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序  分

聴聞の大衆

極楽の荘厳

極楽の上善人に会う

六方の如来、称讃する

願を発して往生する

 

 

 

 

 

 

 

 

佛說阿彌陀經

  姚秦龜茲三藏鳩摩羅什譯

仏説阿弥陀経

  姚秦(ようしん)亀茲(きじ)の三蔵鳩摩羅什(くまらじゅう) 訳す

 阿弥陀仏の浄土の荘厳を説く。

 

 

 

序  分

聴聞の大衆

如是我聞。一時佛在舍衛國祇樹給孤獨園。與大比丘僧千二百五十人俱

かくの如く、我聞けり。 一時、仏、舎衛国(しゃえいこく、大国名)の祇樹給孤獨園(ぎじゅぎっこどくおん、精舎名)に在(ましま)して、大比丘僧千二百五十人と倶(とも)なりき。

 このように、

   わたくし(阿難)は聞いた、――

     ある時、

       仏は、

         舎衛国(しゃえいこく、大国名)の

           祇樹給孤獨園(ぎじゅぎっこどくおん、寺院名)に居られて、

       大比丘僧(びくそう、出家信者)も、

         千二百五十人が一緒であった。

 

  阿難(あなん):阿難陀(あなんだ)、釈迦の従弟。十大弟子の内の多聞第一。 釈迦の父の浄飯(じょうぼん)王の弟斛飯(こくぼん)王の子。 出家してからは仏の侍従となり、常に近侍していたために、多くを聞き過ぎて覚りを得ることが遅れた。 仏により、『自らを拠り所として、他人を拠り所とすることなかれ。自らの法を拠り所として、他の法を拠り所とすることなかれ。』という遺教(ゆいきょう)を受けて立ち直り、仏滅後には経典の編纂に力を尽くした。

  舎衛国(しゃえいこく):舍衛城(しゃえいじょう)、舎婆提(しゃばだい)、憍薩羅(ごうさら)国の首都。 摩竭陀(まがだ)国の王舎城(おうしゃじょう)と並んで釈迦の在世当時の北印度に於ける大都市であり、釈迦は相互に四百キロほど離れた、この二国間を往き来しながら遊行した。

  祇樹給孤獨園(ぎじゅぎっこどくおん):精舎(しょうじゃ、寺院)の名。 舎衛城の長者須達多(すだった)は祇陀(ぎだ)太子の園林を高額で買い受けて釈迦に供養し、祇陀は園林の中の樹木を布施した。 須達多は身寄りのない者に食物を供給していたので、給孤獨(ぎっこどく)と呼ばれる。 この二人の名によって精舎の名とする。

皆是大阿羅漢。眾所知識。長老舍利弗。摩訶目乾連。摩訶迦葉。摩訶迦栴延。摩訶拘絺羅。離婆多。周梨槃陀迦。難陀。阿難陀。羅[*]羅。憍梵波提。賓頭盧頗羅墮。迦留陀夷。摩訶劫賓那。薄俱羅。阿[/]樓馱。如是等諸大弟子。并諸菩薩摩訶薩。文殊師利法王子。阿逸多菩薩。乾陀訶提菩薩。常精進菩薩。與如是等諸大菩薩。及釋提桓因等。無量諸天大眾俱

皆、これ大阿羅漢にして、衆に知識(ちしき、知る)せられたり。 長老(ちょうろう、先輩比丘に対する尊称)の舎利弗(しゃりほつ)、摩訶目乾連(まかもっけんれん)、摩訶迦葉(まかかしょう)、摩訶迦栴延(まかかせんねん)、摩訶拘郗羅(まかくちら)、離婆多(りばた)、周梨槃陀迦(しゅりはんだか)、難陀(なんだ)、阿難陀(あなんだ)、羅[目*侯]羅(らごら)、憍梵波提(きょうぼんはだい)、賓頭廬頗羅堕(びんずるはらだ)、迦留陀夷(かるだい)、摩訶劫賓那(まかこうひんな)、薄倶羅(はくら)、阿[少/兔]楼駄(あぬるだ)、かくの如き等の諸の大弟子、并びに諸の菩薩摩訶薩(ぼさつまかさつ、大菩薩)の文殊尸利(もんじゅしり)法王子、阿逸多(あいった)菩薩、乾陀訶提(けんだかだい)菩薩、常精進(じょうしょうじん)菩薩、かくの如き等の諸の大菩薩、および釈提桓因(しゃくだいかんいん、帝釈天)等の、無量の諸の天の大衆と倶なりき。

 この方たちは、皆、

   阿羅漢(あらかん、覚りを得た聖者)であり、

   衆(しゅ、大勢)に、知られた方々であった。

 

 長老の

   舎利弗(しゃりほつ、十大弟子の中の智慧第一)、

   摩訶目乾連(まかもっけんれん、十大弟子の中の神通第一)、

   摩訶迦葉(まかかしょう、仏の後継者、十大弟子の中の頭陀(づだ、乞食行)第一)、

   摩訶迦栴延(まかかせんねん、十大弟子の中の論議第一)、

   摩訶拘郗羅(まかくちら、十大弟子の中の問答第一)、

   離婆多(りばた、坐禅第一)、

   周梨槃陀迦(しゅりはんだか、愚鈍ながら覚りを開く)、

   難陀(なんだ、美男の難陀、誘惑に負けなかったので諸根調伏第一といわれる)、

   阿難陀(あなんだ、仏の侍従、十大弟子の中の多聞第一)、

   羅[目*侯]羅(らごら、仏の実子、十大弟子の中の密行(みつぎょう、人に知られない修行)第一)、

   憍梵波提(きょうぼんはだい、十大弟子の中の持律第一)、

   賓頭廬頗羅堕(びんずるはらだ、

         神通を弄んだため、仏に涅槃を許されず、仏滅後も衆生の救済に当る)、

   迦留陀夷(かるだい、しばしば問題を起して仏に呵責された、六群比丘の一)、

   摩訶劫賓那(まかこうひんな、能知星宿第一)、

   薄倶羅(はくら、道を学んで以来八十年の間無病という)、

   阿[少/兔]楼駄(あぬるだ、十大弟子の中の天眼第一)、

 このような、

   諸の大弟子と並んで、

   諸の菩薩摩訶薩(ぼさつまかさつ、大菩薩)の

     文殊尸利(もんじゅしり)法王子(ほうおうじ、仏の法を嗣ぐ王子)、

     阿逸多(あいった、弥勒、仏の次ぎにこの娑婆世界で仏と成る)菩薩、

     乾陀訶提(けんだかだい)菩薩、

     常精進(じょうしょうじん)菩薩、

 このような、

   諸の大菩薩、および

   釈提桓因(しゃくだいかんいん、帝釈天)等の

     諸の天の大衆が一緒であった。

   

爾時佛告長老舍利弗。從是西方過十萬億佛土。有世界名曰極樂

その時、仏、長老の舎利弗に告げたまわく、――

これより西の方、十万億の仏土を過ぎて、世界有り、名を極楽という。

 その時、仏は、長老の舎利弗(しゃりほつ)に教えられた、――

 これより、

   西の方に、十万億の仏土(ぶつど、理想の仏国土)を過ぎると、

     世界が、有り、

     名を、極楽という。

 

  舎利弗(しゃりほつ):釈迦十大弟子の中の智慧第一。 神通第一の目揵連と共に、もと婆羅門種の外道であったが、外道の教えに飽きたらず、釈迦の説法を聞いて弟子となり、間もなく頭角を顕して、智慧第一と称されるようになった。 さまざまな大乗の経典は舎利弗のために説かれた。 釈迦の実子の羅[目*侯]羅(らごら)は幼い時より、この舎利弗に預けられて教育された。

其土有佛號阿彌陀。今現在說法

その土に、仏有り。 阿弥陀(あみだ、無量)と号し、今、現に在りて、法を説く。

 その土(ど、仏土)には、

   仏が、有って、

   阿弥陀(あみだ、無量)といい、

   今現に、そこで法を説いている。

 

 

 

 

正 宗 分

極楽の荘厳

舍利弗。彼土何故名為極樂。其國眾生無有眾苦。但受諸樂故名極樂

舎利弗、彼の土は、何んが故に名づけて極楽と為す。 その国の衆生には、衆の苦の有ること無く、ただ諸の楽のみを受くるが故に、極楽と名づくるなり。

 舎利弗、

   彼の土を、何故(なぜ)、極楽というのか。

   その国の衆生には、

     衆(もろもろ)の苦が、無く、

   ただ、

     諸(もろもろ)の楽を、受けるのみであるが故に、

       極楽というのである。

又舍利弗。極樂國土。七重欄楯七重羅網七重行樹。皆是四寶周匝圍繞。是故彼國名曰極樂

また舎利弗、極楽の国土の、七重の欄楯(らんじゅん、欄干)、七重の羅網(らもう、宝石を空中に飾るための網)、七重の行樹(ぎょうじゅ、並木)、皆、これ四宝(しほう、金、銀、琉璃、頗梨)が、周匝(しゅうそう、取り巻く)して、囲遶(いにょう、囲み巡る)せり。 この故に、彼の国を名づけて極楽という。

 また舎利弗、

   極楽の国土の、

     七重の欄楯(らんじゅん、欄干)、

     七重の羅網(らもう、天空を覆う真珠の網)、

     七重の行樹(ぎょうじゅ、並木)は、皆、

       四宝(しほう、金、銀、琉璃(るり、青い宝石)、頗梨(はり、水晶)が、

         周匝(しゅうそう、取り巻く)して、

         囲遶(いにょう、囲み巡る)する。

   この故に、

     彼の国を、極楽というのである。

又舍利弗。極樂國土有七寶池。八功德水充滿其中。池底純以金沙布地。四邊階道。金銀琉璃頗梨合成。上有樓閣。亦以金銀琉璃頗梨車磲赤珠馬瑙而嚴飾之。池中蓮花大如車輪。青色青光。黃色黃光。赤色赤光。白色白光微妙香潔。舍利弗。極樂國土成就如是功德莊嚴

また舎利弗、極楽の国土には、七宝の池有り、八功徳の水、その中に充満す。 池底に純(もっぱ)ら金沙を以って地に布き、四辺の階道(かいどう、池を取り囲む階段状の道)は、金、銀、琉璃、頗梨、合わせ成る。 上には、楼閣有り、また金、銀、琉璃、頗梨、車磲(しゃこ、シャコ貝)、赤珠(しゃくしゅ、赤い真珠)、瑪瑙を以って、これを厳かに飾れり。 池中の蓮華は大なること車輪の如く、青き色は青く光り、黄の色は黄に光り、赤き色は赤く光り、白き色は白く光り、微妙の香りは潔(いさぎよ)し。 舎利弗、極楽の国土は、かくの如き功徳の荘厳せるを成就せり。

 また舎利弗、

   極楽の国土には、

     七宝(しっぽう、

         金、銀、琉璃、頗梨、車磲(しゃこ、シャコ貝)、赤珠(しゃくしゅ、赤い真珠)、瑪瑙)の

       池が有り、

     八功徳(はっくどく、浄澄、清冷、甘美、軽軟、潤沢、安和、

                  飲時除飢渇等無量過患、飲已定能長養諸根四大増大)の

       水が、その中に充満する、

     池底には、純(もっぱ)ら、

       金沙(こんしゃ、金の砂)が、地に布かれ、

     池の四辺の階道(かいどう、四角い池を取り囲む階段状の道)は、

       金、銀、琉璃、頗梨が、合わせ成している、

     池の上の楼閣は、また

       金、銀、琉璃、頗梨、車磲、赤珠、瑪瑙が、これを厳かに飾っている、

     池の中の蓮華は、

       大きさが、車輪のようであり、

       青い色は、青く光り、

       黄色は、黄色く光り、

       赤い色は、赤く光り、

       白い色は、白く光り、

       微妙な香りは、汚れが無い。

 舎利弗、

   極楽の国土は、このような

     功徳(くどく、人を利する力)の荘厳(しょうごん、厳かな飾り)を、

       成就している。

 

  八功徳水(はっくどくすい):称讃浄土経によれば次のようである。

    (1)浄く澄む。

    (2)清く冷たい。

    (3)甘く美味。

    (4)軽く軟らかい。

    (5)潤沢。

    (6)飲めば安らぎ和む。

    (7)飲めば飢渇等の無量の過患を除く。

    (8)飲めば諸根を長養し、四大(しだい、肉体)が増大する。

又舍利弗。彼佛國土常作天樂。黃金為地。晝夜六時天雨曼陀羅華。其國眾生常以清旦各以衣[-+]盛眾妙華。供養他方十萬億佛。即以食時還到本國。飯食經行。舍利弗。極樂國土成就如是功德莊嚴

また舎利弗、彼の仏の国土は、常に天の楽を作す。 黄金は地を為して、昼夜六時に、天は曼陀羅華(まんだらけ、天に咲く華の一)を雨ふらす。 その国の衆生は、常に清旦(しょうたん、清らかな早朝)を以って、各、衣[袖-由+戒](えこく、肩掛け)を以って、衆の妙華を盛り、他方の十万億の仏を供養し、即ち食時(じきじ、食事時、正午)を以って還りて本国に到り、食を飯(くら)い、経行(きょうぎょう、歩く禅)す。 舎利弗、極楽の国土は、かくの如き功徳の荘厳せるを成就す。

 また舎利弗、

   彼の国土は、

     常に、天の楽(がく、音楽)を作(な)し、

     黄金が、地を為(な)し、

     昼夜六時(ろくじ、六遍)に、

       天は、曼陀羅華(まんだらけ、天の花の一つ)を雨のように降らす。

   その国の衆生は、常に、

     清らかな夜明けを待って、

       肩掛けに、多くの美しい華を盛って、他方の十万億の仏を、供養し、

     食時(じきじ、食事時、正午)には還って、

       本国に到り、

         食を飯(くら)い、

         経行(きょうぎょう、坐禅と交互にする歩く禅)する。

 舎利弗、

   極楽の国土は、このような

     功徳の荘厳を、成就している。

復次舍利弗。彼國常有種種奇妙雜色之鳥。白鵠孔雀鸚鵡舍利迦陵頻伽共命之鳥。是諸眾鳥。晝夜六時出和雅音。其音演暢五根五力七菩提分八聖道分如是等法。其土眾生聞是音已。皆悉念佛念法念僧

また次ぎに、舎利弗、彼の国には、常に、種種の奇妙(きみょう、珍しく美しい)にして雑色(ざっしき、種種の色を雑えた)の鳥有り。 白鵠(びゃっこう、白鶴)、孔雀、鸚鵡、舎利(しゃり、鳥の名)、迦陵頻伽(かりょうびんが、声の好い天の鳥)、共命の鳥(ぐみょうのとり、両首一身の天の鳥)、この諸衆の鳥は、昼夜六時に、和雅の音を出し、その音は、五根(ごこん、信根、精進根、念根、定根、慧根)、五力(ごりき、信力、精進力、念力、定力、慧力)、七菩提分(しちぼだいぶん、択法覚分、精進覚分、喜覚分、軽安覚分、念覚分、定覚分、行捨覚分)、八聖道分(はっしょうどうぶん、正見、正思惟、正語、正業、正命、正精進、正念、正定)、かくの如き等の法を演暢(えんちょう、演説の声が通ってゆきわたる)す。 その土の衆生は、この音を聞きおわれば、皆悉く、仏を念い、法を念い、僧を念う。

 また次ぎに、舎利弗、

   彼の国には、常に、

     奇妙(きみょう、珍しく美しい)で、雑色(ざっしき、種種の色が雑じる)の鳥が有る。

   白鵠(びゃっこう、白鶴)、孔雀、鸚鵡、舎利(しゃり、鳥の名)、

   迦陵頻伽(かりょうびんが、声の好い天の鳥)、

   共命の鳥(ぐみょうのとり、両首一身の天の鳥)、

   これ等の、諸の鳥は、

     昼夜六時に、和雅(わげ、穏やかで上品な音楽)の音を出し、

     その音は、

       五根(ごこん、修行に必要な根本的能力)、

       五力(ごりき、根本的能力による具体的な力)、

       七菩提分(しちぼだいぶん、覚りに至る智慧)、

       八聖道分(はっしょうどうぶん、覚りの智慧による正しい行い)、

       このような法を、

         演説して、その声はどこまでも行き渡る。

 

   その国土の衆生は、

     この音を聞いて、皆、悉く、

       仏(ほとけ、仏の功徳)を念い、

       法(ほう、持戒して身を護ること)を念い、

       僧(そう、仏法の和合存続)を念うのである。

 

  五根(ごこん):修行に必要な根本的な能力。

    (1)信根(しんこん):三宝と四諦を信じる。

    (2)精進根(しょうじんこん):勇猛に善法(ぜんぽう、善い行い)を修める。

    (3)念根(ねんこん):正法を憶念する。

    (4)定根(じょうこん):心を一境に止めて散失させない。

    (5)慧根(えこん):真理を思惟する。

  五力(ごりき):五根を増長せしめて力を得る。

    (1)信力(しんりき):信根を増長して、諸の邪信の者を破る。

    (2)精進力(しょうじんりき):精進根を増長して、身の懈怠するを破る。

    (3)念力(ねんりき):念根を増長して、諸の邪念を破る。

    (4)定力(じょうりき):定根を増長して、諸の乱想を破る。

    (5)慧力(えりき):慧根を増長して、諸の惑いを破る。

  七菩提分(しちぼだいぶん):覚りに至る智慧。

    (1)択法覚分(たくほうかくぶん):智慧で法の真偽を択ぶ。

    (2)精進覚分(しょうじんかくぶん):勇猛心で邪行を離れ真法を行う。

    (3)喜覚分(きかくぶん):心に善法を得れば、即ち歓喜する。

    (4)軽安覚分(きょうあんかくぶん):身心の粗重なるを除く。

    (5)念覚分(ねんかくぶん):常に定と慧とを均等ならしめ、明記して忘れない。

    (6)定覚分(じょうかくぶん):心を一境に止めて、散乱せしめない。

    (7)行捨覚分(ぎょうしゃかくぶん):諸々の妄謬を捨て、一切法を捨てて、心を平等に保つ。

  八聖道分(はっしょうどうぶん):八の善い行い、無漏の戒を以って体と為す。

    (1)正見(しょうけん):苦集滅道の四諦の理を見て、明らかにする。

    (2)正思惟(しょうしゆい):四諦の理を明らめたならば、更に思惟して真智を増長する。

    (3)正語(しょうご):真智を以って口業を修め、一切の非理の語を作さない。

    (4)正業(しょうごう):真智を以って身の一切の邪業を除き、清浄の身業に住まる。

    (5)正命(しょうみょう):身口意の三業を清浄にして、正法に順じて活命す。

    (6)正精進(しょうしょうじん):真智を発用して、強いて涅槃の道を修める。

    (7)正念(しょうねん):真智を以って、正道を憶念し邪念を無くす。

    (8)正定(しょうじょう):真智を以って、無漏清浄の禅定に入る。

舍利弗。汝勿謂此鳥實是罪報所生。所以者何。彼佛國土無三惡趣

舎利弗、汝は、この鳥を実に、これ罪報の生ずる所なりと謂うなかれ。 所以(ゆえ)は何(いか)んとなれば、彼の仏の国土には、三悪趣(さんあくしゅ、地獄、餓鬼、畜生)の無ければなり。

 舎利弗、

   お前は、

     『この鳥は、実に、罪の報いを受けて生まれた』と、思ってはならない。

   何故ならば、

     彼の仏の国土には、

       三悪趣(さんあくしゅ、地獄、餓鬼、畜生)が無いからである。

舍利弗。其佛國土尚無三惡道之名。何況有實

舎利弗、その仏の国土には、なお三悪道の名すら無し、何をか況や実の有るをや。

 舎利弗、

   その仏の国土には、

     三悪道は、

       その名さえ無く、

       その実などは、有りえない。

是諸眾鳥。皆是阿彌陀佛。欲令法音宣流變化所作

この諸衆の鳥は、皆、これ阿弥陀仏、法音をして宣流(せんる、宣伝流布)せしめんと欲し、変化して作る所なり。

 この諸の鳥たちは、皆、

   阿弥陀仏が、

     法の音を、宣流(せんる、宣伝流布)しようと欲し、

     変化して、作ったのである。

舍利弗。彼佛國土。微風吹動諸寶行樹及寶羅網出微妙音。譬如百千種樂同時俱作。聞是音者皆自然生念佛念法念僧之心。舍利弗。其佛國土成就如是功德莊嚴

舎利弗、彼の仏の国土には、微かな風、諸の宝の行樹、および宝の羅網を吹き動かして、微妙の音を出すこと、譬えば百千種の楽、時を同じうして倶に作すが如し。この音を聞かば、皆、自然に仏を念い、法を念い、僧を念うの心を生ず。舎利弗、その仏の国土は、かくの如き功徳の荘厳せるを成就せり。

 舎利弗、

   彼の仏の国土には、

     微かに風が吹いて、

       諸の宝の行樹、および宝の羅網を動かし、

       宝の触れ合う、微妙の音を出す、

     譬えば、

       百千種の音楽を、同時に一緒に作すようであり、

     この音を聞けば、皆

       仏を念い、法を念い、僧を念う心が、

         自然に、生まれるのである。

 舎利弗、

   その仏の国土は、このような

     功徳の荘厳を、成就している。

舍利弗。於汝意云何。彼佛何故號阿彌陀

舎利弗、汝が意に於いて云何ん。 彼の仏は、何なる故にか、阿弥陀と号する。

 舎利弗、

   お前は、どう思うか?

   彼の仏は、何故

     阿弥陀(あみだ、無量)といわれるのだろうか?

舍利弗。彼佛光明無量。照十方國無所障礙。是故號為阿彌陀

舎利弗、彼の仏の光明は無量なり。 十方の国を照らして障礙する所無し。 この故に号して阿弥陀と為す。

 舎利弗、

   彼の仏の光明は、無量であり、

     十方の国を照らして、障碍(しょうげ、邪魔)されることが無い。

   この故に、

     阿弥陀というのである。

又舍利弗。彼佛壽命。及其人民無量無邊阿僧祇劫。故名阿彌陀

また舎利弗、彼の仏の寿命は、その人民に及んで、無量無辺阿僧祇(あそうぎ、無数)劫(こう、無限の時間)なり。 故に阿弥陀と名づく。

 また舎利弗、

   彼の仏の寿命、および

   その人民の寿命は、

     無量無辺阿僧祇(あそうぎ、無数)劫(こう、無限の時間)であり、

   この故に、

     阿弥陀というのである。

 

  (こう):一辺が四十里(一里は凡そ四百メートル)の立方体の石があり、百年に一度、天人が飛来し衣の裾で、この石を払い、その石が磨滅して消滅する迄の時間をいう。 異説は多いが、どれも無限に近い有限の時間をいう。

舍利弗。阿彌陀佛成佛已來於今十劫

舎利弗、阿弥陀仏は、仏と成りしより已来(いらい、以来)、今に於いて十劫なり。

 舎利弗、

   阿弥陀仏は、

     仏と成って以来、すでに

     今では、十劫になる。

又舍利弗。彼佛有無量無邊聲聞弟子。皆阿羅漢。非是算數之所能知

また舎利弗、彼の仏には、無量無辺の声聞(しょうもん、仏の直弟子)の弟子有り。 皆、阿羅漢(あらかん、覚りを開いた聖者)なれども、これを算数(さんじゅ、数える)してよく知る所に非ず。

 また舎利弗、

   彼の仏は、

     無量無辺の声聞(しょうもん、仏の直弟子)の弟子が有り、

   皆、

     阿羅漢(あらかん、覚りを開いた聖者)であって、

     その数は、数えて知ることができない。

諸菩薩亦復如是

諸の菩薩も、またまたかくの如し。

 諸の菩薩も、また同じである。

舍利弗。彼佛國土成就如是功德莊嚴

舎利弗、彼の仏の国土は、かくの如きの功徳の荘厳せるを成就せり。

 舎利弗、

   彼の仏の国土は、このような

     功徳の荘厳を、

       成就している。

 

 

 

 

極楽の上善人に会う

又舍利弗。極樂國土眾生生者皆是阿鞞跋致

また舎利弗、極楽の国土に、衆生生まるれば、皆、これ阿鞞跋致(あびばっち、不退の菩薩)なり。

 また舎利弗、

   極楽の衆生は、

     生まれた時には、皆

     阿鞞跋致(あびばっち、不退の菩薩)である。

其中多有一生補處。其數甚多。非是算數所能知之。但可以無量無邊阿僧祇劫說

その中には、多く一生補処(いっしょうふしょ、次の生で仏と作る菩薩)有り。 その数は甚だ多く、算数してよくこれを知る所に非ず、ただ無量無辺阿僧祇劫を以って説くべし。

 その中には、

   多くの一生補処(いっしょうふしょ、次の生で仏と作る菩薩)が有るが、

   その数を、数えて知ることはできない、

 ただ、

   無量無辺阿僧祇劫、

     説くことによってのみ可能である。

舍利弗。眾生聞者。應當發願願生彼國。所以者何。得與如是諸上善人俱會一處

舎利弗、衆生にして聞かば、まさに願を発(おこ)して、彼の国に生まれんことを願うべし。 所以は何んとなれば、かくの如き、諸の上善の人と倶に、一処に会うことを得ればなり。

 舎利弗、

   衆生が、これを聞いたならば、

     必ず、願を発して、

       彼の国に、生まれようと願わなければならない。

 何故ならば、このような、

   諸の上善(じょうぜん、阿鞞跋致、もしくは一生補処)の人と、

     倶(とも)に、一処に会うことができるからである。

 

  注:上善の人に会うことが、往生の目的である。

舍利弗。不可以少善根福德因緣得生彼國

舎利弗、少しばかりの善根の福徳の因縁を以って、彼の国に生まるることを得るべからず。

 舎利弗、

   少しばかりの善根(ぜんこん、善行)の福徳(ふくとく、善行で得た福)の因縁で、

     彼の国に生まれることはできない。

 

  注:少善根とは、たまたま行った善い行いをいう。 果報の福徳で往生できるものではない。

舍利弗。若有善男子善女人。聞說阿彌陀佛。執持名號。若一日。若二日。若三日。若四日。若五日。若六日。若七日。一心不亂。其人臨命終時。阿彌陀佛與諸聖眾。現在其前。是人終時心不顛倒。即得往生阿彌陀佛極樂國土

舎利弗、もし善男子(ぜんなんし、男子)善女人(ぜんにょにん、女子)有りて、阿弥陀仏を説くを聞き、名号を執持すること、若(も)しは一日、若しは二日、若しは三日、若しは四日、若しは五日、若しは六日、若しは七日、一心不乱なれば、その人の命の終る時に臨んで、阿弥陀仏は、諸の聖衆(しょうじゅ、声聞と菩薩)を与(とも)にして、現じてその前に在し、この人は、終わりの時にも、心顛倒(てんどう、邪念する)せず、即ち阿弥陀仏の極楽国土に往生することを得るなり。

 舎利弗、

   もし、ある

     善男子(ぜんなんし、男子)善女人(ぜんにょにん、女子)が、

       阿弥陀仏を説くのを、聞いて、

       阿弥陀仏の名号を、執持(しゅうじ、忘れずにしっかり持つ)して、

         若しは一日、若しは二日、若しは三日、若しは四日、

         若しは五日、若しは六日、若しは七日の間、一心不乱であれば、

     この人の命が終る時に、

       阿弥陀仏は、

         諸の聖衆(しょうじゅ、声聞と菩薩)と共に、

         その人の前に、現れて、

       この人は、命の終る時にも、

         心が顛倒(てんどう、邪念を起す)せず、じきに

         阿弥陀仏の極楽国土に、往生することができる。

 

  善男子(ぜんなんし)善女人(ぜんにょにん):仏は、在家出家の男女を善男子善女人と称せられた。

                               善とは、その仏を信じて法を聞くことを誉めていう。

  注:彼の国に往生する方法を説く。

舍利弗。我見是利故說此言。若有眾生聞是說者。應當發願生彼國土

舎利弗、我は、この利を見るが故に、この言(ごん、言葉)を説くなり。 もしある衆生、この説を聞かば、まさに願を発して、彼の国土に生まるべしと。

 舎利弗、

   わたしは、

     この利を見るが故に、こう説くのである、

     『もし、ある衆生が、この説を聞いたならば、必ず、願を発して、彼の国に生まれよ。』と。

 

 

 

 

 

六方の如来、称賛する

舍利弗。如我今者讚歎阿彌陀佛不可思議功德。東方亦有阿[@(/(*))]鞞佛。須彌相佛。大須彌佛。須彌光佛。妙音佛。如是等恒河沙數諸佛。各於其國出廣長舌相。遍覆三千大千世界說誠實言。汝等眾生當信是稱讚不可思議功德一切諸佛所護念經

舎利弗、我、今、阿弥陀仏の不可思議の功徳を讃歎するが如く、東方にも、また阿閦鞞(あしゅくび)仏、須弥相(しゅみそう)仏、大須弥(だいしゅみ)仏、須弥光(しゅみこう)仏、妙音(みょうおん)仏、かくの如き等の恒河沙(ごうがしゃ、ガンジズ河の川底の砂)の数の諸仏有りて、各、その国に於いて、広長の舌相(ぜっそう、)を出して、遍く三千大千世界を覆い、誠実の言を説かく、『汝等衆生、まさにこの不可思議の功徳を称讃して、一切の諸仏に護念せらるる経を信ずべし。』と。

 舎利弗、

   わたしが、今、

     阿弥陀仏の不可思議の功徳を、讃歎しているように、

   東方でも、また

     阿閦鞞(あしゅくび)仏、須弥相(しゅみそう)仏、大須弥(だいしゅみ)仏、

     須弥光(しゅみこう)仏、妙音(みょうおん)仏、このような

       恒河沙(ごうがしゃ、ガンジス河の川底の砂)の数ほどの諸仏が、

         各、その国に於いて、

           広長の舌相(ぜっそう、)を出して、三千大千世界を遍く覆い、

           誠実な言葉を説いている、

           『お前たち、

              衆生は、必ず、この

                不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏に護念される経を

                  信じなければならない。』と。

 

  注:広長の舌相を出すとは、仏が自らその言の真実を証明するために現す相であり、その因縁は大智度論巻第8に見ることができる。

舍利弗。南方世界有日月燈佛。名聞光佛。大焰肩佛。須彌燈佛。無量精進佛。如是等恒河沙數諸佛。各於其國出廣長舌相。遍覆三千大千世界說誠實言。汝等眾生當信是稱讚不可思議功德一切諸佛所護念經

舎利弗、南方の世界にも、日月灯(にちがつとう)仏、名聞光(みょうもんこう)仏、大焔肩(だいえんけん)仏、須弥灯(しゅみとう)仏、無量精進(むりょうしょうじん)仏、かくの如き等の恒河沙の数の諸仏有りて、各、その国に於いて、広長の舌相を出して、遍く三千大千世界を覆い、誠実の言を説かく、『汝等衆生、まさにこの不可思議の功徳を称讃して、一切の諸仏に護念せらるる経を信ずべし。』と。

 舎利弗、

   南方の世界にも、

     日月灯(にちがつとう)仏、名聞光(みょうもんこう)仏、大焔肩(だいえんけん)仏、

     須弥灯(しゅみとう)仏、無量精進(むりょうしょうじん)仏、このような

       恒河沙の数ほどの諸仏が、

         各、その国に於いて、

           広長の舌相を出して、三千大千世界を遍く覆い、

           誠実な言葉を説いている、

           『お前たち、

              衆生は、必ず、この

                不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏に護念される経を

                  信じなければならない。』と。

舍利弗。西方世界有無量壽佛。無量相佛。無量幢佛。大光佛。大明佛。寶相佛。淨光佛。如是等恒河沙數諸佛。各於其國出廣長舌相。遍覆三千大千世界說誠實言。汝等眾生。當信是稱讚不可思議功德一切諸佛所護念經

舎利弗、西方の世界にも、無量寿(むりょうじゅ)仏、無量相(むりょうそう)仏、無量幢(むりょうどう)仏、大光(だいこう)仏、大明(だいみょう)仏、宝相(ほうそう)仏、浄光(じょうこう)仏、かくの如き等の恒河沙の数の諸仏有りて、各、その国に於いて、広長の舌相を出して、遍く三千大千世界を覆い、誠実の言を説かく、『汝等衆生、まさにこの不可思議の功徳を称讃して、一切の諸仏に護念せらるる経を信ずべし。』と。

 舎利弗、

   西方の世界にも、

     無量寿(むりょうじゅ)仏、無量相(むりょうそう)仏、無量幢(むりょうどう)仏、大光(だいこう)仏、

     大明(だいみょう)仏、宝相(ほうそう)仏、浄光(じょうこう)仏、このような

       恒河沙の数ほどの諸仏が、

         各、その国に於いて、

           広長の舌相を出して、三千大千世界を遍く覆い、

           誠実な言葉を説いている、

           『お前たち、

              衆生は、必ず、この

                不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏に護念される経を

                  信じなければならない。』と。

舍利弗。北方世界有焰肩佛。最勝音佛。難沮佛。日生佛。網明佛。如是等恒河沙數諸佛。各於其國出廣長舌相遍覆三千大千世界說誠實言。汝等眾生。當信是稱讚不可思議功德一切諸佛所護念經

舎利弗、北方の世界にも、焔肩(えんけん)仏、最勝音(さいしょうおん)仏、難沮(なんそ)仏、日生(にっしょう)仏、網明(もうみょう)仏、かくの如き等の恒河沙の数の諸仏有りて、各、その国に於いて、広長の舌相を出して、遍く三千大千世界を覆い、誠実の言を説かく、『汝等衆生、まさにこの不可思議の功徳を称讃して、一切の諸仏に護念せらるる経を信ずべし。』と。

 舎利弗、

   北方の世界にも、

     焔肩(えんけん)仏、最勝音(さいしょうおん)仏、難沮(なんそ)仏、

     日生(にっしょう)仏、網明(もうみょう)仏、このような

       恒河沙の数ほどの諸仏が、

         各、その国に於いて、

           広長の舌相を出して、三千大千世界を遍く覆い、

           誠実な言葉を説いている、

           『お前たち、

              衆生は、必ず、この

                不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏に護念される経を

                  信じなければならない。』と。

舍利弗。下方世界有師子佛。名聞佛。名光佛。達摩佛。法幢佛。持法佛。如是等恒河沙數諸佛。各於其國出廣長舌相。遍覆三千大千世界說誠實言。汝等眾生。當信是稱讚不可思議功德一切諸佛所護念經

舎利弗、下方の世界にも、師子(しし)仏、名聞(みょうもん)仏、名光(みょうこう)仏、達摩(だつま)仏、法幢(ほうどう)仏、持法(じほう)仏、かくの如き等の恒河沙の数の諸仏有りて、各、その国に於いて、広長の舌相を出して、遍く三千大千世界を覆い、誠実の言を説かく、『汝等衆生、まさにこの不可思議の功徳を称讃して、一切の諸仏に護念せらるる経を信ずべし。』と。

 舎利弗、

   下方の世界にも、

     師子(しし)仏、名聞(みょうもん)仏、名光(みょうこう)仏、達摩(だつま)仏、

     法幢(ほうどう)仏、持法(じほう)仏、このような

       恒河沙の数ほどの諸仏が、

         各、その国に於いて、

           広長の舌相を出して、三千大千世界を遍く覆い、

           誠実な言葉を説いている、

           『お前たち、

              衆生は、必ず、この

                不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏に護念される経を

                  信じなければならない。』と。

舍利弗。上方世界有梵音佛。宿王佛。香上佛。香光佛。大焰肩佛。雜色寶華嚴身佛。娑羅樹王佛。寶華德佛。見一切義佛。如須彌山佛。如是等恒河沙數諸佛。各於其國。出廣長舌相。遍覆三千大千世界說誠實言。汝等眾生。當信是稱讚不可思議功德一切諸佛所護念經

舎利弗、上方の世界にも、梵音(ぼんのん)仏、宿王(しゅくおう)仏、香上(こうじょう)仏、香光(こうこう)仏、大焔肩(だいえんけん)仏、雑色宝華厳身(ざっしきほうけごんしん)仏、娑羅樹王(しゃらじゅおう)仏、宝華徳(ほうけとく)仏、見一切義(けんいっさいぎ)仏、如須弥山(にょしゅみせん)仏、かくの如き等の恒河沙の数の諸仏有りて、各、その国に於いて、広長の舌相を出して、遍く三千大千世界を覆い、誠実の言を説かく、『汝等衆生、まさにこの不可思議の功徳を称讃して、一切の諸仏に護念せらるる経を信ずべし。』と。

 舎利弗、

   上方の世界にも、

     梵音(ぼんのん)仏、宿王(しゅくおう)仏、香上(こうじょう)仏、香光(こうこう)仏、

     大焔肩(だいえんけん)仏、雑色宝華厳身(ざっしきほうけごんしん)仏、

     娑羅樹王(しゃらじゅおう)仏、宝華徳(ほうけとく)仏、

     見一切義(けんいっさいぎ)仏、如須弥山(にょしゅみせん)仏、このような

       恒河沙の数ほどの諸仏が、

         各、その国に於いて、

           広長の舌相を出して、三千大千世界を遍く覆い、

           誠実な言葉を説いている、

           『お前たち、

              衆生は、必ず、この

                不可思議の功徳を称讃し、一切の諸仏に護念される経を

                  信じなければならない。』と。

 

 

 

 

願を発して往生する

舍利弗。於汝意云何。何故名為一切諸佛所護念經

舎利弗、汝が意に於いて云何ん。何なる故にか名づけて一切の諸仏に護念せらるる経と為す。

 舎利弗、

   お前は、どう思うか?

 何故、この経を、

   一切の諸仏に護念される経というのだろうか?

舍利弗。若有善男子善女人。聞是經受持者。及聞諸佛名者。是諸善男子善女人。皆為一切諸佛共所護念。皆得不退轉於阿耨多羅三藐三菩提。是故舍利弗。汝等皆當信受我語及諸佛所說

舎利弗、若し、善男子善女人にして、この経を聞きて受持せば、諸仏の名を聞くのみの者に及ぶまで、この諸の善男子善女人は、皆、一切の諸仏に共に護念せられて、皆、阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい、仏の成って理想の国土を造ること)に於いて、不退転を得ん。 この故に、舎利弗、汝等は、皆、まさに我が語、および諸仏の説く所を信じて受くるべし。

 舎利弗、

   もし、善男子善女人が、

     この経を聞いて、受持するならば、

     ただ諸仏の名を、聞くのみの者でさえ、

   この諸の善男子善女人は、

     皆、一切の諸仏に共に護念され、

     皆、阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい、仏と成ること)を目指して、

          退転せずにいられるのである。

 この故に、舎利弗、

   お前たちは、皆、必ず、

     わたしの言葉、および諸仏の所説を、

       信じて受け入れよ。

舍利弗。若有人已發願。今發願。當發願。欲生阿彌陀佛國者。是諸人等。皆得不退轉於阿耨多羅三藐三菩提。於彼國土若已生。若今生。若當生。是故舍利弗。諸善男子善女人。若有信者。應當發願生彼國土

舎利弗、もしある人、已に願を発し、今願を発し、まさに願を発さんとして、阿弥陀仏の国に生まれんことを欲せば、この諸の人等は、皆、阿耨多羅三藐三菩提に於いて退転せず、彼の国土に於いて、若しは已に生まれ、若しは今生まれ、若しはまさに生まるべきことを得ん。 この故に舎利弗、諸の善男子善女人にして、もし信ずる者有らば、まさに願を発して彼の国土に生まるべし。

 舎利弗、

   もし、ある人が、

     すでに、願を発し、

     今、願を発し、

     これから、願を発して、

       阿弥陀仏の国に生まれたいと欲するならば、

   この諸の人たちは、皆、

     阿耨多羅三藐三菩提を目指して、退転せず、

     彼の国に、

       若しは、已に生まれ、

       若しは、今生まれ、

       若しは、これから生まれることができる。

 この故に、舎利弗、

   諸の善男子善女人は、

   若しくは、信じる者は、

     必ず、願を発して、彼の国に生まれよ。

 

  注:願を発してとは、真実の心でを意味する。 真実の心とは、上善人に会おうと願うことである。

舍利弗。如我今者稱讚諸佛不可思議功德。彼諸佛等。亦稱說我不可思議功德。而作是言。釋迦牟尼佛能為甚難希有之事。能於娑婆國土五濁惡世。劫濁。見濁。煩惱濁。眾生濁。命濁中。得阿耨多羅三藐三菩提。為諸眾生。說是一切世間難信之法

舎利弗、我、今、諸仏の不可思議の功徳を称讃するが如く、彼の諸仏等も、また我が不可思議の功徳を称え説いて、この言を作さく、『釈迦牟尼仏は、よく甚だ難く、希有の事を為せり。 よく娑婆(しゃば、忍苦)国土の五濁(ごじょく、次ぎに挙げる五つの世の汚れ)の悪世、劫濁(こうじょく、戦争天災による世の汚れ)、見濁(けんじょく、邪見による世の汚れ)、煩悩濁(ぼんのうじょく、悪徳による世の汚れ)、衆生濁(しゅじょうじょく、人の質が弱劣化する世の汚れ)、命濁(みょうじょく、人の寿命が短くなる世の汚れ)の中に於いて、阿耨多羅三藐三菩提を得て、諸の衆生の為に、この一切の世間の信じ難き法を説く。』と。

 舎利弗、

   わたしが、今、諸仏の不可思議の功徳を称讃したように、

   彼の諸仏たちも、また

     私の不可思議な功徳を称讃して、こう言う、

     『釈迦牟尼仏は、

        よく、甚だ為し難く希有の事を為しとげた、

        よく、娑婆の国土の五濁(ごじょく、悪世を表す五つの世の汚れ)の悪世、

           劫濁(こうじょく、戦争天災による世の汚れ)、

           見濁(けんじょく、邪見による世の汚れ)、

           煩悩濁(ぼんのうじょく、悪徳がはびこる世の汚れ)、

           衆生濁(しゅじょうじょく、人の質が弱劣化する世の汚れ)、

           命濁(みょうじょく、人の寿命が短くなる世の汚れ)の中で、

             阿耨多羅三藐三菩提を得て、

             諸の衆生の為に、

               この一切の世間の信じ難い法を説いた。』と。

舍利弗當知。我於五濁惡世。行此難事。得阿耨多羅三藐三菩提。為一切世間。說此難信之法。是為甚難

舎利弗、まさに知るべし。 我は、五濁の悪世に於いて、この難き事を行えり。 阿耨多羅三藐三菩提を得、一切の世間の為に、この信じ難き法を説きたり。 これは甚だ難きことと為す。

 舎利弗、

   必ず、知らなくてはならない。

   わたしは、

     五濁の悪世に於いて、

     この為し難い事を行ったのである、

       阿耨多羅三藐三菩提を得て、

       一切の世間の為に、

       この信じ難い法を説いた。

   これは、

     甚だ為し難いことである。

佛說此經已。舍利弗及諸比丘。一切世間天人阿修羅等。聞佛所說歡喜信受。作禮而去

 

佛說阿彌陀經

仏、この経を説きおえたまえば、舎利弗、および諸の比丘、一切の世間の天人、阿修羅等は、仏の説きたもう所を聞いて、歓喜し信じ受けて、礼を作して去れり。

 

仏説阿弥陀経

 仏が、この経を説きおえられると、

   舎利弗、および

   諸の比丘たち、

   一切の世間の天人、阿修羅たちは、

     仏の所説を聞いて、歓喜し、信じ受け入れて、

     礼を、作して去った。

 

仏説阿弥陀経

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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