅(ごうさら)国の首都。 摩竭陀(まがだ)国の王舎城(おうしゃじょう)と並んで釈迦の在世当時の北印度に於ける大都市であり、釈迦は相互に四百キロほど離れた、この二国間を往き来しながら遊行した。
  祇樹給孤獨園(ぎじゅぎっこどくおん):精舎(しょうじゃ、寺院)の名。 舎衛城の長者須達多(すだった)は祇陀(ぎだ)太子の園林を高額で買い受けて釈迦に供養し、祇陀は園林の中の樹木を布施した。 須達多は身寄りのない者に食物を供給していたので、給孤獨(ぎっこどく)と呼ばれる。 この二人の名によって精舎の名とする。
  比丘僧(びくそう):男の出家の集団。女の出家の集団を比丘尼僧という。
  阿羅漢(あらかん):小乗仏教中、仏と同等の覚りを得た者をいう。
  長老(ちょうろう):仏弟子が互いに尊敬して名前に付す称号。
  舎利弗(しゃりほつ):釈迦十大弟子の中の智慧第一。 神通第一の目揵連と共に、もと婆羅門種の外道であったが、外道の教えに飽きたらず、釈迦の説法を聞いて弟子となり、間もなく頭角を顕して、智慧第一と称されるようになった。 さまざまな大乗の経典は舎利弗のために説かれた。 釈迦の実子の羅睺羅(らごら)は幼い時より、この舎利弗に預けられて教育された。
  摩訶目乾連(まかもっけんれん):十大弟子の中の神通第一。舎利弗と同時に仏弟子となる。
  摩訶迦葉(まかかしょう):仏の後継者、十大弟子の中の頭陀(づだ、乞食行)第一。
  摩訶迦栴延(まかかせんねん):十大弟子の中の論議第一。
  摩訶拘郗羅(まかくちら):十大弟子の中の問答第一。
  離婆多(りばた):坐禅第一。
  周梨槃陀迦(しゅりはんだか):愚鈍ながら覚りを開く。
  難陀(なんだ):美男の難陀、誘惑に負けなかったので諸根調伏第一といわれる。
  阿難陀(あなんだ)、阿難(あなん):釈迦の従弟。十大弟子の内の多聞第一。 釈迦の父の浄飯(じょうぼん)王の弟斛飯(こくぼん)王の子。 出家してからは仏の侍従となり、常に近侍していたために、多くを聞き過ぎて覚りを得ることが遅れた。 仏により、自らを拠り所として、他人を拠り所とすることなかれ。自らの法を拠り所として、他の法を拠り所とすることなかれ。という遺教(ゆいきょう)を受けて立ち直り、仏滅後には経典の編纂に力を尽くした。
  羅睺羅(らごら):仏の実子、十大弟子の中の密行(みつぎょう、人に知られない修行)第一。
  憍梵波提(きょうぼんはだい):十大弟子の中の持律第一。
  賓頭廬頗羅堕(びんずるはらだ):神通を弄んだため仏に涅槃を許されず仏滅後も衆生の救済に当る。
  迦留陀夷(かるだい):しばしば問題を起して仏に呵責された、六群比丘の一。
  摩訶劫賓那(まかこうひんな):能知星宿第一。
  薄倶羅(はくら):道を学んで以来八十年の間無病という。
  阿㝹樓馱(あぬるだ):十大弟子の中の天眼第一。
  菩薩摩訶薩(ぼさつまかさつ):大菩薩をいう。菩薩は大乗の修行者をいい、一切の衆生が覚りを得るまで、自らは涅槃に入らないという願を立てた者をいう。
  文殊尸利法王子(もんじゅしりほうおうじ):仏の法を嗣ぐ王子/仏法の後継者、菩薩の名。
  阿逸多(あいった):弥勒ともいう、仏の次ぎにこの娑婆世界で仏と成る菩薩の名。
  乾陀訶提(けんだかだい):菩薩の名。
  常精進(じょうしょうじん):菩薩の名。
  釈提桓因(しゃくだいかんいん):帝釈天の主の名。
爾時佛告長老舍利弗。從是西方過十萬億佛土。有世界名曰極樂。其土有佛號阿彌陀。今現在說法。舍利弗。彼土何故名為極樂。其國眾生無有眾苦。但受諸樂故名極樂。 爾(そ)の時、仏の長老舎利弗に告げたまわく、「是(ここ)より西方に十万億の仏土を過ぎて、世界有り、名づけて極楽と曰(い)う。其(そ)の土に仏有りて阿弥陀と号し、今現在法を説く。舎利弗、彼(か)の土は何を以っての故に、名づけて極楽と為す。其の国の衆生には、衆苦有ること無く、但(た)だ諸の楽を受くるが故に極楽と名づく。
爾の時( at that time )、
仏は、
長老舎利弗に、こう告げられた、――
是より西方に十万億の仏土を過ぎると、
”極楽”と称する、
世界が有るが、
其の土には、
”阿弥陀”と号する仏が有り、
今現在、法を説いている。
彼の土は、
何故、
”極楽”と称されるのか?
其の国の衆生には、
衆苦が無く、但だ諸の楽だけを受けるが故に、
”極楽”と称するのである。
  仏土(ぶつど)、(ど)、世界(せかい)、(こく):一人の仏の領する国土をいう。
  十万億(じゅうまんおく):10兆。
  名曰(みょうわつ)、名為(みょうい)、(みょう):「~と称する」、「~である」。
  極楽(ごくらく):梵語 sukhavatii の訳、安楽や快適を有する/幸福感や愉悦に満ちた( possessing ease or comfort, full of joy or pleasure )。
  (ごう):「~と呼ばれる」、「~と称される」。
  阿弥陀(あみだ):梵語 amita 無量と訳す。無量/無際/無限( unmeasured, boundless, infinite )の義。
  衆苦(しゅく):種種の苦しみ/悩み/煩悩。
  (じゅ):感受する。受け取る。
又舍利弗。極樂國土。七重欄楯七重羅網七重行樹。皆是四寶周匝圍繞。是故彼國名曰極樂。 又、舎利弗、極楽国土の七重の欄楯、七重の羅網、七重の行樹は、皆是(こ)れ四宝周匝し、囲繞すれば、是の故に彼の国を名づけて極楽と曰(い)う。
又、
舎利弗!
極楽国土の七重の欄楯、七重の羅網、七重の行樹は、
皆、四宝であり、
極楽国土を、
周匝し囲繞するので、
是の故に、
彼の国を、
”極楽”と称するのである。
  欄楯(らんじゅん):建築物や庭園を囲む石の垣根。
  羅網(らもう):宝珠を連ねた網で、建物や樹木を覆う。
  行樹(ぎょうじゅ):樹木の連なり。並木。
  四宝(しほう):金、銀、琉璃、玻璃
  周匝囲繞(しゅうそういにょう):周囲を取り囲む。
又舍利弗。極樂國土有七寶池。八功德水充滿其中。池底純以金沙布地。四邊階道。金銀琉璃頗梨合成。上有樓閣。亦以金銀琉璃頗梨車磲赤珠馬瑙而嚴飾之。池中蓮花大如車輪。青色青光。黃色黃光。赤色赤光。白色白光微妙香潔。舍利弗。極樂國土成就如是功德莊嚴 又、舎利弗、極楽国土には七宝の池有りて、八功徳の水其の中に充満す。池底は純(もっぱ)ら金沙を以って地に布(し)き、四辺の階道は金、銀、琉璃、玻璃合成す。上に楼閣有り、亦(ま)た金、銀、琉璃、玻璃、車磲、赤珠、馬瑙を以って之を厳飾す。池中の蓮花の大なること車輪の如く、青色には青光、黄色には黄光、赤色には赤光、白色には白光ありて微妙香潔なり。舎利弗、極楽国土には是(かく)の如き功徳の荘厳成就す。
又、
舎利弗!
極楽国土に有る、
七宝の池中には、
八功徳の水が、
充満している。
池の底には、
純ら、金沙のみが、
地に、敷きつめられている。
池の四辺には、
皆、階道があり、
金、銀、琉璃、玻璃が合成し、、
池の上に有る楼閣も、
金、銀、琉璃、玻璃、車磲、赤珠、馬瑙で、
厳飾されている。
池の中の蓮華は、大きさが車輪ほどもあり、
青色の蓮華は青光、黄色は黄光、赤色は赤光、白色は白光を放ち、
微妙であり、香潔である。
舎利弗!
極楽国土は、
是のような、
功徳の荘厳が、
成就している。
  七宝(しっぽう):金、銀、琉璃、玻璃、車磲、赤珠、馬瑙( gold, silver, sapphire or lapis lazuli, crystal, coral or pearl, red pearl, and emerald or carnelian )。
  (ち):現存せる古代印度の階段井戸の如きは、深さ10m、一辺40mぐらいの正方形の煉瓦造り。水面は深い所にあり、四辺には数十段の階段があり、数段毎に回廊を設ける。水面の一辺は地上の一辺の約三分の一から、四分の一。
  階道(かいどう):階段状の回廊。
  合成(ごうじょう):合わせ用いて成す。
  厳飾(ごんじき):対称性と精密性をもって修飾する。
  八功徳水(はっくどくすい):水の有する八種の功徳、即ち
  1. 浄澄、
  2. 清冷、
  3. 甘美、
  4. 軽軟:大いに飲んでも胃に負担をかけず、
  5. 潤沢:喉を潤して渇きをおさえ、
  6. 安和:飲めば気持ちが安いで和らぎ、
  7. 飲む時には飢渇等の無量の過患を除き、
  8. 飲み已れば、諸根を長養して身の四大が増長する。
  金沙(こんしゃ):黄金の砂子。
  (ふ):敷きつめる。
  微妙(みみょう):絶妙/繊細/美しい/素晴らしい。
  香潔(きょうけつ):清潔な香り。
  功徳(くどく):梵語 guNa の訳、善質/美徳/美点/卓越性( good quality, virtue, merit, excellence )。
  荘厳(しょうごん):修飾。飾り付け。飾り付けること。
  成就(じょうじゅ):完備/完成/完全。
又舍利弗。彼佛國土常作天樂。黃金為地。晝夜六時天雨曼陀羅華。其國眾生常以清旦各以衣裓盛眾妙華。供養他方十萬億佛。即以食時還到本國。飯食經行。舍利弗。極樂國土成就如是功德莊嚴 又、舎利弗、彼の仏国土は常に天楽を作し、黄金を地と為し、昼夜六時に天は曼陀羅華を雨ふらす。其の国の衆生は常に清旦を以って各衣裓を以って、衆妙華を盛り、他方の十万億の仏を供養し、即ち食時を以って還って本国に到り、飯食し経行す。舎利弗、極楽国土には是の如き功徳の荘厳成就す。
又、
舎利弗!
彼の仏国土は、
常に、天楽が作され、
黄金の地には、昼夜六時に天が曼陀羅華を雨ふらし、
其の国の衆生は、常に、
清旦になると、
各が、衣裓に妙華を盛って、
他方の、十万億の仏を供養し、
食時になると、
還って、本国に到り、
飯食して、経行する。
舎利弗!
極楽国土は、
是のような、
功徳の荘厳が、
成就しているのである。
  天楽(てんがく):天上の音楽。天上で奏でられる音楽。
  昼夜六時(ちゅうやろくじ):昼の8、12、4時と夜の8、12、4時。
  曼陀羅華(まんだらけ):天上の花の名。
  清旦(しょうたん):早朝。夜明け。
  衣裓(えこく):仏教徒が肩にかける長方形の布袋。手を拭い、物を盛るに用いる。
  他方(たほう):他の地域。
  供養(くよう):衣、食、臥具、薬湯を奉げて養うこと。
  (そく):ただちに。
  食時(じきじ):定められた食事の時。
  還到(げんとう)帰着する。
  本国(ほんごく):本来属する所の国。
  飯食(ぼんじき):食事。
  経行(きょうぎょう):歩いて血の巡りをよくする行。坐禅と交互に行い、特定の場所を往復/旋回する。
復次舍利弗。彼國常有種種奇妙雜色之鳥。白鵠孔雀鸚鵡舍利迦陵頻伽共命之鳥。是諸眾鳥。晝夜六時出和雅音。其音演暢五根五力七菩提分八聖道分如是等法。其土眾生聞是音已。皆悉念佛念法念僧。 復(ま)た次ぎに、舎利弗、彼(か)の国には常に種種の奇妙雑色の鳥と、白鵠、孔雀、鸚鵡、舎利、迦陵頻伽、共命の鳥有り。是(こ)の諸(もろもろ)の衆鳥は昼夜六時に和雅の音を出し、其(そ)の音は五根、五力、七菩提分、八聖道分、是れ等の如き法を演暢し、其の土の衆生は、是の音を聞き已りて、皆悉く仏を念じ、法を念じ、僧を念ず。
復た次ぎに、
舎利弗!
彼の国には、
常に、
種種の奇妙雑色の鳥や、白鵠、孔雀、鸚鵡、舎利、迦陵頻伽、共命の鳥が、
有り、
是の諸の衆鳥は、
昼夜六時に、
和雅の音( beautiful sound )を、
出し、
其の音は、
五根、五力、七菩提分、八聖道分等のような法を、
演暢する( to issue out )ので、
其の土の衆生は、
是の音を聞いて、皆悉く、
仏や、法や、僧を、
念じるのである。
  白鵠(びゃっこう):白鳥/白鶴。
  舎利(しゃり):梵語、鳥の名。黒色で人語を話す。
  迦陵頻伽(かりょうひんが):梵語、雀類の名。鳥籠に飼い、鳴き声を楽しむ。
  共命之鳥(ぐみょうしちょう):一身に二人面を有する仮想の鳥。
  和雅(わげ):美しい/魅惑的な。
  演暢(えんちょう):流出する( issue out )。展べ説く。
  五根(ごこん):修行に必要な根本的な能力。
    (1)信根(しんこん):三宝と四諦を信じる。
    (2)精進根(しょうじんこん):勇猛に善法(ぜんぽう、善い行い)を修める。
    (3)念根(ねんこん):正法を憶念する。
    (4)定根(じょうこん):心を一境に止めて散失させない。
    (5)慧根(えこん):真理を思惟する。
  五力(ごりき):五根を増長せしめて力を得る。
    (1)信力(しんりき):信根を増長して、諸の邪信の者を破る。
    (2)精進力(しょうじんりき):精進根を増長して、身の懈怠するを破る。
    (3)念力(ねんりき):念根を増長して、諸の邪念を破る。
    (4)定力(じょうりき):定根を増長して、諸の乱想を破る。
    (5)慧力(えりき):慧根を増長して、諸の惑いを破る。
  七菩提分(しちぼだいぶん):覚りに至る智慧。
    (1)択法覚分(ちゃくほうかくぶん):智慧で法の真偽を択ぶ。
    (2)精進覚分(しょうじんかくぶん):勇猛心で邪行を離れ真法を行う。
    (3)喜覚分(きかくぶん):心に善法を得れば、即ち歓喜する。
    (4)軽安覚分(きょうあんかくぶん):身心の粗重なるを除く。
    (5)念覚分(ねんかくぶん):常に定と慧とを均等ならしめ、明記して忘れない。
    (6)定覚分(じょうかくぶん):心を一境に止めて、散乱せしめない。
    (7)行捨覚分(ぎょうしゃかくぶん):諸々の妄謬を捨て、一切法を捨てて、心を平等に保つ。
  八聖道分(はっしょうどうぶん):八の善い行い、無漏の戒を以って体と為す。
    (1)正見(しょうけん):苦集滅道の四諦の理を見て、明らかにする。
    (2)正思惟(しょうしゆい):四諦の理を明らめたならば、更に思惟して真智を増長する。
    (3)正語(しょうご):真智を以って口業を修め、一切の非理の語を作さない。
    (4)正業(しょうごう):真智を以って身の一切の邪業を除き、清浄の身業に住まる。
    (5)正命(しょうみょう):身口意の三業を清浄にして、正法に順じて活命す。
    (6)正精進(しょうしょうじん):真智を発用して、強いて涅槃の道を修める。
    (7)正念(しょうねん):真智を以って、正道を憶念し邪念を無くす。
    (8)正定(しょうじょう):真智を以って、無漏清浄の禅定に入る。
  (そう)、僧伽(そうが):梵語 saMgha ある目的の為めに共同生活をする集団/組織/共同体/会社/共有集団( any number of people living together for a certain purpose, a society, association, company, community )、仏教修行者の社会/集団( the association of Buddhist monks )。
  (ねん):梵語 anusmRti の訳、大切な回想/ある考えを意識に留めて他の考えを排除すること/常に考えること( cherished recollection, recalling some idea to the exclusion of all others, constantly thinking )。常に考える( always cosidering )。
舍利弗。汝勿謂此鳥實是罪報所生。所以者何。彼佛國土無三惡趣。舍利弗。其佛國土尚無三惡道之名。何況有實。是諸眾鳥。皆是阿彌陀佛。欲令法音宣流變化所作。舍利弗。彼佛國土。微風吹動諸寶行樹及寶羅網出微妙音。譬如百千種樂同時俱作。聞是音者皆自然生念佛念法念僧之心。舍利弗。其佛國土成就如是功德莊嚴 舎利弗、汝(なんじ)は、此(こ)の鳥を実に是れ罪報の所生なりと謂(い)う勿(なか)れ。所以(ゆえ)は何(いか)んとなれば、彼の仏国土には、三悪趣無ければなり。舎利弗、其の仏国土は尚お三悪道の名すら無し。何(いか)に況(いわ)んや実有るをや。是の諸の衆鳥は皆是れ阿弥陀仏にして、法音をして宣流せしめんと欲する変化の所作なり。舎利弗、彼の仏国土は、微風、諸の宝の行樹、及び宝の羅網を吹動し、微妙の音を出す。譬えば百千種の楽の同時に倶(とも)に作(な)すが如し。是の音を聞く者は、皆自然に念仏、念法、念僧の心を生ず。舎利弗、其の仏国土は是の如き功徳の荘厳を成就す。
舎利弗!
お前は、こう謂ってはならない、――
此の鳥は、
実に( really )、
罪報の所生である( is born from the wage of sin )、と。
何故ならば、
彼の仏国土には、
三悪趣(地獄、畜生、餓鬼)が、
無いからである
舎利弗!
其の国土には、
尚お( yet )、
三悪道の名すら、
無い。
況して、
実の三悪道が、
有るはずがない。
是の諸の衆鳥は、皆、
阿弥陀仏が、
法音を宣流しようとした、
変化の所作である( what is made by his miracle power )。
舎利弗!
彼の仏国土は、
微風が諸の宝の行樹や、宝の羅網を吹動して、
微妙の音を、
出しており、
譬えば、
百千種の音楽が、
同時に倶に作されたようである( to be played simultaneously )が、
是の音を聞く者は、皆、
自然に( naturally )、
念仏、念法、念僧の心を生じる。
舎利弗!
其の仏国土には、
是のような、
功徳の荘厳が、
成就しているのである。
  罪報(ざいほう):罪業の果報。罪の報い( the wage of sin )。
  所生(しょしょう):~の生ずる所/~から生まれた( someone who/which is born from )。
  所以(ゆえ):理由( the reason )。
  三悪趣(さんあくしゅ)、三悪道(さんあくどう):三種の悪しき所趣( the three bad destination )/三種の悪しき道( the three bad load )、即ち地獄道、畜生道、餓鬼道。道は長い期間をかけて通り抜けるので道と称する。道にはこれ以外にも人道、天道の二善道があり、或は天道を二分して阿修羅道がある。阿修羅道は悪鬼神の道である。
  宣流(せんる):宣伝流布。
  変化(へんげ):不可思議の力の故に化して、他の形となる。
  所作(しょさ):作されたこと/作られたもの( something which is done/made )。
  吹動(すいどう):吹き動かす。
  羅網(らもう):鳥網。
  自然(じねん):自然に( naturally )/人工的でなく( unartificially )。
  同時俱作(どうじくさ):同時に一緒に作す。
舍利弗。於汝意云何。彼佛何故號阿彌陀。舍利弗。彼佛光明無量。照十方國無所障礙。是故號為阿彌陀。又舍利弗。彼佛壽命。及其人民無量無邊阿僧祇劫。故名阿彌陀。舍利弗。阿彌陀佛成佛已來於今十劫。又舍利弗。彼佛有無量無邊聲聞弟子。皆阿羅漢。非是算數之所能知。諸菩薩亦復如是。舍利弗。彼佛國土成就如是功德莊嚴 舎利弗、汝が意に於いて云何。彼の仏は何の故にか阿弥陀と号する。舎利弗、彼の仏の光明は無量にして、十方の国を照らして障礙する所無し。是の故に号して阿弥陀と為す。又舎利弗、彼の仏の寿命は、其の人民に及ぶまで、無量、無辺、阿僧祇劫なるが故に阿弥陀と名づく。舎利弗、阿弥陀仏は仏と成りて已来、今に於いて十劫なり。又舎利弗、彼の仏には無量、無辺の声聞の弟子有りて、皆阿羅漢なるも、是れ算数の能く知る所に非ず。諸の菩薩も亦復た是の如し。舎利弗、彼の仏国土は、是の如き功徳の荘厳を成就せり。
舎利弗!
お前の意には、何うなのか?――
彼の仏を、
何故、
”阿弥陀”と号するのか?
舎利弗!
彼の仏は、光明が無量であり、
十方の国を照らしながら、
障礙する所が無い( there is nothing to obstruct his light )ので、
是の故に、
”阿弥陀”と号するのである。
又、
舎利弗!
彼の仏の寿命と、
其の国の人民の寿命とは、
無量、無辺、阿僧祇劫であり、
是の故に、
”阿弥陀”と称するのである。
舎利弗!
”阿弥陀仏”は、
仏と成って以来、
今は十劫なのである。
又、
舎利弗!
彼の仏には、
無量、無辺の声聞の弟子が有り、
皆、阿羅漢であるが、
是の、
阿羅漢の数は、
算数を用いて知ることはできない。
亦た、
諸の菩薩の数も、
是の通りである。
舎利弗!
彼の国には、
是のような功徳の荘厳が、
成就している。
  障礙(しょうげ):障害物( an obstacle )/邪魔する( obstruct )。
  阿僧祇(あそうぎ):梵語 asaMkhya 無数と訳す。数えられない( uncountable )の義。
  (こう):梵語 kalpa 、一辺が四十里(一里は凡そ四百メートル)の立方体の石があり、百年に一度、天人が飛来し衣の裾で、この石を払い、その石が磨滅して消滅する迄の時間であるとも、或は芥子粒で満ちた一辺が四十里の立方体の城があり、百年に一度飛び来たった小鳥がただ一粒の芥子の実を啄んで去るに、その芥子粒がすっかり無くなるまでの時間ともいう。異説は多いが、どれも無限に近い有限の時間をいう。
  已来(いらい):以来/~よりこのかた( since )。
  声聞(しょうもん):仏の声を聞く者/仏の直弟子。多く小乗を志す者の義に同じ。阿難/舎利弗も声聞である。
  阿羅漢(あらかん):梵語 arhat 、煩悩を滅し尽した聖者。釈尊も同じく阿羅漢であるが、阿耨多羅三藐三菩提を得た者として仏と称する。阿耨多羅三藐三菩提とは無上正等覚と訳し、仏の無上の境地であるが、それは取りも直さず一切の衆生の煩悩を無くそうとして、その志を成就した仏の満足の境地に他ならない。涅槃を目的として智慧を完成させた者を阿羅漢と称し、阿耨多羅三藐三菩提を志してそれを得た者を仏という。小乗に於ける最上の者を阿羅漢と称し、大乗に於ける最上の者を仏と称する。
  菩薩(ぼさつ)、菩提薩埵(ぼだいさった):梵語 bodhisattva 阿耨多羅三藐三菩提を求めて無限の修行をする衆生の意。
又舍利弗。極樂國土眾生生者皆是阿鞞跋致。其中多有一生補處。其數甚多。非是算數所能知之。但可以無量無邊阿僧祇劫說。舍利弗。眾生聞者。應當發願願生彼國。所以者何。得與如是諸上善人俱會一處。 又、舎利弗、極楽国土の衆生は、生ずれば皆是れ阿鞞跋致にして、其の中には多く一生補処有り。其の数は甚だ多く、是れ算数の能く之を知る所に非ず。但(た)だ、無量、無辺、阿僧祇劫を以って説くべし。舎利弗、衆生の聞く者は、応当(まさ)に発願して、彼の国に生ぜんと願うべし。所以は何んとなれば、是の如き諸の上善の人と倶(とも)に、一処に会するを得ればなり。
又、
舎利弗!
極楽国土に生じた、
衆生は、
皆、阿鞞跋致であり、
其の阿鞞跋致の、
衆生中には、
一生補処が多く有り、
其の一生補処の数は、
甚だ多く、
算数を用いて知ることができない。
但だ、
無量、無辺、阿僧祇劫を用いて、
説くことができるだけである。
舎利弗!
衆生が、是の極楽国土を聞いたならば、
発願して、
彼の国に生じたいと願わねばならぬ。
何故ならば、
是のような諸の上善の人と、
倶に、一処に会うことができるからである
  阿鞞跋致(あびばっち):梵語 avaivartika, avinivartanIya 不退、不退転と訳す。阿耨多羅三藐三菩提に志す決意が不動である者をいう。
  一生補処(いっしょうふしょ):次の生に於いて仏と成ることを得る者の義。
  発願(ほつがん):願を立てる。
  諸上善人(しょじょうぜんにん):極楽国土の声聞及び菩薩をいう。
  一処(いちじょ):極楽国土をいう。
舍利弗。不可以少善根福德因緣得生彼國。舍利弗。若有善男子善女人。聞說阿彌陀佛。執持名號。若一日。若二日。若三日。若四日。若五日。若六日。若七日。一心不亂。其人臨命終時。阿彌陀佛與諸聖眾。現在其前。是人終時心不顛倒。即得往生阿彌陀佛極樂國土。舍利弗。我見是利故說此言。若有眾生聞是說者。應當發願生彼國土 舎利弗、少しの善根の福徳の因縁を以って、彼の国に生ずるを得べからず。舎利弗、若(も)し有る善男子、善女人、阿弥陀仏を説くを聞き、名号を執持すること若しは一日、若しは二日、若しは三日、若しは四日、若しは五日、若しは六日、若しは七日、一心不乱なれば、其(そ)の人の命終の時に臨んで、阿弥陀仏、諸の聖衆と其の前に現在す。是の人は、終る時、心は顛倒せず、即ち阿弥陀仏の極楽国土に往生するを得。舎利弗、我れは是の利を見るが故に此の言を説けり、『若し有る衆生、是の説を聞かば、応当(まさ)に発願して彼の国土に生ずべし』、と。
舎利弗!
少しの善根のもたらす、
福徳の因縁では、
彼の国に、
生じることはできないが、
舎利弗!
若し、
有る善男子、善女人が、
阿弥陀仏が説かれるのを聞いて、
名号を執持し( to keep the Buddha's name in his mind )、
一日か、二、三、四、五、六、七日ぐらい、
一心不乱ならば、
其の人の命の終る時に臨んで( when he is going to die )、
阿弥陀仏は、諸の聖衆と共に、
其の人の前に、
現在するので、
是の人は命の終る時にも、
心が顛倒せず( he is not affraid of death )、
即ち( soon )、
阿弥陀仏の極楽国土に、
往生することができる。
舎利弗!
わたしは、
是の利を見るが故に、
阿弥陀仏を説いて、こう言うのである、――
若し、
有る衆生が、是の説を聞けば、
発願して、
彼の国土に生じなくてはならない、と。
  善根(ぜんごん):成功の根( the roots of prosperity )。成功の基本的要因( the basic factor of prosperity )。
  福徳(ふくとく):宗教的利益( the religious merit )。
  執持名号(しゅうじみょうごう):梵語 zrutvaa ca manasi kariSyati [名号を]聞いて心に保持する( to hear (the name) then hold it in his mind )。仏の名号の由来を聞いたならば、心に保持して実践する。( to hear the origin of the Buddha's name then keep it in his mind and perform something to be done )。
  (にゃく):もしは/或は( or )。
  臨命終時(りんみょうじゅうじ):彼れの命が終ろうとする時( at the time of his death )。
  聖衆(しょうじゅ):声聞衆と菩薩衆。
  現在其前(げんざいごぜん)、現前(げんぜん):その人の前に現れる( to appear before him )。
  顛倒(てんどう):ひっくり返った( turned over )。正邪を逆にする見解( inverted thinking )。
  往生(おうじょう):~に到着する( arrive at )。~に入る( enter )。
舍利弗。如我今者讚歎阿彌陀佛不可思議功德。東方亦有阿閦鞞佛。須彌相佛。大須彌佛。須彌光佛。妙音佛。如是等恒河沙數諸佛。各於其國出廣長舌相。遍覆三千大千世界說誠實言。汝等眾生當信是稱讚不可思議功德一切諸佛所護念經 舎利弗、我が今の如きは、阿弥陀仏の不可思議の功徳を讃歎するも、東方にも亦た阿閦鞞仏、須弥相仏、大須弥仏、須弥光仏、妙音仏、是れ等の如き恒河沙数の諸仏有り、各其の国に於いて、広長の舌相を出し、三千大千世界を遍く覆いて、誠実の言を説く、『汝等衆生、当(まさ)に是の不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏の護念する所の経を信ずべし』、と。
舎利弗!
わたしが、
今、
阿弥陀仏の不可思議の功徳を、
称讃しているように、
東方にも、
阿閦鞞仏、須弥相仏、大須弥仏、須弥光仏、妙音仏等のような、
恒河沙数の諸仏が有り、
各各の国で広長の舌相を出し、三千大千世界を遍く覆いながら、
誠実な言で、こう説いている、――
お前達、衆生は、
是の、
不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏に護念される、
経を信じなければならぬ、と。
  恒河沙数(ごうがしゃすう):ガンジス河の川底の砂粒に等しい数。
  出広長舌相(すいこうちょうぜっそう):出をスイと読むのは特殊な読方で、他動詞として用いる時にしばしばこう読む。広長舌相は仏の三十二相の一であり、仏の舌を出すと髪の生え際に至ることをいう。舌相、即ち舌を出すのは吐いた言葉の真正なることを証する古代印度の礼法による。
  遍覆(へんぷ):遍く覆う。
  三千大千世界(さんぜんだいせんせかい):三千大千は千の三乗、即ち十億を指し、この十億の須弥山、四大洲及び日、月、星宿の総称にして、これを一仏の領域と為す。
  誠実言(じょうじつごん):誠実なことば。
  護念(ごねん):護持。大切に保持する。
舍利弗。南方世界有日月燈佛。名聞光佛。大焰肩佛。須彌燈佛。無量精進佛。如是等恒河沙數諸佛。各於其國出廣長舌相。遍覆三千大千世界說誠實言。汝等眾生當信是稱讚不可思議功德一切諸佛所護念經 舎利弗、南方の世界には日月灯仏、名聞光仏、大焔肩仏、須弥灯仏、無量精進仏、是れ等の如き恒河沙数の諸仏有りて、各其の国に於いて広長の舌相を出し、三千大千世界を遍く覆いて誠実の言を説く、『汝等衆生、当に是の不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏の護念する所の経を信ずべし』、と。
舎利弗!
南方には、
日月灯仏、名聞光仏、大焔肩仏、須弥灯仏、無量精進仏等のような、
恒河沙数の諸仏が有り、
各各の国で広長の舌相を出し、三千大千世界を遍く覆いながら、
誠実な言で、こう説いている、――
お前達、衆生は、
是の、
不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏に護念される、
経を信じなければならぬ、と。
舍利弗。西方世界有無量壽佛。無量相佛。無量幢佛。大光佛。大明佛。寶相佛。淨光佛。如是等恒河沙數諸佛。各於其國出廣長舌相。遍覆三千大千世界說誠實言。汝等眾生。當信是稱讚不可思議功德一切諸佛所護念經 舎利弗、西方の世界には無量寿仏、無量相仏、無量幢仏、大光仏、大明仏、宝相仏、浄光仏、是れ等の如き恒河沙数の諸仏有りて、各其の国に於いて広長の舌相を出し、三千大千世界を遍く覆いて誠実の言を説く、『汝等衆生、当に是の不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏の護念する所の経を信ずべし』、と。
舎利弗!
西方には、
無量寿仏、無量相仏、無量幢仏、大光仏、大明仏、宝相仏、浄光仏等のような、
恒河沙数の諸仏が有り、
各各の国で広長の舌相を出し、三千大千世界を遍く覆いながら、
誠実な言で、こう説いている、――
お前達、衆生は、
是の、
不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏に護念される、
経を信じなければならぬ、と。
舍利弗。北方世界有焰肩佛。最勝音佛。難沮佛。日生佛。網明佛。如是等恒河沙數諸佛。各於其國出廣長舌相遍覆三千大千世界說誠實言。汝等眾生。當信是稱讚不可思議功德一切諸佛所護念經 舎利弗、北方の世界には焔肩仏、最勝音仏、難沮仏、日生仏、網明仏、是れ等の如き恒河沙数の諸仏有りて、各其の国に於いて広長の舌相を出し、三千大千世界を遍く覆いて誠実の言を説く、『汝等衆生、当に是の不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏の護念する所の経を信ずべし』、と。
舎利弗!
北方には、
焔肩仏、最勝音仏、難沮仏、日生仏、網明仏等のような、
恒河沙数の諸仏が有り、
各各の国で広長の舌相を出し、三千大千世界を遍く覆いながら、
誠実な言で、こう説いている、――
お前達、衆生は、
是の、
不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏に護念される、
経を信じなければならぬ、と。
舍利弗。下方世界有師子佛。名聞佛。名光佛。達摩佛。法幢佛。持法佛。如是等恒河沙數諸佛。各於其國出廣長舌相。遍覆三千大千世界說誠實言。汝等眾生。當信是稱讚不可思議功德一切諸佛所護念經 舎利弗、下方の世界には師子仏、名聞仏、名光仏、達摩仏、法幢仏、持法仏、是れ等の如き恒河沙数の諸仏有りて、各其の国に於いて広長の舌相を出し、三千大千世界を遍く覆いて誠実の言を説く、『汝等衆生、当に是の不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏の護念する所の経を信ずべし』、と。
舎利弗!
下方には、
師子仏、名聞仏、名光仏、達摩仏、法幢仏、持法仏等のような、
恒河沙数の諸仏が有り、
各各の国で広長の舌相を出し、三千大千世界を遍く覆いながら、
誠実な言で、こう説いている、――
お前達、衆生は、
是の、
不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏に護念される、
経を信じなければならぬ、と。
舍利弗。上方世界有梵音佛。宿王佛。香上佛。香光佛。大焰肩佛。雜色寶華嚴身佛。娑羅樹王佛。寶華德佛。見一切義佛。如須彌山佛。如是等恒河沙數諸佛。各於其國。出廣長舌相。遍覆三千大千世界說誠實言。汝等眾生。當信是稱讚不可思議功德一切諸佛所護念經 舎利弗、上方の世界には梵音仏、宿王仏、香上仏、香光仏、大焔肩仏、雑色宝華厳身仏、娑羅樹王仏、宝華徳仏、見一切義仏、如須弥山仏、是れ等の如き恒河沙数の諸仏有りて、各其の国に於いて広長の舌相を出し、三千大千世界を遍く覆いて誠実の言を説く、『汝等衆生、当に是の不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏の護念する所の経を信ずべし』、と。
舎利弗!
上方には、
梵音仏、宿王仏、香上仏、香光仏、大焔肩仏、雑色宝華厳身仏、娑羅樹王仏、
宝華徳仏、見一切義仏、如須弥山仏等のような、
恒河沙数の諸仏が有り、
各各の国で広長の舌相を出し、三千大千世界を遍く覆いながら、
誠実な言で、こう説いている、――
お前達、衆生は、
是の、
不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏に護念される、
経を信じなければならぬ、と。
舍利弗。於汝意云何。何故名為一切諸佛所護念經。舍利弗。若有善男子善女人。聞是經受持者。及聞諸佛名者。是諸善男子善女人。皆為一切諸佛共所護念。皆得不退轉於阿耨多羅三藐三菩提。是故舍利弗。汝等皆當信受我語及諸佛所說 舎利弗、汝が意に於いて云何(いかん)。何の故に名づけて、一切の諸仏に護念せらるる経と為す。舎利弗、若し善男子、善女人にして、是の経を聞いて受持する者、及び諸仏の名を聞く者有らば、是の諸の善男子、善女人は、皆一切の諸仏の共に護念する所と為し、皆阿耨多羅三藐三菩提に於いて不退転なるを得。是の故に舎利弗、汝等は皆、当に我が語、及び諸仏の所説を信受すべし。
舎利弗!
お前の意には、何うなのか?――
何故、
一切の諸仏に護念される経と、
称されるのだろうか?
舎利弗!
若し、
有る善男子、善女人が、
是の経を受持したり、
諸仏の名を聞いたりすれば、
是の諸の善男子、善女人は、
皆が、
一切の諸仏に共に、
護念され、
皆が、
阿耨多羅三藐三菩提より、
退転しないからである。
是の故に、舎利弗!
お前達は、
皆、
わたしの語や、諸仏の所説を、
信受せねばならぬのである。
  信受(しんじゅ):信じ切る( having faith to )。
舍利弗。若有人已發願。今發願。當發願。欲生阿彌陀佛國者。是諸人等。皆得不退轉於阿耨多羅三藐三菩提。於彼國土若已生。若今生。若當生。是故舍利弗。諸善男子善女人。若有信者。應當發願生彼國土 舎利弗、若し有る人、已(すで)に発願し、今発願し、当に発願すべくして、阿弥陀仏国に生ぜんと欲すれば、是の諸の人等は、皆阿耨多羅三藐三菩提に於いて退転せざるを得、彼の国土に於いて若しは已に生じ、若しは今生じ、若しは当に生ずべし。是の故に舎利弗、諸の善男子、善女人にして、若し信ずる者有らば、応当に発願して彼の国土に生ずべし。
舎利弗!
若し、
有る人が、
已に発願したか( who had already cherished the desire or )、
今発願するか( now cherishes or )、
当に発願しようとしていて( should cherish )、
阿弥陀仏の国に、
生じようとするならば、
是の諸の人等は、皆阿耨多羅三藐三菩提より退転することなく、
彼の国土に、
已に生じたか( had already be born or )、
今生じるか( are now being born or )、
当に生じるだろう( should be born )。
是の故に、
舎利弗!
諸の善男子、善女人に、
若し、
信じる者が有れば、
発願して、
彼の国に生じねばならないのである。
舍利弗。如我今者稱讚諸佛不可思議功德。彼諸佛等。亦稱說我不可思議功德。而作是言。釋迦牟尼佛能為甚難希有之事。能於娑婆國土五濁惡世。劫濁。見濁。煩惱濁。眾生濁。命濁中。得阿耨多羅三藐三菩提。為諸眾生。說是一切世間難信之法。 舎利弗、我れ今、諸仏の不可思議の功徳を称讃するが如く、彼の諸仏等も亦た我が不可思議の功徳を称説して、是の言を作す、『釈迦牟尼仏は、能(よ)く甚だ難(かた)く希有の事を為し、能く娑婆国土の五濁悪世なる劫濁、見濁、煩悩濁、衆生濁、命濁中に於いて、阿耨多羅三藐三菩提を得、諸の衆生の為めに、是の一切の世間の信じ難き法を説けり』、と。
舎利弗!
わたしが、
今、
諸仏の不可思議の功徳を、
称讃しているように、
彼の諸仏も、
亦た、
わたしの不可思議の功徳を、
称讃して、
こう言っている、――
釈迦牟尼仏は、甚だ難く希有の事を為した。
娑婆国土の劫濁、見濁、煩悩濁、衆生濁、命濁という、
五濁の悪世に於いて、
阿耨多羅三藐三菩提を、
得たばかりか、
諸の衆生の為めに、
是の一切の世間の信じ難い法を、
説いたのである、と。
  釈迦牟尼(しゃかむに):釈迦族の聖者( the saint of Sakya )。
  娑婆(しゃば):梵語 sahaayaam の訳、堪えねばならぬ( in where you have to endure )。この世界の名称。
  五濁(ごじょく):梵語 paJca-kaSaaya の訳、五種の汚染( the 5 defilements of the world )、
  1. 劫濁 kalpa-k. :時代という汚染( the defilement of the trends of the present age )、
  2. 見濁 dRSTi-k.:誤った見解という汚染( the defilement of mistaken views )、
  3. 煩悩濁 kleza-k. :煩悩という汚染( the defilement of afflictions )、
  4. 衆生濁 sattva-k. :衆生という汚染( the defilement of being a sentient being )、
  5. 命濁 aayus-k. :寿命という汚染( the defilement of having a lifetime )。
舍利弗當知。我於五濁惡世。行此難事。得阿耨多羅三藐三菩提。為一切世間。說此難信之法。是為甚難。佛說此經已。舍利弗及諸比丘。一切世間天人阿修羅等。聞佛所說歡喜信受。作禮而去
佛說阿彌陀經 
舎利弗、当に知るべし、我れは五濁悪世に於いて、此の難事を行じ、阿耨多羅三藐三菩提を得、一切の世間の為めに、此の信じ難き法を説けるも、是れを甚だ難しと為す。仏は、此の経を説き已えたまい、舎利弗、及び諸の比丘、一切の世間の天、人、阿修羅等は、仏の所説を聞いて歓喜して信受し、礼を作して去れり。
仏説阿弥陀経
舎利弗! こう知らねばならない、――
わたしは、
五濁の悪世に於いて、
此の難事を行じ、
阿耨多羅三藐三菩提を得て、
一切の世間の為めに、此の信じ難い法を説いたのであるが、
是れは、
甚だ難しいことなのである、と。
仏が、此の経を説き已えられると、
舎利弗や、諸の比丘たちや、一切の世間の天、人、阿修羅等は、
仏の所説を聞いて、
歓喜し、信受し、
礼を作して、去った( to bowed down to Sakyamuni and disappeared )。

仏説阿弥陀経
  作礼(さらい):梵語 namasyanti の訳、腰をかがめてお辞儀をする( to bow down to )。


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