【論】問曰。此中佛觀四部眾已。何以告釋提桓因。 |
問うて曰く、此の中に、仏は、四部の衆を観已りて、何を以ってか、釈提桓因に告げたまえる。 |
問い、
此の中に、
『仏』は、
『四部の衆』を、
『観られたのに!』、
何故、
『釈提桓因』に、
『告げられたのですか?』。
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答曰。餘品中多說般若波羅蜜體。今欲讚般若功德故。命釋提桓因。譬如先以好寶示人然後讚寶所能。 |
答えて曰く、余品中には多く、般若波羅蜜の体を説く。今は、般若の功徳を讃ぜんと欲するが故に、釈提桓因に命じたまえり。譬えば、先に好宝を以って人に示し、然る後に宝の能くする所を讃ずるが如し。 |
答え、
『余品』中には、
多く、
『般若波羅蜜の体』を、
『説かれたので!』、
今、
『般若波羅蜜の功徳』を、
『讃じようとして!』、
是の故に、
『釈提桓因』に、
『命じられたのである!』。
譬えば、
先に、
その後、
『宝』の、
『所能(功能)』を、
『讃じるようなものである!』。
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復次普觀者。欲令會中眾生各知佛顧念則不自輕。不自輕。故堪任聽法。是以普觀。譬如王顧眄群下。群下則欣然自慶。 |
復た次ぎに、普く観るとは、会中の衆生の各をして、仏の顧念するを知らしむれば、則ち自ら軽んぜず、自ら軽んぜざるが故に聴法に堪任せしめんと欲したまえば、是を以って普く観たまえり。譬えば王の群下を顧眄すれば、群下則ち欣然として自ら慶ぶが如し。 |
復た次ぎに、
『普く観られた!』のは、――
『会中の衆生』の、
各々に、
『仏が顧念している!』と、
『知らせれば!』、
則ち、
『自ら!』を、
『軽んじなくなり!』、
『自ら軽んじない!』が故に、
『法を聴くこと!』に、
『堪任するだろう!』と、
『思われた!』ので、
是の故に、
普く、
『観られたのである!』。
譬えば、
『王』が、
『群下を顧眄すれば( to see and recognize )!』、
『群下は欣然として!』、
『自ら!』を、
『慶ぶ( to congratulate )ようなものである!』。
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顧念(こねん):梵語 apekSaa の訳、見廻す/心に掛ける/見守る( looking about, consideration of, regard
to )の義。
顧眄(こべん):梵語 vyavalokayati の訳、観て認める( to see and recognize )の義。
欣然(ごんねん):喜ぶさま。
自慶(じきょう):自ら目出たいと喜び祝う。 |
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說功德故。應以白衣證。白衣中釋提桓因為大。說般若者以出家人為證。出家人中是舍利弗須菩提等為大。 |
功徳を説くが故に、応に白衣を以って証すべし。白衣中には、釈提桓因を大と為せばなり。般若を説くには、出家人を以って証と為す。出家人中には、舎利弗、須菩提等を大と為す。 |
『功徳を説く!』が故に、
『白衣を用いて!』、
『功徳』を、
『証すべきであり!』、
『白衣』中には、
『釈提桓因』が、
『大だからである!』。
『般若波羅蜜を説く!』が故に、
『出家人を用いて!』、
『般若波羅蜜』を、
『証すべきであり!』、
『出家人』中には、
『舎利弗、須菩提』等が、
『大だからである!』。
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問曰。先言釋是字提婆因是天主。今佛何以不言釋。乃命言憍尸迦。 |
問うて曰く、先に言わく、『釈は、是れ字、提婆因は、是れ天主なり』と。今、仏は何を以ってか、『釈』と言わず、乃ち命じて、『憍尸迦』と言える。 |
問い、
先に、こう言った、――
『釈( zakra )は字であり!』、
『提婆因( devaanaam-indra )』は、
『天主である!』、と。
今、
『仏』は、
何故、
『釈と言わずに!』、
乃ち( unexpectedly )、
『憍尸迦( kauzika )』と、
『言われたのですか?』。
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答曰。昔摩伽陀國中有婆羅門名摩伽。姓憍尸迦。有福德大智慧。知友三十三人。共修福德命終。皆生須彌山頂第二天上。摩伽婆羅門為天主。三十二人為輔臣。以此三十三人故。名為三十三天。喚其本姓故。言憍尸迦。或言天主或言千眼等。大人喚之故稱其姓。 |
答えて曰く、昔、摩伽陀国中に婆羅門有り、摩伽と名づく。姓は憍尸迦にして、福徳の大智慧有り、知友の三十三人と共に、福徳を修め、命終して皆、須弥山頂の第二天上に生ず。摩伽婆羅門を天主と為し、三十二人を輔臣と為す。此の三十三人を以っての故に、名づけて三十三天と為し、其の本姓を喚ぶが故に、憍尸迦と言う。或いは天主と言い、或いは千眼等と言うも、大人の之を喚ぶが故に、其の姓を称す。 |
答え、
昔、
『摩伽陀国』中に、
『婆羅門が有り!』、
『摩伽と称し!』、
『姓』は、
『憍尸迦であった!』が、
『福徳』の、
『大智慧』が、
『有り!』、
『知友の三十三人と共に!』、
『福徳を修めており!』、
『命が終わる!』と、
皆、
『須弥山頂の第二天上』に、
『生まれ!』、
『摩伽婆羅門』が、
『天主と為り!』、
『三十二人』を、
『輔臣とした!』。
此の、
『三十三人』の故に、
『三十三天と称した!』ので、
其の、
『本姓を喚ぶ!』が故に、
『憍尸迦』と、
『言い!』、
或は、
『天主』と、
『言い!』、
或は、
『千眼』等と、
『言うのである!』が、
『大人が喚ぶ!』が故に、
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知友(ちゆう):知りあい。知人。 |
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此中所說般若波羅蜜者。是十方諸佛所說。語言名字書寫經卷。宣傳顯示實相智慧。何以故。般若波羅蜜無諸觀語言相。而因語言經卷。能得此般若波羅蜜。是故以名字經卷名為般若波羅蜜。此中略說佛意。 |
此の中に説く所の般若波羅蜜とは、是れ十方の諸仏の所説の語言、名字、書写、経巻の宣伝、顕示する実相の智慧なり。何を以っての故に、般若波羅蜜には、諸観、語言の相無きも、語言、経巻に因って、能く此の般若波羅蜜を得ればなり。是の故に、名字、経巻を以って、名づけて般若波羅蜜と為し、此の中に仏意を略説す。 |
此の中に説かれた、
『般若波羅蜜』とは、――
『十方の諸仏の説かれた!』、
『語言、名字、書写、経巻であり!』、
『実相の智慧』を、
『宣伝し( to give publicity )!』、
『顕示する( to demonstrate )ものである!』。
何故ならば、
『般若波羅蜜』には、
『諸観、語言の相が無いのに!』、
『語言、経巻に因って!』、
此の、
『般若波羅蜜』を、
『得ることができる!』ので、
是の故に、
『名字、経巻』を、
『般若波羅蜜』と、
『称するのであり!』、
此の中に、
『仏意』が、
『略説されているのである!』。
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宣伝(せんでん):公開する( to give publicity )。 |
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若能聞受持般若。等當得種種功德。後當廣說。 |
若し能く、般若を聞いて受持等すれば、当に種種の功徳を得べし。後に当に広く説くべし。 |
則ち、
若し、
『般若波羅蜜を聞いて!』、
『受持等をすることができれば!』、
『種種の功徳』を、
『得ることになる!』が、
是の、
『事』は、
『後に、広説せねばならない!』。
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欲度眾生為得佛道故。供養受學般若波羅蜜。是人魔若魔天不能得便。 |
衆生を度せんと欲し、仏道を得んが為の故に、般若波羅蜜を供養、受学すれば、是の人は魔、若しくは魔天も、便を得る能わず。 |
『衆生を度そうとして!』、
『仏道を得る!』為の故に、
『般若波羅蜜』を、
『供養して!』、
『受持、習学する!』ので、
是の、
『人』は、
『魔や、魔天すら!』、
『便』を、
『得ることができないのである!』。
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問曰。何者是魔。何故惱菩薩。云何得便。 |
問うて曰く、何者か是れ魔なる。何故にか、菩薩を悩ます。云何が、便を得る。 |
問い、
何者が、
『魔であり!』、
何故、
『菩薩』を、
『悩ますのですか?』。
何のように、
『便』を、
『得るのですか?』。
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答曰。魔名自在天主。雖以福德因緣生彼。而懷諸邪見。以欲界眾生是己人民。雖復死生展轉不離我界。若復上生色無色界還來屬我。若有得外道五通。亦未出我界。皆不以為憂。若佛及菩薩出世者。化度我民拔生死根。入無餘涅槃永不復還。空我境界。是故起恨讎嫉。 |
答えて曰く、魔を、自在天主に名づく。福徳の因縁を以って、彼(かしこ)に生ずと雖も、諸の邪見を懐きて以(おも)うらく、『欲界の衆生は、是れ己の人民になり、復た死生を展転すと雖も、我が界を離れず。若しは、復た色、無色界に上生するも、還(ま)た来たりて我れに属す。若しは、外道の五通を得ること有るも、亦た未だ我が界を出でずして、皆、以って憂と為さず。若し仏、及び菩薩出世せば、我が民を化度して、生死の根を抜き、無余涅槃に入れて、永く復た還らしめず、我が境界を空しからしめん。是の故に恨、讎、嫉を起す。』と。 |
答え、
『魔』とは、
『自在天の主であり!』、
諸の、
『邪見を懐いて!』、こう言う、――
『欲界の衆生』は、
『己の人民である!』が故に、
復た、
『死生を展転しても!』、
わたしの、
『領界』を、
『離れることなく!』、
若し、
復た、
『色、無色界に上生しても!』、
還って来て、
わたしに、
『属することになり!』、
若し、
有るいは、
『外道の五通を得ても!』、
わたしの、
『領界』を、
『出られない!』が故に、
皆、
若し、
『仏や、菩薩』が、
『世に出て!』、
わたしの、
『人民を化度して!』、
『生死の根』を、
『抜き!』、
『無余涅槃に入らせて!』、
復た、
『永く!』、
『還ってこなければ!』、
わたしの、
『境界』を、
『空しくするだろう!』、と。
是の故に、
『恨、讎、嫉』を、
『起すのである!』。
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讎(じゅ):こたえ。あだ。しかえし。 |
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又見欲界人皆往趣佛不來歸己。失供養故心生嫉妒。是以以佛菩薩名為怨家。 |
又欲界の人を見れば、皆、仏に往趣して己に来帰せざれば、供養を失うが故に、心に嫉妬を生じ、是を以って、仏、菩薩を以って名づけて、怨家と為す。 |
又、
『欲界の人を見る!』と、
皆、
『仏に往趣して!』、
『己の所に来て!』、
『帰依する!』者が、
『無く!』、
『供養を失う!』が故に、
是の故に、
『仏、菩薩』を、
『怨家』と、
『呼ぶのである!』。
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是菩薩入法位。得法性生身。魔雖起惡不能壞敗。若未得阿鞞跋致者。魔則種種破壞。 |
是の菩薩の法位に入り、法性生身を得るに、魔は悪を起すと雖も、壊敗せしむべからず。若し未だ、阿鞞跋致を得ざれば、魔は、則ち種種に破壊せしむ。 |
是の、
『菩薩』が、
『法位に入り!』、
『法性生身』を、
『得る!』と、
『魔』が、
『悪事を起しても!』、
是の、
『菩薩』を、
『壊敗することはできない!』。
若し、
『阿鞞跋致を得ていなければ!』、
『魔』は、
種種に、
『悪を起して!』、
『破壊することになる!』。
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若菩薩一心不惜身命。有方便求佛道者。十方諸佛及諸大菩薩皆共護持。以是因緣故能成佛道。 |
若し菩薩、一心に身命を惜まず、方便有りて仏道を求めば、十方の諸仏、及び諸大菩薩は、皆共に護持せん。是の因縁を以っての故に、能く仏道を成ず。 |
若し、
『菩薩』が、
『一心』に、
『身、命』を、
『惜まず!』、
『方便を有して!』、
『仏道』を、
『求めれば!』、
『十方の諸仏や、諸大菩薩』が、
是の、
『因縁』の故に、
『仏道』を、
『成就する( to achieve )ことができる!』。
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若為菩薩而有懈怠貪著世樂。不能專心勤求佛道。是則自欺亦欺十方諸佛及諸菩薩。所以者何。自言我為一切眾生故求佛道。而行雜行壞菩薩法。以是罪故。諸佛菩薩所不守護。魔得其便。 |
若し菩薩と為るに、而も懈怠有りて、世楽を貪著せば、専心に、仏道を勤求する能わざらん、是れ則ち自ら欺き、十方の諸仏、及び諸菩薩を欺く。所以は何んとなれば、自ら、『我れは一切の衆生の為の故に、仏道を求めん。』と言い、而も雑行を行じて、菩薩法を壊る。是の罪を以っての故に、諸仏、菩薩の守護せざる所となり、魔は、其の便を得ればなり。 |
若し、
『菩薩と為っても!』、
有るいは、
『懈怠して!』、
『世楽』に、
『貪著し!』、
『専心して!』、
『仏道』を、
『勤求することができなければ!』、
是れは、
則ち、
『自らを欺いて!』、
『十方の諸仏や、諸菩薩』を、
『欺くことになる!』。
何故ならば、
自ら、
わたしは、
『一切の衆生の為』の故に、
『仏道を求める!』と、
『言いながら!』、
『雑行を行って!』、
『菩薩の法』を、
『壊るので!』、
是の、
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所以者何。一切聖人已入正位。一心行道深樂涅槃。魔入邪位愛著邪道。邪正相違。是故憎嫉正行。狂愚自高喚佛沙門瞿曇。佛稱其實名為弊魔。以相違故名為怨家。 |
所以は何んとなれば、一切の聖人は、已に正位に入りて、一心に道を行じ、深く涅槃を楽しむも、魔は邪位に入りて、邪道を愛著すれば、邪正相違し、是の故に正行を憎嫉す。狂愚は、自ら高ぶりて、仏を、『沙門瞿曇』と喚(よ)び、仏は、其の実を称えて、名づけて『弊魔』と為したまえば、相違するを以っての故に名づけて、怨家と為す。 |
何故ならば、
『一切の聖人』は、
『正位に入る!』と、
『一心に!』、
『道』を、
『行いながら!』、
『深く!』、
『涅槃』を、
『楽しむのに!』、
『魔』は、
『邪、正が相違する!』ので、
是の故に、
『正行を憎嫉し!』、
『狂愚し!』、
『自高して!』、
『仏』を、
『沙門瞿曇』と、
『喚び!』、
『仏』は、
其の、
『実を称して!』、
『弊魔』と、
『呼ばれ!』、
『正、邪が相違する!』が故に、
『怨家』と、
『呼ばれるのである!』。
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弊魔(へいま):梵語魔羅maaraの略語魔と、害する意の弊との梵漢併称。殺す者の義。『大智度論巻5下注:魔』参照。 |
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如經說。魔有四種。一者煩惱魔。二者五眾魔。三者死魔。四者自在天子魔。 |
経に説くが如きは、魔に四種有り、一には煩悩魔、二には五衆魔、三には死魔、四には自在天子魔なり。 |
『経』には、こう説かれている、――
『魔』には、
『四種有り!』、
一には、
『煩悩という!』、
『魔!』、
二には、
『五衆という!』、
『魔!』、
三には、
『死という!』、
『魔!』、
四には、
『自在天子という!』、
『魔である!』。
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此中以般若力故。四魔不能得便。得諸法實相。煩惱斷則壞煩惱魔。天魔亦不能得其便。入無餘涅槃故。則壞五眾魔及死魔。 |
此の中の般若の力を以っての故に、四魔は、便を得る能わず、諸法の実相を得て、煩悩断ずれば、則ち煩悩魔を壊り、天魔も、亦た其の便を得る能わず、無余涅槃に入るが故に、則ち五衆魔、及び死魔を壊る。 |
此の中の、
『般若の力』の故に、
『諸法の実相を得れば!』、
『煩悩が断じられる!』が故に、
『天魔』も、
其の、
『便』を、
『得ることができなくなり!』、
『無余涅槃に入る!』が故に、
則ち、
『五衆の魔、死の魔』が、
『壊れることになる!』。
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参考:『大方等大集経巻9』:『世尊。云何菩薩能壞一切諸魔伴黨。佛言。菩薩若能不求諸法。爾時則能壞破魔眾不求一切境界因緣。善男子。有四種魔。一者陰魔。二者煩惱魔。三者死魔。四者天魔。善男子。若能觀法如幻相者。是人則能破壞陰魔。若見諸法悉是空相。是人則能壞煩惱魔。若見諸法不生不滅。是人則能破壞死魔。若除憍慢則壞天魔。復次善男子。若知苦者能壞陰魔。若遠離集破煩惱魔。若證滅者則壞死魔。若修道者則壞天魔。復次善男子。若見一切有為法苦則壞陰魔。若見諸法真實無常壞煩惱魔。若見諸法真實無我能壞死魔。若見諸法寂靜涅槃能壞天魔。復次善男子。菩薩若能於身無貪。捨身施時迴向菩提能壞陰魔。施時遠離慳貪之心壞煩惱魔。若觀財物一切無常能壞死魔。為眾生故修悲布施能壞天魔。復次善男子。若有菩薩不為我見受持淨戒能壞陰魔。不為有貪受持淨戒壞煩惱魔。若為遠離生死過失受持淨戒能壞死魔。若能生心令毀禁者悉持淨戒。受持淨戒則壞天魔。復次善男子。若有菩薩不見我忍我修於忍則壞陰魔。不見眾生有修忍者壞煩惱魔。不見生死則壞死魔。不見菩提則壞天魔。復次善男子。若有菩薩勤修精進。其身寂靜則壞陰魔。勤行精進其心寂靜壞煩惱魔。勤行精進觀法無生能壞死魔。勤行精進為調眾生令轉生死則壞天魔。復次善男子。若有菩薩不為五陰修集禪定能壞陰魔。不著界處修集禪定壞煩惱魔。不著入處修集禪定能壞死魔。所有諸善迴向菩提能壞天魔。復次善男子。若有菩薩知陰方便能壞陰魔。知界方便壞煩惱魔。知入方便能壞死魔。以如是等種種方便迴向菩提能壞天魔。復次善男子。若有菩薩觀一切法皆是空相能壞陰魔。觀一切法悉是無相壞煩惱魔。觀一切法悉是無願能壞死魔。具是三法迴向菩提能壞天魔。復次善男子。若有菩薩觀身身處不覺不著能壞陰魔。觀受受處不覺不著壞煩惱魔。觀心心處不覺不著能壞死魔。觀法法處不覺不著能壞天魔。作如是觀終不失於菩提之心。是人則能壞破四魔。善男子。若著我者則增魔事。菩薩摩訶薩亦知有我亦知無我。若有法非有我非無我。如是則無一法增減。』 |
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云何為得便。魔及魔民來恐怖菩薩。 |
云何が、便を得と為す。魔、及び魔民の来たりて、菩薩を恐怖す。 |
『便を得る!』とは、
何を、言うのか?――
『魔や、魔民が来て!』、
『菩薩』を、
『恐怖させることである!』。
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如經中說。魔作龍身種種異形可畏之象。夜來恐怖行者。或現上妙五欲壞亂菩薩。或轉世間人心。令作大供養行者貪著供養故。則失道德。或轉人心令輕惱菩薩。或罵或打或傷或害。行者遭苦或生瞋恚憂愁。 |
経中に説くが如く、魔は、龍身、種種の異形の畏るべき像と作り、夜来たりて、行者を恐怖せしめ、或いは上妙の五欲を現して、菩薩を壊乱せしめ、或いは世間の人心を転じて、大供養を作さしむるに、行者は、供養を貪著するが故に、則ち道の徳を失い、或いは人心を転じて、菩薩を軽悩せしめ、或いは罵り、或いは打ち、或いは傷つけ、或いは害するに、行者は、苦に遭いて、或いは瞋恚、憂愁を生ず。 |
『経』中には、こう説かれている、――
『魔』は、
『龍身や、種種異形の畏るべき!』、
『象( the appearance )』と、
『作り!』、
『夜来て!』、
『行者』を、
『恐怖させ!』、
或は、
『上妙の五欲を現して!』、
『菩薩』を、
『撹乱させ!』、
或は、
『世間の人心を転じて!』、
『大供養』を、
『作させる!』と、
『行者は供養に貪著する!』が故に、
『道徳』を、
『失い!』、
或は、
『人心を転じて!』、
『軽悩させて!』、
或は、
『菩薩』を、
『罵り、打ち、傷つけ、害する!』ので、
『行者』は、
『苦に遇う!』が故に、
『瞋恚や、憂愁』を、
『生じるのである!』。
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如是等魔隨前人意所趣向因而壞之。是名得便。如魔品中廣說。 |
是の如き等の魔は、前の人の意の趣向する所に随いて、因りて之を壊る、是れを便と得と名づく。魔品中に広く説くが如し。 |
是れ等のように、
『魔』は、
『前の人』の、
『意』の、
『趣向する!』所に、
『随って!』、
此の、
『人』を、
『壊るので!』、
是れを、
『便を得る!』と、
『称する!』。
例えば、
『魔事品』中に、
『広く!』、
『通りである!』。
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問曰。魔力甚大。肉身菩薩道力尚少。云何不得便。 |
問うて曰く、魔の力は甚大にして、肉身の菩薩の道力は、尚お少なし。云何が、便を得ざる。 |
問い、
『魔』の、
『力』は、
『甚だ大きいのに!』、
『肉身の菩薩』の、
『道の力』は、
『尚お少ない( still little )!』。
何故、
『便』を、
『得られないのですか?』。
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答曰。如上說為諸佛菩薩所護故。此中佛自說因緣。是人善修諸法空。亦不著空。不著空者。云何當得便。譬如無瘡則不受毒。無相無作亦如是。 |
答えて曰く、上に説くが如く、諸仏、菩薩に護らるるが故なり。此の中に、仏は、自ら因縁を説きたまわく、『是の人は、諸法の空を善修して、亦た空に著せず。』と。空に著せざる者にして、云何が、当に便を得べき。譬えば、瘡無くんば、則ち毒を受けざるが如し。無相、無作も、亦た是の如し。 |
答え、
上に説いたように、――
諸の、
『仏や、菩薩に!』、
『守護されるからである!』。
此の中に、
『仏』は、
自ら、
『因縁』を、こう説かれている、――
是の、
『人は善く!』、
諸の、
『法は空である!』と、
『修め!』、
亦た、
『空』に、
『著することもないからである!』、と。
『空に著さなければ!』、
譬えば、
『瘡が無ければ!』、
『毒』を、
『受けないようなものである!』。
亦た、
『無相、無作』も、
『是の通りである!』。
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復次一切法實觀皆是空無相無作相。皆是空無相無作相故。則無得便。亦無受便者。是故空不應得空便。無相不應得無相便。無作不應得無作便。以一相故。如火不能滅火得水則滅。以異相故。 |
復た次ぎに、一切の法に、実を、『皆、是れ空、無相、無作なり』と観て、皆是れ空、無相、無作の相なるが故に、則ち便を得ること無し。亦た便を受くる者も無ければ、是の故に空は、応に空に便を得べからず。無相は、応に無相に便を得べからず。無作は、応に無作に便を得べからず。一相を以っての故なり。火は、火を滅する能わざれど、水を得れば、則ち滅するは、異相なるを以っての故なるが如し。 |
復た次ぎに、
『一切の法』を、
『実に観れば!』、
皆、
『空、無相、無作という!』、
『相であり!』、
皆、
『空、無相、無作の相である!』が故に、
『便を得るということ!』も、
『無く!』、
亦た、
『便を受ける!』者も、
『無い!』。
是の故に、
『空』が、
『空の便』を、
『得ることはできず!』。
『無相、無作』は、
『無相、無作の便』を、
『得ることはできない!』。
何故ならば、
『諸法』は、
『一相だからである!』。
譬えば、
『火』が、
『火を滅することができない!』のに、
『水を得れば!』、
『滅することになる!』のは、
『火と、水と!』が、
『相』を、
『異にするからであるようなものである!』。
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問曰。菩薩住三解脫門。則是受便處。與一切法相違故。空與有相違。無相與有相相違。無作與有作相違。 |
問うて曰く、菩薩は、三解脱門に住すれば、則ち是れ便を受くる処なり。一切法と相違するが故なり。空は、有と相違し、無相は、有相と相違し、無作は、有作と相違す。 |
問い、
『菩薩』が、
『三解脱門』に、
『住すれば!』、
則ち、
『菩薩』は、
『便を受ける処である!』。
何故ならば、
『空、無相、無作の三解脱門』は、
『一切の法』を、
『相違する!』が故に、
『空』は、
『有』と、
『相違する!』が故に、
『無相』は、
『有相』と、
『相違する!』が故に、
『無作』は、
『有作』と、
『相違する!』が故に、
是の故に、
『菩薩』は、
『三解脱門』に、
『住するのである!』。
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答曰。此經中佛自說三解脫門無有自性。 |
答えて曰く、此の経中に、仏は、自ら説きたまえり、『三解脱門には、自性有ること無し』と。 |
答え、
『仏』は、
自ら、
此の、
『経』中に、こう説かれている、――
『三解脱門』には、
『自性』が、
『無いのだ!』、と。
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又先論議中。說於空無相無作中亦不著。是故雖住三解脫門。魔及魔民不得其便。 |
又、先の論義中に説かく、『空、無相、無作中に於いても、亦た著せず』と。是の故に、三解脱門に住すと雖も、魔、及び魔民は、其の便を得ず。 |
又、
先の、
『論議』中には、こう説いている、――
『空、無相、無作』中にも、
亦た、
『著することがない!』、と。
是の故に、
『三解脱門に住しても!』、
『魔や、魔民』は、
其の、
『便』を、
『得られないのである!』。
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問曰。餘處皆言菩薩摩訶薩。今何以言善男子善女人。 |
問うて曰く、余の処には、皆、『菩薩摩訶薩』と言い、今は、何を以ってか、『善男子、善女人』と言う。 |
問い、
『余の処』には、
今は、
何故、
『善男子、善女人』と、
『言うのですか?』。
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答曰。先說實相智慧。難受以能受故則是菩薩摩訶薩。今說供養受持讀誦等。雜說故得稱善男子善女人。 |
答えて曰く、先には、実相の智慧の受け難きを説くに、能く受くるを以っての故に、則ち是れ菩薩摩訶薩なり。今は、供養、受持、読誦等を説くに、雑えて説くが故に、善男子善女人と称するを得。 |
答え、
先には、
『受け難い( unacceptable )!』、
『実相の智慧』を、
『受けることができる!』が故に、
是れを、
『菩薩摩訶薩と!』、
『説いたのである!』、が
今は、
『供養、受持、読誦』等を、
『雑説する!』が故に、
『善男子、善女人』と、
『称したのである!』。
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復次經中說。女人有五礙。不得作釋提桓因梵王魔王轉輪聖王佛。聞是五礙不得作佛。女人心退不能發意。或有說法者。不為女人說佛道。是故佛此間說善男子善女人。女人可得作佛。非不轉女身也。五礙者說一身事。善男子善女人義先已廣說。 |
復た次ぎに、経中に説かく、『女人には、五礙有りて、釈提桓因、梵王、魔王、転輪聖王、仏に作るを得ず。』と。是の五礙の仏と作るを得ざるを聞かば、女人の心は退きて、意を発す能わざらん、或いは、有る法を説く者は、女人の為に仏道を説かざらん。是の故に、仏の此の間に説きたまわく、『善男子善女人、女人を仏と作るを得べし、女身を転ぜざるに非ざればなり。五礙とは、一身の事を説く。』と。善男子善女人の義は、先に已に広く説けるが如し。 |
復た次ぎに、
『経』中には、こう説く、――
『女人』には、
『五礙が有り!』、
『釈提桓因、梵王、魔王、転輪聖王、仏』には、
『作ることができない!』、と。
『女人』は、
是の、
『五礙が有る!』が故に、
『仏に作れない!』と、
『聞いて!』、
『心が退没して!』、
『阿耨多羅三藐三菩提の意』を、
『発すことができなくなる!』。
或は、
有る、
『説法する!』者は、
『女人の為には!』、
『仏道』を、
『説かない!』ので、
是の故に、
『仏』は、
此の間に、こう説かれたのである、――
善男子、善女人!
『女人』は、
『仏に!』、
『作ることができる!』、
『女身』は、
『男身に!』、
『転じないということはない!』。
『五礙』とは、
『現在の一身の事』を、
『説くのである!』、と。
『善男子、善女人の義』は、
先に、
『広説した通りである!』。
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人不得便者。人名若賊若官若怨等。欲惱亂菩薩求索其便。 |
人の便を得ずとは、人を、若しは賊、若しは官、若しは怨等に名づけ、菩薩を悩乱せんと欲して、其の便を求索するなり。 |
『人が便を得ない!』とは、――
『人』とは、
『賊や、官や、怨等であり!』、
是のような、
『人』が、
『菩薩を悩乱しようとして!』、
其の、
『便』を、
『求索する( to search for )からである!』。
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求索(ぐさく):梵語 paryeSTi の訳、捜し求める/尋ねる( searching for, inquiery )の意、世俗の事を求めて努力する(
striving after worldly objects )の意。 |
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問曰。先說不得便因緣。何以但說空。今說人不得便。但說四無量心。 |
問うて曰く、先に、便を得ざる因縁を説くに、何を以ってか、但だ空を説き、今、人の便を得ざるを説くに、但だ、四無量心を説く。 |
問い、
先には、
『便を得られない!』、
『因縁』を、
『説きながら!』、
何故、
今は、
『人』が、
『便を得られない!』と、
『説きながら!』、
但だ、
『四無量心のみ!』を、
『説くのですか?』。
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参考:『大智度論巻56』:『復次憍尸迦。是善男子善女人。若人非人不能得其便。何以故。是善男子善女人。一切眾生中。善修慈心悲喜捨心。以無所得故。』 |
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答曰。有人言。先說魔若魔民。怨大故法亦大。故說空。怨小故法亦小。故說四無量心。 |
答えて曰く、有る人の言わく、『先に説く魔、若しくは魔民は、怨の大なるが故に、法も亦た大なり。故に空を説く。怨の小なるが故に、法も亦た小なり。故に四無量心を説く。』と。 |
答え、
有る人は、こう言っている、――
先に説いた、
『魔や、魔民』は、
『怨( injury )が大である!』が故に、
『法』も、
『大であり!』、
故に、
『空』を、
『説いたのである!』が、
『人』は、
『怨が小である!』が故に、
『法』も、
『小であり!』、
故に、
『四無量心』を、
『説くのである!』。
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怨(おん):◯梵語 amitra の訳、非友/敵/怨敵( not a friend, an enemy, adversary, foe )の義。◯梵語
apakaara の訳、悪/攻撃/危害/苦痛(wrong, offence, injury, hurt )、軽蔑する(despise, disdain
)の義。◯梵語 apriya の訳、不愉快な/嫌われる/冷酷な/不親切な( disagreeable, disliked, unkind, unfriendly
)の義。 |
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有人言。四無量心是菩薩常行。為集諸功德故。後以般若波羅蜜空相令除邪見。不著眾生亦不著法。是二法前後無在。 |
有る人の言わく、『四無量心は、是れ菩薩の常行にして、諸の功徳を集めんが為の故なり。後に、般若波羅蜜の空相を以って、邪見を除かしむるも、衆生に著せず、亦た法にも著せず。是の二法は前後して在ること無し。』と。 |
有る人は、こう言っている、――
『菩薩』は、
諸の、
『功徳を集める!』為の故に、
常に、
『四無量心』を、
『行いながら!』、
後に、
『般若波羅蜜の空相を用いて!』、
『衆生』の、
『邪見』を、
『除かせるが!』、
『衆生に著することもなく!』、
『法に!』、
『著することもなく!』、
是の、
『二法』が、
『前後して在るということ!』も、
『無い!』、と。
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復次上魔作恐怖事甚多。多不現本形。或現雷震或作風雨或作病痛等。是故說諸法空。令人來惡口罵詈刀杖打斫故。用四無量心。 |
復た次ぎに、上には、魔の作す恐怖の事甚だ多く、多く本形を現さず。或いは雷震を現し、或いは風雨を作し、或いは病痛を作す等なり。是の故に、諸法の空を説き、人をして来たりて悪口、罵詈、刀杖、打斫せしむるが故に、四無量心を用う。 |
復た次ぎに、
上には、
『魔の作す!』、
『恐怖の事』が、
『甚だ多く!』、
『説かれており!』、
多くは、
或は、
『魔』が、
『雷震や、風雨や、病痛等を作す!』のを、
『現すだけである!』ので、
是の故に、
『諸法は空である!』と、
『説き!』、
亦た、
『人を来させて!』、
『悪口、罵詈させたり!』、
『刀杖、打斫させる!』ので、
是の故に、
『四無量心』を、
『用いるのである!』。
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不橫死者。所謂無罪而死。或壽命未盡錯投藥故。或不順藥法。或無看病人。或飢渴寒熱等夭命。是名橫死。 |
横死せずとは、謂わゆる罪無くして死す。或いは寿命未だ尽きざるに、錯って薬を投ずるが故なり。或いは薬法に順ぜず、或いは看病人無く、或いは飢渴、寒熱等に夭命する、是れを横死と名づく。 |
『横死しない!』とは、――
謂わゆる、
或は、
『寿命が尽きていない!』のに、
『投薬』を、
『錯る!』が故に、
或は、
『薬法』に、
『順じなかった!』が故に、
或は、
『看病人』が、
『無い!』が故に、
或は、
『飢渴、寒熱』等の故に、
『夭命する( to die young )!』が、
是れが、
『横死である!』。
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夭命(ようみょう):わかじにする( to die young )。短命( early death )。 |
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菩薩從初發意來。於一切眾生中。常行檀波羅蜜。應病與藥隨病所須。拯濟孤窮隨其所乞皆給與之。於一切眾生中。悉皆平等好心供養亦行是般若波羅蜜。以是功德故不橫死。是中略說三功德已。 |
菩薩は、初の発意より来、一切の衆生中に於いて、常に檀波羅蜜を行う。病に応じて薬を与うるに、病の須うる所に随い、孤窮を拯済するに、其の乞う所に随いて、皆之を給与し、一切の衆生中に於いて、悉く皆平等の好心もて供養するも、亦た是れ般若波羅蜜を行ずるなり。是の功徳を以っての故に、横死せず。是の中には、三功徳のみを略説す。 |
『菩薩』は、
『初の発意より!』、
一切の、
『衆生』中に於いて、
常に、
『檀波羅蜜を行いながら!』、
『病に応じて!』、
『薬』を、
『与え!』、
『病』の、
『必要とする!』所に、
『随い!』、
『孤独や、貧窮を救済して!』、
其の、
『乞う!』所を、
『皆、給与し!』、
一切の、
『衆生』中に於いて、
悉く、
『皆を、平等に!』、
『好心で!』、
『供養しながら!』、
是の、
『般若波羅蜜』を、
『行うのである!』が、
是の、
『供養』の、
『功徳』の故に、
『横死することはない!』。
是の中には、
『三種の功徳』を、
『略して!』、
『説いたのである!』。
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拯済(じょうさい):すくう。救済。
孤窮(こぐう):独り者と貧乏。孤独貧窮。
已(い):やむ。のみ。 |
参考:『大智度論巻56』:『憍尸迦。是善男子善女人終不橫死。何以故。是善男子善女人。行檀波羅蜜。於一切眾生等心供給故。』 |
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三千大千世界中。諸天發心未聞般若波羅蜜者。先說善男子善女人應聞受持乃至正憶念。今說因緣。 |
三千大千世界中の諸天、発心してより、未だ般若波羅蜜を聞かざる者に、先に、『善男子善女人は、応に聞きて受持し、乃至正憶念すべし。』と説きて、今、因縁を説くなり。 |
『三千大千世界』中の、
『諸天』の、
『発心しながら!』、
未だ、
『般若波羅蜜』を、
『聞かなかった!』者に
先に、
『善男子、善女人は聞いて!』、
『受持、乃至正憶念するはずである!』と、
『説き!』、
今、
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諸天有大功德猶尚供養。何況於人。雖一切人天應聽般若。能發無上道心者。最應深心聽。所以者何。般若是佛道之本故。 |
諸天には、大功徳有るも、猶尚お供養すべし。何に況んや、人に於いてをや。一切の人、天は応に般若を聴くべしと雖も、能く無上道の心を発す者は、最も応に深心もて聴くべし。所以は何んとなれば、般若は是れ仏道の本なるが故なり。 |
『諸天』は、
『大功徳が有っても!』、
猶尚お( yet )、
『供養すべきである!』。
況して、
『人』は、
『尚更、供養すべきである!』。
『一切の人、天』は、
『般若波羅蜜を聴くべきである!』が、
『無上道の心』を、
『発すことができた!』者は、
最も、
『深心で!』、
『聴かねばならない!』。
何故ならば、
『般若波羅蜜』は、
『仏道の本だからである!』。
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問曰。此天發心。何以不聞般若。 |
問うて曰く、此の天は発心して、何を以ってか、般若を聞かざる。 |
問い、
此の、
『天は発心しながら!』、
何故、
『般若波羅蜜』を、
『聞かなかったのですか?』。
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答曰。有人言。此天前世人中發意今生天上。五欲覆心故不聞。 |
答えて曰く、有る人の言わく、『此の天は、前世の人中に発意せるも、今天上に生ずるに、五欲の心を覆えるが故に聞かず。』と。 |
答え、
有る人は、こう言っている、――
此の、
『天』は、
『前世の人中に発意して!』、
今、
『天上に生まれながら!』、
『五欲』に、
『心を覆われ!』、
是の故に、
『般若波羅蜜』を、
『聞かなかったのである!』。
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復次諸天雖發無上道心。五情利五欲。妙染著深故。視東忘西。不能求般若。色界諸天雖先聞法發心。以味著禪定深故。不能求般若。是故說不聞者應聞受持。 |
復た次ぎに、諸天は、無上道の心を発すと雖も、五情利く、五欲妙なれば、染著すること深きが故に、東を視れば西を忘れ、般若を求むる能わず。色界の諸天は、先に法を聞きて、発心すと雖も、禅定に味著すること深きが故に、般若を求むる能わず、是の故に説かく、『聞かざる者は、応に聞きて受持すべし。』と。 |
復た次ぎに、
『諸天』は、
『無上道の心を発しながら!』、
『五情が利く!』、
『五欲が妙である!』が故に、
『深く!』、
『染著し!』、
是の故に、
『東を視れば、西を忘れて!』、
『般若波羅蜜』を、
『求めることができない!』。
即ち、
『色界の諸天』は、
先に、
『法を聞いて!』、
『発心しながら!』、
『深く!』、
『禅定に味著する!』ので、
是の故に、
『般若波羅蜜』を、
『求めることができない!』。
是の故に、こう説くのである、――
『法を聞かない!』者は、
『聞いて!』、
『受持せねばならない!』、と。
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復次先說魔及魔民不能得其便。是內因緣。所謂空三昧。及四無量心。今更說不得便。是外因緣。所謂佛告諸天。汝等供養受持般若。是善男子善女人。亦受持供養是般若同事故。若魔來破汝應守護。 |
復た次ぎに、先に、『魔、及び魔民は、其の便を得る能わず』と説くは、是れ内の因縁にして、謂わゆる空三昧、及び四無量心なり。今、更に、『便を得ず』と説くは、是れ外の因縁なり。謂わゆる仏の諸天に告げたまわく、『汝等、般若を供養し、受持せば、是れ善男子善女人も、亦た是の般若を受持し、供養して、事を同じうするが故に、若しは魔来たりて、破らん、汝は、応に守護すべし。』と。 |
復た次ぎに、
先に、
『魔や、魔民』は、
其の、
『便を得られない!』と、
『説いた!』が、
是の、
『因縁』は、
『内の因縁であり!』、
謂わゆる、
『空三昧、乃至四無量心である!』。
今、
更に、
『便を得られない!』と、
『説いた!』が、
是の、
『因縁』は、
『外の因縁である!』。
謂わゆる、
『仏』は、
『諸天』に、こう告げられた、――
お前達は、
『般若波羅蜜』を、
『供養し!』、
『受持している!』が、
是の、
『善男子、善女人』も、
是の、
『般若波羅蜜を供養、受持しており!』、
『事』を、
『同じうする!』が故に、
若し、
『魔が来て!』、
『破ろうとすれ!』、
お前達が、
『守護せねばならない!』、と。
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復次受持般若者。若在空舍住。若在曠野。若在人間住。 |
復た次ぎに、般若を受持する者の、若しは空舎に在りて住まり、若しは曠野に在りて、若しは人間に在りて住まるとは、 |
復た次ぎに、
『般若波羅蜜を受持すれば!』、
『空舎に住しても!』、
『曠野に在っても!』、
『人間に住しても!』とは、――
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處空舍中多諸鬼魅及以賊寇。眾惡易來故初說。除人住處及以空舍。餘殘山澤樹林等皆是曠野。少人行故。多諸虎狼師子惡賊鬼魅。人所住處不淨故。魔及鬼神尟來諸難少故。是以後說。 |
空舎中に処すれば、多く諸の鬼魅、及以(およ)び賊寇多く、衆悪来たり易きが故に、初に説く。人の住処、及以び空舎を除きて、余残の山沢、樹林等は、皆、是れ曠野なり。人の行くこと少なきが故に、諸の虎狼、師子、悪賊、鬼魅多し。人の所住の処は、不浄なるが故に、魔、及び鬼神の来たること尟(すくな)く、諸の難少なきが故に、是を以って後に説く。 |
『空舎』中に、
『処すれば!』、
諸の、
『鬼魅や、賊寇や、衆悪』が、
『易く( easily )来る!』ことが、
『多い!』が故に、
『空舎』を、
『初に!』、
『説き!』、
『人の住処と、空舎を除けば!』、
余残の、
『山沢、樹林』等は、
皆、
『曠野であり!』、
『人』の、
『行くこと!』が、
『少ない!』が故に、
諸の、
『虎狼、師子、悪賊、鬼魅』が、
『多く!』、
『人の住する!』、
『処は不浄である!』が故に、
『魔や、鬼神』の、
『来ること!』が、
『少なく!』、
諸の、
『難』も、
『少ない!』が故に、
是の故に、
『後に!』、
『説くのである!』。
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鬼魅(きみ):もののけ。ばけもの。
及以(ぎゅうい):および。及。
賊寇(ぞくこう):盗賊の集団。 尟(しょう):すくない。尠。少。 |
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行者於三處住無所畏懼。以二因緣故。一者善修十八空。二者般若波羅蜜威德故 |
行者の、三処に住まりて、畏懼する所無きは、二因縁を以っての故なり。一には善く十八空を修む、二には般若波羅蜜の威徳の故なり。 |
『行者』は、
『三処に住しても!』、
『畏懼する( to fear )!』所が、
『無いのである!』が、
『二因縁』の故に、
謂わゆる、
一には、
『十八空』を、
『善く修めた!』が故に、
二には、
『般若波羅蜜』の、
『威徳』の故に、
是の故に、
『畏懼する!』所が、
『無いのである!』。
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