【經】舍利弗。是菩薩摩訶薩行般若波羅蜜。增益六波羅蜜時。諸善男子善女人各各歡喜意念言。我等當為是人作父母妻子親族知識 |
舎利弗、是の菩薩摩訶薩の般若波羅蜜を行じて、六波羅蜜を増益する時、諸の善男子、善女人は、各各歓喜して、意に念じて言わく、『我等は、当に是の人の為めに、父母、妻子、親族、知識と作るべし』、と。 |
舎利弗!
是の、
『菩薩摩訶薩』が、
『般若波羅蜜を行いながら!』、
『六波羅蜜』を、
『増益する!』時、
諸の、
『善男子、善女人』は、
各各、
『歓喜し!』、
『意に念じて!』、こう言うだろう、――
わたし達は、
是の、
『人の為めに!』、
『父母、妻子、親族、知識』と、
『作らねばならぬ!』、と。
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【論】問曰。前已說能作是功德今何以復說增益六波羅蜜。 |
問うて曰く、前に已に能く、是の功德を作すを説けるに、今は、何を以ってか、復た六波羅蜜を増益するを説く。 |
問い、
前に、已に、
是の、
『功德を、作すこと!』を、
『説いたのに!』、
今は、何故、
復た、
『六波羅蜜を、増益すること!』を、
『説くのですか?』。
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答曰。先說總相今說別相。復次前所說功德中(前品中功德也)種種無量聞者厭惓。今但略說六波羅蜜則盡攝諸功德。 |
答えて曰く、先には総相を説き、今は別相を説く。復た次ぎに、前の所説の功德中に、種種無量にして、聞者厭惓すれば、今は但だ略して、六波羅蜜を説いて、則ち諸功徳を尽く摂するなり。 |
答え、
先には、
『総相を説いた!』ので、
今、
『別相』を、
『説くのである!』。
復た次ぎに、
前の、
『所説の功德』中には、
『種種、無量の功德が説かれた!』ので、
『聞者』は、
『厭惓したのである!』が、
今は、
但だ、
『六波羅蜜を略説したのである!』が、
則ち( however )、
『諸功徳』を、
『尽く、摂するのである( to contain completely )!』。
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復次為天說故能作諸功德。為人說故增益六波羅蜜。何以知之。如後說善男子善女人。以是故知。 |
復た次ぎに、天の為めに説くが故に、能く諸功徳を作し、人の為めに説くが故に、六波羅蜜を増益す。何を以ってか、之を知る。後に善男子、善女人を説けるが如し。是を以っての故に知る。 |
復た次ぎに、
『天の為めに説く!』が故に、
『天』は、
『諸の功德』を、
『作すことができ!』、
『人の為めに説く!』が故に、
『人』は、
『六波羅蜜』を、
『増益するのである!』。
何故、之を知るかというと、――
後に、
『善男子、善女人』を、
『説く通りであり!』、
是の故に、
『知ったのである!』。
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問曰。四天王天乃至阿迦尼吒天。何以不說善天而但人中說善男子善女人。 |
問うて曰く、四天王天、乃至阿迦尼吒天は、何を以ってか、『善天』を説かず、但だ『人中の善男子、善女人』を説く。 |
問い、
『四天王天、乃至阿迦尼吒天』は、
何故、
『善天』と、
『説かれず!』、
但だ、
『人中の善男子、善女人のみ!』を、
『説くのですか?』。
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答曰。諸天皆有天眼天耳他心智知供養菩薩故不別說其善。人以肉眼見無知。善者能知供養。以少故別說善者。 |
答えて曰く、諸天は、皆、天眼、天耳、他心智有りて、菩薩を供養するを知るが故に、別けて、其の善を説かず。人は、肉眼を以って見れば、善を知る者無く、能く供養を知ること、少きを以っての故に、別に善者を説く。 |
答え、
『諸天』は、
皆、
『天眼、天耳、他心智が有り!』、
『菩薩を供養すること!』を、
『知る!』が故に、
其の、
『善』を、
『別けて!』、
『説くことはない!』が、
『人』は、
『肉眼を用いて、見る!』ので、
『善を知る者が無く!』、
『供養を知ることのできる!』者が、
『少い!』が故に、
『善い!』者を、
『別に!』、
『説くのである!』。
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善者從佛聞法。或從弟子菩薩聞。或聞受記當作佛。又聞佛讚歎其名者故知修善。 |
善者は、仏より法を聞き、或は弟子、菩薩より聞き、或は、『当に仏と作るべし』、と記を受くるを聞き、又仏の其の名を讃歎するを聞く者にして故に善を修するを知る。 |
『善い!』者とは、
『仏より、法を聞いたり!』、
或は、
『弟子や、菩薩より!』、
『法を!』、
『聞いたり!』、
或は、
『当然、仏と作るだろう!』と、
『記を受けるのを!』、
『聞いたり!』、
又は、
『仏』が、
其の、
『名』を、
『讃歎するのを!』、
『聞く者であり!』、
是の故に、
『善を修めること!』を、
『知るのである!』。
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問曰。何以但說男子女人善。不說二根無根者善。 |
問うて曰く、何を以ってか、但だ男子、女人の善を説き、二根、無根の者の善を説かざる。 |
問い、
何故、但だ、
『男子や、女人』の、
『善』を、
『説くだけで!』、
『二根や、無根の者』の、
『善』を、
『説かないのですか?』。
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答曰。無根所謂無得道相。是故不說。 |
答えて曰く、無根は、謂わゆる得道の相無ければ、是の故に説かず。 |
答え、
『無根』とは、
謂わゆる、
『得道の相』の、
『無い者であり!』、
是の故に、
『説かれないのである!』。
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如毘尼中不得出家。以其失男女相故其心不定。以小因緣故便瞋。結使多故著於世事。多懷疑網不樂道法。雖能少修福事。智慧淺薄不能深入本性轉易。是故不說。聲聞法如是說。 |
毘尼中には、出家するを得ざれば、其の男女の相を失うを以っての故に、其の心定まらず、小因縁を以っての故に、便ち瞋り、結使多きが故に、世事に著し、多く疑網を懐いて、道法を楽しまず、能く少しは福事を修すと雖も、智恵浅薄にして、深く入る能わず。本性転易すれば、是の故に説かず。声聞法には、是の如く説けり。 |
『毘尼( 律蔵)』中などには、
『無根の者』は、
『出家することができない!』、
何故ならば、
『無根の者は、男女の相を失っている!』が故に、
其の、
『心が定まらず!』、
『小因縁』の故に、
便ち( easily )、
『瞋り!』、
『結使の多い!』が故に、
『世事に!』、
『著し!』、
『多く、疑網を懐く!』が故に、
『道法』を、
『楽しまず!』、
『少しは、福事を修めることができる!』が、
『智恵が浅薄である!』が故に、
『道法』に、
『深く入ることができず!』、
『本性が転易する( his nature is frequently changed )!』ので、
是の故に、
『無根の善』を、
『説かないのである!』。
『声聞法』には、
是のように、
『説かれている!』。
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摩訶衍中譬如大海無所不容。是無根人或時修善。但以少故不說。所謂少者於男女中是人最少。是人修善者少。譬如白人雖復鬚髮黶子黑不名黑人。 |
摩訶衍中には、譬えば大海の如く、容れざる所無ければ、是の無根の人も、或は時に善を修するも、但だ少きを以っての故に、説かず。謂わゆる少しとは、男女中に於いて、是の人は最も少なく、是の人の善を修する者少し。譬えば、白人の、復た鬚髪、黶子(ほくろ)は黒しと雖も、黒人と名づけざるが如し。 |
『摩訶衍』中には、
譬えば、
『大海のように!』、
『容れない!』者は、
『無い!』ので、
是の、
『無根の人』も、
或は時に、
『善』を、
『修めることがある!』が、
但だ、
『少い!』が故に、
『説くことはない!』。
謂わゆる、
『少い!』とは、
『男、女』中に、
是の、
『人』は、
『最も少なく!』、
是の、
『無根の人』で、
『善を修める!』者も、
『少いからである!』。
譬えば、
『白人』は、
復た( on the contrary )、
『鬚髪や、黶子が黒くても!』、
『黒人』と、
『呼ばれないようなものである!』。
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黶子(えんし):ほくろ、黒黶子。 |
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二根人結使多。雜亦行男事亦行女事。其心邪曲難可勉濟。譬如稠林曳木曲者難出。又如阿修羅其心不端故常疑於佛謂佛助天。佛為說五眾。謂有六眾不為說一。若說四諦謂有五諦不說一事。二根人亦如是。心多邪曲故不任得道。以是故但說男子女人中善者。 |
二根の人は、結使多く、雑えて亦た男事を行じ、亦た女事を行ずれば、其の心邪曲にして、勉済すべきこと難し。譬えば、稠林の木を曳くに、曲がれる者は、出し難きが如し。又阿修羅の、其の心端(ただ)しからざるが故に、常に仏を疑いて、仏は天を助くと謂い、仏、為めに五衆を説きたまえば、六衆有るに、為めに一を説かずと謂い、若し四諦を説けば、五諦有るに、一事を説かずと謂うが如し。二根の人も亦た是の如く、心、多く邪曲なるが故に、道を得るに任えず。是を以っての故に、但だ男子、女人中の善なる者を説く。 |
『二根の人』は、
『結使が多く!』、
『男事と、女事を雑えて!』、
『行う!』が故に、
其の、
『心は邪曲であり!』、
自ら、
『勉済すること!』が、
『難しい!』。
譬えば、
『稠林より、木を曳くのに!』、
『曲がった木』は、
『出し難いようなものであり!』、
又、
『阿修羅』が、
其の、
『心が端しくない( having crooked mind )!』が故に、
常に、
『仏を疑って!』、
『仏は、天を助ける( the buddha is an assistant of deva )!』と、
『謂い!』、
『仏』が、
『阿修羅の為めに!』、
『五衆』を、
『説かれる!』と、
『六衆有るのに!』、
『阿修羅の為めには!』、
『一を説かなかった!』と、
『謂い!』、
若し、
『四諦を説かれれば!』、
『五諦有るのに!』、
『一事を説かれなかった!』と、
『謂うようなものである!』。
『二根の人』も、
是のように、
『心が、多く邪曲である!』が故に、
『道を得るのに!』、
『任えられない( be unequal to )!』ので、
是の故に、
但だ、
『男子、女人中の善者のみ!』を、
『説かれたのである!』。
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邪曲(じゃごく):邪であり曲がっている。
勉済(べんさい):努力して自ら救う。
稠林(ちゅうりん):木の密集せる林、密林。
助天(じょてん):天を補佐する。 |
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善相者有慈悲心能忍惡罵。如法句罵品中說能忍惡罵人是名人中上。譬如好良馬可中為王乘。 |
善相とは、慈悲心有りて、能く悪罵を忍ぶ。法句の罵品中に、『能く悪罵を忍ぶ人、是れを人中の上と名づく』、と。譬えば好良なる馬の、王に乗らるるに、中(あた)るべきが如し。 |
『善の相』は、
『慈悲心が有り!』、
『悪罵』を、
『忍ぶことができる!』。
例えば、
『法句経の罵品』中に、こう説くようなものである、――
『悪罵を忍ぶことのできる!』、
『人』は、
『人中の上である!』、と。
譬えば、
『良好な馬』は、
『王の乗るのに!』、
『中たる( be proper for )ようなものである!』。
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可中(かちゅう):過不足の無い、適切な( be suitable, proper )。 |
参考:『法句経巻1言語品』:『言語品法句經第八十有二章 言語品者。所以戒口發說談論當用道理 惡言罵詈 憍陵蔑人 興起是行 疾怨滋生 遜言順辭 尊敬於人 棄結忍惡 疾怨自滅 夫士之生 斧在口中 所以斬身 由其惡言 諍為少利 如掩失財 從彼致諍 令意向惡 譽惡惡所譽 是二俱為惡 好以口儈鬥 是後皆無安 無道墮惡道 自增地獄苦 遠愚修忍意 念諦則無犯 從善得解脫 為惡不得解 善解者為賢 是為脫惡惱 解自抱損意 不躁言得中 義說如法說 是言柔軟甘 是以言語者 必使己無患 亦不剋眾人 是為能善言 言使投意可 亦令得歡喜 不使至惡意 出言眾悉可 至誠甘露說 如法而無過 諦如義如法 是為近道立 說如佛言者 是吉得滅度 為能作浩際 是謂言中上』 |
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復次以五種邪語及鞭杖打害縛繫等。不能毀壞其心。是名為善相。 |
復た次ぎに、五種の邪語、及び鞭杖、打害、縛繋等を以って、其の心を毀壊すること能わざれば、是れを名づけて、善相と為す。 |
復た次ぎに、
『五種の邪語( 妄語、両舌、悪口、綺語、不利益語)や!』、
『鞭杖、打害、縛繋等を用いても!』、
其の、
『心』を、
『毀壊することができなければ!』、
是れを、
『善の相』と、
『称する!』。
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五種邪語(ごしゅのじゃご):人の為にならざる五種の語、即ち一に妄語、二に悪口語、三に不時語、四に悪心語、五に不利益語を云う。即ち「禅法要解」に、「問うて曰わく、行慈の者は何なる功徳を得る。答えて曰わく、行慈なれば、諸悪を加うること能わず、好き守備には外賊の害せざるが如し。もし悩害せんと欲せば、反って自ら患を受けんこと、人の、掌を以って矛を拍てば、掌は自ら傷壊して、矛に害する所無きが如し。五種の邪語も、心を壊すること能わず、五種とは、一には妄語して説く過、二には悪口して説く過、三には不時に説く過、四には悪心もて説く過、五には、不利益を説く過なり。譬えば、大地の破壊すべからざるが如く、種種の瞋悩、讒謗等も毀つ能わず。譬えば、虚空の加害を受けざるが如く、心智柔軟にして、猶お、天衣の若し」と云えるこれなり。蓋し十不善業中の妄語、両舌、悪口、綺語に不時語を加えたるなり。 |
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復次三業無失樂於善人不毀他善。不顯己德。隨順眾人不說他過。不著世樂不求名譽。信樂道德之樂。自業清淨不惱眾生。心貴實法輕賤世事。唯好直信不隨他誑。為一切眾生得樂故自捨己樂。令一切眾生得離苦故以身代之。如是等無量名為善人相。是相多在男女故說善男子善女人。 |
復た次ぎに、三業に失無く、善人を楽しみ、他の善を毀らず、己れの德を顕さず、衆人に随順するも他の過を説かず、世楽に著せず、名誉を求めず、道徳の楽を信楽して、自業淸淨にして衆生を悩ませず、心に実法を貴び、世事を軽賎し、唯だ好んで直信するも、他の誑すに随わず、一切の衆生に、楽を得しめんが為めの故に、自ら己れの楽を捨て、一切の衆生をして、苦を離るるを得しめんが故に、身を以って、之に代う。是れ等の如き、無量を名づけて、善人の相と為す。是の相は、多く男女に在るが故に、善男子、善女人と説く。 |
復た次ぎに、
『身、口、意の三業に失無く!』、
『善行の人を、楽しんで!』、
『他人の善行』を、
『毀らず!』、
『己れの德を、顕わすこともなく!』、
『衆人に随順しながらも!』、
『他人の過』を、
『説くことなく!』、
『世楽に著すこともなく、名誉を求めることもなく!』、
『道徳の楽を信楽して!』、
『自業を淸淨にして!』、
『衆生を悩ますこともなく!』、
『心に実法を貴んで、世事を軽賎し!』、
『唯だ好んで、直信しながら( being very credulous )!』、
『他人の欺誑( other's fraudulence )』に、
『随うこともなく!』、
『一切の衆生に、楽を得させる!』為めの故に、
『自ら、己の楽を捨て!』、
『一切の衆生に!』、
『苦』を、
『離れさせる!』為めの故に、
『身を用いて!』、
『他人の苦』に、
『代える!』。
是れ等のような、
『無量の相』を、
『善人の相』と、
『称するのである!』が、
是の、
『相は、多く男女に在る!』が故に、
『善男子、善女人』と、
『説くのである!』。
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問曰。善男子善女人何因能作是願。 |
問うて曰く、善男子、善女人は、何に因ってか、能く是の願を作す。 |
問い、
『善男子、善女人』は、
何のような、
『因縁』の故に、
是の、
『願』を、
『作すことができたのですか?』。
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答曰。善男子善女人自知福薄智慧尠少。習近菩薩欲求過度。譬如沈石雖重依船得度。又善男子善女人。聞菩薩不從一世二世而得成道。無央數世往來生死。便作是念。我當與為因緣。 |
答えて曰く、善男子、善女人は、自ら福薄く、智恵尠少なるを知り、菩薩に習近して、過度を求めんと欲す。譬えば沈石は重しと雖も、船に依れば、度を得るが如し。又善男子、善女人は、菩薩の一世、二世より道を成ずるを得るにあらず、無央数の世に、生死を往来すと聞いて、便ち、是の念を作さく、『我れは、当に為めに因縁に与(あずか)るべし』、と。 |
答え、
『善男子、善女人』は、
自ら、
『福が薄く、智恵が尠少であることを知り!』、
『菩薩に習近して( to attend to Bodhisattva )!』、
『過度( to pass through )しよう!』、
『欲求した( to desire to )のである!』。
譬えば、
『沈石は重くても!』、
『船に依れば!』、
『渡ることができるようなものである!』。
又、
『善男子、善女人』は、
『菩薩は、一世や、二世で道を成すのではなく!』、
『無央数世に、生死を往来しながら!』、
『道を成すのである!』と、
『聞き!』、
便ち( instantly )、こう念じるのである、――
わたしは、
『菩薩の為めに!』、
『成仏の因縁に!』、
『与らねばならない( should help to make )!』、と。
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尠少(せんしょう):甚だしく少い/希に( very few, seldom, rarely )。
習近(じゅうこん):そばに仕える( to attend to )。近習/近侍する。
欲求(よくぐう):助けを求めて希望する。
過度(かど):渡る/通り過ぎる( go across, pass, pass through )。 |
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復次菩薩積德厚故在所生處。眾生皆來敬仰菩薩。以蒙利益重故。若見菩薩捨壽則生是願。我當與菩薩作父母妻子眷屬。所以者何。知習近善人增益功德故。譬如積集眾香香氣轉多。 |
復た次ぎに、菩薩は、德を積むこと厚きが故に、所生の処に在りても、衆生は皆来たりて、菩薩を敬仰す。利益を蒙ることの重きを以っての故なり。若し菩薩の寿を捨つるを見れば、則ち是の願を生ず、『我れは当に菩薩の与(ため)に、父母、妻子、眷属と作るべし』、と。所以は何んとなれば、善人に習近すれば、功德を増益すると知るが故なり。譬えば、衆香を積集すれば、香気転(うた)た多きが如し。 |
復た次ぎに、
『菩薩の積んだ!』、
『德が厚い!』が故に、
『所生の処に在りながら!』、
『衆生が、皆来て!』、
『菩薩』を、
『敬仰するのは!』、
『衆生の蒙る!』、
『利益』が、
『重いからである!』。
若し、
『菩薩』が、
『命を捨てる!』のを、
『見れば!』、
則ち、こう願うことになる、――
わたしは、
『菩薩の与に( for this bodhisattva )!』、
『父母、妻子、眷属』と、
『作らねばならない!』、と。
何故ならば、
『善人に習近すれば!』、
『功德を増益することになる!』と、
『知るからである!』。
譬えば、
『衆香を積集すれば!』、
『香気』が、
『転た多くなる( to increase more and more )ようなものである!』。
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如菩薩先世為國王太子。見閻浮提人貧窮。欲求如意珠入於大海至龍王宮。龍見太子威德殊妙即起迎逆延前供養。而問之言。何能遠來。太子答曰。我憐閻浮提眾生故。欲求如意寶珠以饒益之。 |
菩薩の先世に国王の太子と為りて、閻浮提の人の貧窮なるを見、如意珠を求めんと欲して、大海に入り、龍王の宮に至れり。龍は、太子の威徳の殊妙なるを見て、即ち起ちて迎逆し、延前して供養し、之に問うて言わく、『何んが能く遠く来たる』、と。太子の答えて曰く、『我れは閻浮提の衆生を憐れむが故に、如意宝珠を求め、以って之を饒益せんと欲す』、と。 |
例えば、
『菩薩』は、
『先世に、国王の太子であった!』が、
『閻浮提の人』が、
『貧窮である!』のを、
『見て!』、
『如意珠を求めようとし!』、
『大海に入って!』、
『龍王の宮に!』、
『至った!』。
『龍』は、
『太子の威徳が殊妙であるのを、見る!』と、
『即ち、起って!』、
『迎逆、延前し!』、
『供養する!』と、
『太子に問うて!』、こう言った、――
何のようにして、
『遠くより!』、
『来ることができたのか?』、と。
『太子は答えて!』、こう言った、――
わたしは、
『閻浮提の衆生を憐れむ!』が故に、
『如意宝珠』を、
『求め!』、
『宝珠を用いて!』、
『衆生』を、
『饒益しようとするのである!』、と。
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迎逆(ぎょうぎゃく):出迎える。
延前(えんぜん):案内する。引導。 |
参考:『大智度論巻12』、『大方便仏報恩経巻4』:『‥‥王問太子。汝慇懃欲入大海。何所作為。答言。大王。欲取摩尼大寶給足一切眾生所須。爾時大王即遍宣令。誰欲入海。若往還者。七世衣食珍寶無所乏少。吾當供給道路船乘所須。善友太子亦欲入海採取珍妙摩尼寶珠。眾人聞之歡喜聚集具五百人。皆言大王。我等今者隨從太子。爾時波羅奈國。有一海師。前後數返入於大海。善知道路通塞之相。而年八十兩目矇盲。爾時波羅奈大王。往導師所。報言。導師。吾唯一子未更出門。勞屈大師入於大海。願見隨從。爾時導師即舉聲大哭。大王。大海留難辛苦非一。往者千萬。達者一二。大王今者。云何乃能令太子遠涉嶮道。王報導師。為憐愍故隨從聽許。導師言。不敢違逆。爾時善友太子。莊嚴五百人行具。載至大海邊。爾時其弟惡友太子。作是念言。善友太子。父母而常偏心愛念。今入大海採取妙寶。若達還者。父母當遺棄於我。作是念已。往白父母。今我亦欲隨從善友。入海採取妙寶。父母聞已。答言隨意。道路急難之時。兄弟相隨必相救護。至大海已。以七鐵鎖鎖其船舫。停住七日。至日初出時。善友太子擊鼓唱令。汝等諸人誰欲入海。入者默然。若當戀著父母兄弟婦兒閻浮提樂者。從此還歸莫為我故。所以者何。大海之中留難非一。往者千萬。達者一二。如是唱令大眾默然。即斷一鎖舉著船上。日日唱令至第七日。即斷七鎖舉著船上。望風舉帆。以太子慈心福德力故。無諸留難。得至海洲至珍寶山。到寶所已。善友太子即便擊鼓宣令。諸人當知道路懸遠。汝等諸人速載珍寶極停七日。復作是言。此寶甚重。閻浮提中亦無所直。莫大重載船舫沈沒不達所至。莫大輕取道路懸遠不補勞苦。裝束已訖與諸人別。而作是言。汝等於是善安隱歸。吾方欲前進採摩尼寶珠。爾時善友太子。與盲導師即前進路行一七日。水齊到膝。復更前行一七水齊到頸。前進一七浮而得渡。即到海處。其地純以白銀為沙。導師問言。此地何物。太子答言。其地純是白銀沙。導師言。四望應當有白銀山。汝見未耶。太子言。東南方有一白銀山現。導師言。此道在此山下。至彼山已。導師言。次應到金沙。爾時導師。疲乏悶絕[跳-兆+辟]地。語太子言。我身命者。勢不得久必喪於此。太子於是東行一七。當有金山。從山復更前進一七。其地純是青蓮華。復前行一七。其地純是紅赤蓮華。過是華已。應有一七寶城。純以黃金而為卻敵。白銀以為樓櫓。以赤珊瑚為其障板。車磲馬瑙雜廁間錯。真珠羅網而覆其上。七重塹壘純紺琉璃。大海龍王所止住處。其龍王耳中有一摩尼如意寶珠。汝往從乞。若得此珠者。能滿閻浮提。雨眾七寶衣被飲食病瘦醫藥音樂倡伎。總要而言。一切眾生所須之物。隨意能雨。是故名之如意寶珠。太子若得是珠者。必當滿汝本願。爾時導師作是語已。氣絕命終。爾時善友太子。即前抱持導師。舉聲悲哭。一何薄命生失我所天。即以導師金沙覆上。埋著地中。右遶七匝頂禮而去。前至金山。過金山已。見青蓮華遍布其地。其蓮華下有青毒蛇。此蛇有三種毒。所謂嚙毒觸毒氣噓毒。此諸毒蛇。以身遶蓮華莖。張目喘息而視太子。爾時善友太子。即入慈心三昧。以三昧力。即起進路踏蓮華葉而去。時諸毒蛇而不毀傷。以慈心力故。逕至龍王所止住處。其城四邊有七重塹。其城塹中滿中毒龍。以身共相蟠結。舉頭交頸守護城門。爾時太子到城門外。見諸毒龍。即慈心念閻浮提一切眾生。今我此身。若為此毒龍所害者。汝等一切眾生皆當失大利益。爾時太子即舉右手。告諸毒龍。汝等當知。我今為一切眾生欲見龍王。爾時諸毒龍。即開路令太子得過。乃至七重塹守城毒龍。得至城門下。見二玉女紡頗梨縷。太子問曰。汝是何人。答言。我是龍王守外門婢。問已前入到中門下。見四玉女紡白銀縷。太子復問。汝是龍王婦耶。答言。非也。是龍王守中門婢耳。太子問已。前入到內門所。見八玉女紡黃金縷。太子問曰。汝是何人。答言。我是龍王守內門婢耳。太子語言。汝為我通大海龍王。閻浮提波羅奈王善友太子。故來相見。今在門下。時守門者。即白如是。王聞是語。疑怪所以。作是念言。自非福德純善之人。無由遠涉如是嶮路。即請入宮王出奉迎。其龍王宮紺琉璃為地。床座七寶。有種種光明耀動人目。即請令坐。共相問訊。善友太子。因為說法示教利喜。種種教化。讚說施論戒論人天之論。時大海龍王。心大歡喜。遠屈塗涉欲須何物。太子言。大王。閻浮提一切眾生。為衣財飲食故。受無窮之苦。今欲從王乞左耳中如意摩尼寶珠。龍王言。受我微供一七日。當以奉給。爾時善友太子。受龍王請。過七日已。得摩尼寶珠還閻浮提。‥‥』 |
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龍言。能住我宮受供一月當以相與。太子即住一月為龍王讚歎多聞。龍即與珠。是如意珠能雨一由旬。龍言。太子有相不久作佛。我當作多聞第一弟子。 |
龍の言わく、『能く我が宮に住して、供を受くること一月すれば、当に以って相い与うべし』、と。太子は、即ち一月住して、龍王の為めに多聞を讃歎す。龍は、即ち珠を与う、『是の如意珠は、能く一由旬を雨ふらす』、と。龍の言わく、『太子には、久しからずして、仏と作る相有り。我れは当に、多聞第一の弟子と作るべし』、と。 |
『龍』は、こう言った、――
わたしの、
『宮に、一月住して!』、
『供養』を、
『受けることができれば!』、
お前に、
『珠』を、
『与えるであろう!』、と。
『太子』は、
即ち、
『一月、宮に住して!』、
『龍王の為めに!』、
『多聞の德』を、
『讃歎した!』。
『龍』が、
即ち、
『太子に、珠を与える!』と、
是の、
『如意珠』は、
『一由旬』に、
『雨を降らすことができ!』。
『龍』は、こう言った、――
『太子』には、
『久しからずして!』、
『仏と作る相』が、
『有る!』。
わたしは、
『多聞第一』の、
『弟子と!』、
『作るだろう!』、と。
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時太子復至一龍宮得珠雨二由旬。二月讚歎神通力。龍言。太子作佛不久。我當作神足第一弟子。復至一龍宮得珠雨三由旬。三月讚歎智慧。龍言。太子作佛不久。我當作智慧第一弟子。 |
時に太子は、復た一龍宮に至りて、珠を得るに、雨ふらすこと二由旬なれば、二月、神通力を讃歎す。龍の言わく、『太子の仏と作ること、久しからず。我れは当に神足第一の弟子と作るべし』、と。復た一龍宮に至りて、珠を得るに、雨ふらすこと三由旬なれば、三月智慧を讃歎す。龍の言わく、『太子の仏と作ること、久しからず。我れは当に智慧第一の弟子と作るべし』、と。 |
その時、
『太子』は、
復た、
『一龍宮に至って、珠を得る!』と、
『珠』は、
『二由旬に、雨を降らした!』ので、
『二ヶ月』、
『龍の神通力』を、
『讃歎した!』。
『龍』は、こう言った、――
『太子』が、
『仏と作るのも!』、
『久しくないだろう!』。
わたしは、
『神足第一』の、
『弟子と作らねばならない!』、と。
復た、
『一龍宮に至って、珠を得る!』と、
『珠』は、
『三由旬に、雨を降らした!』ので、
『三ヶ月』、
『龍の智慧』を、
『讃歎した!』。
『龍』は、こう言った、――
『太子』が、
『仏と作るのも!』、
『久しくないだろう!』。
わたしは、
『智慧第一』の、
『弟子と作らねばならない!』、と。
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諸龍與珠已言。盡汝壽命珠當還我。菩薩許之。太子得珠至閻浮提。一珠能雨飲食。一珠能雨衣服。一珠能雨七寶利益眾生。 |
諸龍の珠を与え已りて言わく、『汝が寿命尽くれば、珠を、当に我れに還すべし』、と。菩薩は、之を許す。太子は、珠を得て、閻浮提に至るに、一珠は、能く飲食を雨ふらし、一珠は能く衣服を雨ふらし、一珠は能く七宝を雨ふらして、衆生を利益せり。 |
『諸の龍』は、
『珠を与えながら!』、こう言った、――
お前の、
『寿命が尽きれば!』、
『珠』を、
『わたしに、還さねばならない!』、と。
『菩薩』は、
『珠を還すこと!』を、
『許した( to agree )!』。
『太子』が、
『珠を得て、閻浮提に至る!』と、
『一珠』は、
『飲食』を、
『雨ふらし!』、
『一珠』は、
『衣服』を、
『雨ふらし!』、
『一珠』は、
『七宝』を、
『雨ふらして!』、
即ち、
『衆生』を、
『利益したのである!』。
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又如須摩提菩薩。見燃燈佛從須羅婆女買五莖花不肯與之。即以五百金錢得五莖花女猶不與。而要之言。願我世世常為君妻當以相與。菩薩以供養佛故即便許之。 |
又、須摩提菩薩の如きは、燃灯仏を見て、須羅婆女より、五茎の花を買わんとするも、肯て之を与えざれば、即ち、五百金銭を以って、五茎の花を得んとするも、女、猶お与えずして、之に要(もと)めて言わく、『願わくは、我れ世世に常に、君が妻と為せば、当に以って相い与うべし』、と。菩薩は、仏を供養せんを以っての故に、即便ち之を許す。 |
又、
『須摩提菩薩など!』は、
『燃灯仏を見て!』、
『須羅婆女より!』、
『五茎の花』を、
『買おうとした!』が、
『女』は、
『花』を、
『与えようとしなかった!』。
即ち( and then )、
『五百金銭を払って!』、
『五茎の花』を、
『得ようとした!』が、
『女は、猶お与えることなく!』、
『菩薩に要めて( asking the bodhisattva to )!』、こう言った、――
願わくは、
わたしは、
世世に、
『常に!』、
『君の妻と為りたい!』、
若し、
『妻と為ることができれば!』、
『君に与えよう!』、と。
『菩薩』は、
『仏を供養する!』為めの故に、
即便ち( easily )、
『妻と為ること!』を、
『許した( to agree )のである!』。
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須摩提(しゅまだい):梵語sumati、菩薩の名。『大智度論巻30上注:須摩提』、『仏説須摩提菩薩経』参照。
須羅婆(しゅらば):梵名、好得と訳す。女の名。『翻梵語巻5』参照。
要(よう):<名詞>[本義]人の腰( waist )。<動詞>招待する/請す( invite )、探求/追求する( seek, pursue )、阻む/要撃/邀撃する(
intercept )、出迎える/迎接する( meet )、制限する/禁止する( keep within bounds, restrain,
prohibit )、阻む/制する( prevent )、強いる/強要する( force, coerce )、和する/会合する( join,
meet )、検査する/審察する/チェックする( examine, verify, check )。<名詞>要点( important point
)、要職( important position )、計画/案( scheme )。<形容詞>重要/重大( important, essential
)、簡要な( consise and to the point )、強力で影響力がある( powerful and influential )、険要な/戦略上重要な(
strategic )。<動詞>険要を守る( hold a strategic point, guard )、要求する( want, ask
for, beg )、希望する( wish to, want to )、応当/必須/必ず~すべし( should, must )、将に~すべし/今にも~しそうだ(
be going to ),比較する( compare )。<接続詞>もし~ならば( if, suppose, in case )、若しくは(
or, either…or… )。 |
参考:『修行本起経巻上』:『是時有梵志儒童。名無垢光。幼懷聰叡。志大苞弘。隱居山林。守玄行禪。圖書祕讖。無所不知。心思供養。奉報師恩。辭行開化道經丘聚。聚中梵志。名不樓陀。盛祀天祠。滿十二月。飯食供養。梵志徒眾。八萬四千人。歲終達嚫。金銀珍寶車馬牛羊。衣被繒綵。履屣。七寶之蓋。錫杖澡罐。最聰明智慧者。應受斯物。七日未竟。時儒童菩薩。入彼眾中。論道說義。七日七夜。爾時其眾。欣踊無量。主人長者。甚大歡喜。以女賢意。施與菩薩。菩薩不受。唯取傘蓋錫杖澡罐履屣金銀錢各一千。還上本師。其師歡喜。便共分布。儒童菩薩。復辭出行。時諸同學。各各贈送人一銀錢。遂行入國。見人欣然。匆匆平治道路。灑掃燒香。即問行人。用何等故。行人答曰。錠光佛。今日當來。施設供養。儒童聞佛歡喜踊躍。衣毛肅然。佛從何來。云何供養。行人對曰。唯持花香繒綵幢幡。於是菩薩。便行入城。勤求供具。須臾周匝。了不可得。國人言。王禁花香。七日獨供。菩薩聞之。心甚不樂。須臾佛到。知童子心。時有一女。持瓶盛花。佛放光明。徹照花瓶。變為琉璃。內外相見。菩薩往趣。而說頌曰 銀錢凡五百 請買五莖花 奉上錠光佛 求我本所願 女時說頌答菩薩言 此花直數錢 乃顧至五百 今求何等願 不惜銀錢寶 菩薩即答言 不求釋梵魔 四王轉輪聖 願我得成佛 度脫諸十方 女言善快哉 所願速得成 願我後世生 常當為君妻 菩薩即答言 女人多情態 壞人正道意 敗亂所求願 斷人布施心 女答菩薩言 女誓後世生 隨君所施與 兒子及我身 今佛知我意 仁者慈愍我 唯賜求所願 此華便可得 不者錢還卿 即時思宿命 觀視其本行 以更五百世 曾為菩薩妻 於是便可之。歡喜受花去。意甚大悅。今我女弱。不能得前。請寄二華。以上於佛。即時佛到。國王臣民。長者居士。眷屬圍遶。數千百重。菩薩欲前散花。不能得前。佛知至意。化地作泥。人眾兩披。爾乃得前。便散五華。皆止空中。變成花蓋。面七十里。二花住佛兩肩上。如根生。菩薩歡喜。布髮著地。願尊蹈之。佛言。豈可蹈乎。菩薩對曰。唯佛能蹈。佛乃蹈之。即住而笑。口中五色光出。離口七尺。分為兩分。一光繞佛三匝。光照三千大千剎土。莫不得所。還從頂入。一光下入十八地獄苦痛一時得安。諸弟子白佛言。佛不妄笑。願說其意。佛言。汝等見此童子不。唯然已見。世尊言。此童子於無數劫。所學清淨。降心棄命。捨欲守空。不起不滅。無倚之慈。積德行願。今得之矣』
参考:『翻梵語巻5』:『須羅婆女 譯曰須者好也 羅婆者得 第三十五卷』 |
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又妙光菩薩。長者女見其身有二十八相。生愛敬心住在門下。菩薩既到。女即解頸琉璃珠著菩薩缽中。心作是願。我當世世為此人婦。此女二百五十劫中集諸功德。後生喜見婬女園蓮花中。喜見養育為女。至年十四。女工世智皆悉備足。 |
又、妙光菩薩は、長者女、其の身に二十八相有るを見て、愛敬心を生じ、門下に在りて住せり。菩薩の、既に到るに、女は、即ち頚の琉璃珠を解いて、菩薩の鉢中に著け、心に是の願を作さく、『我れは、当に世世に此の人の婦たるべし』、と。此の女は、二百五十劫中に諸の功德を集め、後に、喜見婬女を園の蓮華中に生じ、喜見を養育して、女と為すこと、年十四に至りて、女工、世智、皆悉く備足す。 |
又、
『妙光菩薩』は、
『長者女』が、
其の、
『身に有る!』、
『二十八相を見て!』、
『愛敬心』を、
『生じ!』、
『門下に、住し( to stop at his gate and wait him )!』、
『菩薩が、既に到る!』と、
『女は、頚の琉璃珠を解いて!』、
『菩薩の鉢』中に、
『著け( to put )!』、
『心』に、こう願った、――
わたしは、
世世に、
此の、
『人の婦』と、
『為らねばならない!』、と。
此の、
『女』は、
『二百五十劫中に、諸の功德を集めた!』後、
『喜見婬女を、園の蓮花中に生じ!』、
『喜見』は、
『(喜徳を)養育して!』、
『女とした( to make her her daughter )!』。
『女の年が、十四に至る!』と、
『女工( the female manual arts or crafts )や!』、
『世智( the knowing of the way of the world )を!』、
皆、
『備具していた!』。
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参考:『40華厳経巻28』:『爾時大樹妙高吉祥王都之中。有一母人。名為善現。有一童女。名具足豔吉祥。顏容端正。色相嚴潔。洪纖得所。修短合度。眾相圓備。目髮紺青。言同梵音。清徹美妙。智慧聰明。人所尊重。善達技能。精通辯論。恭勤匪懈。質直柔和。少欲寡思。慈愍不害。具足慚愧。無諂無憍。志量弘深。人無與等。及與其母。乘妙寶車。將諸眷屬。無量采女前後圍遶。先於太子。從王都出。歌詠嬉戲。隨路而行。見其太子奏諸妓樂。言辭諷詠。心生愛染。而白母言。善哉慈母。我心願得敬事此人。若不遂情。自當殞滅。時母善現。告其女言。汝今不應生如是念。何以故。今此仁者。是王太子。具足圓滿轉輪王相。不久當紹轉輪王位。時有女寶自然出現。飛行乘空。有大威德。我今與汝。種族卑賤。非其匹偶。此甚難得。勿生是意。是時童女。其心決定。堅固不捨。時香芽雲峰園苑之側。有一道場。名法雲光明。時有如來。名勝日身。於此道場。成等正覺。已經七日。是時童女。遊觀疲極。暫時假寐。時彼如來。即於夢中。為現神變。從夢覺已。時有宿世守護菩薩親友使天。於虛空中。而告之言。童女汝向所夢。是勝日身如來。於香芽雲峰園苑之側。法雲光明菩提場中。成等正覺。始經七日。諸菩薩眾。前後圍遶。及諸天龍。夜叉。乾闥婆。阿脩羅。迦樓羅。緊那羅。摩[目*侯]羅伽。梵世諸王淨居天等。并諸一切主河主海。主地主水。主風主火。主山主城。主園主藥。主林主稼。主方主空。主晝主夜。身眾足行道場神等。男女眷屬。為欲見佛聽聞法故。皆悉來集。汝今亦應親近禮敬。時具足豔。吉祥童女。以於夢中。睹佛神變。得佛功德所加持故。其心無畏。安隱快樂。以其宿心。景慕太子。』 |
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爾時有閻浮提王。名為財主。太子名德主。有大悲心。時出城入園遊觀。諸婬女等導引歌讚德主太子。散諸寶物衣服飲食。譬如龍雨無不周遍。喜德女見太子。自造歌偈而讚太子愛眼視之。目未曾眴而自發言。世間之事我悉知之。以我此身奉給太子。 |
爾の時、閻浮提の王有り、名づけて財主と為す。太子を徳主と名づけ、大悲心有り。時に城を出でて、園に入りて遊観す。諸の婬女等導引し、歌いて徳主太子の諸の宝物、衣服、飲食を散ずること、譬えば、龍の雨ふらすに、周遍せざる無きが如し、と讃ず。喜徳の女、太子を見るに、自ら歌偈を造りて、太子を散じ、愛眼もて、之を視るに、目未だ曽て眴かず、自ら言を発すらく、『世間の事は、我れ悉く、之を知れば、我が此の身を以って、太子に奉給せん』、と。 |
爾の時、
『閻浮提に、財主という王が有り!』、
『太子は、徳主と呼ばれており!』、
『大悲心』が、
『有った!』。
或る時、
『太子』は、
『城を出て!』、
『園に入って!』、
『遊観した!』。
『諸の婬女』等が、
『太子を導引し、歌を歌いながら!』、
『太子が諸の宝物や、衣服や、飲食を散じる!』のは、
譬えば、
『龍が雨をふらせば、周遍しない処が無いようだ!』と、
『讃じる!』と、
『喜徳女は、太子を見て!』、
自ら、
『歌偈を造って!』、
『太子』を、
『讃じながら!』、
『愛眼で、太子を視つめ!』、
『目』を、
『眴かせることもなく!』、
自ら、
『言を発した!』、――
わたしは、
『世間の事』を、
『悉く、知っています!』。
わたくしの、
『此の身を!』、
『太子に、奉げましょう!』、と。
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太子問言。汝為屬誰。若有所屬此非我宜。爾時喜見婬女答太子言。我女生年日月時節皆與太子同。此女非我腹生。我晨朝入園見蓮花中有此女生。我因養育畜以為女。無以我故而輕此女。此女六十四能無不悉備。女工技術經書醫方皆悉了達。常懷慚愧內心忠直無有嫉妒無邪婬想。我女德儀如是。太子必應納之。 |
太子の問うて言わく、『汝は、誰が為めにか、属する。若し所属有らば、是れ我が宜しきに非ず』、と。爾の時、喜見婬女、太子に答えて言わく、我が女の生ぜし年、日、月、時節は、皆太子と同じうするも、此の女は、我が腹より生ぜしに非ず。我れ晨朝に、園に入り、蓮花中に、此の女有りて、生ずるを見る。我れ因りて養育し、畜(たくわ)うるに以って女と為す。我れを以ての故に、此の女を軽んずること無かれ。此の女は、六十四能を、悉く備えざる無く、女工、伎術、経書、医方は、皆悉く了達せるも、常に慚愧を懐いて、内心忠直にして、嫉妒有ること無く、邪婬の想無し。我が女の徳儀は、是の如し。太子、必ず応に之を納むべし』、と。 |
『太子は問うて!』、こう言った、――
お前は、
『誰かに!』、
『属しているのか?』。
若し、
『所属が有れば!』、
『わたしの!』、
『宜しきではない( be not appropriate )!』、と。
爾の時、
『喜見婬女』が、
『太子に答えて!』、こう言った、――
『わたしの女( my daughter )の生まれた!』、
『年、日、月、時節』は、
皆、
『太子』と、
『同じですが!』、
『此の女』は、
わたしの、
『腹より!』、
『生まれたのではありません!』。
わたしが、
『晨朝に、園に入る!』と、
『蓮花中に、此の女が有り!』、
『生まれてくる( being born )!』のが、
『見えました!』。
わたしは、
『因って( because )!』、
『養育し、蓄え( to bring up )!』、
『わたしの!』、
『女とした!』ので、
『わたしを、思う!』が故に、
『此の女』を、
『軽んじてはいけません!』。
此の、
『女』には、
『六十四能が、悉く備わり!』、
『備わらないもの!』が、
『無いくらいです!』。
『女工も、伎術も、経書も、医方も!』、
皆、
『悉く!』を、
『了達していながら!』、
常に、
『慚愧』を、
『懐いているのです!』。
『内心は忠義、実直であり!』、
『嫉妒することが、無く!』、
『邪婬の想も!』、
『有りません!』。
わたしの、
『女』の、
『德儀』は、
『是の通りですので!』、
『太子』は、
『必ず!』、
『之を納めねばなりません!』、と。
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畜(ちく):<名詞>[本義]家畜( farm animal, livestock )。<動詞>飼養する( raise )、養育する( bring up )、[德等を]培養する( cultivate )、服従する( comply )、積集/蓄積する( accumulate )、収容する( house )、収集する( collect )。
忠直(ちゅうじき):忠義実直。忠実。
六十四能(ろくじゅうしのう):世間の六十四の技能。「大智度論巻2」に、「四韋陀経中の治病法、斗戦法、星宿法、祠天法、歌舞論議難問法、これ等六十四種の世間の技芸は、浄飯王の子、広く学び多く聞けば、もしは、この事を知ること、難しと為すに足らず」と云えるこれなり。
六十四書(ろくじゅうししょ):印度に於いて行ぜられし所の、一切の外典。「仏本行集経巻11」に、「一に梵天所説書braahmii(今の婆羅門書の正十四音これなり)、二に佉盧虱吒書kharoSTii(随に驢唇と言う)、三に富沙迦羅仙人説書puSkarasaarii(随に蓮華と言う)、四に阿迦羅書aGga-
lipi(随に節分と言う)、五に懵伽羅書vaGga- lipi(随に吉祥と言う)、六に耶懵尼書yavanii(随に大秦国書と言う)、七に鴦瞿梨書aGguliiya-
lipi(随に指書と言う)、八に耶那尼迦書yaananikaa(随に駄乗と言う)、九に娑伽婆書sakaari- lipi(随に牸牛と言う)、十に波羅婆尼書brahmavalili-
lipi(随に樹葉と言う)、十一に波流沙書paruzSa- lipi(随に悪言と言う)、十二に毘多荼書vitaDa- lipi(随に起屍と言う)、十三に陀毘荼国書draaviDa-
lipi(随に南天竺と言う)、十四に脂羅低書kinaa-ri- lipi(随に裸人形と言う)、十五に度其差那波多書dakSiaa- lipi(随に右旋と言う)、十六に優伽書ugra-
lipi(随に厳熾と言う)、十七に僧佉書saMkyaa- lipi(随に等計と言う)、十八に阿婆勿陀書apaavRtta- lipi(随に覆と言う)、十九に阿[少/兔]盧摩書anuloma-
lipi(随に順と言う)、二十に毘耶寐奢羅書vyaamizra- lipi(随に雑と言う)、二十一に陀羅多書darada- lipi(烏場辺山)、二十二に西瞿耶尼書aparagodaani-
lipi(随言無し)、二十三に珂沙書khaasya- lipi(疏勒)、二十四に脂那国書cina- lipi(大随)、二十五に摩那書huuNa-
lipi(斗升)、二十六に末荼叉羅書madhyakSaravistara- lipi(中字)、二十七に毘多悉底書(梵不明、尺)、二十八に富数波書puSya-
lipi(花)、二十九に提婆書deva- lipi(天)、三十に那伽書naaga- lipi(龍)、三十一に夜叉書yakSa- lipi(新随語)、三十二に乾闥婆書gandharva-
lipi(天音声)、三十三に阿修羅書asura- lipi(不飲酒)、三十四に迦婁羅書garuDa- lipi(金翅鳥)、三十五に緊那羅書kiMnara-
lipi(非人)、三十六に摩睺羅伽書mahoraga- lipi(大蛇)、三十七に弥伽遮伽書mRgacakra- lipi(諸獣音)、三十八に迦迦婁多書kaakaruta-
lipi(烏音)、三十九に浮摩提婆書bhaumadeva- lipi(地居天)、四十に安多梨叉提婆書antariikSadeva- lipi(虚空天)、四十一に鬱多羅拘盧書uttarakurudviipa-
lipi(須弥化)、四十二に逋婁婆毘提訶書puurvavideha- lipi(須弥東)、四十三に烏差波書utksepa- lipi(挙)、四十四に膩差波書nikSEpa-
lipi(擲)、四十五に娑伽羅書saagara- lipi(海)、四十六に跋闍羅書vajra- lipi(金剛)、四十七に梨迦波羅低梨伽書lekhapratilekha-
lipi(往復)、四十八に毘棄書vikSepa- lipi(音牒)、四十九に多書prakSepa- lipi(食残)、五十に阿[少/兔]浮多書adbhuta-
lipi(未曽有)、五十一に奢娑多羅跋多書saastraavarta- lipi(如伏転)、五十二に伽那那跋多書gaNanaavarta- lipi(算転)、五十三に優差波跋多書utksepaararta-
lipi(挙転)、五十四に尼差波跋多書nikSepaavarta- lipi(擲転)、五十五に波陀梨佉書paadalikhita- lipi(足)、五十六に毘拘多羅婆陀那地書dviruttarapada-
saMdhi- lipi(従二増上句)、五十七に耶婆陀輸多羅書yaavaddazottarapada- saMdhi- lipi(増十句已上)、五十八に末荼婆哂尼書madhyaahaariNi-
lipii(中五流)、五十九に梨娑耶娑多波恀比多書RSitapastaptaa(諸仙苦行)、六十に陀羅尼卑叉利書dharaNiiprekSaNi-
lipi(観地)、六十一に伽伽那卑麗叉尼書gagaNa- prekSa- Nii- lipi(観虚空)、六十二に薩蒱沙地尼山陀書sarvauSadhiniSyandaa(一切薬果因)、六十三に沙羅僧伽何尼書sarvasarasaMgrahaNii(総覧)、六十四に薩沙婁多書sarva-
bhuutaruta- grahaNii(一子数音)(以上梵名は多くlalitavistaraに拠る)」と云えるこれなり。また「大般若経巻332」に、「六十四能十八明処は一切の技術にして善巧ならざる無し、衆人欽仰す」と云い、「大智度論巻2」に、「四韋陀経中に治病法、斗戦法、星宿法、祠天法、歌舞論議難問法、これ等の六十四種の世間の技芸は、浄飯王の子、広く学び多く聞けば、もしはこの事を知るも、難しと為すに足らず」と云えり。<(丁) |
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德主太子答語女言。姊我發阿耨多羅三藐三菩提心。修菩薩道無所愛惜。國財妻子象馬七珍。有所求索不逆人意。若汝生男女及以汝身。有人求者當以施之莫生憂悔。或時捨汝出家為佛弟子淨居山藪汝亦勿愁。 |
徳主太子答えて、女に語りて言わく、『姉、我れ阿耨多羅三藐三菩提の心を発してより、菩薩の道を修すれば、愛惜する所の国財、妻子、象馬、七珍無ければ、求索する所有らば、人の意に逆らわず。若し、汝が生ずる男女、及び汝が身を以って、有る人、求むれば、当に以って之に施すべければ、憂悔を生ずる莫けん。或は時に汝を捨てて出家し、仏弟子と為るも、浄く山藪に居ろうとも、汝は亦た愁うること勿れ』、と。 |
『徳主太子』は、
『女に語り、答えて!』、こう言った、――
姉!
わたしは、
『阿耨多羅三藐三菩提の心を発してより!』、
『菩薩道を修め!』、
『国財、妻子、象馬、七珍のようなものを!』、
『愛惜すること!』が、
『無い!』ので、
有る、
『人に、求索されれば!』、
其の、
『人の意』に、
『逆らわずに!』、
若し、
『求める人が有れば!』、
『お前の生む男や、女や、お前自身の身を施しても!』、
『憂悔を!』、
『生じないだろう!』。
或は時に、
『お前を捨てて、出家し!』、
『仏弟子と為って!』、
『山藪』に、
『浄居することもあるだろう!』が、
お前も、
亦た、
『愁いてはならない!』、と。
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莫(まく):<副詞>[否定]~でない/~しない( not )、[不可/不能]できない/するな/不要( don't )、恐らく/多分/有りうる(
perhaps, about, can it be that )。<代名詞>誰も~しない( no one, nothing )。
勿(もつ):<副詞>[否定]~でない/~しない( not )、[不可/不能]できない/するな/不要( don't )。<動詞>無[有の対義語]/所有しない(
not have )。
憂悔(うけ):憂いて悔やむ。
山藪(せんそう):山や密林。
淨居(じょうご):婬事を遠ざけて住む。 |
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喜德女答言。假令地獄火來燒滅我身終亦不悔。我亦不為婬欲戲樂故而以相好。我為勸助阿耨多羅三藐三菩提故奉事正士。女又白太子言。我昨夜夢見妙日身佛坐道樹下可往觀之。 |
喜徳女の答えて言わく、『仮令(たと)い地獄の火来たりて、我が身を焼滅すとも、終に亦た悔いざらん。我れも亦た婬欲、戯楽の為めの故に、以って相い好むにあらず。我れは、阿耨多羅三藐三菩提を勧助せんが為めの故に、正士に奉事すなり』、と。女は、又太子に白して言さく、『我れは、昨夜夢に妙日身仏の、道樹の下に坐したもうを見れば、往きて之を観るべし』、と。 |
『喜徳女は答えて!』、こう言った、――
仮令い( even if )、
『地獄の火が来て!』、
わたしの、
『身』を、
『焼滅したとしても!』、
終に、
『悔いることはありません!』。
わたしも、
亦た、
『婬欲、戯楽の為め!』の故に、
『君を!』、
『好むのではありません!』。
わたしは、
『阿耨多羅三藐三菩提を勧助する為め!』の故に、
『正士(you)』に、
『奉事する( to serve )のです!』。
『女』は、又、
『太子に白して!』、こう言った、――
わたしは、
昨夜の夢に、
『妙日身仏』が、
『道樹の下に坐っていられる!』のを、
『見ました!』ので、
『仏』を、
『観に!』、
『往きましょう!』、と。
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戯楽(けらく):技芸、娯楽。
勧助(かんじょ):すすめ助ける。
正士(しょうじ):正しい人。菩薩。
奉事(ぶじ):梵語 upacaara の訳、奉仕する( to serve )の義。 |
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太子見女端正又聞佛出。以此二因緣故共載一車俱詣佛所。佛為說法。太子得無量陀羅尼門。女得調伏心志。太子爾時以五百寶花供養於佛。以求阿耨多羅三藐三菩提。 |
太子は、女の端政なるを見、又仏の出でたもうを聞いて、此の二因縁を以っての故に、共に一車に載りて、倶に仏所に詣(いた)る。仏は為めに法を説きたもうに、太子は無量の陀羅尼門を得、女は、心志を調伏するを得。太子は爾の時、五百の宝花を以って、仏を供養し、以って阿耨多羅三藐三菩提を求む。 |
『太子』は、
『女が、端政であるのを見!』、
又、
『仏が出られた!』と、
『聞いた!』ので、
此の、
『二因縁』の故に、
『女と共に、一車に載り!』、
倶に( with together )、
『仏所』に、
『詣った!』。
『仏』が、
『太子の為めに、法を説かれる!』と、
『太子』は、
『無量の陀羅尼門』を、
『得!』、
『女』は、
『心志( her will )』を、
『調伏することができた!』。
『太子』は、
爾の時、
『五百の宝花を用いて、仏を供養しながら!』、
『阿耨多羅三藐三菩提』を、
『求めた!』。
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心志(しんし):意志、心意( will )。 |
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太子白父王言。我得見妙日身佛大得善利。父王聞已。捨所愛重之物以與太子。與其官屬國內人民俱詣佛所。佛為說法。王得一切法無闇燈陀羅尼。 |
太子の、父王に白して言さく、『我れ妙日身仏を見て、大いに善利を得たり』、と。父王は聞き已りて、愛重する所の物を捨て、以って太子に与え、其の官属、国内の人民と倶に仏所に詣れば、仏は為めに法を説きたまい、王は、一切法無闇灯陀羅尼を得。 |
『太子』が、
『父王に白して!』、こう言うと、――
わたしは、
『妙日身仏を見ることができ!』、
大いに、
『善利』を、
『得ました!』、と。
『父王』は、
『聞いてしまう!』と、
『愛重する物を捨てて!』、
『太子』に、
『与える!』と、
其の、
『官属や、国内の人民と倶に!』、
『仏所に!』、
『詣った!』。
『仏』が、
『王の為めに、法を説かれる!』と、
『王』は、
『一切法無闇灯陀羅尼』を、
『得ることができた!』。
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時王思惟。不可以白衣法攝治國土。受於五欲而可得道。作是思惟已。立德主太子為王。出家求道。是時太子於月十五日六寶來應。喜德妻變為寶女。 |
時に、王の思惟すらく、『白衣の法を以って、国土を摂治するべからず。五欲を受くるも、道を得べし』、と。是の思惟を作し已りて、徳主太子を立てて、王と為し、出家して道を求む。是の時、太子は、月の十五日に於いて、六宝来応す。喜徳は妻を変じて、宝女と為る。 |
その時、
『王』は、こう思惟した、――
『白衣の法を用いて!』、
『国土』を、
『摂治することはできない( cannot rule )!』。
『五欲を受けていても!』、
『道』を、
『得ることはできるだろう!』、と。
是のように、思惟して、
『徳主太子を立てて、王にする!』と、
『出家して!』、
『道を求めた!』。
是の時、
『太子』は、
『月の十五日』に、
『六宝が来応する!』と、
『喜徳が!』が、
『妻から宝女に変じた!』。
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摂治(しょうじ):政治を把握すること。
不可思議経(ふかしぎきょう):「華厳経」の異名なり。また「不可思議解脱経」とも云う。
六宝(ろっぽう):転輪聖王の七宝中、女宝を除きし余を云う。
宝女(ほうにょ):転輪聖王の七宝中の女宝を云う。
七宝(しっぽう):転輪聖王の七宝に就きて、謂わゆる一に輪宝、二に象宝、三に馬宝、四に珠宝、五に女宝、六に主蔵臣宝、七に主兵宝なり。「40華厳経巻29」に、「輪王の七宝、自然に至る、一には輪宝、無礙行と名づけ、輻輞には百千の妙宝具足して以って荘厳と為し、閻浮檀金の光明普く照す、二には象宝、金剛山と名づけ威力広大なり、三には馬宝、迅疾風と名づく、四には珠宝、日光の雲を蔵すと名づく、五には女宝、艶吉祥を具足すと名づく、六には主蔵臣宝、名づけて大財と為す、七には主兵宝、離垢眼と名づく、かくの如く七宝、欻然として出現し、具足成就して転輪王と為す」と云えるこれなり。
来応(らいおう):応じて来る( to come in response )。 |
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如不可思議經中廣說。如是等因緣故知。善男子善女人。世世願為菩薩父母妻子眷屬 |
不可思議経中に広説するが如く、是れ等の如き因縁の故に知る、『善男子、善女人は、世世に願いて、菩薩の父母、妻子、眷属と為る』、と。 |
『不可思議経( 華厳経)中に広説されたように!』、
是れ等のような、
『因縁』の故に、こう知ることになる、――
『善男子、善女人』は、
『世世に菩薩の父母、妻子、眷属に為ろう!』と、
『願っている!』、と。
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