【論】釋曰。佛是法王。讚歎受持般若波羅蜜者已。次天王釋讚釋讚已。今次諸天讚。以多眾讚故。令人信心轉深。作是言應受持是般若波羅蜜。 |
釈して曰く、仏は、是れ法王として、般若波羅蜜を受持する者を讃歎し已り、次に天王の釈讃じ、釈讃じ已りて、今次いで諸天讃じ、多衆讃ずるを以っての故に、人の信心をして、転(うた)た深からしめて、是の言を作したまわく、『応に是の般若波羅蜜を受持すべし』、と。 |
釈す、
『仏』が、
『法王として!』、
『般若波羅蜜』を、
『受持する!』者を、
『讃歎される!』と、
次に、
『三十三天王として!』、
『釈提桓因』が、
『讃じ!』、
『釈提桓因が讃じれば!』、
今、次いで、
『三十三天』の、
『諸天』が、
『讃じることになり!』、
『多衆が、讃じる!』が故に、
『人の信心』を、
転た( increasingly )、
『深まらせる!』。
『仏』は、
是の故に、こう言われたのである、――
是の、
『般若波羅蜜』を、
『受持せねばならない!』、と。
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此中說受持因緣。修諸功德增益諸天。減損阿修羅。三寶不斷六波羅蜜等諸功德出現於世。 |
此の中に、受持の因縁を説かく、『諸の功徳を修めて、諸天を増益し、阿修羅を減損し、三宝断ぜずして、六波羅蜜等の諸の功徳、世に出現す』、と。 |
此の中に、
『受持の因縁』を、こう説かれている、――
諸の、
『功徳を修めれば!』、
『諸天を増益して!』、
『阿修羅』を、
『減損することになり!』、
『三宝が、断絶しない!』が故に、
『六波羅蜜等の諸功徳』が、
『世間』に、
『出現する!』、と。
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爾時佛可諸天讚告釋言。汝受持是般若波羅蜜。 |
爾の時、仏は、諸天の讃ずるを可として、釈に告げて言わく、『汝は、是の般若波羅蜜を受持せよ』、と。 |
爾の時、
『仏』は、
『諸天』が、
『讃じる!』のを、
『可とされ( to agree/approve )!』、
『釈提桓因に告げて!』、こう言われた、――
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此中說因緣。若阿修羅生惡心。欲共三十三天鬥。汝爾時讀誦般若者惡心即滅。若二陣相對時。讀誦般若者。阿修羅即退去。 |
此の中に因縁を説かく、『若し阿修羅、悪心を生じて、三十三天と共に闘わんと欲せんに、汝、爾の時、般若を読誦せば、悪心即ち滅せん。若し二陣相対する時、般若を読誦せば、阿修羅は即ち退去せん』、と。 |
此の中に、
『因縁』を、こう説かれている、――
若し、
『阿修羅』が、
『悪心を、生じて!』、
『三十三天』と、
『共に、闘おうとすれば!』、
爾の時、
お前が、
『般若波羅蜜を読誦すれば!』、
『悪心』が、
『即ち( immediately )、滅するだろう!』。
若し、
『二陣が相対する( to face each other )!』時、
『般若波羅蜜を読誦すれば!』、
『阿修羅』は、
『即ち、退去するだろう!』、と。
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問曰。若爾者何以不常誦般若令阿修羅惡心不生。何故乃使兩陣相對。 |
問うて曰く、若し爾らば、何を以ってか、常に般若を誦して、修羅の悪心をして、生ぜざらしめざる。何の故にか、乃ち両陣をして、相対せしむ。 |
問い、
若し、爾うならば、――
何故、
常に、
『般若波羅蜜を読誦して!』、
『阿修羅の悪心』を、
『生じさせないようにしないのですか?』。
何故、
乃ち( however )、
『諸天と、阿修羅』の、
『両陣』を、
『相対させるのですか?』。
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答曰。諸天多著福樂染欲心利。雖知般若有大功德。不能常誦故。又以忉利天不淨業因緣故。致有怨敵不得不鬥。 |
答えて曰く、諸天は多く福楽に著し、染欲の心利なれば、般若に大功徳有るを知ると雖も、常に誦すること能わざるが故なり。又忉利天は、不浄業の因縁なるを以っての故に、怨敵有るを致して、闘わざるを得ず。 |
答え、
『諸天』は、
『福楽に著すことが、多く!』、
『染欲の心』が、
『利い!』ので、
『般若波羅蜜』には、
『大功徳が有る!』と、
『知りながら!』、
常に、
『般若波羅蜜』を、
『誦することができないからである!』。
又、
『忉利天( 三十三天)という!』、
『不浄業の因縁』の故に、
『有る怨敵』を、
『致す( to incur )!』ので、
『闘わざるをえないのである!』。
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諸天命欲終時五死相現。一者華鬘萎。二者腋下汗出。三者蠅來著身。四者見更有天坐己坐處。五者自不樂本坐。 |
諸天の命の終らんと欲する時、五死相現わる。一には華鬘萎(しぼ)む。二には腋下に汗出づ。三には蝿来たりて身に著く。四には更に天有りて、己の坐処に坐るを見る。五には自ら本坐を楽しまず。 |
『諸天』は、
『命が終わろうとする!』時、
『五死相が現れる!』、――
一には、
『華鬘が、萎れる!』、
二には、
『腋下に!』、
『汗が出る!』、
三には、
『蝿が来て!』、
『身に著く!』、
四には、
更に、
『有る天が、己の坐処に坐っている!』のが、
『見える!』、
五には、
自らも、
『本来の、坐処に坐ること!』を、
『楽しまない!』。
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参考:『衆経撰雑譬喩巻1』:『昔有天人食福欲盡。七證自知。一者 頭上華萎。二者頸中光滅。三者形身損瘦。四者腋下汗出。五者蠅來著身。六者塵土坌衣。七者自然去離本座。自知福盡下生世間貧窮家與疥癩母豬作子。愁憂不樂。更有一天人來問。汝何以不樂。答曰。吾壽將終。下生為疥癩母豬作子。是故愁耳。彼天曰。釋迦文佛在忉利天宮為母說法當往歸依。及比丘僧。可得免苦。便往詣佛所志心歸命。七日之後壽盡。來生世間大長者家。母妊娠後恒聞三歸聲。至十月滿乃生墮地。長跪叉手歸命佛法僧。其母驚謂是不祥。便欲殺之。思惟言。長者之子不可便爾。罪我不少。即往白長者具說此意。長者言。人生居世不知歸命三尊。而生此兒。纔生已知三尊。將是神人。好養之勿怪也。此兒之福才聰特異。父母愛重。至年五歲與同輩道邊戲。時舍利弗目連過前為作禮。舍利弗曰。未見小兒作禮如此。兒白道人。不相識耶。舍利弗。即入定觀其本相。乃知是彼天人。便長跪詣舍利弗目連。願尊為請佛及僧。明日造鄙舍食。即便許之。兒歸白父母言。向請舍利弗目連。願世尊明日屈意飯食。父母歡喜即為竭財上膳食具。明日佛將諸大眾往到其家。兒及父母迎佛作禮。佛即就座。行水下食須臾已訖。佛為說法。父母及兒皆得無所從來法忍。百千天人發無上正真道意。經言。能竭慈可謂如此矣』 |
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諸天見是死相念惜天樂。見當生惡處心懷憂毒。爾時若聞般若波羅蜜實相諸法虛誑無常空寂信是佛法。心清淨故還生本處。 |
諸天、是の死相を見るに、天楽を念じて惜み、当生の悪処を見て、心に憂毒を懐く。爾の時、若し般若波羅蜜の実相を聞いて、諸法の虚誑にして、無常、空寂なる、是の仏法を信ずれば、心清浄たるが故に、還って本処に生ず。 |
『諸天』は、
是の、
『死相を見る!』と、
『生ずべき!』、
『悪処を見て!』、
『心』に、
『憂毒を懐くことになる!』が、
爾の時、
若し、
『般若波羅蜜という!』、
『実相』を、
『聞いて!』、
『諸法は、虚誑、無常、空寂であるという!』、
『心が、清浄となる!』が故に、
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是天人不但還生本處。以聞般若故。世世受福樂。漸成無上道。此中因緣如經說。般若波羅蜜為大明咒者是。 |
是の天、人は但だ、還た本処に生ずるのみにあらず、般若を聞くを以っての故に、世世に福楽を受け、漸く無上道を成ず。此の中の因縁は、経に説くが如く、『般若波羅蜜を大明咒と為す』者是れなり。 |
是の、
『天人』は、
但だ、
『本処』に、
『還って、生じるだけでなく!』、
『般若波羅蜜を聞いた!』が故に、
世世に、
『福楽』を、
『受けることになり!』、
漸く( gradually )、
『無上道』を、
『成ずるのである!』。
此の中の、
『因緣』とは、
『経に、説かれたような!』、
『般若波羅蜜とは、大明咒である!』が、
『是れである!』。
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問曰。釋提桓因何以故。名般若為大明咒。 |
問うて曰く、釈提桓因は、何を以っての故にか、般若を名づけて、大明咒と為せる。 |
問い、
『釈提桓因』は、
何故、
『般若波羅蜜とは、大明咒である!』と、
『称するのですか?』。
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答曰。諸外道聖人。有種種咒術利益人民。誦是咒故能隨意所欲。使諸鬼神諸仙人有是咒故。大得名聲。人民歸伏 |
答えて曰く、諸の外道、聖人には、種種の咒術有りて、人民を利益す。是の咒を誦するが故に、能く意の欲する所に随いて、諸の鬼神を使う。諸の仙人は、是の咒有るが故に、大いに名声を得て人民、帰伏す。 |
答え、
諸の、
『外道や、聖人』には、
種種の、
『咒術が有って!』、
『人民』を、
『利益する!』が、
是の、
『咒を、誦する!』が故に、
『欲する!』所が、
『意のままになり!』、
諸の、
『鬼神』を、
『使うことができる!』。
諸の、
『仙人』には、
是の、
『咒が有る!』が故に、
『名声』を、
『大いに得て!』、
是の、
『仙人』に、
『人民』が、
『帰伏するのである!』。
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貴咒術故。是以帝釋白佛言。諸咒術中般若波羅蜜是大咒術。何以故。能常與眾生道德樂故。餘咒術樂因緣能起煩惱。又不善業故墮三惡道。 |
呪術を貴ぶが故に、是を以っての帝釈の仏に白して言さく、『諸の咒術中、般若波羅蜜は、是れ大咒術なり。何を以っての故に、能く常に、衆生に道徳の楽を与うるが故なり。余の咒術は、楽の因縁なるも、能く煩悩を起し、又不善業の故に三悪道に堕つればなり』、と。 |
『咒術を貴ぶ!』が故に、
『帝釈』は、
『仏に白して!』、こう言った、――
諸の、
『咒術』中、
『般若波羅蜜』は、
『大咒術である!』。
何故ならば、
『道の徳という!』、
『楽』を、
常に、
『衆生』に、
『与えることができるからである!』。
餘の、
『咒術』は、
『楽の因縁である!』が、
『煩悩』を、
『起させるものであり!』、
又、
『不善業を起す!』が故に、
『三悪道』に、
『堕ちるのである!』。
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復次餘咒術。能隨貪欲瞋恚自在作惡。 |
復た次ぎに、余の咒術は、能く貪欲、瞋恚に随いて、自在に悪を作す。 |
復た次ぎに、
余の、
『咒術』は、
『貪欲や、瞋恚に!』、
『随わせ!』、
自在に、
『悪』を、
『作させるものである!』。
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自在(じざい):梵語vazitA等の訳。主権的力、他に束縛されない力の意。 |
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是般若波羅蜜咒。能滅禪定佛道涅槃諸著。何況貪恚麤病。是故名為大明咒無上咒無等等咒。 |
是の般若波羅蜜の咒は、能く、禅定、仏道、涅槃の諸の著を滅す。何に況んや、貪、恚の麁病をや。是の故に、名づけて大明咒、無上咒、無等等咒と為す。 |
是の、
『般若波羅蜜という!』、
『咒』は、
『禅定や、仏道や、涅槃という!』、
諸の、
『著』を、
『滅することができる!』。
況して、
『貪欲や、瞋恚のような!』、
『麁な病( a coarse disease )』を、
『滅しないはずがない!』。
是の故に、
『般若波羅蜜』を、
『大明咒、無上咒、無等等咒』と、
『称するのである!』。
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復次是咒能令人離老病死。能立眾生於大乘。能令行者於一切眾生中最大。是故言大咒。能如是利益故名為無上。 |
復た次ぎに、是の咒は、能く人をして、老病死を離れしめ、能く衆生をして、大乗に立たしめ、能く行者をして、一切の衆生中の最大ならしむれば、是の故に『大咒』と言い、能く是の如く利益するが故に名づけて、『無上』と為す。 |
復た次ぎに、
是の、
『咒』は、
『人』を、
『老病死より!』、
『離れさせて!』、
『衆生』を、
『大乗』に、
『立たせ!』、
『行者』を、
『一切の衆生』中の、
『最大にさせる!』ので、
是の故に、
『大咒』と、
『言うのであり!』、
是のように、
『衆生を利益することができる!』が故に、
『無上』と、
『称するのである!』。
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先有仙人所作咒術。所謂能知他人心咒。名抑叉尼。能飛行變化咒。名揵陀梨。能住壽過千萬歲咒。於諸咒中無與等。 |
先に、仙人の作す所の咒術有り、謂わゆる能く、他人の心を知る咒を、抑叉尼と名づけ、能く飛行し変化する咒を、揵陀梨と名づく。能く寿を住むること、千万歳を過ぐる咒は、諸の咒中に与(とも)に等しき無し。 |
先に、
『仙人の作す!』所の、
『咒術が有って!』、
謂わゆる、
『他人の心を知らせる!』、
『飛行、変化させる!』、
『寿を住めて、千万億歳を過ぎさせる!』、
『咒』は、
『諸の咒』中に於いて、
『無与等である!』。
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抑叉尼(よくしゃに):『翻梵語巻1』に、『応に伊叉尼と云うべし、訳に伊叉尼と曰うは見なり』と。
揵陀梨(けんだり):『翻梵語巻1』に、『亦た揵陀羅と云う、訳に揵と曰うは地なり、陀梨は持なり』と。
無与等(むよとう):梵語asamaの訳。無等に同じ。 |
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於此無等咒術中。般若波羅蜜過出無量故。名無等等。 |
此の無等の咒術中に於いて、般若波羅蜜の過出すること無量なるが故に、『無等等』と名づく。 |
此の、
『無等の咒術』中に於いて、
『般若波羅蜜』は、
『無量に!』、
『過出(超越)する!』が故に、
是れを、
『無等等』と、
『称する!』。
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無等等(むとうとう):梵語asamasamaの訳。無等中に於いて無等なりの意。 |
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復次諸佛法名無等。般若波羅蜜。得佛因緣故言無等等。 |
復た次ぎに、諸の仏法を『無等』と名づけ、般若波羅蜜は、仏を得る因縁なるが故に、『無等等』と言う。 |
復た次ぎに、
諸の、
『仏』の、
『般若波羅蜜』は、
『仏』を、
『得る!』為めの、
『因縁である!』、
故に、
『無等等』と、
『言う!』のである。
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復次諸佛於一切眾生中名無等。是般若咒術佛所作故。名無等等咒。 |
復た次ぎに、諸の仏は、一切の衆生中に於いて、無等と名づけ、是の般若の咒術は、仏の作したもう所なるが故に、無等等の咒と名づく。 |
復た次ぎに、
諸の、
『仏』を、
『一切の衆生』中に、
『無等である!』と、
『称する!』が、
是の、
『般若波羅蜜という!』、
『咒術』は、
『仏に!』、
『作られた!』が故に、
是れを、
『無等等咒』と、
『称するのである!』。
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復次此經中自說三咒因緣。所謂是咒能捨一切不善法。能與一切善法。佛順其所歎故。言如是如是。亦更廣其所讚。所謂因般若故。出生十善道乃至諸佛。 |
復た次ぎに、此の経中に、自ら三咒の因縁を説く。謂わゆる『是の咒は、能く一切の不善法を捨て、能く一切の善法を与(あずか)ればなり』、と。仏は、其の歎ずる所に順じたもうが故に、『是の如し、是の如し』と言い、亦た更に、其の讃ずる所を広めたもう。謂わゆる、『般若に因るが故に、十善道、乃至諸仏を出生す』、と。 |
復た次ぎに、
『釈提桓因』は、
此の、
『経』中に、
自ら、
『三咒の因縁』を、
『説いている!』。
謂わゆる、
是の、
『咒』は、
『一切の不善法を捨てさせて!』、
『一切の善法に!』、
『与らせる( let be friend with )からである!』、と。
『仏』は、
『釈提桓因』の、
『歎じる!』所に、
『順じて!』、こう言われると、――
その通りだ!
その通りだ!、と。
亦た、
『釈提桓因』の、
『讃じる!』所を、
『更に、広げられた!』。
謂わゆる、
『般若波羅蜜に因る!』が故に、
『十善道、乃至諸仏』を、
『出生させるのである!』、と。
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是般若波羅蜜屬菩薩故。佛說譬喻。諸佛能大破無明闇故如滿月。菩薩破闇不如故如星宿。如夜中有所見。皆是星月力。世間生死夜中有所知見。皆是佛菩薩力。 |
是の般若波羅蜜は、菩薩に属するが故に、仏の譬喩を説きたまわく、『諸の仏は、能く無明の闇を大破するが故に、満月の如し。菩薩は闇を破ること如かざるが故に星宿の如し。夜中に見る所の有るは、皆、是れ星、月の力なるが如く、世間の生死の夜中に、知見する所有るは、皆是れ仏、菩薩の力なり』、と。 |
是の、
『般若波羅蜜』は、
『菩薩』に、
『属する!』が故に、
『仏』は、
『譬喩』を、こう説かれた、――
『諸仏』は、
『無明という!』、
『闇』を、
『大破させる!』が故に、
譬えば、
『満月のようであり!』、
『菩薩』は、
『闇』を、
『破ることでは!』、
『及ばない!』が故に、
譬えば、
『星宿のようである!』が、
『夜』中でも、
『見る所が、有る!』のは、
皆、
『星や、月の!』、
『力であるように!』、
『世間の生死という!』、
『夜』中に、
『知見する!』所が、
『有る!』のは
皆、
『仏や、菩薩の!』、
『力である!』、と。
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若世無佛。爾時菩薩說法度眾生。著人天樂中。漸漸令得涅槃樂。菩薩所有智慧。皆是般若波羅蜜力。 |
若し世に仏無くんば、爾の時、菩薩は法を説いて、衆生を度し、人、天の楽中に著け、漸漸に涅槃の楽を得しむ。菩薩の有らゆる智慧は、皆、是れ般若波羅蜜の力なり。 |
若し、
『世に、仏が無ければ!』、
爾の時、
『菩薩』は、
『法を説いて!』、
『衆生を度しながら!』、
『人、天の楽』中に、
『著け( to put on )!』、
漸漸に( gradually )、
『涅槃の楽』を、
『得させる!』が、
『菩薩』の、
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復次是菩薩。雖行三十七品十八空知諸法畢竟不可取亦不證聲聞辟支佛道。而能還起善法。教化眾生淨佛世界。壽命具足等。皆是方便般若波羅蜜力。 |
復た次ぎに、是の菩薩は、三十七品、十八空を行じて、諸法の畢竟不可取なるを知ると雖も、亦た声聞、辟支仏の道を証せずして、能く還って、善法を起して、衆生を教化し、仏世界を浄めて、寿命を具足す等、皆、是れ方便にして、般若波羅蜜の力なり。 |
復た次ぎに、
是の、
『菩薩』は、
『三十七品や、十八空を行って!』、
『諸法』は、
『畢竟じて、取ることができない( cannot be appropriated )!』と、
『知りながら!』、
亦た、
『声聞や、辟支仏の道』を、
『証することもない!』し、
還って、
『善法を起させて( to arize the good dharma )!』、
『衆生を教化し!』、
『仏世界を浄めて!』、
『寿命』を、
『具足する!』等は、
皆、
『方便という!』、
『般若波羅蜜』の、
『力である!』。
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若是人能受持般若。乃至正憶念。得今世後世功德。今世功德者。所謂終不中毒死等。 |
若し、是の人、能く般若を受持、乃至正憶念せば、今世後世の功徳を得ん、今世の功徳とは、謂わゆる終に毒に中りて死せず等なり。 |
若し、
是の、
『人』が、
『般若波羅蜜を、受持して!』、
乃至、
『正しく!』、
『憶念させたならば!』、
即ち、
『今世、後世の功徳』を、
『得ることになる!』。
『今世の功徳』とは、
謂わゆる、
『毒に、中っても!』、
『終に、死なない等である!』。
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問曰。先已說不橫死。今何以更說。 |
問うて曰く、先に已に横死せざるを説く。今は何を以ってか、更に説く。 |
問い、
先に、已に、
『横死しない!』と、
『説きながら!』、
今、何故、
『更に!』、
『説くのですか?』。
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答曰。先已說般若波羅蜜。不一會中說。此為後來者更為說。 |
答えて曰く、先に已に、『般若波羅蜜は、一会中に説かず』、と説けり。此れは、後に来たる者の為に、更に説かれたり。 |
答え、
先に已に、こう説いたが、――
『般若波羅蜜』は、
『一会』中に、
『説かれたものではない!』と、
此れは、
『後に、来た者の為に!』、
『更に、説かれたのである!』。
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復次刀毒水火。有二種有他作有自作。先說他加兵毒水火等。今為不自傷。何以知之。次說四百四病故。知上雖說人不能得其便。不說其人還恭敬供養。 |
復た次ぎに、刀、毒、水、火に、二種有り、他の作す有り、自ら作す有り。先には、他の加うる兵、毒、水、火等を説き、今は自ら傷つけられず。何を以ってか、之を知る。次に四百四病を説くが故に知るらく、上には『人は、其の便を得る能わず』と説くと雖も、『其の人、還って恭敬し、供養す』とは説かず。 |
復た次ぎに、
『刀、毒、水、火の害』には、
『二種有り!』、
有るいは、
『他が!』、
『害を作し!』、
有るいは、
『自ら!』、
『害を作すのである!』が、
先に、
『他が!』、
『兵、毒、水、火等を加えること!』を、
『説かれた!』が、
今は、
『自ら!』、
『傷つけられることもない!』と、
『説かれたのである!』。
何故、
之を、知るかというと、――
『四百四病に、中たることもない!』と、
『説かれた!』ので、
こう知るからである、――
上には、
『人』は、
其の、
『便を、得ることができない!』とは、
『説かれた!』が、
『其の人』が、
還って、
『恭敬し、供養する!』とは、
『説かれなかった!』、と。
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四百四病者。四大為身常相侵害。一一大中百一病起。冷病有二百二。水風起故。熱病有二百二。地火起故。火熱相地堅相。堅相故難消。難消故能起熱病。血肉筋骨骸髓等地分。 |
四百四病とは、四大は、身を為すも、常に相侵害すれば、一一の大中に百一の病起る。冷病には、二百二有り、水、風起すが故なり。熱病にも、二百二有り、地、火起すが故なり。火の熱相と、地の堅相とは、堅相の故に消し難く、消し難きが故に、能く熱病を起す。血肉筋骨骸髄等は地の分なり。 |
『四百四の病』とは、――
『四大』が、
『身と為る!』と、
常に、
『四大が!』、
『互に、侵害するので!』、
『一一の大』中より、
『百一の病』が、
『起る!』。
『冷病に有る!』、
『二百二の病』は、
『水、風』が、
『起すからであり!』、
『熱病に有る!』、
『二百二の病』は、
『地、火』が、
『起すからである!』。
『火の熱相、地の堅相』は、
『堅相』の故に、
『消すこと!』が、
『難しく!』、
『消し難い!』が故に、
『熱病』を、
『起させる!』。
『身』の、
『血肉、筋骨、骸髓』等は、
『四大』中の、
『地の分である!』。
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除其業報者。一切法和合因緣生無有作者。無有作者故必受業報。佛所不能救。何況般若。必受業報不必受業報先已說。 |
其の業報を除くとは、一切の法は和合因縁の生にして、作者有る無し。作者有る無きが故に、必ず業報を受け、仏の救う能わざる所なり。何に況んや、般若をや。必ず業報を受くると、必ずしも業報を受けざるとは、先に已に説けり。 |
『其の業報を除く!』とは、――
『一切の法』は、
『和合因緣の生であり!』、
『作者』が、
『無く!』、
『作者が無い!』が故に、
『業報』を、
『必ず、受ける!』ので、
是の、
『法』は、
『仏の!』、
『救うことのできない所である!』。
況して、
『般若波羅蜜に!』、
『救われるはずがなく!』。
必ず、
『受けねばならない!』、
『業報』と、
必ずしも、
『受けることのない!』、
『業報』は、
先に、
已に、
『説いた通りである!』。
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参考:『大智度論巻24』:『復次二種業。必受報業不必受報業。必受報業不可得離。或待時待人待處受報。如人應共轉輪聖王受福。待轉輪聖王好世。出是時。乃受是為待時。待人者。人即是轉輪聖王。待處者轉輪聖王所出處。復次是必受報業。不待技能功勳。若好若醜不求自來。如天上生人福樂自至地獄中人罪苦自追。不待因緣此業深重故。復次必受報業。如毘琉璃軍殺七萬二千諸得道人及無量五戒優婆塞。如目連等大神通人所不能救。如薄拘羅後母投著火中湯中水中而不死。如佛遊諸國。雖出家行乞不須膳供。而五百乘車載王所食。葉中生粳米。隨飯百味羹。如是等善惡業必受。餘者不必受。』 |
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官事起者。誦般若波羅蜜力故隨起皆滅。 |
官事起こるとは、般若波羅蜜を誦する力の故に、起るに随いて、皆滅するなり。 |
『官事が起きる!』とは、――
『般若波羅蜜』を、
『誦する!』、
『力』の故に、
『官事の起るに随い!』、
皆、
『滅するのである!』。
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問曰。先說人不能得便。今何以復更說。 |
問うて曰く、先には、『人は便を得る能わず』と説く、今は何を以ってか、復た更に説く。 |
問い、
先には、
『人』は、
『便( the chance )を、得ることができない!』と、
『説かれたのに!』、
今、
何故、
復た( again )、
『更に( newly )、説かれたのですか?』。
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答曰。先雖說人不能得便。不說國王大臣等既不能得便還復恭敬供養。何以故。是菩薩常有慈悲喜捨心。向眾生故。 |
答えて曰く、先には、『人は、便を得る能わず』と説くと雖も、『国王、大臣等は、既に便を得る能わざれば、還って復た恭敬し、供養す』とは説かず。何を以っての故に、是の菩薩は、常に慈悲喜捨の心有りて、衆生に向くるが故なり。 |
答え、
先には、
『人』が、
『便を、得られない!』とは、
『説かれた!』が、
『国王、大臣』等が、
既に、
『便』を、
『得られない!』ので、
還って、
『復た、恭敬、供養する!』とは、
『説かれなかった!』。
何故ならば、
是の、
『菩薩』には、
常に、
『慈、悲、喜、捨の心が有り!』、
『衆生』に、
『向けられているからである!』。
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後世功德者。世世所生常不離十善道等。是故常不墮惡道。 |
後世の功徳とは、世世に生ずる所は、常に十善道等を離れず、是の故に、常に悪道に堕ちず。 |
『後世の功徳』とは、――
『世世の所生( a born being )』が、
是の故に、
常に、
『悪道』に、
『堕ちることがないのである!』。
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是人折伏惡心故受身完具。不生下賤等家。學佛所學道故得變化身。似佛有三十二相八十隨形好。 |
是の人は、悪心を折伏するが故に、身を受くれば完具して、下賎等の家に生まれず。仏の学ぶ所の道を学ぶが故に、身を変化するを得て、仏に似て、三十二相、八十随形好有り。 |
是の、
『人』は、
『悪心を折伏する( to prevail )!』が故に、
『身を受ければ、完具しており!』、
『下賎等の家』に、
『生まれず!』、
『仏の学ばれた道を学ぶ!』が故に、
『変化の身を得て!』、
『仏に似て!』、
『三十二相、八十随形好が有る!』。
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折伏(しゃくぶく):梵語 abhibhava の訳、圧倒する/説き伏せる/打ち勝つ/優位を占めること( overpowering, prevailing,
predominating )の義。 |
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常得化生現在佛國者。隨心所到十方世界。供養諸佛聽受諸法。教化眾生漸漸得成佛道。是故行者應聞受持乃至正憶念不離薩婆若心。如是得今世後世功德 |
常に現在の仏の国に化生するを得とは、心の到る所に随い、十方の世界に、諸仏を供養し、諸法を聴受し、衆生を教化すれば、漸漸に仏道を成ずるを得、是の故に行者は、応に聞きて受持、乃至正憶念して、薩婆若の心を離れざるべし。是の如く、今世後世の功徳を得。 |
『常に化生を得て、仏国に現在する!』とは、――
『心の趣くがままに!』、
『十方の世界』で、
『諸仏を供養して、諸法を聴受し!』、
『衆生』を、
『教化すれば!』、
漸漸に( gradually )、
『仏道』を、
『成ずることができる!』ので、
是の故に、
『行者』は、
『般若波羅蜜を聞いて!』、
『受持し!』、
乃至、
『正しく!』、
『憶念して!』、
『薩婆若に向かう!』、
『心』を、
『離れないようにしなければならない!』。
是のようにして、
『今世、後世の功徳』を、
『得るのである!』。
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