【論】者言。是時諸大弟子舍利弗等。語須菩提。是般若波羅蜜法甚深難解。以諸法無定相故為甚深。諸思惟觀行滅故難見。亦不著般若波羅蜜故。名難解難知。滅三毒及諸戲論故名寂滅。得是智慧妙味故。常得滿足更無所求。餘一切智慧皆麤澀叵樂故言微妙。 |
論者の言わく、是の時の諸の大弟子の舎利弗等の須菩提に語れる、『是の般若波羅蜜の法は、甚深にして難解なり』とは、諸法に定相無きを以っての故に甚深と為し、諸の思惟、観行滅するが故に難見となし、亦た般若波羅蜜にも著せざるが故に、難解、難知と名づけ、三毒、及び諸の戯論を滅するが故に寂滅と名づけ、是の智慧の妙味を得るが故に常に満足を得て、更に求むる所無く、余の一切の智慧の皆、麁渋にして、楽しむべからざるが故に、微妙と言えり。 |
論者は言う、――
是の時、
諸の、
『大弟子の舎利弗』等は、
『須菩提』に、こう語った、――
是の、
『般若波羅蜜』という、
『法』は、
『甚だ深く!』、
『理解し難い!』、と。
諸の、
『法』は、
『定相が無い!』が故に、
『甚だ深く!』、
諸の、
『思惟、観、行』が、
『滅している!』が故に、
『見難く!』、
亦た、
『般若波羅蜜に著さない!』が故に、
『理解し難く、知り難い!』と、
『称して!』、
『三毒と諸の戯論を滅した!』が故に、
『寂滅である!』と、
『称するのであり!』、
是の、
『智慧の妙味を得た!』が故に、
『常に満足することができて!』、
更に、
『求める!』所が、
『無いのであり!』、
余の、
『一切の智慧』は、
皆、
『麁渋であって!』、
『楽しめない!』が故に、
是れを、
『微妙だ!』と、
『言うのである!』。
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叵(は):かたし。不可。
麁渋(そじゅう):滑らかならざること。 |
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諸大弟子作是言。般若波羅蜜智慧甚深。世間人智慧淺薄。但貪著福德果報。而不樂修福德。著有則情勇。破有則心怯。本所聞習邪見經書堅著不捨。如是人常樂世樂。以是故言誰能信受。是深般若波羅蜜。若無信受。何用說為 |
諸の大弟子の是の言を作さく、『般若波羅蜜の智慧は甚深にして、世間の人の智慧は浅薄にして、但だ福徳の果報に貪著して、福徳を修むるを楽しまず。有に著すれば、則ち情勇むも、有を破すれば、則ち心怯ゆ。本聞き習いたる所の邪見の経書に堅著して捨てず。是の如き人は、常に世楽を楽しむ』と。是を以っての故に言わく、『誰か能く、是の般若波羅蜜を信受せん。若し信受する無くんば、何の用の為に説く』と。 |
諸の、
『大弟子』は、こう言ったのである、――
『般若波羅蜜』の、
『智慧』は、
『甚だ深い!』が、
『世間の人』の、
『智慧』は、
『浅く薄い!』、
但だ、
『福徳』という、
『果報』に、
『貪著するのみ!』で、
『福徳』を、
『修めること!』を、
『楽しまない!』、
『有に著する!』ので、
『情意( the mind of desire )』は、
『勇ましい!』が、
『有が破れれば!』、
『心』に、
『怯えるのに!』、
本、
『聞いて、習った!』所の、
『邪見や、経書』に、
『堅く著して!』、
『捨てることがない!』。
是のような、
『人』は、
常に、
『世間の楽』を、
『楽しむ!』ので、
是の故に、こう言うことになる、――
是の、
『深い般若波羅蜜』を、
誰か、
『信受できるのか?』。
若し、
『信受する者が無ければ!』、
何の為に、
『説くのか?』と、と。
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阿難助。答有四種人能信受。是故大德須菩提所說必有信受。不空說也。 |
阿難の助けて答うらく、『四種の人の、能く信受する有り。是の故に大徳須菩提の所説にも、必ず信受する有れば、説いて空しからざるなり。 |
『阿難が助けて!』、こう答えた、――
『四種』の、
『人』が、
『信受することができる!』ので、
是の故に、
『大徳須菩提の所説』には、
必ず、
『信受する!』者が、
『有り!』、
即ち、
『空しく!』、
『説くのではない!』、と。
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一者阿鞞跋致菩薩摩訶薩。知一切法不生不滅。不取相無所著故是則能受。 |
一には、阿鞞跋致の菩薩摩訶薩は、一切法の不生不滅なるを知りて、相を取らず、所著無きが故に、是れ則ち能く受くるなり。 |
一には、
『阿鞞跋致の菩薩摩訶薩』は、
一切の、
『法』は、
『不生、不滅である!』と、
『知って!』、
『相を取らず!』、
『著する!』所が、
『無い!』が故に、
是れは、
則ち( therefor )、
『受けることができる!』。
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二者漏盡阿羅漢。漏盡故無所著。得無為最上法。所願已滿更無所求故。常住空無相無作三昧。隨順般若波羅蜜故。則能信受。 |
二には、漏尽の阿羅漢は、漏尽きたるが故に所著無く、無為の最上の法を得て、所願已に満つれば、更に求むる所無きが故に、常に空、無相、無作三昧に住して、般若波羅蜜に随順するが故に、則ち能く信受す。 |
二には、
『漏の尽きた!』、
『阿羅漢』は、
『漏の尽きている!』が故に、
『有為法』中には、
『著する!』所が、
『無く!』、
『無為』という、
『最上の法を得た!』が故に、
已に、
『願う所が満ちて!』、
更に、
『求める!』所が、
『無い!』ので、
常に、
『空、無相、無作三昧に住して!』、
『般若波羅蜜』に、
『随順する!』が故に、
則ち、
『信受することができる!』。
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三者三種學人正見成就。漏雖未都盡四信力故亦能信受。 |
三には、三種の学人は、正見成就して、漏は未だ都べては尽きざると雖も、四信の力の故に、亦た能く信受す。 |
三には、
『三種の学人』は、
『正見』が、
『成就している!』が故に、
未だ、
『漏が尽きていなくても!』、
『四信(真如+三宝)の力』の故に、
『信受することができる!』。
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四信(ししん):真如、及び三宝を信ずるを云う。『大智度論巻18下注:四信』参照。 |
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四者有菩薩。雖未得阿鞞跋致。福德利根智慧清淨。常隨善知識。是人亦能信受。 |
四には、有る菩薩は、未だ阿鞞跋致を得ずと雖も、福徳の利根、智慧の清浄なれば、常に善知識に随う。是の人も、亦た能く信受するなり。 |
四には、
有る、
『菩薩』は、
未だ、
『阿鞞跋致』を、
『得ていない!』が、
『福徳( 善行の果報)』の、
『利根、智慧』が、
『清浄である!』が故に、
常に、
『善知識』に、
『随う!』ので、
亦た、
是の、
『人も!』、
『信受することができる!』。
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信受相不言是法非佛菩薩大弟子所說。雖聞般若波羅蜜諸法皆畢竟空。不以愛先法故而言非法。 |
信受の相は、『是の法は、仏、菩薩、大弟子の所説に非ず』と言わず、般若波羅蜜を聞いて、諸法は皆畢竟じて空なりと雖も、先の法を愛するを以っての故には、『法に非ず』と言わず。 |
『信受の相』とは、――
是の、
『般若波羅蜜という!』、
『法』を、
『仏、菩薩、大弟子の所説ではない!』と、
『言わない!』し、
『般若波羅蜜を聞いて!』、
『諸法』は、
皆、
『畢竟じて!』、
『空であったとしても!』、
先に、
『聞いた!』所の、
『法』を、
『愛する!』が故に、
こう言うことはない、――
『般若波羅蜜』は、
『法でない!』。
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問曰。自上已來阿難都無言論。今何以代須菩提答。 |
問うて曰く、上より已来、阿難には、都べて言論無し。今は何を以ってか、須菩提に代りて答う。 |
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答曰。阿難是第三轉法輪。將能為大眾師。是世尊近侍。雖得初道以漏未盡故。雖有多聞智慧。自以於空智慧中未能善巧。若說空法自未入故皆是他事。是故無言。 |
答えて曰く、阿難は、是れ第三の転法輪の将にして、能く大衆の師と為る。是の世尊の近侍は、初道を得と雖も漏の未だ尽きざるを以っての故に、多聞の智慧有りと雖も、自ら空の智慧中に於いて、未だ善巧なる能わざるを以って、若しは空法を説くも、自ら未だ入らざるが故に、皆、是れ他事なれば、是の故に言無し。 |
答え、
『阿難』は、
『仏、舎利弗に次いで!』、
『第三の転法輪の将であり!』、
『大衆の師と為ることができる!』。
是れは、
『世尊の近侍であり!』、
『初道を得ていながら!』、
未だ、
『漏』が、
『尽きていなかったし!』、
『多聞の智慧が有りながら!』、
自ら、
『空の智慧中には!』、
未だ、
『善巧ではない!』と、
『思っていた!』ので、
若し、
『空法が説かれていても!』、
自ら、
『空法』中に、
『入らない( to begin to understand )!』が故に、
是れは、
皆、
『他人の事なのであり!』、
是の故に、
『言』が、
『無かったのである!』。
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或時說諸有事。則能問能答。如後品中。問佛言。世尊何以故但讚歎般若波羅蜜。不讚五波羅蜜。 |
或いは時に、諸有の事を説くに、則ち能く問い、能く答う。後の品中の如きに、仏に問うて言わく、『世尊、何を以っての故にか、但だ般若波羅蜜を讃歎して、五波羅蜜を讃じたまわず』と。 |
或いは、
時に、
『阿難』は、
諸の、
『有( 不空)である!』、
『事』を、
『説く!』時には、
則ち、
『問うこともでき!』、
『答えることもできた!』。
『後の品』中には、
『阿難』は、
『仏に問うて!』、こう言っている、――
世尊!
何故、
但だ、
『般若波羅蜜のみ!』を、
『讃歎して!』、
他の、
『五波羅蜜』を、
『讃歎されないのですか?』、と。
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参考:『大品般若経巻9尊導品』:『爾時慧命阿難白佛言。世尊。何以不稱譽檀那波羅蜜尸羅波羅蜜羼提波羅蜜毘梨耶波羅蜜禪那波羅蜜乃至十八不共法。但稱譽般若波羅蜜。佛告阿難。般若波羅蜜於五波羅蜜乃至十八不共法。為尊導。阿難。於汝意云何。不迴向薩婆若布施。得稱檀那波羅蜜不。不也世尊。不迴向薩婆若。尸羅羼提毘梨耶禪那智慧是般若波羅蜜不。不也世尊。以是故知。般若波羅蜜於五波羅蜜乃至十八不共法為尊導。是故稱譽。』 |
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此中問人誰能信是深般若波羅蜜者。非是空事故阿難便答。 |
此の中に問わく、『人は、誰か能く、此の般若波羅蜜を信ずる者なる』と。是れ空事に非ざるが故に、阿難は便ち答えたり。 |
此の中には、こう問うているが、――
『人』中の、
誰が、
是の、
『深い般若波羅蜜』を、
『信じることのできる者なのか?』、と。
是れは、
『空に関する!』、
『事でない!』が故に、
『阿難』にも、
『便ち( easily )!』、
『答えられたのである!』。
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須菩提常樂說空事不喜說有。 |
須菩提は、常に楽しんで、空事を説きて、有を説くを喜ばず。 |
『須菩提』は、
常に、
『空の事』を、
『説くこと!』を、
『楽しんでいた!』が、
『有の事』を、
『説くこと!』は、
『喜ばなかった!』。
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又以阿難是時樂說心生。是故聽答。阿難煩惱未盡故智慧力鈍。然信力猛利故。於甚深般若波羅蜜中。能如法問答。 |
又阿難の、是の時、楽説の心生ずるを以って、是の故に答うるを聴したまえり。阿難の煩悩は、未だ尽きざるが故に智慧力鈍し。然るに信力猛利なるが故に、甚深の般若波羅蜜中に於いて、能く如法に問答せり。 |
又、
『阿難』は、
是の時、
『説くこと!』を、
『楽しむ!』、
『心』が、
『生じていた!』ので、
是の故に、
『仏』は、
『阿難』に、
『説くこと!』を、
『聴された( to permit )!』。
『阿難』は、
未だ、
『煩悩が尽きていない!』が故に、
『智慧の力』が、
『鈍い!』が、
然し、
『甚だ深い般若波羅蜜』中に於いて、
『如法に!』、
『問答することができた!』。
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問曰。般若波羅蜜無所有。無有一定法。云何四種人信受不言非法。 |
問うて曰く、般若波羅蜜には所有無く、一定法も有ること無し。云何が、四種の人の信受して、非法なりと言わざる。 |
問い、
『般若波羅蜜』には、
『所有( any opinion )が無く!』、
『一定法( a fixed dharma )も!』、
『無い!』のに、
何故、
『四種の人は信受して!』、
『法でない!』と、
『言わないのですか?』。
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答曰。今須菩提此中自說因緣。不以空分別色。色即是空空即是色。以是故般若波羅蜜無所失無所破。若無所破則無過罪。是故不言非法。 |
答えて曰く、今、須菩提は、此の中に自ら因縁を説かく、『空を以って、色を分別せざれ。色は、即ち是れ空なり。空は、即ち是れ色なり』と。是を以っての故に、般若波羅蜜には失う所無く、破る所無し。若し破る所無くんば、則ち過罪無けん。是の故に、非法なりと言わず。 |
答え、
今、
『須菩提』は、
此の中に、
自ら、
『因縁』を、こう説いている、――
『空を用いて!』、
『色』を、
『分別してはならない!』。
『色』とは、
即ち(that is)、
『空であり!』、
『空』とは、
即ち、
『色だからである!』と。
是の故に、
『般若波羅蜜』中には、
『失われる!』所も、
『破れる!』所も、
『無いのであり!』。
若し、
『破れる所』が、
『無ければ!』、
則ち、
『過罪も!』、
『無いことになる!』ので、
是の故に、
『法でない!』と、
『言わないのである!』。
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空即是般若波羅蜜。不以空智慧破色令空。亦不以破色因緣故有空。空即是色色即是空。故 |
空は、即ち是れ般若波羅蜜なり。空の智慧を以って、色を破りて、空ならしむるにあらず。亦た色の因縁を破るを以っての故に、空有るにあらず。空は、即ち是れ色なり。色は、即ち是れ空なるが故なり。 |
『空』とは、
即ち、
『般若波羅蜜である!』とは、――
『空』という、
『智慧を用い!』、
『色を破って!』、
『色』を、
『空にするのではない!』。
亦た、
『色』の、
『因縁を破る!』が故に、
『空』が、
『有るのでもない!』。
何故ならば、
『空』とは、
即ち、
『色であり!』、
『色』とは、
即ち、
『空だからである!』。
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以般若波羅蜜中破諸戲論。有如是功德。故無不信受。無相無作無生無滅寂滅遠離亦如是。乃至一切種智皆應廣說。 |
般若波羅蜜中に、諸の戯論を破れば、是の如き功徳有るを以っての故に、信受せざる無し。無相、無作、無生、無滅、寂滅、遠離も亦た、是の如し。乃至一切種智も、皆、応に広く説くべし。 |
『般若波羅蜜』中に、
諸の、
『戯論を破れば!』、
是のような、
『功徳』が、
『有る!』が故に、
是の、
『般若波羅蜜』を、
『信受しない!』者は、
『無くなり!』、
『無相、無作、無生、無滅、寂滅、遠離』も、
亦た、
『是の通りであり!』、
乃至、
『一切種智まで』、
皆、
是のように、
『広く説かねばならない!』。
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問曰。諸大弟子問是義。須菩提何以乃答諸天子。 |
問うて曰く、諸の大弟子の是の義を問えるに、須菩提は、何を以ってか、乃ち諸天子に答うる。 |
問い、
諸の、
何故、
『須菩提』は、
乃ち( actually )、
『諸天子に!』、
『答えたのですか?』。
|
乃(ない):<代名詞>お前の/汝の( your )、彼れの( his )、此の( this )、此のように( so )。<動詞>是れ( be )。<副詞>ちょうど今(
just now )、只だ/僅かに( only then )、不意に/なんと( unexpectedly, actually )、同時に( at
the same time )、そこで/そうすると/是に於いて( then, where upon )。<接続詞>しかし/しかしながら( but,
however )。 |
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答曰。諸大弟子已得阿羅漢。但自為疑故問益利事少。諸天子發心為菩薩。利益深故為說。 |
答えて曰く、諸の大弟子は、已に阿羅漢を得て、但だ自らの疑を為すが故に問えば、益利する事少なし。諸天子は、心を発して、菩薩と為れば、利益すること深きが故に為に説けり。 |
答え、
『諸の大弟子』は、
已に、
『阿羅漢を得ていた!』が、
但だ、
自らの、
『疑い!』の為に、
『問うた!』ので、
其の、
『益利( the benefit )の事』が、
『少ない!』が、
『諸天子』は、
『発心して!』、
『菩薩と為れば!』、
其の、
『利益が深い!』が故に、
『諸天子』の為に、
『説いたのである!』。
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復次雖為諸天子說。即是答諸大弟子。 |
復た次ぎに、諸天子の為に説くと雖も、即ち是れ諸の大弟子に答うるなり。 |
復た次ぎに、
『諸天子』の為に、
『説いた!』が、
即ち( that is )、
『諸の大弟子』に、
『答えたことになる!』。
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上說諸法空。今說深般若波羅蜜中眾生畢竟空。以是故般若波羅蜜中無有說者何況有聽受者。若能如是解諸法空。心無。所著則能信受。 |
上には諸法の空なるを説き、今は深き般若波羅蜜中に衆生は畢竟じて空なりと説く。是を以っての故に、般若波羅蜜中に説者有ること無し。何に況んや、聴受する者の有るをや。若し能く是の如く、諸法の空なるを解して、心に所著無くんば、則ち能く信受せん。 |
上には、こう説いたので、――
諸の、
『法』は、
『空である!』、と。
今、こう説くのである、――
『深い般若波羅蜜』中には、
『衆生』は、
『畢竟じて空である!』、と。
是の故に、
『般若波羅蜜』中には、
『説く!』者が、
『無いのであり!』、
況して、
『聴く!』者は、
『有るはずがない!』。
若し、
是のように、
『諸の法』は、
『空である!』と、
『理解して!』、
『心』の、
『著する所(法)』が、
『無くなれば!』、
則ち、
『般若波羅蜜』を、
『信受することができる!』。
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爾時須菩提。說深般若波羅蜜。舍利弗讚歎助成其事。般若波羅蜜。非但以空故可受。亦廣說有三乘。三乘義如先說。 |
爾の時、須菩提の深き般若波羅蜜を説くに、舎利弗は讃歎して、其の事を成ずるを助く、『般若波羅蜜の、但だ空なるを以っての故に受くべきに非ず。亦た広く、三乗有りと説けばなり』と。三乗の義は、先に説けるが如し。 |
爾の時、
『須菩提』が、
『深い般若波羅蜜』を、
『説く!』と、
『舎利弗は讃歎して!』、
其の、
『事(仕事)』を、
『助成して!』、
こう言った、――
『般若波羅蜜』は、
但だ、
『空』の故に、
『信受されるのではない!』。
亦た、
『三乗が有る!』と、
『広く説いているのだ!』、と。
『三乗の義』は、
先に、
『説いた通りである!』。
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攝取菩薩者。以般若波羅蜜。利益諸菩薩令得增長。 |
菩薩を摂取すとは、般若波羅蜜を以って、諸の菩薩を利益し、増長を得しむるなり。 |
『菩薩を摂取する( holding together )!』とは、――
『般若波羅蜜を用いて!』、
『諸の菩薩』を、
『利益して!』、
『増長させることである!』。
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復次攝取者。是般若波羅蜜中有十地。令菩薩從一地至一地乃至第十地。十地義從六波羅蜜。乃至一切種智義如先說。 |
復た次ぎに、摂取とは、是の般若波羅蜜中に十地有りて、菩薩をして、一地より、一地、乃至第十地に至らしむ。十地の義、六波羅蜜より、乃至一切種智の義は、先に説けるが如し。 |
復た次ぎに、
『摂取』とは、――
是の、
『般若波羅蜜』中には、
『十地が有り!』、
『菩薩』を、
『一地より!』、
『一地に!』、
『至らせ!』、
乃至、
『第十地に!』、
『至らせるからである!』。
『十地の義と!』、
『六波羅蜜、乃至一切種智の義と!』は、
先に、
『説いた通りである!』。
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化生者。說般若波羅蜜行報。 |
化生とは、般若波羅蜜を説く行報なり。 |
『化生』とは、――
『般若波羅蜜を説く!』、
『行業』の、
『果報』である。
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行般若波羅蜜。於一切法無礙故得捷疾辯。 |
般若波羅蜜を行じて、一切法に於いて無礙なるが故に、捷疾の辯を得。 |
『般若波羅蜜を行えば!』、
『一切の法』に於いて、
『礙( an obstruction )が無くなる!』が故に、
『捷疾の辯( ajile speaking )』を、
『得ることになる!』。
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有人雖能捷疾。鈍根故不能深入。以能深入故利。是利辯 |
有る人は、能く捷疾なりと雖も、鈍根なるが故に、深入する能わず。能く深入するを以っての故に利なり。是れ利の辯なり。 |
有る、
『人』は、
『捷疾である( be agile )!』が、
『鈍根である( be dull faculties )!』が故に、
『般若波羅蜜』中に、
『深くまで!』、
『入ることができない!』。
『般若波羅蜜』中に、
『深く入れる!』が故に、
『利である( be sharp faculties )!』。
是れが、
『利の辯である!』。
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說諸法實相。無邊無盡故。名樂說無盡辯。 |
諸法の実相を説いて無辺、無尽なるが故に、楽説無尽の辯と名づく。 |
諸の、
『法の実相』は、
『無辺、無尽である!』と、
『説く!』が故に、
是れを、
『楽説無尽の辯』と、
『称する!』。
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般若中無諸戲論故無能問難。斷絕者。名不可斷辯。 |
般若中には、諸の戯論無きが故に、能く問難して、断絶する者無きを、不可断の辯と名づく。 |
『般若』中には、
諸の、
『戯論が無い!』が故に、
『問難して!』、
『断絶させられる!』者が、
『無い!』ので、
是れを、
『不可断の辯』と、
『称する!』。
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斷法愛故隨眾生所應而為說法。名隨應辯。 |
法愛を断ずるが故に、衆生の所応に随いて、為に法を説くを、随応の辯と名づく。 |
『法愛( the avidity for dharma )を断じる!』が故に、
『衆生の応じる!』所に、
『随いながら!』、
『衆生の為に!』、
『法を説く!』ので、
是れを、
『隨応の辯』と、
『称する!』。
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說趣涅槃利益之事故。名義辯。 |
涅槃に趣く利益の事を説くが故に、義の辯と名づく。 |
『涅槃に趣く!』為の、
『利益の事を説く!』が故に、
『義の辯』と、
『称する!』。
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說一切世間第一之事。所謂大乘。是名世間最上辯。 |
一切の世間の第一の事、謂わゆる大乗を説く、是れを世間の最上の辯と名づく。 |
『一切の世間』に於いて、
『第一の事』、
謂わゆる、
『大乗』を、
『説く!』が故に、
是れを、
『世間最上の辯』と、
『称する!』。
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須菩提然其問言如是如是。 |
須菩提の、其の問を然りとして言わく、『是の如し、是の如し』と。 |
『須菩提』は、
其の、
『問』に、
『同意して!』、こう言った、――
その通りだ!
その通りだ!、と。
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然(ねん):<動詞>[本義]燃の本字/燃える( burn )。明白に知る( understand )、目をくらます/照曜する( dazzle )、同意する(
agree )、形づくる( form )、宜しくする/適合する( fit )。<接続詞>而るに( but )、然りと雖も( although
)、而も/その上( thereupon )、而して/然る後( then )。<形容詞>然り/是なり( yes )。<代名詞>此の如く/此の様に/其の様に(
so, like that )。<助詞>[形容詞/副詞の語尾に付して状態を表す]、[句末に用いて断定の語気を表す]なり。 |
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舍利弗作是念。須菩提常樂說空。何以故。受我所說般若波羅蜜廣說三乘之教。應當更有因緣。 |
舎利弗の、是の念を作さく、『須菩提は、常に空を説くを楽しむに、何を以っての故にか、我が所説の般若波羅蜜の、広く三乗の教を説くことを受くる。応当に更に因縁有るべし』と。 |
『舎利弗』は、こう念じた、――
『須菩提』は、
常に、
『空』を、
『説くこと!』を、
『楽しんでいる!』が、
何故、
わたしの、
『所説』を、
『受けた( to accept )のか?』。
わたしは、こう説いたのであるから、――
『般若波羅蜜』は、
『三乗の教』を、
『広く説いている!』、と。
更に、
『受けた!』、
『因縁』が、
『有るはずだ!』、と。
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須菩提答。般若波羅蜜雖廣說三乘法。非有定相。皆以十八空和合故說。攝取菩薩七種辯亦如是。以空智慧故 |
須菩提の答うらく、『般若波羅蜜は、広く三乗の法を説くも、定相有るに非ず。皆、十八空の和合を以っての故に説く。菩薩を摂取する七種の辯も亦た、是の如く、空の智慧を以っての故なり』と。 |
『須菩提』は、こう答えた、――
『般若波羅蜜』が、
『三乗の法を広く説く!』のは、
『三乗の法』に、
『定相』が、
『有るからではない!』。
皆、
『十八空の和合である!』が故に、
『広く説くのである!』。
『菩薩を摂取する!』、
『七種の辯』も、
是のように、
『空の智慧を用いる!』が故に、
『菩薩を摂取するのである!』、と。
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