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巻下之二
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弥 勒 受 勅 分 の 余 |
菩 薩 往 生 分 |
流 通 得 益 分 |
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弥勒受勅分の余
五悪五痛五焼
佛告彌勒。汝等能於此世。端心正意不作眾惡。甚為至德。十方世界最無倫匹。所以者何。諸佛國土天人之類。自然作善不大為惡。易可開化 |
仏、弥勒に告げたまわく、『汝等、よくこの世に於いて、心を端(ただ)し意を正して、衆の悪を作さざるは、甚だ徳の至りにして、十方の世界の最も倫匹(りんぴつ、並ぶ者)無きなり。所以(ゆえ)は何(いか)んとなれば、諸仏の国土の天人の類は、自然に善を作し、悪を為すこと大ならざれば、開化すべきこと易し。 |
仏は弥勒に教えられた、―― お前たちが、立派に耐えて、 心を端(ただ)し、意を正して、 衆の悪を作さないのは、甚だ、 徳の至りであり、 十方の世界にも、極めて 並ぶ者が無い。
何故かといえば、 諸仏の国土の、 天人の類は、自然に、 善を作して、 悪を、為すことは少なく、 道を、開き、 悪を善に、化すことは、 容易だからである。 |
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今我於此世間作佛。處於五惡五痛五燒之中。為最劇苦。教化群生令捨五惡。令去五痛。令離五燒。降化其意令持五善獲其福德度世長壽泥洹之道 |
今、我この世間に於いて仏と作り、五悪(ごあく、殺生、偸盗、邪淫、妄語、飲酒)、五痛(ごつう、五悪を犯して受ける刑罰)、五焼(ごしょう、五悪を犯して受ける地獄の罰)の中に於いて処すること、最も劇苦(ぎゃくく、五悪の衆生を救う劇務)と為す。 群生(ぐんしょう、衆生)に教えて五悪を捨てしめ、五痛を去らしめ、五焼を離れしめ、その意を降し化して、五善を持(たも)たしめて、その福徳、度世(どせ、苦の世界を渡る)、長寿、泥洹の道を獲(え)せしめたり。』 |
今、 私は、この世間に於いて、 仏と、作り、 五悪(ごあく、殺生、偸盗、邪淫、妄語、飲酒)、 五痛(ごつう、五悪を犯して受ける刑罰)、 五焼(ごしょう、五悪を犯して受ける地獄の罰)の中に、処(しょ、居る)することは、 最も劇(はげ)しい苦しみであるとした。 そして、 群生(ぐんしょう、衆生)に、教えて 五悪を、捨てさせ、 五痛を、避けさせ、 五焼を、離れさせ、 その(群生の)意を、屈服させて、 悪から善に、化し、 五善を、持(たも)たせ、 その(群生の) 福徳(ふくとく、来世に受ける善い果報)、 度世(どせ、巧くこの世を渡ること)、 長寿、 泥洹(ないおん、苦しみの無い世界、涅槃)への道を、 獲得させた。 |
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佛言。何等為五惡。何等五痛。何等五燒。何等消化五惡。令持五善獲其福德度世長壽泥洹之道 |
仏言わく、―― 何等をか五悪と為し、何等をか五痛、何等をか五焼、何等をか五悪を消化して、五善を持たしめ、その福徳、度世、長寿、泥洹の道を獲しむと為す。 |
仏は言われた、―― 何が五悪、何が五痛、何が五焼だろうか。 五悪を消し、五善を持たせ、 福徳、度世、長寿、泥洹への道を、 獲させるとは、何だろうか。 |
その一悪、殺生
其一惡者。諸天人民蠕動之類。欲為眾惡莫不皆然 |
その一の悪とは、諸天、人民、蠕動(ねんどう、地をはうもの)の類、衆の悪を為さんと欲すること、皆然らざるはなし。 |
その一の悪とは、 諸天、人民、蠕動(ねんどう、地をはうみみずの類)の類は、皆、 衆の悪を為そうと、欲して、 そうでない者は、一人もいない。
注:一悪は殺生によって起る。 |
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強者伏弱轉相剋賊。殘害殺戮迭相吞噬。不知修善 |
強き者は、弱きを伏して、転(うた)た相い剋賊(こくぞく、切り刻んで殺し盗む)し、残害(ざんがい、傷つけ殺す)し、殺戮(さつりく、むごたらしく殺す)し、迭(たがい)に相い呑噬(どんぜい、呑んで噛む)して、善を修むることを知らず。 |
強い者は、 弱い者を、屈服させて、 次々と、 剋賊(こくぞく、切り刻んで殺し盗む)し、 残害(ざんがい、殺し傷つける)し、 殺戮(さつりく、むごたらしく殺す)し、 互いに、 呑噬(どんぜい、呑み込んで噛む)し合って、 善を修めることを、知らない。 |
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惡逆無道。後受殃罰自然趣向。神明記識犯者不赦 |
悪逆無道にして、後に殃罰(おうばつ、天罰)を受くるは、自然の趣向(しゅこう、意向)なり、神明(じんみょう、天神)は犯せる者を記識(きしき、書きとどめる)して赦さず。 |
悪逆には、 道(みち、泥洹の道)が無いのであるから、 後になって、殃罰(おうばつ、天罰)を受けるのは、 自然なことである。
神明(じんみょう、天の神)は、 罪を犯した者を、 帳面に書きとどめて、 赦すことはない。
注:殃罰、神明は、比喩的な表現である。 因果は必ず有るが、殃罰、神明によるものでないことは、仏教一般の主張である。 |
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故有貧窮下賤乞丐孤獨聾盲瘖啞愚癡憋惡。至有尪狂不逮之屬 |
故に、貧窮(びんぐ)、下賎、乞丐(こつがい、乞食)、孤独、聾盲、瘖唖、愚癡、憋悪(へいあく、悪心)有りて、尪(おう、足なえ)、狂、逮ばざるの属(たぐい)有るに至る。 |
故に、 貧窮、下賎、乞丐(こつがい、乞食)、孤独、聾盲、瘖唖、愚癡、憋悪(へいあく、悪心の者)が有り、 尪(おう、足なえ)、狂など、逮(およ)ばない属が有るのである。
注:この部分は偏見であり、これも譬喩的な表現である。 因果は必ず有るが、このように単純ではない。 |
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又有尊貴豪富高才明達。皆由宿世慈孝修善積德所致 |
また、尊貴、豪富、高才、明達有るは、皆、宿世の慈孝、修善、積徳の致す所に由るなり。 |
また、 尊貴、豪富、高才、明達の者も有るが、皆、 宿世の慈悲、孝行、修善、積徳に由って、招き寄せたのである。 |
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世有常道王法牢獄。不肯畏慎。為惡入罪受其殃罰。求望解脫難得免出。世間有此目前現事。壽終後世尤深尤劇。入其幽冥轉生受身。譬如王法痛苦極刑 |
世に、常道(じょうどう、正道)、王法(おうほう、世間の法律)、牢獄有れども、肯(あえ)て畏れ慎まずに、悪を為して罪に入り、その殃罰を受け、解脱を求め望めども、免れ出づることは得難し。 世間にはこの目前の現事有れども、寿終りての後の世は、尤も深く尤も劇し。 その幽冥(ゆうみょう、薄暗い世界)に入り、転じて生まれ身を受くるは、譬えば、王法の痛苦、極刑の如し。 |
世には、 常道(じょうどう、世俗の正しい道)、王法(おうほう、世間の法律)、牢獄が有るのだが、 肯(あえ、悦んで)て、畏れ慎まず、 悪事を為して、罪を犯して、殃罰(おうばつ、天罰と刑罰)を受ける。
この為に、(苦の世界より) 解脱することを求め望んでも、 免れて出ることは、難しい。
世間には、 目前にこの事が有り、 命が終って後の世では、 もっと深くもっと劇しいのである。 その人が、 薄暗い世界に入って生れ、 身を受ければ、 譬えば、 王法のような、 痛苦と、極刑が待っているのだ。 |
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故有自然三塗無量苦惱。轉貿其身。改形易道。所受壽命或長或短。魂神精識自然趣之。當獨值向 |
故に、自然の三塗(さんづ、地獄、餓鬼、畜生)に無量の苦悩有り、転(うた)たその身を貿(か)え、形を改め、道を易(か)え、受くる所の寿命も、或は長く或は短く、魂神(こんじん、魂魄)と精識(しょうしき、精神)は、自然にここに趣く。 まさに独り値向(じきこう、直面)すべし。 |
故に、自然にできた、 三塗(さんづ、地獄、餓鬼、畜生)には、無量の苦悩が有り、 次々と、 身を、取り替え、 形(かたち、肉体)を、改め、 道(みち、地獄道、餓鬼道、畜生道)を、変え、 受ける寿命も、或は長く、或は短く、 魂神(こんじん、霊魂)と精識(しょうしき、精神)とは、 自然に、ここ(地獄、餓鬼、畜生)に趣き、 独り、直面しなくてはならない。 |
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相從共生更相報復無有止已 |
(怨みと)相い従いて共に生まれて、更に相い報復し、止みおわることの有ること無し。 |
(敵と、) 相互して、共に生まれ、 更に、互いに、報復し合って、 止む時が無い。 |
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殃惡未盡不得相離。展轉其中無有出期。難得解脫痛不可言 |
殃悪(おうあく、罪罰)、未だ尽きざれば相い離るることを得ず。 その中に展転として出づるの期(ご、時)有ること無く、解脱も得難く、痛みは言うべからず。 |
殃悪(おうあく、罪罰)は、 未だ、尽きていないので、(敵と)離れることもできず、 その(敵同士)の中に展転として、出ることは期待できず、 解脱を得ることも難しく、 その痛みは、言うべき言葉も無い。 |
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天地之間自然有是。雖不即時卒暴應至善惡之道會當歸之。是為一大惡一痛一燒。勤苦如是。譬如大火焚燒人身 |
天地の間には、自然にこれ有り。 即時、卒暴(そつぼう、にわか)に、まさに善悪の道に至るべきにはあらねど、会(かなら)ず、まさにここに帰すべし。 これを一の大悪、一の痛、一の焼と為し、勤苦(ごんく、苦労)することかくの如く、譬えば大火に人身を焚焼(ぼんしょう)するが如し。 |
天地の間には、自然とこれが有り、 即時に、にわかに、 善悪の道に至らねばならないというのではないが、 何時かは、必ず、 ここに帰らなくてはならない。
これを、 一の大悪、一の痛、一の焼といい、 その勤苦(ごんく、苦労)は、このように 譬えば、 大火が興って、人身を焚焼するようである。 |
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人能於中一心制意。端身正行獨作諸善。不為眾惡者。身獨度脫獲其福德度世上天泥洹之道。是為一大善也 |
人、よく(世界の)中に於いて、一心に意を制し、身を端し行いを正して、独り諸の善を作し、衆の悪を為さざれば、身は独り度脱(どだつ、済度解脱)して、その福徳、度世(どせ、世を渡る)、上天(じょうてん、天に上る)、泥洹の道を獲(え)ん。 これを一の大善と為す。 |
人が、立派に、苦しみの中で、 一心に、意を制して、身を端し、行いを正し、 独り、 諸の善を為し、諸の悪を為さなければ、 身は、独り、 苦しみを、度脱(どだつ、渡り脱がれる)して、 その福徳と、度世と、上天(じょうてん、天に上る)と、泥洹の道を、 獲(う)るだろう。
これを、 一の大善という。 |
その二悪、偸盗
佛言。其二惡者。世間人民父子兄弟室家夫婦。都無義理不順法度。奢婬憍縱各欲快意。任心自恣更相欺惑。心口各異言念無實。佞諂不忠。巧言諛媚。嫉賢謗善。陷入怨枉 |
仏言わく、その二の悪とは、世間の人民、父子、兄弟、室家、夫婦、都(すべ)て義理(ぎり、正義と道理)無く、法度(ほうど、法律と制度)に順ぜずして、奢り、婬(むさ)ぼり、憍(たかぶ)り、縦(ほしいまま)にして、各、意を快くし、心に任せて自ら恣(ほしいまま)にし、更(こもご)も相い欺(あざむ)き惑わす。 心と口と、各、異なり、言と念とに実無し。 佞(おもね)り諂(へつら)いて忠ならず。 巧みに言いて諛(へつら)い媚(こ)び、賢を嫉み善を謗り、怨枉(おんおう、無実の罪に陥れられる)に陥(おと)し入る。 |
仏は言われた、―― その二の悪とは、 世間の、 人民、父子、兄弟、室家(しつけ、家族)、夫婦は、すべて 義理(ぎり、正義と道理)が無く、 法度(ほうど、法律と制度)に順じず、 奢り、婬(むさ)ぼり、憍(たかぶ)り、 縦(ほしいまま)にして、各、意を快くし、 心に任せて、自ら恣(ほしいまま)にし、 代る代る、相い欺(あざむ)き惑わし、 心と口とは、各、異なり、 言葉にも念いにも、実が無く、 佞(おもね)って諂(へつら)い、 巧みに言い訳して、諛(へつら)って媚(こ)び、 賢い者を嫉み、善行の者を謗(そし)って、 無実の罪に、陥(おと)し入れる。
注:二悪は偸盗によって起る。 |
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主上不明任用臣下。臣下自在機偽多端。踐度能行知其形勢。在位不正為其所欺。妄損忠良不當天心 |
主上不明なれば臣下に任用し、臣下自在になして機偽(きぎ、はかりごとをして偽る)多端(たたん、多くの手口)なり。践(ふ)み度(わた)り、よく行いてその形勢を知り、位に在れども正しからざれば、(主上、)それに欺かれ、妄(みだ)りに忠良(の臣)を損(そこな)い、天の心に当らず。 |
主上(しゅじょう、 天子)が不明であれば、それを臣下に任用し、 臣下は、 自在に、悪を作して、 悪巧みと偽りとの、手口は多い。 悪事の露見を恐れ瀬踏みして、うまく行い、 形勢を知って、高位に在るが、正しくない。 主上は、 それに、欺かれて、 忠良を、無駄に損ない、 天の心にも、 背いてしまう。 |
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臣欺其君。子欺其父。兄弟夫婦。中外知識。更相欺誑 |
臣はその君を欺き、子はその父を欺き、兄弟夫婦、中外の知識(ちしき、知人)、更(こもご)も相い欺き誑かす。 |
臣は、その君を欺き、 子は、その父を欺き、 兄弟、夫婦、家族内と家族外の知人も、 代る代る、相い欺き誑(たぶら)かす。 |
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各懷貪欲瞋恚愚癡。欲自厚己。欲貪多有。尊卑上下心俱同然 |
各、貪欲、瞋恚、愚癡を懐いて、自ら己に厚からんことを欲し、貪りて多く有らんことを欲す。 尊卑上下、心は倶に同じく然り。 |
各、 心に、 貪欲(とんよく、財を貪って物惜しみする)、 瞋恚(しんに、嫉妬して瞋る)、 愚癡(ぐち、道理を知らない)を、懐いて、 自ら、 己が、富んで厚くなることのみを欲し、 貪って、多く有ることを欲す。
尊卑、上下、 心は、皆同じである。 |
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破家亡身不顧前後。親屬內外坐之滅族 |
家を破り身を亡ぼしても前後を顧みず。 親属の内外、ここに坐して族(うから)を滅ぼす。 |
家族を、破壊し、 身を、亡ぼしても、 前後を、顧みることがない。 内外の親属には、 為すすべもなく 一族を、 滅ぼしてしまう。 |
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或時室家知識鄉黨市里愚民野人。轉共從事。更相剝害。忿成怨結 |
或は時に、室家(しつけ、家族)、知識、郷党、市里の愚民、野人、転た共に事に従い、更も相い剥害(はくがい)し、忿(いきどお)りは成りて怨みを結ぶ。 |
ある時には、 室家(しつけ、家族)、知識(ちしき、知人)、郷党(きょうとう、同郷者)、 市里(しり、市中市外)の愚民、野人たちが、 次々と、悪事に従い、 代る代る、剥ぎ取り害し合って、 忿(いきどお)りと、成り、 怨みの関係が、結ばれる。 |
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富有慳惜不肯施與。愛保貪重心勞身苦。如是至竟無所恃怙。獨來獨去無一隨者 |
富み有るものは、慳惜(けんじゃく、物惜しみする)して肯て施し与えず、愛し保ち貪って、心労と身苦を重ぬれど、かくの如くして竟(おわ)りに至れば、恃(たの)み怙(たの)む所無く、独り来たり独り去り、一として随う者無し。 |
富んだとしても、ある者は、 物惜しみして、 悦んで、施し与えず、 財を、愛し保ち貪って、 心は、疲労し、 身は、苦しむ。
このようにして、 命の終りに、至れば、 頼りになる者は、無く、 独り、この世に来て、 独り、この世を去り、 去るに当っては、一人として、 後に随う者は無い。 |
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善惡禍福追命所生。或在樂處。或入苦毒。然後乃悔當復何及 |
善悪と禍福とは、命を生まるる所にまで追い、或は楽処に在り、或は苦毒に入る。 然る後に、乃ち悔んでも、まさにまた何んが及ぶべき。 |
善悪と禍福とは、 命の生まれる所にまで、追いかけ、 或は、楽処(らくしょ、人間天上)に、在り、 或は、苦毒(くどく、地獄餓鬼畜生)に、入る。
そうなっての後に、ようやく 悔んだとて、今さら 何の手だてが、 及ぶことだろう。 |
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世間人民。心愚少智。見善憎謗不思慕及。但欲為惡妄作非法。常懷盜心悕望他利。消散磨盡而復求索 |
世間の人民は、心愚かにして智少なく、善を見ても憎み謗って、慕い及ばんことを思わず、ただ悪を為さんと欲して、妄りに非法を作し、常に盗心を懐いて、他の利を悕望(けもう、希望)し、消散磨滅しては、また求索(ぐさく、求める)す。 |
世間の人民は、 心が愚かで、智慧が少なく、 善人を見ても、 憎み謗(そし)って、 慕うことも、 及ぶことも、思わずに、 ただ、 悪を為すことを、欲し、 妄りに、非法を作して、 常に、 盗心を、懐き、 他人の利益を、うらやみ、 盗んだ財が、 消散し磨滅すれば、また 求めて探し回る。 |
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邪心不正懼人有色。不豫思計事至乃悔。今世現有王法牢獄。隨罪趣向受其殃罰 |
邪心不正は、人の色有るを懼(おそ)れ、あらかじめ思い計らず、事至れば乃ち悔ゆ。 今世には、現に王法と牢獄と有り、罪に随いて趣向し、その殃罰(おうばつ、刑罰)を受く。 |
邪心と不正とは、 人の顔色を、恐れ、 あらかじめ、思い計ることをせず、 事が起こるに至って、ようやく 後悔する。
今世には、現に 王法と牢獄とが、有り、 罪に随って、趣き向い その殃罰(おうばつ、刑罰)を受ける。 |
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因其前世不信道德不修善本。今復為惡天神剋識別其名籍。壽終神逝下入惡道 |
その前世に道の徳を信ぜず、善本を修めざるに因って、今また、悪を為せば、天神、それを別して名籍(みょうじゃく、名簿)に剋識(こくしき、刻みつけて記す)し、寿終れば神(じん、魂)逝き下りて、悪道に入る。 |
その前世に、 道の徳(とく、力)を、信じず、 善本(ぜんぽん、善行)を、修めず、 今は、また悪を為せば、 天神は、それを別けて、 名簿に、刻みつけて記し、 寿が終れば、 魂は、逝き下って、 悪道(あくどう、地獄餓鬼畜生)に入る。 |
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故有自然三塗無量苦惱。展轉其中。世世累劫無有出期。難得解脫痛不可言。是為二大惡二痛二燒。勤苦如是。譬如大火焚燒人身 |
故に、自然に三塗の無量の苦悩有り、その中に展転して、世世に劫を累ぬれど出づるの期有ること無く、解脱得難ければ痛み言うべからず。 これを二の大悪、二の痛、二の焼と為す。 勤苦(ごんく、苦労)することかくの如く、譬えば大火に人身を焚焼するが如し。 |
故に、自然にできた、 三塗には、無量の苦悩が有るのである。 その中を、展転として、 世世に、劫を累(かさ)ねても、 出ることは、期待できず、 解脱も、得難く その痛みは、 言いようもない。
これを、 二の大悪、二の痛、二の焼といい、 その勤苦(ごんく、苦労)は、このように 譬えば、 大火が興って、人身を焚焼するようである。 |
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人能於中一心制意。端身正行獨作諸善。不為眾惡者。身獨度脫。獲其福德度世上天泥洹之道。是為二大善也 |
人、よく中に於いて、一心に意を制し、身を端し行いを正して、独り諸の善を作し、衆の悪を為さざれば、身は独り度脱して、その福徳、度世、上天、泥洹の道を獲ん。 これを二の大善と為す。 |
人が、立派に、苦しみの中で、 一心に、意を制して、身を端し、行いを正し、 独り、 諸の善を為し、諸の悪を為さなければ、 身は、独り、 苦しみを、度脱(どだつ、渡り脱がれる)して、 その福徳と、度世と、上天(じょうてん、天に上る)と、泥洹の道を、 獲(う)るだろう。 これを 二の大善という。 |
その三悪、邪淫
佛言。其三惡者。世間人民。相因寄生。共居天地之間。處年壽命無能幾何。上有賢明長者尊貴豪富。下有貧窮廝賤尪劣愚夫。中有不善之人。常懷邪惡。但念婬劮。煩滿胸中。愛欲交亂坐起不安 |
仏言わく、その三の悪とは、世間の人民は、相い因り寄って生まれ、共に天地の間に居り、処(お)る年の寿命は、よく幾何(いくばく)も無し。 上には賢明、長者、尊貴、豪富有り、下には貧窮、廝賎(しせん、下賎)、尪劣(おうれつ、弱劣)、愚夫有り、中に不善の人有りて、常に邪悪を懐く。ただ、婬劮(いんいつ、みだら)を念(おも)い、煩(ぼん、煩悩)は胸中を満たし、愛欲は交(ま)じり乱れて、坐起は安からず。 |
仏は言われた、―― その三の悪とは、 世間の人民は、 相い、因(たよ)り寄りそって、生まれ、 共に、天地の間に、居りながら、 そこに住まる年月、寿命は、幾許(いくばく)も有るわけではなく、 上には、賢明、長者、尊貴、豪富が、有り、 下には、貧窮、廝賎(しせん、下賎)、尪劣(おうれつ、弱劣)、愚夫が、有り、 中には、不善の人が有って常に邪悪を懐く、 (皆、)ただ、 淫らなことを、念って、 煩悩は、胸中を満たし、 愛欲は、交わり乱れて、 起っても坐っても、不安である。
注:三悪は邪淫によって起る。 |
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貪意守惜但欲唐得。眄睞細色邪態外逸。自妻厭憎私妄出入。費損家財事為非法 |
貪意は守り惜しんで、ただ唐(ひろ)く得んことを欲し、細色(さいしき、きめ細やかな肌)を眄睞(めんらい、横目に見る)して、邪態(じゃたい、邪な態度)は外に逸(ほしいまま)なり。自らの妻を厭い憎んで、私(ひそか)に妄りに(娼家に)出入し、家財を費え損じて、事(こと、職)に非法を為す。 |
貪りの意(こころ)は、 自らの物を、守り惜しんで、 ただ、いたずらに得んと欲し、 女の肌がきめ細やかであるのを、横目に見て、 自らの妻を、厭い憎み、 秘かに、妄りに、娼家に出入し、 家財を、費やし損じて、 職場で、非法を為す。 |
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交結聚會興師相伐。攻劫殺戮強奪不道 |
交わって聚会(じゅえ、徒党)を結び、師(し、いくさ)を興して相い伐ち、攻め劫(おびや)かして殺戮(さつりく)し、強いて奪ういて道をせず。 |
悪い仲間と、 交わって、徒党を組み、 戦いを興して、相い伐(う)ち、 攻めて、脅かし、 殺戮して、強いて奪い、 正しい道を、行わない。 |
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惡心在外不自修業。盜竊趣得欲擊成事。恐勢迫脅歸給妻子。恣心快意極身作樂 |
悪心、外に在らば、自ら業を修めず、盗窃(とうせつ)して趣(すみやか)に得、撃って事を成さんと欲し、恐勢(くせい、恐れながら)も迫脅(はくきょう、脅迫)し、帰って妻子に給し、心を恣(ほしいまま)にして意を快くし、身を極めて楽を作す。 |
悪心は、 外に向って、自ら正業を修めず、 盗んで得ることを、好み、 他人を襲って、事を成そうと欲し、 恐れながら脅迫して、帰り、 得た物を、妻子にあてがい、 心を恣にすることで、意を快くし、 身を極めて、楽を作す。 |
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或於親屬不避尊卑。家室中外患而苦之。亦復不畏王法禁令。如是之惡著於人鬼。日月照見神明記識 |
或は、親属に於いて尊卑を避けず。 家室(けしつ、家婦)と中外(の親属)、患(うれい)てこれを苦しむ。またまた王法と禁令を畏れず。かくの如きの悪、人鬼(人間鬼神)に著(あらわ)るれば、日月は照らし見、神明は記識(きしき、記憶し記載する)す。 |
或は、親属に於いて、 尊卑の礼を避け、 家室(けしつ、家婦)と中外の親属とは、 これを思い悩み、恥ずかしさに苦しむ。 また、このような者は、 王法と禁令とを、畏れない。
このような 悪が、人間鬼神に顕れれば、 日月は、照らし見て、 神明は、名簿に書き記す。 |
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故有自然三塗無量苦惱。展轉其中。世世累劫無有出期。難得解脫痛不可言。是為三大惡三痛三燒。勤苦如是。譬如大火焚燒人身 |
故に、自然に三塗の無量の苦悩有り。 その中に展転して、世世に劫を累ね、出づる期の有ること無く、解脱を得難く、痛みは言うべからず。 これを三の大悪、三の痛、三の焼と為す。 勤苦することかくの如く、譬えば大火に人身を焚焼するが如し。 |
故に、自然にできた、 三塗には、無量の苦悩が有るのである。 その中を、展転として、 世世に、劫を累(かさ)ねても、 出ることは、期待できず、 解脱も、得難く その痛みは、 言いようもない。
これを、 三の大悪、三の痛、三の焼といい、 その勤苦(ごんく、苦労)は、このように 譬えば、 大火が興って、人身を焚焼するようである。 |
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人能於中一心制意。端身正行獨作諸善。不為眾惡者。身獨度脫獲其福德度世上天泥洹之道。是為三大善也 |
人、よく中に於いて、一心に意を制して、身を端し行いを正して、独り諸の善を作し、衆の悪を為さざれば、身は独り度脱して、その福徳、度世、上天、泥洹の道を獲ん。 これを三の大善と為す。 |
人が、立派に、苦しみの中で、 一心に、意を制して、身を端し、行いを正し、 独り、 諸の善を為し、諸の悪を為さなければ、 身は、独り、 苦しみを、度脱(どだつ、渡り脱がれる)して、 その福徳と、度世と、上天(じょうてん、天に上る)と、泥洹の道を、 獲(う)るだろう。 これを 三の大善という。 |
その四悪、妄語
佛言。其四惡者。世間人民不念修善。轉相教令共為眾惡 |
仏言わく、その四の悪とは、世間の人民、善を修めることを念わず、転た相い教えて共に衆の悪を為さしむ。 |
仏が言われた、―― その四の悪とは、 世間の人民は、 善を修めることを、念(おも)わず、 次々と、相い教え合って、 共に、諸の悪を、行わせている。
注:四悪は妄語ないし口の禍によって起る。 |
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兩舌惡口。妄言綺語。讒賊鬥亂 |
両舌(りょうぜつ、二人に別の事を言う)、悪口(あっく)、妄言(もうごん、嘘)、綺語(きご、卑猥語)して、讒賊(ざんぞく、人を陥れる)し闘乱す。 |
両舌(りょうぜつ、二人に別の事を言って、仲を離反させる)、 悪口(あっく、悪口を言って、ののしる)、 妄言(もうごん、根も葉もないことを言う)、 綺語(きご、女を悦ばせるために、婬意を含む冗談を言う)を、言い、 人を陥し入れて、乱闘する。 |
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憎嫉善人敗壞賢明。於傍快喜 |
善人を憎み嫉み、賢明を敗壊(はいえ、だめにする)して、傍らに於いて快く喜ぶ。 |
善人を、憎み嫉み、 賢明を、敗壊(はいえ、だめにする)し、 傍らにいて、それを快く悦ぶ。 |
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不孝二親。輕慢師長。朋友無信。難得誠實。尊貴自大謂己有道。橫行威勢侵易於人。不能自知。為惡無恥。自以強健欲人敬難 |
二親に孝せず、師長に軽慢し、朋友に信無く、誠実は得難し。尊貴は自大にして、己に道有りと謂い、横に威勢を行い、人に於いて侵し易(かろん)ず。 自ら知ること能わざれば、悪を為せども恥ずること無く、自ら強健なるを以って、人の敬難(きょうなん、敬い畏れ憚る)せんことを欲す。 |
二親には、孝行せず、 師長には、軽んじて慢心し、 朋友には、信じられず、 誠実な人は、友達にならない。 尊貴な者は、 自ら、大物であると思い、 己は、道を得ていると謂い、 横行して、威勢を示し、 人を、侵して軽んじ、 自ら、知ることができないので、 悪を行っても、恥ずかしいと思わない、 自ら、強健であることを以って、 人が、敬って畏れはばかることを欲する。 |
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不畏天地神明日月。不肯作善。難可降化。自用偃蹇謂可常爾。無所憂懼。常懷憍慢 |
天地、神明、日月を畏れず、肯(あえ)て善を作さざれば降化(ごうけ、化導)すべきこと難し。 自ら用(もっ)て偃蹇(えんそく、たたずんで何もしない)し、常に爾(しか)るべしと謂い、憂い懼(おそ)るる所無く、常に憍慢を懐く。 |
天地、神明、日月を、畏れず、 悦んで、 善を、作そうとしないので、 降して、化することが難しく、 自ら、それで良いとして何もせず、 常に、こうあるべきだと謂い、 憂い懼れる者は無く、 常に、憍慢を懐いている。 |
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如是眾惡天神記識。賴其前世頗作福德。小善扶接營護助之。今世為惡福德盡滅。諸善神鬼各去離之。身獨空立無所復依 |
かくの如きの衆の悪を、天神は記識す。 その前世に、頗(すこぶ、少しばかり)る福徳を作して、小善の扶接(ふしょう、助けもてなす)し営護(ようご、衛護)して、これを助くることを頼れども、今世に悪を為せば福徳は尽く滅して、諸の善の神鬼も、各去りてこれを離る。 身は独り空しく立ちて、また依る所無し。 |
このような衆の悪を、 天神は書き記して記憶し、 その前世に作した、少しばかりの福徳に、頼れば、 その小さな善は、 扶接(ふしょう、助けもてなす)し、営護して、これを助けようとするが、 今世に、悪を為しているので、福徳は、尽く滅して、 諸の善い鬼神も、各、これを離れ去り、 身は、独り、 空(むな、しょんぼり)しく立ちつくし、 もう、これ以上、頼る者が無い。 |
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壽命終盡諸惡所歸。自然迫促共趣奪之 |
寿命は終(つい)に尽き、諸の悪の帰する所は、自然に迫り促して、共に趣きこれを奪う。 |
寿命は、終(つい)に尽きれば、 諸悪の帰する所(地獄道、餓鬼道、畜生道)は、 自然に迫り促して、共に趣き、 この人を奪って、連れ去る。 |
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又其名籍記在神明。殃咎牽引。當往趣向。罪報自然無從捨離。但得前行入於火鑊。身心摧碎精神痛苦 |
また、その名籍(みょうじゃく、名簿)の記は神明に在り、殃咎(おうく、罪咎)牽引すれば、まさに往き趣き向うべし。 罪報は自然に従って捨て離るること無く、ただ前に行くことのみを得て、火鑊(かかく、燃えさかる鉄鍋)に入り、身心は摧け砕けて、精神は痛み苦しむ。 |
また、 その名簿には、名が記されて、神明の所に在る、 殃咎(おうく、罪咎)が、牽引するのであるから、 そこへ往き、趣き向わなければならない。
罪の報いは、自然に 罪人の意に従うことも、 罪人を捨てて離れることもしないので、 ただ、 前に進むことができるのみで、 火鑊(かかく、燃えさかる鉄鍋)に入れば、 身心は、粉々に砕けて、 精神は、痛み苦しむのである。 |
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當斯之時悔復何及。天道自然不得蹉跌 |
この時に当り悔めども、また何ぞ及ばん。 天道(てんどう、道理)は自然にて蹉跌(さてつ、践み間違い)するを得ず。 |
この時に当って、悔んでみても、もはや何なる手だても及ばない。 天道(てんどう、道理)は、自然であり、 蹉跌(さてつ、践み間違い)することは、有りえない。 |
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故有自然三塗無量苦惱。展轉其中。世世累劫無有出期。難得解脫痛不可言。是為四大惡四痛四燒。勤苦如是。譬如大火焚燒人身 |
故に、自然に三塗の無量の苦悩有り、その中に展転して、世世に劫を累ね出づる期の有ること無く、解脱するを得難く、痛み言うべからず。 これを四の大悪、四の痛、四の焼と為す。 勤苦することかくの如く、譬えば大火に人身を焚焼するが如し。 |
故に、自然にできた、 三塗には、無量の苦悩が有るのである。 その中を、展転として、 世世に、劫を累(かさ)ねても、 出ることは、期待できず、 解脱も、得難く その痛みは、 言いようもない。
これを、 四の大悪、四の痛、四の焼といい、 その勤苦(ごんく、苦労)は、このように 譬えば、 大火が興って、人身を焚焼するようである。 |
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人能於中一心制意。端身正行獨作諸善。不為眾惡。身獨度脫。獲其福德度世上天泥洹之道。是為四大善也 |
人、よく中に於いて、一心に意を制し、身を端し行いを正して、独り諸の善を作し、諸の悪を為さざれば、身は独り度脱して、その福徳、度世、上天、泥洹の道を獲ん。 これを四の大善と為す。 |
人が、立派に、苦しみの中で、 一心に、意を制して、身を端し、行いを正し、 独り、 諸の善を為し、諸の悪を為さなければ、 身は、独り、 苦しみを、度脱(どだつ、渡り脱がれる)して、 その福徳と、度世と、上天(じょうてん、天に上る)と、泥洹の道を、 獲(う)るだろう。 これを 四の大善という。 |
その五悪、飲酒
佛言。其五惡者。世間人民。徙倚懈惰不肯作善治身修業。家室眷屬飢寒困苦 |
仏言わく、その五の悪とは、世間の人民、徒(いたづら)に倚(よ)りて、懈(なま)け惰(おこた)り、肯て善を作し、身を治め、業を修むることをせざるにより、家室、眷属は飢え寒(こご)え困り苦しむ。 |
仏は言われた、―― その五の悪とは、 世間に人民は、 無益に、他に寄りかかり、 家業に、精を出さず怠けて、 悦んで、 善を作し、 身を治め、 業を修めることをしない。 その為に、 家室(けしつ、家族)、眷属(けんぞく、親属)は、 飢え、こごえて、 困り苦しむ。
注:五悪は、飲酒ないし家業を怠けることによって起る。 |
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父母教誨。瞋目怒[(應-心)/言]。言令不和。違戾反逆譬如怨家。不如無子 |
父母、教え誨(さと)せども、目を瞋らせ怒り譍(こた)えて、言令(ごんりょう、言いつけ)に和せず、違戻(いれい、逆らう)し反逆すること、譬えば怨家(おんけ、敵)の如く、子は無きに如(し)かず。 |
父母が、教え誨(さと)せば、 目を瞋らせて、口答えし、 意見にも命令にも、和すことなく、 違戻(いれい、逆らい背く)して、反逆して、 譬えば、 怨家(おんけ、敵)のようであってみれば、 子は無い方が、良いのである。 |
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取與無節。眾共患厭。負恩違義。無有報償之心。貧窮困乏不能復得 |
取ると与うるとに節(せつ、節度)無ければ、衆は共に患い厭う。 恩に負(そむ)き義に違(そむ)いて、報償の心有ること無ければ、貧窮困乏しても、また得ること能わず。 |
取ることにも、 与えることにも、節度が無いので、 人々は、共に、 患(うれ、憂)えて、厭い嫌う。 恩人に、背き、 正義に、違いて、 報償(ほうしょう、損害のつぐない)の心が無いので、 貧窮し困乏すれば、 もう、二度と得ることはできない。 |
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辜較縱奪放恣遊散。串數唐得用自賑給。耽酒嗜美。飲食無度。肆心蕩逸。魯扈抵突 |
辜較(こかく、権力で独占する)し縦(ほしいまま)に奪い、放恣(ほうし、気まま)に遊び散じて、数(しばし)ば唐(いたづ)らに得るを串(ならい、習慣)として、用(もっ)て自ら賑給(しんきゅう、施し与える)し、酒に耽り美(味)を嗜み、飲食に度(ど、節度)無く、心を肆(ほしいまま)にして蕩逸(とういつ、しまりがない)し、魯扈(ろこ、愚かな顔で人に付従う)し抵突(たいとつ、ぶつかり合う)す。 |
権力で、独占し、 縦(ほしいまま)に、奪い、 気ままに、遊び散じて、 しばしば、 大きく、得たときは、 自ら、施し与えて、 酒に耽り、美味を嗜み、 飲食に、節度が無く、 心を広くして、しまりがなく、 まぬけ顔で、人に従い、 人に、当ってはぶつかる。 |
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不識人情。強欲抑制。見人有善。憎嫉惡之。無義無禮。無所顧難。自用職當不可諫曉。六親眷屬所資有無。不能憂念 |
人情を識らずして強いて抑制せんと欲し、人に善有るを見て憎み嫉んでこれを悪(にく)む。 義無く、礼無く、顧難(こなん、顧み畏れ憚る)せらるること無し。 自ら用(もっ)て職当(しきとう、職掌)して諫(いさ)め暁(さと)すべからず。 六親(ろくしん、父母兄弟妻子)眷属を資(たす)くる所の有無は、憂い念(おも)うこと能わず。 |
人情を識らないのに、人を、抑制しようと強く欲し、 人に、善行有ることを見れば、憎悪して嫉妬し、 正義は無く、礼儀も無いのである。
当然、 顧みられることも、 畏れはばかられることも無く、 その為に、 自ら、職掌を以って、諫め諭すことができず、 六親(ろくしん、父母兄弟妻子)と眷属とを養う、糧の有無は、 憂い念うことさえできない。 |
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不惟父母之恩。不存師友之義。心常念惡。口常言惡。身常行惡。曾無一善 |
父母の恩を惟(おも)わず、師友の義を存ぜず、心に常に悪を念い、口に常に悪を言い、身に常に悪を行い、曾(かつ)て一の善も無し。 |
父母の恩を、考えず、師友の義理を、知らず、 心には、常に悪を念い、 口には、常に悪を言い、 身には、常に悪を行い、 かつて、一つの善を行うことも無い。 |
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不信先聖諸佛經法。不信行道可得度世。不信死後神明更生。不信作善得善為惡得惡。欲殺真人鬥亂眾僧。欲害父母兄弟眷屬。六親憎惡願令其死 |
先聖、諸仏の経法を信ぜず、道を行いて度世を得るべきことを信ぜず、死後に、神明(じんみょう、霊魂)更に生まるることを信ぜず、善を作せば善を得、悪を為せば悪を得ることを信ぜず。真人(しんにん、阿羅漢)を殺し、衆僧(しゅそう、教団)と闘乱し、父母、兄弟、眷属を害せんことを欲すれば、六親も憎悪して、それをして死せしむることを願う。 |
先聖と諸仏の経法を、信じず、 道を行って度世(どせ、世を渡る)を得ることを、信じず、 死後に神明(じんみょう、霊魂)が再び生まれることを、信じず、 善を作せば善を得て、 悪を為せば悪を得ることを、 信じないので、 真人(しんにん、阿羅漢)を、殺して、 衆僧と、闘乱することを、欲し、 父母、兄弟、眷属を、害することを、欲するようになり、 六親は、それを憎悪して、 その人を、死なせて欲しいと願う。 |
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如是世人心意俱然。愚癡曚昧。而自以智慧。不知生所從來死所趣向 |
かくの如く、世人の心意は、倶に然り、愚癡蒙昧なれば、自ら智慧を以って、生まれては従って来る所、死しては趣き向う所を知らず。 |
このように、 世の人の心意は、皆同じである、 愚癡蒙昧(ぐちもうまい、正法を知らず愚かなこと)であるので、 自らの智慧では、 生まれるとき、何所から来たのか、 死ぬときは、何所へ趣き向うのかを、知らない。 |
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不仁不順。逆惡天地。而於其中。悕望僥倖。欲求長生。會當歸死 |
(下に)仁(にん、慈しみ)ならず、(上に)順(じゅん、従順)ならず、天地に逆悪(ぎゃくあく、道理にもとる)し、その中に於いて、僥倖(ぎょうこう、思いがけない幸い)を悕望(けもう、希望)し、長く生きんことを求めんと欲すれども、会(かなら)ず、まさに死に帰すべし。 |
下の者に、仁(にん、慈愛)でなく、 上の者に、順(じゅん、従順)でなく、 天地の道理に、逆悪(ぎゃくあく、道理に逆らい道理を悪む)し、 そのような生活の中で、 僥倖(ぎょうこう、思いがけない幸い)を願って望み、 長く生きることを求めようとするが、 必ず、いつかは 死ななければならない。 |
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慈心教誨令其念善。開示生死善惡之趣自然有是。而不信之 |
慈心は教え誨(さと)して、それをして善を念わしめんとし、生死と善悪の趣(みち)は自然にこれ有りと開き示せども、これを信ぜず。 |
慈心を興して、教え諭し、それに、 善を念わせようとして、 生死、善悪の道は、 自然に有ることを、開き示すが、 これを 信じようとしない。 |
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苦心與語無益其人。心中閉塞意不開解 |
苦心(ねんごろ、心をくだいて)に与(とも)に語れども、その人に益無く、心中は閉塞して、意は開き解けず。 |
苦心(ねんごろ、心をくだいて)に、共に語るが、その人を、 益することは無く、 その人の、 心中は、閉じ塞がって、 意は、開き解けない。 |
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大命將終悔懼交至。不豫修善。臨窮方悔。悔之於後將何及乎 |
大(おお、盛んな)いなる命、まさに終らんとして、悔いと懼(おそ)れ交(こもご)も至り、予(あらかじ)め善を修めざれば、窮するに臨んで、まさに悔ゆ。 後に於いてこれを悔ゆとも、将(もっ)て何ぞ及ばん。 |
盛んであった命が、終ろうとする時、 悔いと懼(おそ)れとが、代る代る至るが、 しかし、 予(あらかじ)め、善を修めていない。 命が終ろうとする時になって、 初めて、悔いる、 後に、これを悔いたとて、 何が、及ぶというか。 |
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天地之間五道分明。恢廓窈冥浩浩茫茫善惡報應禍福相承。身自當之無誰代者。數之自然 |
天地の間には、五道分明(ふんみょう、はっきり区別する)なり。 恢廓(かいかく、広大)窈冥(ようみょう、薄暗い)、浩浩(こうこう、広大)茫茫(もうもう、果てしなく広い)として、善悪の報は応(こた)え、禍福は相い承く。 身は自らこれに当りて、誰も代る者無し。 数(すう、理)の自然なり。 |
天地の間は、 五道(ごどう、地獄、餓鬼、畜生、人間、天上)が、明了に区別され、 がらんとして広くて、薄暗く、 海のように広々として、果てしないが、 善悪の報は、必ず応(こた)え、 禍福を、受けるのである。 身は、 自ら、これに当たり、 誰も、代る者は無い。
これが、 数(すう、道理)の自然である。 |
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殃咎追命無得縱捨。善人行善從樂入樂從明入明。惡人行惡從苦入苦從冥入冥 |
殃咎(おうく、罪咎)は命を追って、縦(ほしいまま)に捨てることを得ること無し。 善人は善を行い、楽より楽に入り、明より明に入る。 悪人は悪を行い、苦より苦に入り、冥より冥に入る。 |
殃咎(おうく、罪咎)は、 命を、追い、 自由に、捨て去ることはできない。
善人は善を行い、楽より楽に入り、明より明に入る、 悪人は悪を行い、苦より苦に入り、冥より冥に入る。 |
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誰能知者獨佛知耳。教語開示信用者少。生死不休惡道不絕。如是世人難可具盡 |
誰かよく知る者あらん、独り仏知るのみなり。 教え語り開き示せど、信じ用うる者は少なし。 生死は休まず、悪道も絶えず。 かくの如き世人は具に(説き)尽くすべきこと難し。 |
誰に知ることができよう、ただ 仏のみが知るのである、 道理を教え、 法を語り、 道を開き、 このようにせよと示すが、信じ用いる者は少なく、 その為に、 生死は休みなく繰り返して、 悪道(あくどう、地獄、餓鬼、畜生)も絶えない。
このような、 世の人を、具に尽く、 説くことは難しい。 |
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故有自然三塗無量苦惱。展轉其中。世世累劫無有出期。難得解脫痛不可言。是為五大惡五痛五燒。勤苦如是。譬如大火焚燒人身 |
故に、自然に三塗の無量の苦悩有りて、その中に展転し、世世に劫を累ねて出づる期の有ること無く、解脱を得難く、痛みは言うべからず。 これを五の大悪、五の痛、五の焼と為す。 勤苦することかくの如く、譬えば、大火に人身を焚焼するが如し。 |
故に、自然にできた、 三塗には、無量の苦悩が有るのである。 その中を、展転として、 世世に、劫を累(かさ)ねても、 出ることは、期待できず、 解脱も、得難く その痛みは、 言いようもない。
これを、 五の大悪、五の痛、五の焼といい、 その勤苦(ごんく、苦労)は、このように 譬えば、 大火が興って、人身を焚焼するようである。 |
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人能於中一心制意。端身正念。言行相副所作至誠。所語如語心口不轉。獨作諸善不為眾惡者。身獨度脫。獲其福德度世上天泥洹之道。是為五大善也 |
人、よく中に於いて、一心に意を制して、身を端し念いを正して、言うことと行いと相い副(そ)い、作す所は誠(まこと、真心のままに実現する)に至り、語る所は語るが如く、心と口と転じず、独り諸の善を作し、衆の悪を為さずんば、身は独り度脱して、その福徳、度世、上天、泥洹の道を獲ん。 これを五の大善と為す。 |
人が、立派に、苦しみの中で、 一心に、意を制して、身を端し、行いを正し、 言葉と行いと相い副い、 作す所は、誠(まこと、真心より行う)に至り、 語る言葉のように、行い、 心と口とを、転じず 独り、 諸の善を為し、諸の悪を為さなければ、 身は、独り、 苦しみを、度脱(どだつ、渡り脱がれる)して、 その福徳と、度世と、上天(じょうてん、天に上る)と、泥洹の道を、 獲(う)るだろう。 これを 五の大善という。 |
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佛告彌勒。吾語汝等是世五惡勤苦若此。五痛五燒展轉相生。但作眾惡不修善本。皆悉自然入諸惡趣 |
仏、弥勒に告げたまわく、吾、汝等に、この世の五悪を語りぬ。 (人々)勤苦することかくの如し、五痛五焼は展転して相い生じ、ただ衆の悪を作して、善本を修めず、皆悉く、自然に諸の悪趣に入るなり。 |
仏は、弥勒に教えられた、―― 私は、お前たちに、 これが、世の五つの悪であると語った。 勤苦(ごんく、苦労)は、このような五つの痛、五つの焼があり、 この中に、 展転として、生まれながら、 ただ、 衆の悪を作すのみで、 善本を修めないのであれば、 皆、悉く 自然に、諸の悪趣に入るのである。 |
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或其今世先被殃病。求死不得求生不得。罪惡所招示眾見之 |
或は、その今世には、先ず、殃(つみ、天罰)の病を被り、死を求めて得ず、生を求めて得ざるは、罪悪の招く所にして衆に示して、これを見(あらわ)す。 |
或は、私は、 今世には先ず、先の世の罪の、病を被(こうむ)り、 死を、求めても得られず、 生を、求めても得られないのは、罪悪の招く所であると、 衆に示して顕わした。 |
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身死隨行入三惡道。苦毒無量自相燋然。至其久後共作怨結 |
身死して行いに随うて三悪道に入らば、苦の毒、無量にして、自ら相い燋然(しょうねん、燃え焦げる)す。その久しき後に至りて(人間に生じ)、共に怨みと作りて結ぶ。 |
身が死んで、生前の行いに随って三悪道に入れば、 苦の毒は、無量であり、 自ら、燃え焦げてしまう。 その後、 永い時間が過ぎて、 人間に生れれば、 共に、敵どうしと作って、結ばれる。 |
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從小微起遂成大惡。皆由貪著財色不能施慧 |
小さく微かなるより起りて、遂に大悪と成るは、皆、財色を貪り著して、施し恵むこと能わざるに由る。 |
小さく微かなことより、起って、 遂に、大悪と成るのは、皆、 財色に、貪著して、 施し恵むことができないからである。
注:慧は他本に従い、恵に改める。 |
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癡欲所迫隨心思想。煩惱結縛無有解已 |
癡と欲とに迫られて、心の随(まま)に思想し、煩悩は結縛して、解けおわることの有ること無し。 |
癡(ち、正道を知らない愚かさ)と欲とに、迫られ、 心のままに、考えていては、 煩悩に、結ばれ縛られて、 解けおわる時が無い。 |
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厚己諍利無所省錄。富貴榮華當時快意。不能忍辱不務修善。威勢無幾隨以磨滅。身坐勞苦久後大劇 |
己に厚く、利を諍いて、省録(しょうろく、反省して記録する)する所無く、富貴栄華は、時に当りて意を快くし、忍辱(にんにく、忍耐)すること能わず、務めて善を修めざれば、威勢は幾(いくばく)も無く、随って以って磨滅す。 身は労苦に坐して、久しき後には大いに劇(はげ)し。 |
己に、厚くして、 利を、諍い、 反省して、心に記録することが無く、 富貴栄華である時には、意を快くして、 忍辱(にんにく、忍耐)することができず、 善を修めることに、務めないのであれば、 威勢は、やがて磨滅して、 身が、苦労しても何もできず、 後になって、 大いに劇(はげ)しくなる。 |
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天道施張自然糾舉。綱紀羅網上下相應。煢煢忪忪當入其中。古今有是痛哉可傷 |
天道は施張(せちょう、網を張る)して、自然に糾挙(きゅうこ、糾弾)し、綱紀(こうき、大小の綱)羅網(らもう、あみ)は上下相い応じ、煢煢(けいけい、ひとりぼっちで)忪忪(しゅしゅ、びくびくする)として、まさにその中に入るべし。 古今にこれ有り、痛ましいかな、傷むべし。 |
天の道は、罪人を捕らえる網を張り、 自然は、これを糾弾し、 大小の網は、上の者にも、下の者にも応ずるのであるから、 煢煢(けいけい、ひとりぼっちで)と、 忪忪(しゅしゅ、びくびくする)として、 その中に入らなくてはならない。
古今に、是は有り変わることはない、 痛ましいことであり、心の傷むことである。 |
仏の勅令
佛語彌勒。世間如是佛皆哀之。以威神力摧滅眾惡。悉令就善棄捐所思。奉持經戒受行道法無所違失。終得度世泥洹之道 |
仏、弥勒に語りたまわく、『世間は、かくの如し。 仏は、皆、これを哀れみ、威神力を以って衆の悪を摧き滅ぼして、悉く善に就かしめ、思う所を棄て捐(さ)らしむ。 教戒を奉持し、道の法を受け行い、違い失う所無くんば、終(つい)に世を度り泥洹の道を得ん。 |
仏は、弥勒に語られた、―― 世間とは、このようである。 仏は、皆、 これを哀れんで、威神力で、 衆の悪を、摧き滅ぼし、 悉く、善に就かせ、 悪を思う心を、捨て去らせようとしている。
世間の人は、 教えと戒めとを、奉持して、 道に適う法を、受けて行い、 間違いと過失が無ければ、 終には、 世を渡って、 泥洹の道を得るであろう。 |
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佛言。汝今諸天人民及後世人。得佛經語當熟思之。能於其中端心正行 |
仏言わく、『汝、今の諸天、人民、および後世の人、仏の経語を得て、まさに熟(つぶさ)に、これを思い、よくその中に於いて、心を端し行いを正すべし。 |
仏が言われた、―― お前と、今の諸天、人民、および後世の人は、 仏の経語を得て、よく考え、 その中で、 心を、端し、 行いを、正さなければならない。 |
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主上為善率化其下。轉相敕令各自端守。尊聖敬善仁慈博愛。佛語教誨無敢虧負 |
主上は善を為して、その下を率い化(け、教化)して、転た相い勅令(ちょくりょう、誡める)し、各、自ら端しく守り、聖を尊び善を敬い、仁慈(にんじ、慈しみ恵む)し博愛(はくあい、広く慈しむ)して、仏語教誨を敢て虧負(きふ、損ない背く)すること無かれ。 |
主上(しゅじょう、君主)は、 自ら、善を作して、 下の者を、将(ひき)いて教え導き、 次々と、 互いに、誡め合い、 各自ら、端しく守り、 聖者を、尊び、 善人を、敬い、 仁慈(にんじ、慈しみ恵み深い)して、 博愛(はくあい、広く慈しむ)し、 仏の言葉と、教誨とを、 故意に、損ない背いてはならない。 |
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當求度世拔斷生死眾惡之本。永離三塗無量憂畏苦痛之道 |
まさに度世を求めて、生死、衆の悪の本を抜き断ち、永く三塗の無量の憂い畏れ、苦痛の道を離るべし。 |
世を、渡り、 生死と、衆の悪の本を、抜いて断ち切り、 永久に、 三塗(さんづ、地獄、餓鬼、畜生)の無量の憂いと畏れ、苦痛の道を 離れなければならない。 |
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汝等於是廣殖德本。布恩施慧勿犯道禁。忍辱精進一心智慧。轉相教化。為德立善 |
汝等、ここに於いて、広く徳本(とくほん、徳の本、六波羅蜜)を殖えよ。 恩を布き慧を施して、道禁(どうきん、禁戒)を犯すことなく、忍辱、精進、一心、智慧をもって、転た相い教化し、徳の為に善を立てよ。 |
お前たちは、 この場に於いて、 広く、徳本(とくほん、衆生を救う力の本、六波羅蜜)を殖えよ。 恩を布いて、智慧を施し、 (布施波羅蜜) 道禁(どうきん、戒律)を犯さず、 (持戒波羅蜜) 忍辱(にんにく、堪え忍ぶ)し、 (忍辱波羅蜜) 精進(しょうじん、怠けない)し、 (精進波羅蜜) 一心(いっしん、気を散らさない)に、 (禅定波羅蜜) 智慧(ちえ、方便を生み出す)して、 (般若波羅蜜) 次々と、 互いに、教化し合い、 徳の為に、善を積み立てよ。 |
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正心正意。齋戒清淨一日一夜。勝在無量壽國為善百歲 |
心を正し意を正し、斎戒(さいかい、八戒斎)して清浄なること一日一夜なれば、無量寿国に在りて善を為すこと百歳に勝る。 |
心を、正し、 意を、正し、 斎戒(さいかい、身を浄めて汚さないこと)して、 清浄に一日一夜を、過ごすならば、 それは、 無量寿国に在って、 百年の間、善を為すのに勝る。
八戒斎(はっかいさい):心の不浄を清めることを齋、身の過失非道を禁じることを戒という。 在家の信者が月ごとに幾日か日を決めて身を潔斎する。次の1~8を戒、9を齋という。 (1)不殺:生き物を殺さない。 (2)不盗:与えられない物を取らない。 (3)不婬:婬事をしない。 (4)不妄語:嘘をつかない。他の生き物を脅す粗暴の言葉を吐かない。 (5)不飲酒:酒を飲まない。 (6)身不塗飾香鬘:身に香を塗ったり、飾りを着けたりしない。 (7)不自歌舞、又不観聴歌舞:歌舞音曲を慎む。 (8)於高広之床座不眠坐:高広の大床に坐らない。 (9)不過中食:昼過ぎに食事をしない。 |
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所以者何。彼佛國土無為自然。皆積眾善無毛髮之惡。於此修善十日十夜。勝於他方諸佛國中為善千歲 |
所以は何んとなれば、彼の仏の国土は、無為(むい、人の妄念によらない真実界)の自然にして、皆、衆の善を積み、毛髪ばかりの悪も無ければなり。 ここに於いて、善を修むること十日十夜なるは、他方の諸仏の国の中に於いて、善を為すこと千歳に勝る。 |
何故ならば、 彼の仏の国土は、 無為(むい、人の妄念によらない真実の世界)の自然であり、 人民は、皆、 衆の善を、積んで、 髪の毛一筋ほどの悪さえ、犯さないからである。
この世界に於いて、 十日十夜、善を修めることは、 他方の諸仏の国土に於いて、 千年の間、善を為すに、勝る。 |
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所以者何。他方佛國為善者多為惡者少。福德自然無造惡之地 |
所以は何んとなれば、他方の仏国には善を為す者多く、悪を為す者は少なく、福徳は自然にして、悪を造ること無きの地なればなり。 |
何故ならば、 他方の仏国には、 善を為す者は、多く、 悪を為す者は、少なく、 福徳は、自然のことであり、 悪を造ることが、無い地だからである。 |
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唯此間多惡無有自然。勤苦求欲轉相欺殆。心勞形困飲苦食毒。如是匆務未嘗寧息 |
ただ、この間のみ、多悪にして自然有ること無く、勤苦して求め欲して、転た相い欺殆(ごたい、あざむく)し、心は労(つか)れ形(かたち、肉体)は困(くる)しみ、苦を飲み毒を食う、かくの如く匆務(そうむ、慌ただしく世事を務める)して、未だかつて寧息(にょうそく、休息)せず。 |
ただ、この世間のみが、 悪が、多く、 自然が、無く、 勤苦(ごんく、苦労)して、求め欲し、 次々と、互いに、欺き合い、 心は、疲労し、 形(かたち、肉体)は、困苦し、 苦を飲んで、毒を食う、 このようにして、 慌ただしく、世事を務めて、 未だ、かつて休むことがない。 |
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吾哀汝等天人之類。苦心誨喻教令修善。隨器開導授與經法。莫不承用。在意所願皆令得道 |
吾、汝等天人の類を哀れみ、苦心(ねんごろ)に誨喩(けゆ、教え諭す)して教え、善を修めしむ。 器に随いて開導し、経法を授与すれば、承け用いざることなかれ。 意に在りて願う所は、皆、道を得しめん。 |
私は、お前たち、天、人の類を哀れんで、 苦心(ねんごろ、心をくだく)に、誨喩(けゆ、教え諭す)し教えて、 善を、修めさせ、 器(うつわ、器量)に随って、 道を、開き導いて、 経法を、授け与えた。 お前たちは、 これを承けて用いよ。 お前たちの、 意に在る願いは、皆、 道を、得させよう。 |
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佛所遊履。國邑丘聚。靡不蒙化。天下和順。日月清明。風雨以時。災厲不起。國豐民安。兵戈無用。崇德興仁。務修禮讓 |
仏の遊履(ゆり、遊び歩く)する所の、国、邑(むら)、丘聚(くじゅ)は、化を蒙らざることなく、天下は和順(わじゅん、太平)し、日月は清明、風雨は時を以ってし、災厲(さいれい、天災と疫病)起らず、国は豊かに民は安んじ、兵戈(ひょうが、兵隊と武器)用無く、徳を崇めて仁を興し、務めて礼譲(らいじょう、礼儀)を修む。 |
仏に、遊び履まれた、 国、邑(おう、村落)、丘聚(くじゅ、丘の集まり)は、 化(け、導き)を、蒙らないものは無く、 天下は、和順(わじゅん、太平)し、 日月は、清明、 風雨は、ちょうど良い時に有り、 災厲(さいれい、天災と疫病)は、起らず、 国は、豊かに、 民は、安んじ、 兵戈(ひょうが、兵隊と武器)は、用無く、 徳を、崇(あが)めて、 仁(にん、慈しみの心)を、興し、 務めて、礼譲(らいじょう、礼儀)を修める。 |
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佛言。我哀愍汝等諸天人民。甚於父母念子。今吾於此世作佛。降化五惡消除五痛。絕滅五燒。以善攻惡。拔生死之苦。令獲五德昇無為之安 |
仏言わく、『我、汝等、諸天、人民を哀愍すること、父母の子を念うより甚だし。 今、吾、この世に於いて、仏と作り、五悪を降化して、五痛を消除し、五焼を絶滅し、善を以って悪を攻め、生死の苦を抜いて、五徳を獲さしめ、無為の安きに昇らしめたり。 |
仏は言われた、―― 私が、 お前たち、諸天、人民を哀れむことは、 父母が、子を念うよりも、甚だしい。
今、私は、この世で、 仏と、作り、 五悪を降して、善に化し、 五痛を、消し除き、 五焼を、絶滅し、 善の軍勢で、悪を攻め、 生死の苦を、抜き、 五徳(ごとく、五善を修めて得る徳)を、獲得させて、 無為(むい、自然)の安楽に、昇らせた。 |
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吾去世後經道漸滅。人民諂偽復為眾惡。五燒五痛還如前法。久後轉劇不可悉說。我但為汝略言之耳 |
吾、世を去りての後、経道ようやく滅び、人民、諂い偽りて、また衆の悪を為し、五焼五痛もまた前の法の如く、久しき後に、転た劇しきこと、悉くは説くべからず。 我は、ただ汝が為に、略してこれを言うのみ。 |
しかし、 私が、世を去っての後には、 経も道も、徐々に滅びて、 人民は、 諂(へつら)って偽り、 再び、衆の悪を為し、 五痛、五焼も、以前通りになり、 永い時間が過ぎて、 だんだん劇しくなるだろう。 これを、 悉くは、説けないが、 ただ、お前の為に、略して言うのである。 |
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佛告彌勒。汝等各善思之。轉相教誡如佛經法無得犯也 |
仏、弥勒に告げたまわく、『汝等、各、善くこれを思いて、転た相い教誨し、仏の経法の如きは、犯し得ること無かれ。』と。 |
仏は、弥勒に教えられた、―― お前たちは、各、 善く、これを思い、 次々と、互いに教誨し合い、 仏の経法などを、決して犯してはならない。 |
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於是彌勒菩薩合掌白言。佛所說甚善世人實爾。如來普慈哀愍。悉令度脫。受佛重誨不敢違失 |
ここに於いて、弥勒菩薩は合掌し、白して言さく、『仏の説きたもう所は、甚だ善く、世人は実に爾り。 如来は、普く慈しみ哀愍して、悉く度脱せしめたまえり。 仏の重ねての誨(おしえ)を受け、敢て違失せじ。』と。 |
この時、 弥勒菩薩は、合掌して申した、 『仏の、お説きになられましたことは、 甚だ、結構でございました、 世間の人は、実にその通りでございます。 如来は、 普く、一切を慈しみ、哀れんで、 悉くを、度脱(どだつ、済度解脱)させられました。 仏の、重ねての誨(おしえ)を 受けましたので、 敢(あ、故意に)えて、違い過つことはございません。 |
阿難、無量寿仏とその国土を見る
佛告阿難。汝起更整衣服合掌恭敬。禮無量壽佛。十方國土諸佛如來。常共稱揚讚歎彼佛無著無閡 |
仏、阿難に告げたまわく、『汝、起(た)ちて、更に衣服を整え、合掌し恭敬して、無量寿仏を礼せよ。 十方の国土の諸仏如来も、常に共に、彼の仏の著すること無く、礙ること無きを称揚し讃歎すればなり。』と。 |
仏は、阿難に教えられた、 『お前は、 起って、 更(あらた)めて、衣服を整え、 掌を合わせて、恭敬(くぎょう、謙譲と敬いの心を起す)し、 無量寿仏に、礼をせよ。
十方の国土の諸仏も、常に共に、 彼の仏の心に、 執著が、無く、 礙りが、無いことを、 称揚し讃歎しているのだ。』と。 |
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於是阿難起整衣服。正身西向。恭敬合掌五體投地。禮無量壽佛。白言世尊。願見彼佛安樂國土及諸菩薩聲聞大眾 |
ここに於いて、阿難、起ちて衣服を整え、身を正して西に向け、恭敬し合掌して、五体を地に投げ、無量寿仏を礼して、白して言さく、『世尊、願わくは、彼の仏の安楽国土、および諸の菩薩声聞の大衆に見(まみ)えん。』と。 |
この時、 阿難は、 起って、衣服を整え、 身を正して、西に向かい、 恭敬し、合掌して、 五体(ごたい、両手、両足、頭)を、地に投げて、 無量寿仏に、礼し、 仏に、申した、 『願わくは、 彼の仏の安楽の国土、および 諸の菩薩、声聞の大衆に、 お会いしたいものです。』と。 |
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說是語已。即時無量壽佛。放大光明。普照一切諸佛世界。金剛圍山。須彌山王。大小諸山。一切所有皆同一色。譬如劫水彌滿世界。其中萬物沈沒不現。滉瀁浩汗唯見大水。彼佛光明亦復如是。聲聞菩薩一切光明皆悉隱蔽。唯見佛光明耀顯赫 |
この語を説きおわるや、即時に、無量寿仏は、大光明を放ちて、普く一切の諸仏の世界を照らしたまえば、金剛囲山(こんごういせん)、須弥山王、大小の諸山、一切の所有(あらゆ)る、皆、同じく一色となり、譬えば、劫水(こうすい、劫の滅ぶときに出る大水)、世界を弥満(みまん、大水で一面が満たされる)して、その中に万物は沈没して現れず、滉瀁(こうよう、水の深く広いさま)、浩汗(こうかん、広々としたさま)として、ただ大水を見るのみなるが如し。 彼の仏の光明も、またまたかくの如し。 声聞菩薩の一切の光明も、皆、悉く隠蔽され、ただ仏の光のみ、明らかに耀いて顕赫(けんかく、明らかに耀く)たるを見る。 |
阿難が、こう言いおわると、即時に 無量寿仏は、 大光明を、放って、 普く、一切の諸仏の世界を照らした。
金剛囲山(こんごういせん、須弥山を取り巻く八重の連山)、 須弥山王(しゅみせんおう、世界の中心にそびえる高山)、 大小の諸山など一切のものが、皆、 同じく、一色に成り、 譬えば、 劫水(こうすい、劫の滅ぶときに出る大水)が、 世界を、弥満(みまん、水が一面に満ちること)して、 その中に、 万物は、沈没して現れず、 滉瀁(こうよう、水が深く広いさま)とし、 浩汗(こうかん、広々としたさま)として、 ただ、 大水のみが、見えるようであった。
彼の仏の身の回りの光明も、またこのようであったので、 声聞、菩薩たち一切の光明は、皆悉く、隠蔽され、 ただ、 仏の光のみが、 明らかに、耀いて、 顕らかに、赤赤としていた。 |
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爾時阿難即見無量壽佛。威德巍巍如須彌山王。高出一切諸世界上。相好光明靡不照耀。此會四眾一時悉見。彼見此土亦復如是 |
その時、阿難、即ち無量寿仏を見るに、威徳は巍巍として、須弥山王の高くして、一切の諸の世界の上に出づるが如く、相好と光明は照耀(しょうよう、照らし耀かす)せざるなく、この会の四衆も、一時に、悉く見ゆ。 彼の、この土を見ることも、またまたかくの如し。 |
その時、 阿難は見た、 無量寿仏の、 威徳は、 巍巍(ぎぎ、高山のようなさま)として、 須弥山王のように、 高く、一切の諸の世界の上に、そびえ立ち、 相好と光明とが、 照らして、耀かさないものは無いことを。 また、 この無量寿仏の会の、 四衆(ししゅ、比丘、比丘尼、優婆塞、優婆夷)をも、 一時に悉くを、見ることができた。 彼等も、また同じように この土を、見たのである。 |
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爾時佛告阿難及慈氏菩薩。汝見彼國。從地已上至淨居天。其中所有微妙嚴淨。自然之物為悉見不 |
その時、仏、阿難、および慈氏(じし、弥勒)菩薩に告げたまわく、『汝、彼の国の、地より已上(いじょう、以上)、淨居(じょうご、色界の最上天)天に至るまで、その中の所有(あらゆ)る微妙の厳浄と、自然の物を見て、悉く見たりと為すや不や。』と。 |
その時、 仏は、阿難および慈氏(じし、弥勒)菩薩に教えられた、 『お前たちは、 彼の国の地上より、淨居天に至るまで、 その中の、あらゆる、 微妙な、厳浄(ごんじょう、厳かで浄らかな様子)と、 自然の、物とを、見て、 悉くを、見たと思うか、何うか?』と。 |
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阿難對曰。唯然已見 |
阿難、対(こた)えて曰く、『唯(ゆい、はい)然り、すでに見たり。』 |
阿難が答えた、 『はいその通りです。 よく見ました。』 |
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汝寧復聞無量壽佛大音宣布一切世界化眾生不。阿難對曰。唯然已聞 |
『汝は、寧(むし)ろ、また無量寿仏の大音、一切の世界に宣べ布いて、衆生を化するを聞くや不や。』。 阿難、対えて曰く、『唯然り、已に聞きたり。』 |
『お前は、またよく、 無量寿仏の大音が、 一切の世界に、宣べ布かれて、 衆生を、化するのを 聞いたと思うか、何うか?』 阿難は答えた、 『はい、その通りです。 よく聞きました。』 |
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彼國人民。乘百千由旬七寶宮殿無所障閡。遍至十方供養諸佛。汝復見不。對曰已見 |
『彼の国の人民、百千由旬(ゆじゅん、凡そ10キロメートル)の七宝の宮殿に乗りて、障碍する所無く、遍く十方に至りて諸仏を供養するを、汝はまた見しや不や。』。 阿難、対えて曰く、『すでに見たり。』 |
『彼の国の人民は、 百千由旬(ゆじゅん、10キロメートル)の七宝の宮殿に乗って、差し障りなく、 遍く、十方に至って、諸仏を供養するのを、 お前は、また見たか、何うか?』 答えた、 『よく見ました。』 |
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彼國人民有胎生者。汝復見不。對曰已見 |
彼の国の人民に、胎生の者の有り。 汝は、また見しや不や。』。 対えて曰く、『すでに見たり。』と。 |
『彼の国の人民には、 胎生(たいしょう、母胎より出生する)の者が有るのを、 お前は、また見たか、何うか?』 答えた、 『よく見ました。』と。 |
弥勒、胎生の因縁を訊ねる
其胎生者所處宮殿。或百由旬或五百由旬。各於其中受諸快樂。如忉利天亦皆自然 |
それ、胎生者の処する所の宮殿は、或は百由旬、或は五百由旬、各、その中に於いて、諸の快楽を受けて、忉利天の如く、また皆、自然なり。 |
その胎生の者は、 住居する宮殿が、 或は、百由旬(ゆじゅん、10キロメートル)、 或は、五百由旬であり、 各、その中で、 諸の快楽を受けて、 忉利天(とうりてん、欲界の第二天、須弥山の頂に在る)のようである。 また、皆 自然(じねん、人為でないこと)である。
注:無量寿経では、しばしば自然であることが言われるが、これは注意すべきことである。 |
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爾時慈氏菩薩白佛言。世尊。何因何緣。彼國人民胎生化生 |
その時、慈氏菩薩、仏に白して言さく、『世尊、何なる因、何なる縁にて、彼の国の人民、胎生し化生する?』 |
その時、 慈氏菩薩は、仏に申した、 『世尊、何の因、何の縁で、 彼の国の人民は、 胎生し、 化生するのですか?』 |
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佛告慈氏。若有眾生。以疑惑心修諸功德。願生彼國。不了佛智。不思議智。不可稱智。大乘廣智。無等無倫最上勝智。於此諸智疑惑不信。然猶信罪福修習善本。願生其國 |
仏、慈氏に告げたまわく、『もし、ある衆生、疑惑の心を以って、諸の功徳を修め、彼の国に生まれんと願うならば、仏智、不思議智、不可称智、大乗広智、無等無倫最上勝智を了(さと)らず、この諸の智に於いて疑惑し信ぜざれども、然も、なお罪福を信じて善本を修習し、その国に生まれんことを願うならば、 |
仏は、慈氏に教えられた、―― もし、この国の、ある衆生が、 疑惑の心で、 諸の功徳を修め、 彼の国に、生まれたいと願うならば、 すなわち、 仏智(ぶっち、仏の智慧)、 不思議智(ふしぎち、仏の不思議な智慧)、 不可称智(ふかしょうち、仏の称(はか)ることのできない智慧)、 大乗広智(だいじょうこうち、仏の大乗の広い智慧)、 無等無倫最上勝智(むとうむりんしじょうしょうち、仏の並ぶ者の無い最上の勝れた智慧)を、 理解できなくて、 疑惑して、信じない、 しかし、それでもなお、 罪福を信じ、善本を修めて その国に、生まれたいと願うならば、
注:諸智とはいうが、仏の智慧は、ただ一つであり、これ等の智慧の名は単なる誉め言葉である。 |
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此諸眾生生彼宮殿。壽五百歲。常不見佛不聞經法。不見菩薩聲聞聖眾。是故於彼國土。謂之胎生 |
この諸の衆生は、彼の宮殿に生まれ、寿(よわい)五百歳になるまでは、常に、仏に見えず、経法を聞かず、菩薩声聞の聖衆に見えざるなり。 この故に、彼の国土に於いて、これを胎生と謂う。 |
この諸の衆生は、 彼の宮殿に、生まれて、 五百歳に成るまでは、常に、 仏を、見ず、 経法を、聞かず、 菩薩声聞の聖聚を、見ることは無い。 この故に、 彼の国土では、 これを、胎生と謂うのである。
注:胎生の者とはいうが、ただ宮殿を母胎に見立てるから胎生といっているのであって、実際に母胎から生まれるのではないので、これもまた化生である。 |
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若有眾生。明信佛智乃至勝智。作諸功德信心迴向。此諸眾生於七寶華中自然化生加趺而坐。須臾之頃。身相光明智慧功德。如諸菩薩具足成就 |
もし、ある衆生、仏智、乃ち勝智に至るまでを明らかに信じて、諸の功徳を作し、信心を廻向(えこう、振り向ける)すれば、この諸の衆生、七宝の華中に於いて、自然に化生し、跏趺(かふ、足を組む)して坐し、須臾(しゅゆ、少しの時間)の頃に、身相、光明、智慧、功徳は、諸の菩薩の如くに具足して成就す。 |
もし、 ある衆生が、 仏智、ないし勝智を 明らかに理解して、信じ、 諸の功徳(くどく、衆生を利益する力、善行)を、作し 信心(しんじん、信ずる心)を、振り向ければ、 この諸の衆生は、 七宝の華の中で、 自然に、化生し、 跏趺(かふ、足を組む)して、坐し、 須臾(しゅゆ、暫くの間)の頃に、 身相(しんそう、身体のありさま)、 光明、 智慧、 功徳は、 諸の菩薩と同じように、 具足して成就している。 |
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復次慈氏。他方諸大菩薩。發心欲見無量壽佛。恭敬供養及諸菩薩聲聞之眾。彼菩薩等。命終得生無量壽國。於七寶華中自然化生。彌勒當知。彼化生者智慧勝故 |
また次ぎに、慈氏、他方の諸の大菩薩、心を発して無量寿仏に見え、恭敬し供養すること諸の菩薩声聞の衆にまで及ばんと欲せば、彼の菩薩等、命終りて、無量寿国に生まるるを得、七宝の華中に於いて自然に化生す。 弥勒、まさに知るべし、彼の化生の者の、智慧勝るるが故なり。 |
また次ぎに、慈氏、 他方の諸の大菩薩が、 心(こころ、理想の国土を建設したいと思う心、菩提心)を、発(おこ)して、 無量寿仏を、見て、 (その無量寿仏の国の)諸の菩薩声聞に及ぶまで、 恭敬し供養したいと、欲するならば、 彼の(他方の)菩薩たちは、 命が終って、 無量寿国に、生まれることができ、 七宝の華の中で、 自然に、化生するのである。
弥勒、これは、 彼の化生の者は、智慧が勝れているが故であると、 知らなくてはならない。
注:菩薩は、自らの国土を建設することを願い、その手本を一目見ようとして、往生する。 注:化生には実体が無いという意味もあると想起することは重要である。 |
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其胎生者皆無智慧。於五百歲中。常不見佛不聞經法。不見菩薩諸聲聞眾。無由供養於佛。不知菩薩法式。不得修習功德。當知此人。宿世之時。無有智慧疑惑所致 |
それ、胎生の者は、皆、智慧無く、五百歳の中に於いて、常に仏に見えず、経法を聞かず、菩薩と諸の声聞衆に見えず、仏に供養せんに由無く、菩薩の法式(ほっしき、作法儀式)を知らず、功徳を修習するを得ず。 まさに知るべし、この人は、宿世の時に、智慧有ること無く、疑惑の致す所なり。 |
その胎生の者は、皆、 智慧が、無く、 五百歳に成るまでは、常に、 仏を、見ず、 経法を、聞かず、 菩薩、諸の声聞衆を、見ず、 仏を供養する、由(よし、機会と方法)が無く、 菩薩の法式(ほっしき、作法儀式)を、知らず、 功徳を、修習することができない。
この人は、 宿世(しゅくせ、前世)の時に、 智慧が、無く、 仏の智慧を、 疑惑した為に、こうなったのである。 |
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佛告彌勒。譬如轉輪聖王別有宮室七寶莊飾。張設床帳懸諸繒幡。若有諸小王子。得罪於王輒內彼宮中。繫以金鎖。供給飲食衣服床蓐華香伎樂。如轉輪王無所乏少。於意云何。此諸王子寧樂彼處不 |
仏、弥勒に告げたまわく、譬えば、転輪聖王の如きは、別に宮室有りて、七宝荘厳し、床と帳とを張り設けて、諸の繒(きぬ)の幡(はた)を懸く。もし、諸の小王子有りて、王に於いて罪を得て、輒(すなわ、ただちに)ち、彼の宮中に、金鎖を以って繋いで、飲食、衣服、床、褥(しとね)、華香、伎楽を供給し、転輪王の如く乏少(ぼうしょう、欠乏)する所無ければ、意に於いて云何(いかん)、この諸の王子は、寧(むし)ろ彼の処を楽しむや不や。』と。 |
仏は、弥勒に教えられた、―― 譬えば、このようである、 転輪聖王には、 別の宮室が、有り、 七宝で、装飾し、 床と帳(とばり)を、張り設け、 諸の繒(きぬ、絹織物、ベッドの垂れ布)と幡(ばん、旗、帳の垂れ布)とが、 懸かっている。 もし、 諸の小さい王子が、有り、 王より、罰を受けて、 彼の宮中の内に、金の鎖で繋がれ、 飲食、衣服、床、褥、華、香、伎楽を供給され、 転輪聖王のように、 欠乏することが無かったとすると、
これを、 お前は、何う思うか、 この諸の王子たちは、彼の宮中で、 むしろ、楽しんでいるか、何うか? |
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對曰不也。但種種方便。求諸大力欲自勉出 |
対えて曰く、『不なり。 ただ種種に方便して、諸の大力を求め、自ら勉めて出でんと欲するなり。』と。 |
答えて言う、 『いいえ、ただ 種種に方便(ほうべん、手段を尽くす)して、大力の者を求め、 自らも、勉めて出ようと欲します。』と。 |
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佛告彌勒。此諸眾生亦復如是。以疑惑佛智生彼宮殿。無有形罰乃至一念惡事。但於五百歲中不見三寶。不得供養修諸善本。以此為苦。雖有餘樂猶不樂彼處 |
仏、弥勒に告げたまわく、『この諸の衆生も、またまたかくの如し。 仏智を疑惑するを以って、彼の宮殿に生まれ、形罰(ぎょうばつ、刑罰)は、乃ち一念(ねん、瞬間)の悪事に至るまで、有ることは無けれども、ただ五百歳の中に三宝に見えず、供養して諸の善本を修めることを得ざるなり。 これを以って苦と為し、余の楽有りといえども、なお彼の処を楽しまず。 |
仏は、弥勒に教えられた、―― この諸の衆生も、また同じように、 仏の智慧を、疑ったので、 彼の宮殿に、生まれた、 刑罰は、一念(ねん、瞬間)の悪事さえ無いが、 ただ、五百歳に成るまでは、 三宝を見ることが無く、 供養して、諸の善本を修めることができず、 これを、 苦しく思い、 余の楽しみが、有っても、 彼の宮殿を、楽しまないのである。 |
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若此眾生識其本罪。深自悔責求離彼處。即得如意。往詣無量壽佛所。恭敬供養。亦得遍至無量無數諸如來所。修諸功德 |
もし、この衆生、その本の罪を識りて、深く自ら悔い責め、彼の処を離れんことを求むれば、即ち意の如くなることを得て、往きて無量寿仏の所に詣で、恭敬し供養して、また遍く無量無数の諸の如来の所に至り、諸の功徳を修むることを得ん。 |
もし、 この衆生が、 その本である、罪を理解して、 深く自らを、悔んで責め、 彼の宮殿を、離れることを求めるならば、 すぐにも、意のままに、 無量寿仏の所に、 往き詣でて、 恭敬し、供養することができ、 また、 遍く、無量無数の諸仏如来の所に、至り、 諸の功徳を、修行することができるだろう。 |
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彌勒當知。其有菩薩生疑惑者。為失大利是故應當明信諸佛無上智慧 |
弥勒、まさに知るべし。 それ、ある菩薩、疑惑を生ずれば、為に、大利を失わん。 この故に、まさに明らかに諸仏の無上の智慧を信ずべし。』と。 |
弥勒、これを知らなければならない、 ある菩薩が、 疑惑を生じれば、 その為に、大利を失うと。 この故に、必ず 諸仏の無上の智慧を、 明らかに理解して、信じなければならない。』と。 |
菩 薩 往 生 分
他方世界の菩薩、往生す
彌勒菩薩白佛言。世尊。於此世界有幾所不退菩薩。生彼佛國 |
弥勒菩薩、仏に白して言さく、『世尊、この世界に於いて、幾所(いくばく)の不退(ふたい、菩薩の修業を退かない)の菩薩有りてか、彼の仏国に生まれたる。』と。 |
弥勒菩薩は、仏に申した、 『世尊、 この世界では、 幾何(いか)ほどの不退(ふたい、菩薩の修行より退かない)の菩薩が、 彼の仏の国に、生まれているのですか?』と。
不退(ふたい):阿鞞跋致(あびばっち)、菩薩の功徳と善根が益々増進して何度生まれ変わっても菩薩の地位が後退しないこと。 |
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佛告彌勒。於此世界有六十七億不退菩薩。往生彼國。一一菩薩。已曾供養無數諸佛。次如彌勒者也。諸小行菩薩及修習少功德者。不可稱計。皆當往生 |
仏、弥勒に告げたまわく、『この世界に於いては、六十七億の不退の菩薩有りて彼の国に往生す。 一一の菩薩は、すでにかつて無数の諸仏を供養して、弥勒の如きに次ぐ者なり。 諸の小行の菩薩、および少しの功徳を修習せる者は、称計(しょうけ、計り数える)すべからず。 皆、まさに往生すべし。 |
仏は、弥勒に教えられた、―― この世界では、 六十七億の不退の菩薩が、彼の国に往生した、 一一の菩薩は、すでにかつて 無数の諸仏を、供養していて、 弥勒のような者に、次ぐ者である。
諸の小行の菩薩、および少しの功徳を修習した者は、 計り数えることができないほどいるが、 皆、必ず往生するだろう。 |
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佛告彌勒。不但我剎諸菩薩等往生彼國。他方佛土亦復如是 |
仏、弥勒に告げたまわく、『ただ我が刹(くに)の諸の菩薩等のみ、彼の国に往生するにはあらず。 他方の仏土も、またまたかくの如し。 |
仏は、弥勒に教えられた、―― ただ、 我が国の、諸の菩薩たちのみが、 彼の国に、往生するのではない。 他方の仏土の、 諸の菩薩も、また同じように 往生するのである。 |
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其第一佛名曰遠照。彼有百八十億菩薩。皆當往生 |
その第一の仏を名づけて、遠照(おんしょう)と曰う。 彼に百八十億の菩薩有り、皆、まさに往生すべし。 |
その第一の仏は、名を、遠照(おんしょう)という。 彼には、 百八十億の菩薩が、有り、 皆、必ず往生するだろう。 |
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其第二佛名曰寶藏。彼有九十億菩薩。皆當往生 |
その第二の仏を名づけて、宝蔵(ほうぞう)と曰う。 彼に九十億の菩薩有り、皆、まさに往生すべし。 |
その第二の仏は、宝蔵(ほうぞう)という。 彼には、 九十億の菩薩が、有り、 皆、必ず往生するだろう。 |
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其第三佛名曰無量音。彼有二百二十億菩薩。皆當往生 |
その第三の仏を名づけて、無量音(むりょうおん)と曰う。 彼に二百二十億の菩薩有り、皆、まさに往生すべし。 |
その第三の仏は、無量音(むりょうおん)という。 彼には、 二百二十億の菩薩が、有り、 皆、必ず往生するだろう。 |
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其第四佛名曰甘露味。彼有二百五十億菩薩。皆當往生 |
その第四の仏を名づけて、甘露味(かんろみ)と曰う。 彼に二百五十億の菩薩有り、皆、まさに往生すべし。 |
その第四の仏は、甘露味(かんろみ)という。 彼には、 二百五十億の菩薩が、有り、 皆、必ず往生するだろう。 |
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其第五佛名曰龍勝。彼有十四億菩薩。皆當往生 |
その第五の仏を名づけて、龍勝(りゅうしょう)と曰う。 彼に十四億の菩薩有り、皆、まさに往生すべし。 |
その第五の仏は、龍勝(りゅうしょう)という。 彼には、 十四億の菩薩が、有り、 皆、必ず往生するだろう。 |
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其第六佛名曰勝力。彼有萬四千菩薩。皆當往生 |
その第六の仏を名づけて、勝力(しょうりき)と曰う。 彼に万四千の菩薩有りて、皆、まさに往生すべし。 |
その第六の仏は、勝力(しょうりき)という。 彼には、 一万四千の菩薩が、有り、 皆、必ず往生するだろう。 |
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其第七佛名曰師子。彼有五百億菩薩。皆當往生 |
その第七の仏を名づけて、師子(しし)と曰う。 彼に五百億の菩薩有り、皆、まさに往生すべし。 |
その第七の仏は、師子(しし)という。 彼には、 五百億の菩薩が、有り、 皆、必ず往生するだろう。 |
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其第八佛名曰離垢光。彼有八十億菩薩。皆當往生 |
その第八の仏を名づけて、離垢光(りくこう)と曰う。 彼に八十億の菩薩有り、皆、まさに往生すべし。 |
その第八の仏は、離垢光(りくこう)という。 彼には、 八十億の菩薩が、有り、 皆、必ず往生するだろう。 |
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其第九佛名曰德首。彼有六十億菩薩。皆當往生 |
その第九の仏を名づけて、徳首(とくしゅ)と曰う。 彼に六十億の菩薩有り、皆、まさに往生すべし。 |
その第九の仏は、徳首(とくしゅ)という。 彼には、 六十億の菩薩が、有り、 皆、必ず往生するだろう。 |
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其第十佛名曰妙德山。彼有六十億菩薩。皆當往生 |
その第十の仏を名づけて、妙徳山(みょうとくせん)と曰う。 彼に六十億の菩薩有り、皆、まさに往生すべし。 |
その第十の仏は、妙徳山(みょうとくせん)という。 彼には、 六十億の菩薩が、有り、 皆、必ず往生するだろう。 |
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其第十一佛名曰人王。彼有十億菩薩。皆當往生 |
その第十一の仏を名づけて、人王(にんおう)と曰う。 彼に十億の菩薩有り、皆、まさに往生すべし。 |
その第十一の仏は、人王(にんおう)という。 彼には、 十億の菩薩が、有り、 皆、必ず往生するだろう。 |
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其第十二佛名曰無上華。彼有無數不可稱計諸菩薩眾。皆不退轉。智慧勇猛。已曾供養無量諸佛。於七日中即能攝取百千億劫大士所修堅固之法。斯等菩薩皆當往生 |
その第十二の仏を名づけて、無上華(むじょうけ)と曰う。 彼に無数、称計すべからざる諸の菩薩衆有り、皆、不退転にして、智慧あり、勇猛にして、すでにかつて無量の諸仏を供養し、七日の中に於いて、即ちよく百千億劫の大士(だいじ、大菩薩)の修むる所の堅固の法を摂取せり。 これ等の菩薩は、皆、まさに往生すべし。 |
その第十二の仏は、無上華(むじょうけ)という。 彼には、無数の、計り数えることのできない、諸の菩薩衆が、有る。 皆、 不退転であり、 智慧があり、 勇猛であり、 すでにかつて、無量の諸仏を供養して、 七日の間に、 大士(だいじ、大菩薩)が修める、 堅固の法(けんごのほう、六波羅蜜等の菩薩所修の法)を、 百千億劫分、摂取(せっしゅ、行う)することができる。 これ等の菩薩たちは、 皆、必ず往生するだろう。
注:堅固の法とは、この菩薩は不退であるが故に、その所修の法を堅固という。 |
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其第十三佛名曰無畏。彼有七百九十億大菩薩眾。諸小菩薩及比丘等不可稱計。皆當往生 |
その第十三の仏を名づけて、無畏(むい)と曰う。 彼に七百九十億の大菩薩衆有り、諸の小菩薩、および比丘等は称計すべからず、皆、まさに往生すべし。 |
その第十三の仏は、無畏(むい)という。 彼には、 七百九十億の大菩薩衆が、有り、 諸の小菩薩、および比丘たちは、計り数えることができない。 これも、 皆、必ず往生するだろう。 |
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佛語彌勒。不但此十四佛國中諸菩薩等當往生也。十方世界無量佛國。其往生者亦復如是甚多無數。我但說十方諸佛名號及菩薩比丘生彼國者。晝夜一劫尚未能竟。我今為汝略說之耳 |
仏、弥勒に語りたまわく、『ただこの十四の仏国中の諸の菩薩等のみ、まさに往生すべきにはあらず。 十方の世界の無量の仏国の、その往生せん者も、またまたかくの如く、甚だ多く無数なり。 我、ただ十方の諸仏の名号、および菩薩比丘の彼の国に生まれん者のみを説かんに、昼夜一劫すれども、なお未だ竟(お)うること能わず。 我、今は汝が為に、略してこれを説くのみ。 |
仏は、弥勒に語られた、―― ただ、 この十四の仏国の中の、諸の菩薩たちのみが、 必ず、往生するというのではない。 十方の世界の、無量の仏の国にも、 往生する者は、また同じように、 甚だ多く、無数にいるのである。 私が、ただ 十方の諸仏の名号、および、 彼の国に生まれる菩薩と比丘とを、 説くのみでさえ、 昼夜に、一劫を尽くしても、なお 未だ、終らせることはできない。 私は、今は、 お前の為に、略して説くのみである。 |
流 通 得 益 分
弥勒に経を付属する
佛語彌勒。其有得聞彼佛名號。歡喜踊躍乃至一念。當知此人為得大利。則是具足無上功德 |
仏、弥勒に語りたまわく、『それ、彼の仏の名号を聞くを得て、歓喜し踊躍すること有りて、乃ち一たび念うに至るまで、まさに知るべし、この人は、大利を得、則ちこれ無上の功徳を具足すと為す。 |
仏は、弥勒に語られた、―― もし、 彼の仏の名号を、 聞くことができて、歓喜踊躍し、 ただ 一たびでも、念えば、 よく知れ、 この人は、 大利を得て、 無上の功徳を、 具足したのだと。 |
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是故彌勒。設有大火充滿三千大千世界。要當過此。聞是經法。歡喜信樂。受持讀誦。如說修行 |
この故に、弥勒、設(たと)い大火有りて、三千大千世界に充満すれども、要(かなら)ず、まさにこれを過ぎて、この経法を聞かば、歓喜し信じ楽しんで、受持し読誦し、説の如くに修行すべし。 |
この故に、弥勒、 もし、 大火が、有って、三千大千世界に、充満したとしても、 必ず、 これを、過ごして、 この経法を、聞き、 歓喜し、信じ楽しんで、 受持し、読誦し、 説かれているように、修行せよ。
注:仏は弥勒に経を付属された。 弥勒は世界の終りに大火が充満しても、それを過ごして経を拾い集め人々に弘めなくてはならない。 |
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所以者何。多有菩薩。欲聞此經而不能得。若有眾生聞此經者。於無上道終不退轉。是故應當專心信受持誦說行 |
所以は何んとなれば、多く菩薩有りて、この経を聞かんと欲すれども、得ること能わず。 もし、ある衆生、この経を聞かば、無上の道に於いて、終に退転せず。 この故に、まさに心を専らにして、信じ、受持し、誦し、説いて行うべし。 |
何故ならば、 多くの菩薩が、 この経を聞きたいと欲しながら、できないでいるのだ。 もし、 ある衆生が、 この経を聞けば、 無上の道を、行きながら、 終に、不退転となるであろう。
この故に、 必ず、心を専らにして、 信じ、受け、持(たも)ち、誦し、説き、行わなければならない。 |
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吾今為諸眾生說此經法。令見無量壽佛及其國土一切所有。所當為者皆可求之。無得以我滅度之後復生疑惑 |
吾は、今、諸の衆生の為に、この経法を説いて、無量寿仏、およびその国土の一切の所有(あらゆるもの)を見せしむ。 まさに為すべき所は、皆、これを求むべきなり。 我が滅度の後を以って、また疑惑を生ずることを得ること無かれ。 |
私は、今、 諸の衆生の為に、 この経法を、説き、 無量寿仏、および その国土の一切の所有を、見せた。
為さねばならぬこと(疑問を質す)を、為して、 皆、(答えを)求めよ。 私の、滅度の後に、 再び、疑惑を生じることの無いように。 |
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當來之世經道滅盡。我以慈悲哀愍。特留此經止住百歲。其有眾生值斯經者。隨意所願皆可得度 |
当来の世に、経道は滅び尽くさん。 我、慈悲を以って哀愍し、特にこの経を留め、止住(しじゅう、留まる)すること百歳せん。 それに衆生有りて、この経に値わば、意の願う所に随うて、皆、度を得べし。 |
当来(とうらい、未来)の世の、 経道が、滅し尽くす時にも、 私は、慈悲と哀愍とを以って、 特に、この経のみを、百年の間、住めよう。 そうすれば、 未来の、ある衆生が、 この経に、値えば、 意に、願うがままに、 皆、度(ど、導き)を得ることができよう。 |
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佛語彌勒。如來興世難值難見。諸佛經道難得難聞。菩薩勝法諸波羅蜜。得聞亦難。遇善知識聞法能行。此亦為難 |
仏、弥勒に語りたまわく、『如来、世に興れども、値い難く見え難し。 諸仏の経道は、得難く聞き難し。 菩薩の勝法、諸の波羅蜜は、聞くを得ることも、また難し。 善知識に遇うて、法を聞きよく行うは、これも、また難しと為す。 |
仏は、弥勒に語られた、―― 如来が、世に興きることは、値い難く、見難い。 菩薩の勝れた法である、諸の波羅蜜も、聞くことは、また難しい。 善知識(ぜんちしき、善い知人)に遇い、 法を聞いて、 修行することができるということは、 これも、 また難しいことである。 |
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若聞斯經信樂受持。難中之難無過此難 |
もし、この経を聞き、信じ楽しんで、受持するは、難きが中の難きにして、これに過ぐる難きは無し。 |
この経を、 聞いて、信じ、 楽しんで、受持することは、 難中の難であり、 これに過ぎる難は無い。 |
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是故我法如是作如是說如是教。應當信順如法修行 |
この故に、我が法を、かくの如く作し、かくの如く説き、かくの如く教えたり。 まさに信じ順(したが)うて、法の如くに修行すべし。 |
この故に、 私の法を、 このように作り、 このように説き、 このように教えた。 必ず、 信じ、順(したが)って、 如法(にょほう、正しく)に、修行せよ。 |
聞法の衆生、歓喜す
爾時世尊說此經法無量眾生皆發無上正覺之心。萬二千那由他人得清淨法眼。二十二億諸天人民得阿那含。八十萬比丘漏盡意解 |
その時、世尊、この経法を説き、無量の衆生は、皆、無上正覚の心を発し、万二千那由他(なゆた、億)の人、清浄の法眼(ほうげん、一切の法門を見る智慧の眼)を得、二十二億の諸天、人民は、阿那含(あなごん、欲界に再び生まれない位)を得、八十万の比丘は、漏(ろ、煩悩)尽き、意解けたり。 |
その時、 世尊は、この経法を説き、 無量の衆生は、皆、無上正覚の心(むじょうしょうがくのこころ、菩提心)を発し、 万二千那由他の人は、清浄の法眼(ほうげん、一切の法門を見る菩薩の智慧)を得、 二十二億の諸天、人民は、阿那含(あなごん、欲界に再び生まれない位)を得、 八十万の比丘は、漏(ろ、煩悩)が尽きて、意(こころ)が解けた。 |
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四十億菩薩得不退轉。以弘誓功德而自莊嚴。於將來世當成正覺 |
四十億の菩薩は、不退転を得て、弘誓(ぐぜい、諸仏菩薩の広大な誓)の功徳を以って、自ら荘厳し、将来の世に於いて、まさに正覚を成すべし。 |
四十億の菩薩は、 不退転を得て、 弘誓(ぐぜい、諸仏菩薩の広大な誓い)の功徳で、自らを、荘厳し、 将来の世には、必ず正覚(しょうがく、仏の覚り)を成すであろう。 |
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爾時三千大千世界六種震動。大光普照十方國土。百千音樂自然而作。無量妙華芬芬而降 |
その時、三千大千世界は六種に震動し、大光は、普く十方の国土を照らし、百千の音楽は、自然に作し、無量の妙華は芬芬(ふんぷん、好い香りが漂う)として降れり。 |
その時、 三千大千世界は、六種に震動し、 大光は、普く十方の国土を照らし、 百千の音楽は、自然に鳴り響き、 無量の妙華は、芬芬(ふんぷん、好い香りが漂うさま)として降った。 |
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佛說經已。彌勒菩薩及十方來諸菩薩眾。長老阿難諸大聲聞。一切大眾聞佛所說靡不歡喜
無量壽經卷下 |
仏、経を説きおわりたもう。 弥勒菩薩、および十方より来る諸の菩薩衆、長老阿難、諸の大声聞、一切の大衆、仏の説きたもう所を聞いて、歓喜せざるはなし。
無量寿経巻下 |
仏は、 経を説きおえられた。 弥勒菩薩、および十方より来た諸の菩薩衆と、 長老阿難と、諸の大声聞と、 一切の大衆は、 仏の説かれた経を聞いて、 歓喜しない者は無い。
無量寿経巻下 |
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