妄語者。不淨心欲誑他。覆隱實出異語生口業。是名妄語。 |
妄語とは、不浄心もて、他を誑さんと欲し、実を覆隠して、異語を出し、口業を生ず、是れを妄語と名づく。 |
『妄語』とは、――
『不浄の心』で、
『他』を、
『誑(たぶらか)そう!』と、
『思い!』、
『実』を、
『覆(おお)い!』、
『隠(かく)して!』、
『虚偽の!』、
『語(ことば)』を、
『出し!』、
『口』の、
『業』を、
『生じる!』、
是れを、
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妄語(もうご):虚偽の発言( false speech )、梵語 mRSaa- vaada, mRSaa- vaac の訳、嘘を吐く/人を欺す/真実を曲げること(
Lying, deceiving, distorting the truth )の義。十悪の一。五戒の一。虚偽の発言とは広義には、但だ嘘を吐くことのみにあらず、不正確な/誇張した/潤色した発言等を含む(
False speech in the broader sense of not only lying, but any speech that
is incorrect, exaggerating, embellishing, etc )。又虚妄語、虚誑語、妄舌、虚偽、欺誑とも訳す。最も広く分類すれば、大妄語、小妄語に別けられる(
Most broadly categorized into big lies and trivial lies )。梵網経に於いては、嘘を吐く行為を、自らの口を通して語られた嘘
[自妄語] と、人に教えて嘘を吐かせること [教人妄語] 、手段として嘘を吐くこと [方便妄語] とに分類する( In the Sutra of
Brahmā's Net, the act of lying is also differentiated into lies spoken
through one's own mouth, influencing someone else to lie, and lying by
deception )。
異語(いご):不正確な発言( inaccurate speech )、梵語 anyathaa- vaac, anya- vaada の訳、間違った/虚偽の発言(
Erroneous, false, untrue speech )の義。 |
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妄語之罪從言聲相解生。若不相解雖不實語。無妄語罪。是妄語。知言不知不知言知。見言不見不見言見。聞言不聞不聞言聞。是名妄語。若不作是名不妄語。 |
妄語の罪は、言声を、相解するに従いて生ず。若し相解せざれば、実語ならずと雖も、妄語の罪無し。是の妄語は、知るを知らずと言い、知らざるを知ると言い、見るを見ずと言い、見ざるを見ると言い、聞くを聞かずと言い、聞かざるを聞くと言う、是れを妄語と名づく。若し作さざれば、是れを妄語にあらずと名づく。 |
『妄語』の、
『罪』は、
『言声』を、
『理解して!』、
『生じる!』ので、
若し、
『言声』を、
『理解しなければ!』、
『実語でなくても!』、
『妄語の罪』は、
『無い!』。
是の、
『妄語』とは、――
『知る!』のに、
『知らない!』と、
『言い!』、
『知らない!』のに、
『知る!』と、
『言い!』、
『見た!』のに、
『見ない!』と、
『言い!』、
『見ない!』のに、
『見た!』と、
『言い!』、
『聞いた!』のに、
『聞かない!』と、
『言い!』、
『聞かない!』のに、
『聞いた!』と、
『言う!』ならば、
是れを、
若し、
『言わなければ!』、
『妄語でない!』と、
『称する!』。
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問曰。妄語有何等罪。 |
問うて曰く、妄語には、何等の罪か有る。 |
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答曰。妄語之人。先自誑身然後誑人。以實為虛以虛為實。虛實顛倒不受善法。譬如覆瓶水不得入。 |
答えて曰く、妄語の人は、先に自ら身を誑き、然る後に人を誑き、実を以って虚と為し、虚を以って実と為し、虚実顛倒して、善法を受けず。譬えば、瓶を覆えば、水の入るを得ざるが如し。 |
答え、
『妄語の人』は、
『先に!』、
『自身』を、
『誑(あざむ)き!』、
『後に!』、
『他人』を、
『誑く!』。
即ち、
『実である!』のに、
『嘘だ!』と、
『思い!』、
『嘘である!』のに、
『実だ!』と、
『思い!』、
『嘘』と、
『実』とを、
『顛倒する!』ので、
『善法』を、
『受けない!』。
譬えば、
『瓶』の、
『口』を、
『覆って!』、
『水』を、
『入れなくする!』のと、
『同じである!』。
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妄語之人心無慚愧。閉塞天道涅槃之門。觀知此罪。是故不作。 |
妄語の人は、心に慚愧無く、天の道と、涅槃の門を閉塞す。此の罪を観知するものは、是の故に作さざるなり。 |
『妄語の人』は、
『心』に、
『慚愧する!』ことが、
『無い!』ので、
『天の道』も、
『涅槃の門』も、
『閉ざして!』、
『塞ぐ!』。
此の、
『罪』を、
『観て!』、
『知る!』者は、
是の故に、
『妄語』を、
『作さないのである!』。
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復次觀知實語其利甚廣。實語之利自從己出甚為易得。是為一切出家人力。如是功德居家出家人共有此利。善人之相。 |
復た次ぎに、実語を観知するに、其の利は甚だ広く、実語の利は、自ら己より出でて、甚だ得易ければ、是れ一切の出家人の力と為す。是の如き功徳は、居家、出家の人共に此の利有れば、善人の相なり。 |
復た次ぎに、
『実語』を、
『観て!』、
『知れば!』、
其の、
『実語』の、
『利』は、
『自ら!』、
『己(おのれ)』より、
『出る!』ので、
『得る!』ことも、
『易(やさ)しく!』、
是れは、
一切の、
『出家人』の、
『力』と、
『為るものである!』。
是のような、
『功徳』は、
『居家の人』にも、
『出家の人』にも、
此の、
『利』が、
『共に!』、
『有る!』ので、
『実語』とは、
『善人』の、
『相でもある!』。
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復次實語之人其心端直。其心端直易得免苦。譬如稠林曳木直者易出。 |
復た次ぎに、実語の人は、其の心端直にして、其の心端直なれば、苦を免るるを得ること易し。譬えば稠林より、木を曳くに、直き者は出で易きが如し。 |
復た次ぎに、
『実語の人』は、
其の、
『心』が、
『真直ぐ!』であり、
其の、
『心』が、
『真直ぐ!』ならば、
『苦』を、
『免れる!』ことも、
『容易である!』。
譬えば、こうである、――
『樹木』の、
『多い!』、
『林から!』、
『木』を、
『曳き!』、
『出す!』のは、
『真直ぐ!』な、
『木ほど!』、
『容易なのである!』。
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端直(たんじき):まっすぐ。正直。
稠林(ちゅうりん):樹木の多い林。密林。 |
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問曰。若妄語有如是罪。人何以故妄語。 |
問うて曰く、若し、妄語に、是の如きの罪有らば、人は、何を以っての故にか、妄語する。 |
問い、
若し、
『妄語』に、
是のような、
『罪』が、
『有る!』とするならば、
『人』は、
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答曰。有人愚癡少智。遭事苦厄妄語求脫不知事發。今世得罪不知後世有大罪報。 |
答えて曰く、有る人は、愚癡、少智なるに、事、苦、厄に遭い、妄語して脱れんと求むるも、事発(あば)かれて、今世に罪を得るを知らず、後世に大罪報有るを知らず。 |
答え、
有る人は、
『愚癡であったり!』、
『少智であったり!』で、
『事件』や、
『苦難』や、
『災厄』に、
『遭う!』と、
『妄語』して、
『脱れよう!』と、
『求める!』が、
『事』が、
『発覚すれば!』、
『今世の罪』を、
『得る!』ことを、
『知らず!』、
『妄語すれば!』、
『後世』に、
『大罪の報』が、
『有る!』ことを、
『知らないからである!』。
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遭事(そうじ):不幸な事に遭遇する。
苦厄(くやく):苦難、災厄。 |
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復有人雖知妄語罪。慳貪瞋恚愚癡多故而作妄語。 |
復た有る人は、妄語の罪を知ると雖も、慳貪、瞋恚、愚癡多きが故に、妄語を作す。 |
復た、
有る人は、
『妄語』の、
『罪』を、
『知っている!』が、
『慳貪』や、
『瞋恚』や、
『愚癡』が、
『多い!』が故に、
『妄語』を、
『作す!』。
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復有人雖不貪恚。而妄證人罪心謂實爾。死墮地獄如提婆達多弟子俱伽離。常求舍利弗目揵連過失。 |
復た有る人は、貪、恚にあらずと雖も、人の罪を妄証して、心に『実に爾り』、と謂えば、死して地獄に堕つ。提婆達多の弟子の俱伽離の、常に舎利弗、目揵連の過失を求めしが如し。 |
復た、
有る人は、
『慳貪でもなく!』、
『瞋恚でもない!』が、
而し、
『人』の、
『罪』を、
『妄証して!』、
『心』に、
『実に、その通りだ!』と、
『謂う!』ので、
『死ぬ!』と、
『地獄』に、
『堕ちるのである!』。
例えば、――
『提婆達多』の、
『弟子』の、
『俱伽離』は、
常に、
『舎利弗』や、
『目揵連』の、
『過失』を、
『求めていた!』。
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妄証(もうしょう):不合理、或いは非常識な証言をする。
倶伽離(くがり):梵名kokaalika、また瞿伽離、俱迦梨、拘迦利等に作り、意訳して悪時者、牛主と為す。提婆達多の弟子と為り、常に仏の化導を妨礙し、並びに仏、舎利弗、目連、梵天等を毀謗すれば、仏は屡偈を説いてこれを訶責すれど、猶これを謗りて止まず。後に身体に悪瘡を生じて、命終の後には八寒地獄に堕つ。また「雑阿含経巻48」、「大宝積経巻2」、「大智度論巻13」等に出づ。<(佛) |
参考:『毘奈耶巻4』:『佛世尊遊羅閱城耆闍崛山。時尊者舍利弗摩訶目揵連平旦著衣持缽。從耆闍崛山入羅閱城分衛。道逢暴雨。入石室避雨。有牧牛女人先入中避雨。臥夢失精。舍利弗等見即尋出去。時瞿婆離比丘調達弟子。見舍利弗目揵連出。尋入石室見此女人。便生念言。此舍利弗目揵連必與此女人為不淨行。時瞿婆離入城。語諸比丘。諸君常言舍利弗目揵連污清淨行。我向者具見此事。諸比丘不知當何答。往白世尊。世尊告曰。此癡人成大重罪。清淨比丘淨行以無根本棄捐謗。此癡人長夜受苦墮地獄。時瞿婆離比丘往詣佛所。頭面禮足在一面坐。世尊告瞿婆離。瞿婆離比丘。汝宜及時悔心。向舍利弗目揵連。何以故。此等梵行全。瞿婆離白佛。知如來信彼人意淨。但為眼見舍利弗目揵連為惡。世尊復再語瞿婆離。瞿婆離。汝宜及時悔心。向舍利弗目揵連。何以故。此等梵行全。瞿婆離白佛。知如來信舍利弗等。但為眼見舍利弗目揵連為惡。佛如是三語瞿婆離。瞿婆離。汝宜及時悔心。向舍利弗目揵連何以故。此等梵行全。瞿婆離白佛。知如來信彼人意淨。但為眼見舍利弗目揵連為惡。時瞿婆離比丘佛三語不受。便從坐起而去。去不久身體生瘡。狀如芥子。漸漸長大。轉如蜱豆行如大豆。轉如雌豆。(如棗核許)轉如阿摩勒果。轉如勒路(如百子瓠)潰爛一切身膿血流出。時瞿婆離比丘即夜命斷。墮婆曇暮地獄。即夜有一天來至佛所。頭面禮足在一面立。白世尊言。瞿婆離(牧牛)比丘起惡意。向舍利弗目揵連謗言犯梵行。墮摩訶婆曇暮地獄。白世尊已。禮足沒還天上。佛告諸比丘。昨夜有天來至我所。頭面禮足在一面住。白我言。瞿婆離比丘起惡意。向舍利弗目揵連謗言犯梵行。死墮婆曇暮大地獄。此比丘因小事作。大誹謗清淨比丘梵行。若比丘作是誹謗者。僧伽婆施沙。時世尊若諸比丘。欲聞婆曇暮大地獄眾生壽命長短不。今正是時。願世尊說婆曇摩大地獄。諸比丘聞當承受奉行。譬如比丘摩竭大斗十二斛。胡麻子簞盛滿麻子上使盛鋒。有人百年取一麻子。諸比丘尚可數知。麻子之數無知。阿浮地獄人命不可數知如二十無實地獄。不如一空無實地獄。如二十空無實地獄。不如一喚呼地獄。如二十喚呼地獄。不如一使河地獄。如二十使河地獄。不如一須犍提地獄。如二十須犍提(甚香)地獄。不如一摩頭犍提地獄(蒲陶酒香)如二十摩頭犍提地獄。不如一優波羅地獄。如二十優波羅地獄。不如一拘勿豆地獄。如二十拘勿豆地獄。不如一分陀離地獄。如二十分陀離地獄。不如一婆曇摩地獄。彼瞿婆離比丘調達弟子。謗舍利弗目揵連生其中』 |
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是時二人夏安居竟。遊行諸國值天大雨。到陶作家宿盛陶器舍。此舍中先有一女人在闇中宿。二人不知。 |
是の時、二人は、夏安居し竟りて、諸国を遊行し、天の大雨するに値い、陶作の家に抵りて、陶器を盛れる舎に宿る。此の舎中に、先に一女人有りて、闇中に在りて宿れるも、二人は知らず。 |
是の時、
『舎利弗』と、
『目揵連』の、
『二人』は、
『夏安居』を、
『終了して!』、
『諸国』を、
『遊行していた!』が、
『天』が、
『大雨』を、
『降らす!』のに、
『遭遇した!』ので、
『陶作』の、
『家』に、
『到る!』と、
『陶器』を、
『収納する!』、
『屋舎』に、
『宿ることにした!』。
此の、
『屋舎』中には、
先に、
有る、
『一女人』が、
『闇』中に、
『宿っていた!』のを、
『二人』は、
『知らなかった!』。
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夏安居(げあんご):梵語 varSaa- vaasa の訳、雨期の住居( residence during the rainy season )の義、又は梵語
varSaa- uSita の訳、雨期に居残る者( one who has stay during the rainy season )の義、雨期の四月十六日乃至七月十五日の三ヶ月間、比丘は精舎中に住まりて、勉学と修行とに集中する(
the rainy season of three months, from the 16th of the 4th to the 15th
of the 7th month, during which monks stay in their monasteries, concentrating
on study and practice )の意。 |
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此女人其夜夢失不淨。晨朝趣水澡洗。是時俱伽離偶行見之。俱伽離能相知人交會情狀。而不知夢與不夢。是時俱伽離顧語弟子。此女人昨夜與人情通。即問女人汝在何處臥。答言。我在陶師屋中寄宿。又問共誰。答言。二比丘。 |
此の女人、其の夜、夢に不浄を失し、晨朝、水に趣いて、澡洗す。是の時、俱伽離、偶ま行きて之を見る。俱伽離は能く人の交会の情状を相知するも、夢と夢にあらざるとを知らず。是の時、俱伽離の弟子に語らく、『此の女人は、昨夜、人と情を通ぜり』、と。即ち女人に問わく、『汝は何処に在りてか、臥せる』、と。答えて言わく、『我れは、陶師の屋中に在りて、寄宿せり』、と。又問わく、『誰か共なる』、と。答えて言わく、『二比丘あり』、と。 |
此の、
是の時、
『俱伽離』は、
『俱伽離』は、
『人』の、
『交会』の、
『情況』を、
『容貌』を、
『見て!』、
『知ることができた!』が、
而し、
『夢か?』、
『夢でないか?』までは、
『判断できなかった!』。
是の時、
『俱伽離』は、
『弟子』に、こう語った、――
此の、
『女人』は、 昨夜、
『人』と、
『情』を、
『通じていたのだ!』、と。
そして、
『女人』に、こう問うた、――
答えて、こう言った、――
わたしは、
『陶師』の、
『屋舎』中に、
『寄宿していました!』、と。
又、
こう問うた、――
答えて、こう言った、――
『二人』の、
『比丘』と、
『いっしょでした!』、と。
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失(しつ):自ら禁ぜず/忍びて住まらず( be out of control )の意。
澡洗(そうせん):沐浴すること。
相知(そうち):相を見て知るの意。
交会(こうえ):会合( meet )、交媾( compulate )の意。
情状(じょうじょう):情況/状景( circumstance, scene, situation )の意。 |
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是時二人從屋中出。俱伽離見已。又以相驗之。意謂二人必為不淨。先懷嫉妒既見此事。遍諸城邑聚落告之。次到祇洹唱此惡聲。 |
是の時、二人、屋中より出づ。俱伽離は見已りて、又相を以って之を験(ため)し、意に謂わく、『二人は、必ず不浄を為せり』、と。先に嫉妬を懐くに、既に此の事を見て、遍く、諸の城邑、聚落に之を告げ、次に祇桓に到りて、此の悪声を唱う。 |
是の時、
『二人』が、
『屋舎』中より、
『出てくる!』のを、
『俱伽離』が、
『見て!』、
『相(様子)』を、
『観察する!』と、
『意』中に、こう思った、――
『倶伽離』は、
先に、
『嫉妬』を、
『懐いていた!』上に、
此の、
『事』を、
『見てしまった!』ので、
遍く、
諸の、
『城邑( 都城)』や、
『聚落( 村落)』中に、
『告げまわり!』、
次いで、
『祇桓精舍』に、
『到って!』、
|
悪声(あくしょう):悪名/悪評( bad reputation )の意。 |
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於是中間梵天王來欲見佛。佛入靜室寂然三昧。諸比丘眾亦各閉房三昧。皆不可覺。即自思惟。我故來見佛。佛入三昧且欲還去。即復念言。佛從定起亦將不久。於是小住。到俱伽離房前。扣其戶而言。俱伽離俱伽離。舍利弗目揵連心淨柔軟。汝莫謗之而長夜受苦。 |
是の中間に於いて、梵天王来たりて、仏に見(まみ)えんと欲するも、仏は、静室に入りて、寂然三昧たり。諸の比丘衆も亦た、閉房三昧たりて、皆覚むべからざれば、即ち自ら思惟すらく、『我れ、故に来たりて仏に見ゆれば、仏は三昧に入りたまえり。且く還り去らんと欲す』、と。即ち、復た念じて言わく、『仏の定より起ちたもうこと、亦た将に久しからざるべし。是に於いて小(しばら)く住まらん』、と。俱伽離の房の前に到り、其の戸を扣(たた)きて言わく、『俱伽離、俱伽離。舎利弗、目揵連は、心浄く柔軟なり。汝は之を謗りて、長夜に苦を受くること莫かれ』、と。 |
是の中間に於いて、
『梵天王』が、
『仏』に、
『会えるか!』と、
『思って!』、
『来た!』が、
『仏』は、
『静室』で、
『寂然三昧』に、
『入られていた!』し、
諸の、
『弟子たち』も、
各、
『閉房三昧』に、
『入っていて!』、
皆、
『覚ませなかった!』ので、
即ち、
自ら、こう思惟した、――
わたしは、
『用』が有って、
『仏』に、
『会いに!』、
『来た!』が、
『仏』は、
『三昧』に、
『入られている!』。
『仕方がない!』から、
『還るとしよう!』、と。
そこで、
復た、念じてこう言った、――
『仏』が、
『定』より、
『起たれる!』まで、
『待ったとしても!』、
それほど、
『長くはかかるまい!』。
此処に、
『しばらく!』、
『住まるとしよう!』、と。
『俱伽離の房』の、
『前』に、
『到る!』と、
其の、
『戸』を、
『扣( たた)いて!』、こう言った、――
俱伽離!
俱伽離!
『舎利弗』と、
『目揵連』とは、
『心』が、
『浄らかで!』、
『柔軟であるぞ!』。
お前は、
之を、
『謗って!』、
『長夜( 長期間)』に、
『苦』を、
『受けるなよ!』、と。
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故(こ):ことさらに、故意に、理由/目的あって( deliberately, on purpose )の意。
長夜(じょうや):梵語 diirgha- raatra の訳、長い夜( long night )の義、[無智に住まる]一夜/長時間( ( of abiding
in ignorance ) The whole night; a long time )、生死、或いは輪迴の長い夜( The long night
of mortality or transmigration )の意、又無明長夜とも云う。 |
参考:『別訳雑阿含経巻5(106)』:『如是我聞。一時佛在王舍城迦蘭陀竹林。時梵主天。於其中夜。威光甚明。來至佛所。爾時世尊。入火光三昧。時梵主天。作是心念。今者如來。入於三昧。我來至此。甚為非時。當爾之時。提婆達多親友。瞿迦梨比丘。謗舍利弗及大目連。此梵主天。即詣其所。扣瞿迦梨門喚言。瞿迦梨瞿迦梨。汝於舍利弗目連。當生淨信。彼二尊者。心淨柔軟。梵行具足。汝作是謗。後於長夜。受諸衰苦。瞿迦梨即問之言。汝為是誰。答曰。我是梵主天。瞿迦梨言。佛記汝得阿那含耶。梵主答言。實爾。瞿迦梨言。阿那含名為不還。汝云何還梵主天。復作是念。如此等人。不應與語。而說偈言 欲測無量法 智者所不應 若測無量法 必為所燒害 時梵主天。說是偈已。即往佛所。頂禮佛足。在一面坐。以瞿迦梨所說因緣。具白世尊。佛告梵言實爾實爾。欲測無量法。能燒凡夫。爾時世尊。即說偈言 夫人生世 斧在口中 由其惡口 自斬其身 應讚者毀 應毀者讚 如斯惡人 終不見樂 迦梨偽謗 於佛賢聖 迦梨為重 百千地獄 時阿浮陀 毀謗賢聖 口意惡故 入此地獄 時梵主天聞是偈已。禮佛而退』 |
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俱伽離問言。汝是何人。答言。我是梵天王。問言。佛說汝得阿那含道。汝何以故來。 |
俱伽離の問うて言わく、『汝は、是れ何れの人ぞ』、と。答えて言わく、『我れは是れ梵天王なり』、と。問うて言わく、『仏の説きたまわく、汝は阿那含道を得たりと。汝は、何を以っての故にか、来たる』、と。 |
『俱伽離』は、
問うて、こう言った、――
答えて、こう言った、――
問うて、こう言った、――
『仏』は、
こう説かれた、――
お前は、
『阿那含( 不還)』の、
『道』を、
『得ている!』、と。
お前は、
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阿那含(あなごん):梵語 anaagaamin の訳、来ない/還らない( not coming )、又は還ることに従属しない( not subject
to returning )の義、不還と訳す。欲界の煩悩を断絶した声聞道の実践者( A practitioner of the path of
the śrāvaka 聲聞 who has fully severed the afflictions of the desire realm
)の意、次の生処は色界、又は無色界であり、欲界には生まれない( and may be reborn into the form realm or
formless realm, but will not again be reborn in this world of desire )が故に不還という。 |
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梵王心念而說偈言
無量法欲量 不應以相取
無量法欲量 是野人覆沒
說此偈已。到佛所具說其事。 |
梵王の心に念じて、偈を説いて言わく、
無量の法を量らんと欲せば、応に相を以って取るべからず、
無量の法を量らんと欲せば、是の野人は覆没せん
此の偈を説き已りて、仏所に到り、具に其の事を説く。 |
『梵王』は、
『心』に念じて、
『偈』を説いて、こう言った、――
『無量』の、
『法』を、
『量ろう!』と、
『思えば!』、
『相』を、
『取って!』、
『量ってはならない!』。
『無量』の、
『法』を、
『量ろう!』と、
『思う!』、
是のような、
『野人』は、
『覆没するだろう!』、と。
『梵王』は、
此の、
『偈』を、
『説き已る!』と、
『仏の所』に、
『到って!』、
其の、
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野人(やにん):野蛮人/粗野人( savage )。
覆没(ふくもつ):転覆と沈没( capsize and sink )。 |
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佛言。善哉善哉。快說此偈。爾時世尊復說此偈
無量法欲量 不應以相取
無量法欲量 是野人覆沒
梵天王聽佛說已。忽然不現即還天上。 |
仏の言わく、『善い哉、善い哉、快く此の偈を説けり』、と。爾の時、世尊の、復た此の偈を説きたまわく、
無量の法を量らんと欲せば、応に相を以って取るべからず、
無量の法を量らんと欲せば、是の野人は覆没せん。
梵天王は、仏の説きたもうを聞き已りて、忽然として現れず、即ち天上に還りたり。 |
『仏』は、
こう言われた、――
善いぞ!
善いぞ!
此の、
『偈』を、
『説いた!』のは、
『機敏であった!』、と。
爾の時、
『世尊』は、
復た、此の偈を説かれた、――
『無量』の、
『法』を、
『量ろう!』と、
『思えば!』、
『相』を、
『取って!』、
『量ってはならない!』。
『無量』の、
『法』を、
『量ろう!』と、
『思う!』、
是のような、
『野人』は、
『覆没するだろう!』、と。
『梵天王』は、
『仏』が、
『説かれる!』のを、
『聞き已る!』と、
ふっと、
『見えなくなった!』、
即ち、
『天上』に、
『還ったのである!』。
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爾時俱迦離到佛所。頭面禮佛足卻住一面。佛告俱伽離。舍利弗目揵連心淨柔軟。汝莫謗之而長夜受苦。俱伽離白佛言。我於佛語不敢不信。但自目見了了。定知二人實行不淨。 |
爾の時、俱伽離は、仏所に到りて、頭面に仏の足を礼し、却きて、一面に住す。仏の俱伽離に告げたまわく、『舎利弗、目揵連は、心浄く柔軟なり。汝は、之を謗りて、長夜に苦を受くること莫かれ』、と。俱伽離の仏に白して言さく、『我れは、仏語に於いて、敢て信ぜざるにあらず。但だ自ら目に見ること了了なれば、定んで二人の実に不浄を行ぜしことを知れり』、と。 |
爾の時、
『俱伽離』は、
『仏の所』に、
『到り!』、
『頭面』に、
『仏の足』を、
『礼する!』と、
『却( しりぞ)いて!』、
『壁の一面』を、
『背にした!』。
『仏』は、
『俱伽離』に、こう告げられた、――
『舎利弗』と、
『目揵連』とは、
お前は、
之を、
『謗って!』、
『長夜』に、
『苦』を、
『受けてはならない!』、と。
『俱伽離』は、
『仏』に白して、こう言った、――
わたしは、
『仏』の、
『語』を、
『敢て!』、
『信じないわけではありません!』が、
但だ、
『自ら!』の、
『目』に、
『はっきりと!』、
『見ました!』ので、
定んで、
『二人』が、
『不浄』を、
『行った!』と、
『知っているのです!』、と。
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佛如是三呵。俱伽離亦三不受。即從坐起而去。還其房中舉身生瘡。始如芥子漸大如豆如棗如奈。轉大如瓜。翕然爛壞如大火燒。叫喚嗥哭其夜即死。入大蓮華地獄。 |
仏は、是の如く三たび呵したまい、倶伽離も亦た三たび受けずして、即ち坐より起ちて去り、其の房中に還るに、身を挙げて瘡を生ず。始は芥子の如く、漸く大きくなりて、豆の如く、棗の如く、奈の如く、転た大なりて瓜の如く、翕然として、爛壊すること大火焼の如く、叫喚し、嗥哭して、其の夜に即ち死し、大蓮華地獄に入れり。 |
『仏』が、
『倶伽離』も、
『倶伽離』が、
其の、
『房』中に、
『還る!』と、 『全身』に、
『瘡(かさ)』が、
『生じた!』、
始めは、
『芥子粒ほどであった!』が、
やがて、
『大きくなって!』、
『豆粒ほどになり!』、
『棗(なつめ)ほどになり!』、
『林檎ほどになり!』、
どんどん、
突然、
『爛れて!』、
『破裂し!』、
『大火』に、
『焼かれたようになり!』、
『叫喚し!』、
『嗥哭していた!』が、
其の夜に、
『死んで!』、
『大蓮華地獄』に、
『入った!』。
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奈(ない):通常柰に作る。蘋果( apple )に似たる果実の名。蘋果属( リンゴ属、malus )、落葉高木、葉は楕円形、花白色紅暈を帯び、紅、黄、或いは淡緑色等の色なる有り、味甜く或いは略酸し。
翕然(きゅうねん):突然。忽然。
叫喚(きょうかん):大声でわめく( cry out )。
嗥哭(こうこく):野獣のように吼え叫んで泣く( roar and cry )。
大蓮華地獄(だいれんげじごく):梵語摩訶鉢特摩㮈落迦mahaa- padma- narakaの訳。十六大地獄の一。八寒地獄の一。また大紅蓮花地獄と訳す。謂わゆる、罪を受くる衆生の、寒苦増々極むるに由り、肉色大いに拆け、紅蓮花に似たるなり。
八寒地獄(はちかんじごく):また八寒㮈落迦、八寒氷地獄とも称す。即ち「倶舎論巻11」に、「また余の八寒㮈落迦有り、その八とは何ん、一に頞部陀 arbuda、二に尼刺部陀 nirabuda、三に頞哳吒 aTaTa、四に臛臛婆 hahava、五に虎虎婆 huhuva、六に嗢鉢羅 utpala、七に鉢特摩 padma、八に摩訶鉢特摩 mahaa- padmaなり。この中の有情は厳寒に逼られ、身と声と変ずるに随って以ってその名を立つ。この八は並びに瞻部州の下、前の所説の如き大地獄(即ち八大熱地獄)の傍らに居す」と云い、「倶舎論光記巻11」に、「頞部陀は此に皰と云う、厳寒身に逼りてその身に皰を生ずるなり。尼刺部陀は此に皰裂と云う、厳寒身に逼りて身皰裂するなり。次の三は寒逼りて口に異声を出すなり。嗢鉢羅は此に青蓮華と云う、厳寒逼切して身変じて拆裂すること青蓮華の如し。鉢特摩は此に紅蓮華と云う、厳寒逼切して身変じて拆裂すること紅蓮華の如し。摩訶鉢特摩は此に大紅蓮華と云う、厳寒逼切して身変じて拆裂すること大紅蓮華の如し」と云えるこれなり。<(望) |
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有一梵天夜來白佛。俱伽離已死復有一梵天言。墮大蓮華地獄。 |
有る一梵天の夜来たりて仏に白さく、『倶伽離は已に死せり』、と。復た有る一梵天の言わく、『大蓮華地獄に墮つ』、と。 |
有る、
『一梵天』が、
『夜』に来て、
『仏』に、こう白した、――
『倶伽離は、死にました!』、と。
有る、
『一梵天』は、
こう言った、――
『大蓮華地獄に、堕ちました!』、と。
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其夜過已佛命僧集而告之言。汝等欲知俱伽離所墮地獄壽命長短不。諸比丘言。願樂欲聞。 |
其の夜過ぎ已りて、仏は僧に命じて集まらしめ、之に告げて言わく、『汝等、倶伽離の墮つる所の地獄の寿命の長短を知らんと欲すや、不や』、と。諸比丘の言わく、『願わくは楽しんで聞かんと欲す』、と。 |
其の、
『夜』が過ぎると、
『仏』は、
『僧』に、
『集まるよう!』、
『命じられる!』と、
『僧』に告げて、こう言われた、――
お前達は、
『倶伽離』の、
『堕ちた!』所の、
『地獄』の、
『寿命の長短』を、
『知りたいか?』、と。
諸の、
『比丘』は、
こう言った、――
願わくは、
『楽しんで!』、
『聞きたい!』と、
『思います!』、と。
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佛言。有六十斛胡麻。有人過百歲取一胡麻。如是至盡。阿浮陀地獄中壽故未盡。二十阿浮陀地獄中壽。為一尼羅浮陀地獄中壽。如二十尼羅浮陀地獄中壽為一阿羅邏地獄中壽。二十阿羅邏地獄中壽。為一阿婆婆地獄中壽。二十阿婆婆地獄中壽。為一休休地獄中壽。二十休休地獄中壽。為一漚波羅地獄中壽。二十漚波羅地獄中壽。為一分陀梨迦地獄中壽。二十分陀梨迦地獄中壽。為一摩呵波頭摩地獄中壽。俱伽離墮是摩呵波頭摩地獄中。出其大舌以百釘釘之。五百具犁耕之。 |
仏の言わく、『六十斛の胡麻有り、有る人、百歳を過ぐるごとに、一胡麻を取り、是の如くして尽くすに至るも、阿浮陀地獄中の寿は、故より未だ尽きず。二十阿浮陀地獄中の寿を、一尼羅浮陀地獄中の寿と為し、二十尼羅浮陀地獄中の寿を一阿羅邏地獄中の寿と為し、二十阿羅邏地獄中の寿を一阿婆婆地獄中の寿と為し、二十阿婆婆地獄中の寿を一休休地獄中の寿と為し、二十休休地獄中の寿を一漚波羅地獄中の寿と為し、二十漚波羅地獄中の寿を一分陀梨迦地獄中の寿と為し、二十分陀梨迦地獄中の寿を一摩呵波頭摩地獄中の寿と為すが如し。倶伽離は、此の摩呵波頭摩地獄中に堕ちて、其の大舌を出して、百釘を以って之を釘うち、五百具の犁もて、之を耕す。 |
『仏』は、
こう言われた、――
『六十斛( 石)』の、
『胡麻』が、
『有った!』として、
有る人が、
『百歳』を、
『過ぎる!』ごとに、
『一胡麻』を、
『取り!』、
是のようにして、
『六十斛』の、
『胡麻』が、
『尽きてしまっても!』、
『阿浮陀地獄』中の、
『寿』は、
『まだ尽きない!』し、
『二十阿浮陀地獄』中の、
『寿』は、
『一尼羅浮陀地獄』中の、
『寿である!』が、
例えば、
『二十尼羅浮陀地獄』中の、
『寿』を、
『一阿羅邏地獄』中の、
『寿とし!』、
『二十阿羅邏地獄』中の、
『寿』を、
『一阿婆婆地獄』中の、
『寿とし!』、
『二十阿婆婆地獄』中の、
『二十休休地獄』中の、
『寿』を、
『一漚波羅地獄』中の、
『寿とし!』、
『二十漚波羅地獄』中の、
『寿』を、
『一分陀梨迦地獄』中の、
『寿とし!』、
『二十分陀梨迦地獄』中の、
『寿』を、
『一摩呵波頭摩地獄』中の、
『寿とした!』として、
『倶伽離』は、
是の、
其の、
『舌』を、
『出して!』、
『百本』の、
『釘』で、
『打ちつけられ!』、
『五百具』の、
『犁(すき)』で、
『耕される!』のである。
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斛(こく):10斗。今の19.4リットル。石。
故(こ):もとより。未だ( still )に同じ。
具(ぐ):器物を数える助数詞。
阿浮陀(あぶだ):梵名arbuda、また頞部陀に作る。八寒地獄の一。
尼羅浮陀(にらぶだ):梵名nirabuda、また尼刺部陀に作る。八寒地獄の一。
阿羅邏(あらら):梵名aTaTa、また頞哳吒に作る。八寒地獄の一。
阿婆婆(あばば):梵名hahava、また臛臛婆に作る。八寒地獄の一。
休休(くく):梵名hufuva、また虎虎婆に作る。八寒地獄の一。
漚波羅(うぱら):梵名utpala、また嗢鉢羅に作る。八寒地獄の一。
分陀梨迦(ふんだりか):梵名pundariika、また鉢頭摩padmaと称す。八寒地獄の一。
摩呵鉢頭摩(まかはづま):梵名mahaa- padma、また摩訶鉢特摩に作る。八寒地獄の一。 |
参考:『雑阿含経巻48(1278)』:『如是我聞。一時。佛住王舍城迦蘭陀竹園。時。有瞿迦梨比丘。是提婆達多伴黨。來詣佛所。稽首佛足。退坐一面。爾時。世尊告瞿迦梨比丘。瞿迦梨。汝何故於舍利弗.目揵連清淨梵行所。起不清淨心。長夜當得不饒益苦。瞿迦梨比丘白佛言。世尊。我今信世尊語。所說無異。但舍利弗.大目揵連心有惡欲。如是第二.第三說。瞿迦梨比丘。提婆達多伴黨於世尊所再三說中。違反不受。從座起去。去已。其身周遍生諸皰瘡。皆如栗。漸漸增長。皆如桃李。時。瞿迦梨比丘患苦痛。口說是言。極燒。極燒。膿血流出。身壞命終。生大缽曇摩地獄。時。有三天子。容色絕妙。於後夜時來詣佛所。稽首佛足。退坐一面。時。一天子白佛言。瞿迦梨比丘。提婆達多伴黨今已命終。時。第二天子作是言。諸尊當知。瞿迦梨比丘命終墮地獄中。第三天子即說偈言 士夫生世間 斧在口中生 還自斬其身 斯由其惡言 應毀便稱譽 應譽而便毀 其罪生於口 死墮惡道中 博弈亡失財 是非為大咎 毀佛及聲聞。是則為大過。彼三天子說是偈已。即沒不現。爾時。世尊夜過晨朝。來入僧中。於大眾前敷座而坐。告諸比丘。昨後夜時。有三天子來詣我所。稽首我足。退坐一面。第一天子語我言。世尊。瞿迦梨比丘。提婆達多伴黨今已命終。第二天子語餘天子言。瞿迦梨比丘命終墮地獄中。第三天子即說偈言 士夫生世間 斧在口中生 還自斬其身 斯由其惡言 應毀便稱譽 應譽而便毀 其罪口中生 死則墮惡道 說是偈已。即沒不現。諸比丘。汝等欲聞生阿浮陀地獄眾生其壽齊限不。諸比丘白佛。今正是時。唯願世尊為諸大眾說阿浮陀地獄眾生壽命齊限。諸比丘聞已。當受奉行。佛告比丘。諦聽。善思。當為汝說。譬如拘薩羅國。四斗為一阿羅。四阿羅為一獨籠那。十六獨籠那為一闍摩那。十六闍摩那為一摩尼。二十摩尼為一佉梨。二十佉梨為一倉。滿中芥子。若使有人百年百年取一芥子。如是乃至滿倉芥子都盡。阿浮陀地獄眾生壽命猶故不盡。如是二十阿浮陀地獄眾生壽等一尼羅浮陀地獄眾生壽。二十尼羅浮陀地獄眾生壽等一阿吒吒地獄眾生壽。二十阿吒吒地獄眾生壽等一阿波波地獄眾生壽。二十阿波波地獄眾生壽等一阿休休地獄眾生壽。二十阿休休地獄眾生壽等一優缽羅地獄眾生壽。二十優缽羅地獄眾生壽等一缽曇摩地獄眾生壽。二十缽曇摩地獄眾生壽等一摩訶缽曇摩地獄眾生壽。比丘。彼瞿迦梨比丘命終墮摩訶缽曇摩地獄中。以彼於尊者舍利弗.大目揵連比丘生惡心.誹謗故。是故。諸比丘。當作是學。於彼燒燋炷所。尚不欲毀壞。況毀壞有識眾生。佛告諸比丘。當如是學。佛說此經已。諸比丘聞佛所說。歡喜奉行』 |
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爾時世尊說此偈言
夫士之生 斧在口中
所以斬身 由其惡言
應呵而讚 應讚而呵
口集諸惡 終不見樂
心口業生惡 墮尼羅浮獄
具滿百千世 受諸毒苦痛
若生阿浮陀 具滿三十六
別更有五世 皆受諸苦毒
心依邪見 破賢聖語
如竹生實 自毀其形 如是等心生疑謗。遂至決定亦是妄語。 |
爾の時、世尊は、此の偈を説いて言わく、
夫れ士の生まるるや、斧口中に在り、
身を斬る所以は、其の悪言に由る。
応に呵すべきに讃じ、応に讃ずべきに呵して、
口諸悪を集むれば、終に楽を見ず。
心口の業悪を生じて、尼羅浮獄に堕つれば、
具に百千世を満てて、諸毒の苦痛を受けん。
若し阿浮陀に生ぜば、具に三十六を満てて、
別に更に五世有りて、皆諸の苦毒を受けん。
心邪見に依りて、賢聖の語を破せば、
竹に実を生ずるが如く、自ら其の形を毀(こぼ)たん。
是の如き等、心に疑を生じて謗れば、遂に決定に至る、亦た是れ妄語なり。 |
爾の時、
『世尊』は、
此の、
『偈』を説いて、こう言われた、――
そもそも!
『士( ひと)』は、
其の、
『讃えるべき!』所を、
『叱ったりして!』、
『口』が、
諸の、
『悪』を、
『集める!』とすれば、
終( つい)に、
『楽』を、
『見ることはないだろう!』。
『心』と、
『口』との、
『業』が、
『悪』を、
『生じて!』、
『尼羅浮陀!』という、
『地獄』に、
『堕ちれば!』、
『百千世』を、
『すっかり!』、
『満たす!』まで、
諸の、
『毒の苦痛』を、
『受けるだろう!』。
若し、
『阿浮陀!』という、
『地獄』に、
『生じた!』としても、
『三十六世』を、
『すっかり!』、
『満たして!』、
更に、
別に、
『五世』を、
『満たす!』まで、
諸の、
『苦の毒』を、
『受けるだろう!』。
『心』が、
『邪見』に、
『依頼して!』、
『賢聖』の、
『語』を、
『破る!』ならば、
譬えば、
自ら、
是れ等のように、
『心』に、
『疑』を、
『生じて!』、
『賢聖』を、
『謗れば!』、
終に、
『決定する!』に、
『至る!』ので、
亦た、
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夫(ふ):それ。発語の辞。そもそも。
士(し):梵語 puruSa の訳、人/男/男性( a man, male, human being, person, a male person
)の義。 |
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妄語人乃至佛語而不信受。受罪如是。以是故不應妄語。 |
妄語の人は、乃至仏語も、信受せざれば、罪を受くること是の如し。是を以っての故に、応に妄語すべからず。 |
『妄語の人』は、
乃至、
『仏』の、
『語まで!』も、
『信受しない!』ので、
『罪』を、
『受ける!』ことも、
『是の通りである!』、
是の故に、
『妄語してはならない!』。
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復次如佛子羅睺羅。其年幼稚未知慎口。人來問之。世尊在不。詭言不在。若不在時。人問羅睺羅。世尊在不。詭言佛在。 |
復た次ぎに、仏の子の羅睺羅の如きは、其の年幼稚にして、未だ口を慎むを知らず。人来たりて、之に『世尊在すや、不や』と問えば、詭(いつわ)りて、『在さず』と言い、若し在さざる時に、人羅睺羅に『世尊は在すや、不や』と問えば、詭りて、『仏在す』と言えり。 |
復た次ぎに、
例えば、
『仏』の、
『子』の、
『羅睺羅』であるが、――、
其の、
未だ、
『口』を、
『慎む!』ことを、
『知らなかった!』ので、
『人』が、
『来て!』、
『仏は居ますか?』と、
『問えば!』、
『詭( いつわ)って!』、
『仏は居ない!』と、
『言い!』、
『仏』が、
『不在の時』に、
『人』が、
『羅睺羅』に、
『仏は居ますか?』と、
『問えば!』、
『詭って!』、
『仏は居ます!』と、
『言った!』。
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有人語佛。佛語羅睺羅。澡槃取水與吾洗足。洗足已。語羅睺羅。覆此澡槃。如敕即覆。佛言。以水注之。注已問言。水入中不。答言。不入。佛告羅睺羅。無慚愧人妄語覆心道法不入。亦復如是。 |
有る人の仏に語るに、仏の羅睺羅に語りたまわく、『澡槃に水を取りて、我が与(ため)に足を洗え』、と。足を洗い已れるに、羅睺羅に語りたまわく、『此の澡槃を覆(おお)え』、と。勅の如く、即ち覆えるに、仏の言わく、『水を以って、之に注げ』、と。注ぎ已れるに、問うて言わく、『水は中に入るや、不や』と。答えて言わく、『入らず』、と。仏の羅睺羅に告げたまわく、『慚愧無き人、妄語して心を覆わば、道法の入らざることも、亦復た是の如し』、と。 |
有る、
『人』が、
『仏』に、
『語る!』と、
『仏』は、
『羅睺羅』に、こう語られた、――
『澡槃』に、
『水』を、
『取って!』、
わたしの、
『足』を、
『洗え!』、と。
『羅睺羅』が、
『足』を、
『洗い已る!』と、
こう語られた、――
此の、
『澡槃』に、
『覆(おおい)』を、
『掛けよ!』、と。
『羅睺羅』が、
『命じられた!』ように、
『覆』を、
『掛ける!』と、
『仏』は、こう言われた、――
『羅睺羅』が、
問うて、こう言われた、――
『水』は、
『入ったのか?』、と。
答えて、こう言った、――
『入りませんでした!』、と。
『仏』は、
『羅睺羅』に、こう告げられた、――
『慚愧』の、
『無い!』、
『人』は、
『妄語』が、
『心』を、
『覆う!』ので、
『道』という、
『法』が、
『入らなくなる!』のも、
亦た、
『是の通りなのだ!』、と。
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澡槃(そうばん):たらい。 |
参考:『中阿含経巻3(14)』:『我聞如是。一時。佛遊王舍城。在竹林迦蘭哆園。爾時。尊者羅云亦遊王舍城溫泉林中。於是。世尊過夜平旦。著衣持缽入王舍城而行乞食。乞食已竟。至溫泉林羅云住處。尊者羅云遙見佛來。即便往迎。取佛衣缽。為敷坐具。汲水洗足。佛洗足已。坐羅云座。於是。世尊即取水器。瀉留少水已。問曰。羅云。汝今見我取此水器。瀉留少水耶。羅云答曰。見也。世尊。佛告羅云。我說彼道少。亦復如是。謂知已妄言。不羞不悔。無慚無愧。羅云。彼亦無惡不作。是故。羅云。當作是學。不得戲笑妄言。世尊復取此少水器。盡瀉棄已。問曰。羅云。汝復見我取少水器。盡瀉棄耶。羅云答曰。見也。世尊。佛告羅云。我說彼道盡棄。亦復如是。謂知已妄言。不羞不悔。無慚無愧。羅云。彼亦無惡不作。是故。羅云。當作是學。不得戲笑妄言。世尊復取此空水器。覆著地已。問曰。羅云。汝復見我取空水器。覆著地耶。羅云答曰。見也。世尊。佛告羅云。我說彼道覆。亦復如是。謂知已妄言。不羞不悔。無慚無愧。羅云。彼亦無惡不作。是故羅云。當作是學。不得戲笑妄言。世尊復取此覆水器。發令仰已。問曰。羅云。汝復見我取覆水器。發令仰耶。羅云答曰。見也。世尊。佛告羅云。我說彼道仰。亦復如是。謂知已妄言。不羞不悔。不慚不愧。羅云。彼亦無惡不作。是故。羅云。當作是學。不得戲笑妄言。羅云。猶如王有大象入陣鬥時。用前腳.後腳.尾.骼.脊.脅.項.額.耳.牙。一切皆用。唯護於鼻。象師見已。便作是念。此王大象猶故惜命。所以者何。此王大象入陣鬥時。用前腳.後腳.尾.骼.脊.脅.項.額.耳.牙。一切皆用。唯護於鼻。羅云。若王大象入陣鬥時。用前腳.後腳.尾.骼.脊.脅.項.額.耳.牙.鼻。一切盡用。象師見已。便作是念。此王大象不復惜命。所以者何。此王大象入陣鬥時。用前腳.後腳.尾.骼.脊.脅.項.額.耳.牙.鼻。一切盡用。羅云。若王大象入陣鬥時。用前腳.後腳.尾.骼.脊.脅.項.額.耳.牙.鼻。一切盡用。羅云。我說此王大象入陣鬥時。無惡不作。如是。羅云。謂知已妄言。不羞不悔。無慚無愧。羅云。我說彼亦無惡不作。是故。羅云。當作是學。不得戲笑妄言。於是。世尊即說頌曰 人犯一法 謂妄言是 不畏後世 無惡不作 寧噉鐵丸 其熱如火 不以犯戒 受世信施 若畏於苦 不愛念者 於隱顯處 莫作惡業 若不善業 已作今作 終不得脫 亦無避處 佛說頌已。復問羅云。於意云何。人用鏡為。尊者羅云答曰。世尊。欲觀其面。見淨不淨。如是。羅云。若汝將作身業。即觀彼身業。我將作身業。彼身業為淨。為不淨。為自為。為他。羅云。若觀時則知。我將作身業。彼身業淨。或自為。或為他。不善與苦果受於苦報。羅云。汝當捨彼將作身業。羅云。若觀時則知。我將作身業。彼身業不淨。或自為。或為他。善與樂果受於樂報。羅云。汝當受彼將作身業。羅云。若汝現作身業。即觀此身業。若我現作身業。此身業為淨。為不淨。為自為。為他。羅云。若觀時則知。我現作身業。此身業淨。或自為。或為他。不善與苦果受於苦報。羅云。汝當捨此現作身業。羅云。若觀時則知。我現作身業。此身業不淨。或自為。或為他。善與樂果受於樂報。羅云。汝當受此現作身業。羅云。若汝已作身業。即觀彼身業。若我已作身業。彼身業已過去滅盡變易。為淨。為不淨。為自。或為他。羅云。若觀時則知。我已作身業。彼身業已過去滅盡變易。彼身業淨。或自為。或為他。不善與苦果受於苦報。羅云。汝當詣善知識.梵行人所。彼已作身業。至心發露。應悔過說。慎莫覆藏。更善持護。羅云。若觀時則知。我已作身業。彼身業已過去滅盡變易。彼身業不淨。或自為。或為他。善與樂果受於樂報。羅云。汝當晝夜歡喜。住正念正智。口業亦復如是。羅云。因過去行故。已生意業。即觀彼意業。若因過去行故。已生意業。彼意業為淨。為不淨。為自為。為他。羅云。若觀時則知。因過去行故。已生意業。彼意業已過去滅盡變易。彼意業淨。或自為。或為他。不善與苦果受於苦報。羅云。汝當捨彼過去意業。羅云。若觀時則知。因過去行故。已生意業已過去滅盡變易。彼意業不淨。或自為。或為他。善與樂果受於樂報。羅云。汝當受彼過去意業。羅云。因未來行故。當生意業。即觀彼意業。若因未來行故。當生意業。彼意業為淨。為不淨。為自為。為他。羅云。若觀時則知。因未來行故。當生意業。彼意業淨。或自為。或為他。不善與苦果受於苦報。羅云。汝當捨彼未來意業。羅云。若觀時則知。因未來行故。當生意業。彼意業不淨。或自為。或為他。善與樂果受於樂報。羅云。汝當受彼未來意業。羅云。因現在行故。現生意業。即觀此意業。若因現在行故。現生意業。此意業為淨。為不淨。為自為。為他。羅云。若觀時則知。因現在行故。現生意業。此意業淨。或自為。或為他。不善與苦果受於苦報。羅云。汝當捨此現在意業。羅云。若觀時則知。因現在行故。現生意業。此意業不淨。或自為。或為他。善與樂果受於樂報。羅云。汝當受此現在意業。羅云。若有過去沙門.梵志.身.口.意業。已觀而觀。已淨而淨。彼一切即此身.口.意業。已觀而觀。已淨而淨。羅云。若有未來沙門.梵志。身.口.意業。當觀而觀。當淨而淨。彼一切即此身.口.意業。當觀而觀。當淨而淨。羅云。若有現在沙門.梵志。身.口.意業。現觀而觀。現淨而淨。彼一切即此身.口.意業。現觀而觀。現淨而淨。羅云。汝當如是學。我亦即此身.口.意業。現觀而觀。現淨而淨。於是。世尊復說頌曰 身業口業 意業羅云 善不善法 汝應常觀 知已妄言 羅云莫說 禿從他活 何可妄言 覆沙門法 空無真實 謂說妄言 不護其口 故不妄言 正覺之子 是沙門法 羅云當學 方方豐樂 安隱無怖 羅云至彼 莫為害他 佛說如是。尊者羅云及諸比丘聞佛所說。歡喜奉行』 |
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如佛說。妄語有十罪。何等為十。一者口氣臭。二者善神遠之非人得便。三者雖有實語人不信受。四者智人語議常不參豫。五者常被誹謗。醜惡之聲周聞天下。六者人所不敬。雖有教敕人不承用。七者常多憂愁。八者種誹謗業因緣。九者身壞命終當墮地獄。十者若出為人常被誹謗。如是種種不作。是為不妄語。名口善律儀。 |
仏の説きたまえるが如く、妄語には、十罪有り、何等か十と為す、一には口気臭し。二には善神、之を遠ざけ、非人便を得。三には実語有りと雖も、人は信受せず。四には智人の語議に参与せず。五には常に誹謗せられ、醜悪の声周く天下に聞こゆ。六には人に敬われず、教勅有りと雖も、人は承用せず。七には常に憂愁多し。八には誹謗の業の因縁を種う。九には身壊れ命終れば、当に地獄に堕つべし。十には若し出でて人と為れば、常に誹謗せらる。是の如く種種を作さざる、是れを不妄語と為し、口の善律儀と名づく。 |
例えば、
『仏』は、こう説かれている、――
『妄語』には、
『十罪』が、
『有る!』。
何のような、
『十か?』、――
一には、
二には、
『善神』が、
『遠ざかる!』ので、
『非人( 悪鬼)』が、
『便宜』を、
『得る!』。
三には、
『実語』が、
『有った!』としても、
『人』に、
『信受されない!』。
四には、
『智人』の、
『談話』や、
『議論』に、
常に、
『参加しない!』。
五には、
『人』に、
『常に!』、
『誹謗され!』、
『醜悪の名声』が、
『天下』に、
『周く聞こえる!』。
六には、
『人』に、
『敬われず!』、
有るいは、
『教たり!』、
『命じたりしても!』、
『人』は、
『承けて!』、
『用いない!』。
七には、
八には、
九には、
『身』が、
『壊れ!』、
『命』が、
『終る!』と、
『地獄』に、
『堕ちなくてはならない!』。
十には、
『地獄』より、
『出て!』、
『人』と、
『為っても!』、
常に、
『人』に、
『誹謗される!』。
是れ等のような、
種種を、
『作さない!』のが、
『不妄語であり!』、
『口』の、
『善律儀』と、
『称される!』。
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便(べん):直接/即座に/躊躇なく/敏速に/容易に/気持ちよく( directly, Immediately, readily, promptly;
easily, comfortably. )、機会/好機( an occasion, an opportunity )、◯梵語 avataara
の訳、[特に天より神性を]降下すること/地上に神性を現すこと( descent (especially of a deity from heaven),
appearance of any deity upon earth )の義、人を捉える機会[仏典]( opportunity of catching
any one (Buddhist literature) )の意。◯梵語 avataara-prekSin の訳、機会を伺う/過失を見つける(
watching opportunities, espying faults )の義。
語議(ごぎ):言談議論。談話と議論。
参預(さんよ):聞くに預り、其の事を議するに参加するの意。参与。参加。 |
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